雨はやむ、またしばし

二色燕𠀋

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 そこからはただノーマル、穴にローションを指で突っ込まれ、乳首も吸われた。
 ゆっくり、じっとりとしている。
 
 もどかしいほど時間を掛け、正直足がじたばたしそうで仕方ない。
 蹴り飛ばしてしまいそうで、ギリギリな理性が働いているが、それが脊髄反射のようなものに変わる瞬間があった。

 ドライオーガズムだった。

 彼はそれに気をよくしたようだ。
 そろそろかという頃、顔の前に膝立ちしてくる。
 寝たままより少し頭を上げ笹塚の起立したペニスを舐め上げた。
 少し、仕返しのつもりもある。

 だが、ここまでがすでに長い。
 「ヤバイな」と笹塚はすぐに離れ、縺れそうな手付きでコンドームをつけると、ぐっと一気に挿入してきた。

 その瞬間、右の蟀谷がキーンと鋭く痛くなった。
 耳鳴りもする、一気に集中力が削がれ、反射的に手で蟀谷を押さえそうになったが拘束されていて敵わない。

 彼は完全な野獣に変わっていた、結合部以外を見ていない。気付かれないならいいけれどとは思ったが、萎えたのには気付いたらしい。
 パッと顔を上げたのに、多分まだ表情は変えられていなかっただろう。

 不覚だった。

「…あれ、大丈夫?」
「ん、はい…。
 激しくて……ちょっと、」

 ふと心配そうに止まった笹塚にどうしようかなと考え付いたのが「またキそう…」と、少し締めてみることにした。

 思い付けば息も上げてみるし、「もちょっと…、」と煽ってみるし。

 まだ疑問そうだが再開した笹塚に、少々我慢はした。締めたからより、彼が今どれくらいかがわかりやすい。

 けれど早く終わりにしたいなと、「ん、ああっ…、」と、安くならないように吐息と身体でコントロールをする。
 そうすれば相乗効果で自分も回復してくるのだが、あまりやりすぎても痛いな、と、少し解放させればぐっと、中で熱く膨張したのがわかった。

 あぁ…よかったな。
 
 その瞬間はどんな男でも一緒だ。がくっと笹塚の身体も重くなる。

 ずるっと抜いた彼はやはり自分の顔色を眺めてくるので、頭痛も手伝った、却ってそれなりに嘘臭くないだろう笑顔で「よかったです」と答えることが出来た。

 無言で拘束を解いてくれた彼は「大人げなかったね」と、額の汗を舐めてくれる。それが、えらく熱いと感じるほどだった。

「いえ……燃えちゃいましたね」
「うん」

 お風呂入りましょうか。

 一度だけ彼は抱き締めてくれた。
 気遣いだったのかもしれない、抱き起こしてくれたけれど少し、貧血だった。

 そんな不調よりも、不完全燃焼だったのが心残りだ。
 あぁでも……毎回そうなんだよな、焦らされるのはいいんだけどと、賢者タイムも混ざってくる。

 少し余った時間には、こっそり水と鎮痛剤を飲んだ。
 痛くなったら即効く、副作用や依存度もあまりない顆粒。

 話もした。今日は夕方から役員会議なんだそうだ。

 120分足舐め社長、終了。

 時間になったら「ではまた」と、名残は惜しい気もしたが、それよりも戻りたかった。

 頭痛の原因は寝不足と疲労だろうか。ただ、眠れる場所もあるしそう……会いたくなる、皮肉にも、こんなときに。

 暴言のような優しさが良い。
 それが一番矛盾もなく、感性にぴたっと合致し心を摩擦していくのだ。あの、排他的な感触が恋しくなる。

 多分、桜木はわかっていた。

 だから行く前に太股なんかを撫で神経を逆撫でてきたのだ。
 ささくれをぴっと剥くような物。血が滲んで暫くその感触が残るような。

 高級ホテルの門を出た。
 すぐ側に軽バンは停まっていたが、流石に外でタバコは吸わなかったようだ。

 ならばと勝手に後部座席へ乗り込んだ。

 桜木はちらっと自分を見て「お疲れ」といつも通り感情もなく言い、車を走らせタバコを咥えた。

「…次ある?」
「聞くなよ。いまんとこ水曜日だけど」

 …随分空くな。

「足舐め社長、どうだった?」
「いつも通り…」

 いや。
 縛られたな。

 どうせと気にしなかったけど、大丈夫だろうかと今更手首を確認した。
 やはり、やんわりだったから大した痕にはなってない。が、少しは残っている。
 しかしこれは多分、自分が知らず知らずに入れた力のせいだ。

「お前、女ならピンサロ芸だよなそれ」

 スルーしよ。

「今日は終わり?」
「今んとこ終わり。なぁ、どうなんだ」
「……は?」
「…水曜日までに誰か取れそうか?」

 珍しいことを聞く。
 しかも、なんだか真剣な声色で。

 「なんで?」と聞き返せばにやけ、「溜まんだろそれ」といつも通りな軽口なのに。

 何故だか煽られるような……。
 いや、何かが引っ掛かる。これは勘だ。はぐらかされたというか、変な感じで。

「…どうせ変態まわされんだから一見でしょ、わかんないよ」
「そうじゃなくて。太客営業掛けたかって」
「なんで」
「別に…」
「なら抱け。早く」

 少し沈黙した桜木だが、すぐに「そりゃさっきから探してるよ」とつんけんに返してきた。

「何?そうじゃないの?なんか」
「さあね。水曜日としかオーナーに言われてねぇよ。誰とどこで何時かとも」
「……え?」
「転職なんじゃねーの?お前」
「…ちょっと待って、」

 聞いていない。
 理由は確かにたくさんある、からそれはかなり有り得そうだが。

「…五反田さんも笹塚さんもどうすんの」
「知らねぇし、知らねぇよ」

 また会うと思っていたのだけれど。
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