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「桜木さん、」
「何?」
「…利子とか、ありませんかっ?これ」
「あーね、そうきたか。いや、うーんじゃあ、俺ん家住むとなったら生活費三分割で。それでいいよ。
家賃9万だからまぁ3万とちょっと?でも狭くて不便がちょっとあるから割り引く。そんでもいまより楽でしょ?」
「はい…で、」
「あんた多分ね、風俗よりも飲食とか…なんでもいいけど看板娘の方がいいと思うよ。可愛いからすぐなるだろうし。
つまり普通の生活の方がいいと思うんだよね、なんとなく。少なくとも下衆の妹である意味ない」
まるで全部を決めてしまった。
説得力に何も言えないまま。ここまで考えるだなんて…そう、
「どうかしてる」
「お前が言うなよ。
じゃ、千香ちゃんはOK?」
「…わかんない」
「まじっくり考えな、50万あるから」
俯いているうちにガタガタ、玄関が騒がしかった。
前沢が帰って来た。
女の大きな声もする。それにビクッとなった千香を見て「お出ましだお客さん」と桜木は襖をガラッと開けた。
「……桜木!?」
とてもイチャイチャ雰囲気だった二人は黙り込み、驚きから不機嫌そうになった前沢は「なんだお前、」と桜木に眉をしかめた。
「アカリが熱出したんで送りに来たんですが」
アカリ?と女が言ったのに「あーあー、先上行ってて」と、前沢は女を追いやった。
「で?なんだよ、」
「ついでなんでビデオ会社の件でも話そうかと」
「あっそう、何?今?それ」
「先方と話し合ったんですが潰れました、話」
「…はぁ!?」
「まーまーどうぞこち」
「潰れたって、なんでだよ!」
大声をあげてから部屋を見た前沢が「てめぇ灯、」と突進しようとするのに「まーまーまーまー」と、桜木は今さっき言ったことを翻し、前沢を押さえつけた。
「いや体調が思わしくなさそうですよって話で」
「何言ってんだ、」
「先方から診断書も要求されましたんで提出し、」
え、そうだったの。
診断書?いや、ちゃんと性病検査、問題ないけど。
桜木はスマートに鞄から診断書を取り出し、前沢に見せつけた。
「…おま、」
「引っ掛かったのがこの、精神障害の欄ですね。
まぁ何本でどれだけ取る気だったか気が知れませんが契約の50万、なので先方にお返ししときました。
ダメでしょー社長、裏稼業さんには気を使わないと。ソッコーで「使いたくねぇ」って言われましたよ。
知ってるか知りませんがこの処方薬ですね、成分に性欲減退って作用がありましてEDみたいなもんですよっつったら余計に」
「…お前何してんの、」
「揉めるの嫌なんで。やってられません」
「お前が出る訳じゃねぇだろ、大体あんなん、別にEDでも」
「流石にビデオはハンデが出てきますよ?娯楽ですからね。あ、正式にはED貰ってないんで取り行かせますか?」
いや、EDじゃねぇんだよね一応。その診断多分下りないけど大きく出たな、大丈夫なのか?
「じゃー30歩くらい譲って強行したとしましょう?キメ物撮ったとするじゃないっすか?死んじゃうと思うんすよねって常備薬の説明までしてご納得頂きました」
「その50万はどっから」
「事務所からに決まってるでしょ受け取ってんだから」
「…お前、違ぇよそれは店と関係ねぇ金で」
「あーなんかめんどくなってきたな。ぶっちゃけあいつ使えないんで。確かに?接客はお褒めの言葉を頂いてますよ、それなりに取ってるボーイですから。でももう潮時っしょ?」
桜木は更にまた、別の封筒も出しまるで前沢に押し付け「100」と言った。
は?
100?
「返すよ。変わりに俺が買ったっつーことで。あと何年何万縛り付ける気かは知らんが、もうクライアントには一銭の価値もねぇと言われたやつを。アコギじゃないっすか?」
「…お前なんで」
「稼がせて頂きましたんで。あんたも考えた方がいいっすよ、大臣が「定年に2000万」とか言っちゃった時代なんですから。
はい、お前ら荷物まとめて。どーせ鞄で済むんだろ?話は終了」
「は!?」
桜木は「はいはい」、と前沢を階段へ押し飛ばし、こちらには「早くしろ」と指示をしてくる。
え、あ、はい…という気持ちで千香と二人、取り敢えず鞄を用意し手につくものを入れようとするが「いや待てよ!」とやっぱり前沢は吠えている。
そりゃそうだろうとは思うが「千香、おい!」と前沢が怒鳴り付ける。
手が止まってしまった。
「千香はどーすんだよ、なんなんだよおい、」
「あぁ妹さんは話つけましたよ。納得してもらってます。あんた良い加減妹離れしないと。
でも、立てなくなるまでぶん殴ったくらいには嫌いなんでしょ?いいじゃん、なら。軟禁までして大丈夫かよお前、こう言っちゃなんだが病気だぞ?てゆうか、上の姉ちゃん大丈夫?何分コース?これも毎日のように従業員並の稼働率とか、異常だぞ、病気だぞ?
あ、お姉ちゃんに聞かれちゃうと嫌がられちゃうな、ごめんごめん」
「おいてめぇっ!」
千香と二人「うわっ…」とついついハモってしまった。マジか、そりゃ金も貯まらないわけだ…。
てゆうか、そんなことまで調べたのか桜木。これは本気のやつだ、恐らく。何に依頼したんだか。
「何?」
「…利子とか、ありませんかっ?これ」
「あーね、そうきたか。いや、うーんじゃあ、俺ん家住むとなったら生活費三分割で。それでいいよ。
家賃9万だからまぁ3万とちょっと?でも狭くて不便がちょっとあるから割り引く。そんでもいまより楽でしょ?」
「はい…で、」
「あんた多分ね、風俗よりも飲食とか…なんでもいいけど看板娘の方がいいと思うよ。可愛いからすぐなるだろうし。
つまり普通の生活の方がいいと思うんだよね、なんとなく。少なくとも下衆の妹である意味ない」
まるで全部を決めてしまった。
説得力に何も言えないまま。ここまで考えるだなんて…そう、
「どうかしてる」
「お前が言うなよ。
じゃ、千香ちゃんはOK?」
「…わかんない」
「まじっくり考えな、50万あるから」
俯いているうちにガタガタ、玄関が騒がしかった。
前沢が帰って来た。
女の大きな声もする。それにビクッとなった千香を見て「お出ましだお客さん」と桜木は襖をガラッと開けた。
「……桜木!?」
とてもイチャイチャ雰囲気だった二人は黙り込み、驚きから不機嫌そうになった前沢は「なんだお前、」と桜木に眉をしかめた。
「アカリが熱出したんで送りに来たんですが」
アカリ?と女が言ったのに「あーあー、先上行ってて」と、前沢は女を追いやった。
「で?なんだよ、」
「ついでなんでビデオ会社の件でも話そうかと」
「あっそう、何?今?それ」
「先方と話し合ったんですが潰れました、話」
「…はぁ!?」
「まーまーどうぞこち」
「潰れたって、なんでだよ!」
大声をあげてから部屋を見た前沢が「てめぇ灯、」と突進しようとするのに「まーまーまーまー」と、桜木は今さっき言ったことを翻し、前沢を押さえつけた。
「いや体調が思わしくなさそうですよって話で」
「何言ってんだ、」
「先方から診断書も要求されましたんで提出し、」
え、そうだったの。
診断書?いや、ちゃんと性病検査、問題ないけど。
桜木はスマートに鞄から診断書を取り出し、前沢に見せつけた。
「…おま、」
「引っ掛かったのがこの、精神障害の欄ですね。
まぁ何本でどれだけ取る気だったか気が知れませんが契約の50万、なので先方にお返ししときました。
ダメでしょー社長、裏稼業さんには気を使わないと。ソッコーで「使いたくねぇ」って言われましたよ。
知ってるか知りませんがこの処方薬ですね、成分に性欲減退って作用がありましてEDみたいなもんですよっつったら余計に」
「…お前何してんの、」
「揉めるの嫌なんで。やってられません」
「お前が出る訳じゃねぇだろ、大体あんなん、別にEDでも」
「流石にビデオはハンデが出てきますよ?娯楽ですからね。あ、正式にはED貰ってないんで取り行かせますか?」
いや、EDじゃねぇんだよね一応。その診断多分下りないけど大きく出たな、大丈夫なのか?
「じゃー30歩くらい譲って強行したとしましょう?キメ物撮ったとするじゃないっすか?死んじゃうと思うんすよねって常備薬の説明までしてご納得頂きました」
「その50万はどっから」
「事務所からに決まってるでしょ受け取ってんだから」
「…お前、違ぇよそれは店と関係ねぇ金で」
「あーなんかめんどくなってきたな。ぶっちゃけあいつ使えないんで。確かに?接客はお褒めの言葉を頂いてますよ、それなりに取ってるボーイですから。でももう潮時っしょ?」
桜木は更にまた、別の封筒も出しまるで前沢に押し付け「100」と言った。
は?
100?
「返すよ。変わりに俺が買ったっつーことで。あと何年何万縛り付ける気かは知らんが、もうクライアントには一銭の価値もねぇと言われたやつを。アコギじゃないっすか?」
「…お前なんで」
「稼がせて頂きましたんで。あんたも考えた方がいいっすよ、大臣が「定年に2000万」とか言っちゃった時代なんですから。
はい、お前ら荷物まとめて。どーせ鞄で済むんだろ?話は終了」
「は!?」
桜木は「はいはい」、と前沢を階段へ押し飛ばし、こちらには「早くしろ」と指示をしてくる。
え、あ、はい…という気持ちで千香と二人、取り敢えず鞄を用意し手につくものを入れようとするが「いや待てよ!」とやっぱり前沢は吠えている。
そりゃそうだろうとは思うが「千香、おい!」と前沢が怒鳴り付ける。
手が止まってしまった。
「千香はどーすんだよ、なんなんだよおい、」
「あぁ妹さんは話つけましたよ。納得してもらってます。あんた良い加減妹離れしないと。
でも、立てなくなるまでぶん殴ったくらいには嫌いなんでしょ?いいじゃん、なら。軟禁までして大丈夫かよお前、こう言っちゃなんだが病気だぞ?てゆうか、上の姉ちゃん大丈夫?何分コース?これも毎日のように従業員並の稼働率とか、異常だぞ、病気だぞ?
あ、お姉ちゃんに聞かれちゃうと嫌がられちゃうな、ごめんごめん」
「おいてめぇっ!」
千香と二人「うわっ…」とついついハモってしまった。マジか、そりゃ金も貯まらないわけだ…。
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