雨はやむ、またしばし

二色燕𠀋

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 返事も待ちきれない、とばかりにアカリは、しかし思ったよりもガツッと一気にそれを挿入したので驚いた。
 瞬間には「はぁぁっ…、」と切ない声を上げる。

 そのままゆっくり抜き刺ししているそれに、辻元も自分がかなり息を上げていることに気が付いた。

「……どぅです……?」
「…うん、」

 何故だ。
 妻のあれはかなりそう……下品だと感じたというのに。

 はぁ、はぁ、と次第には苦しそうに顔を歪めながら……股間ではなくケロイドを何度か爪で掻くように触り自慰に勤しむアカリを見て、自然と自分でも抜き始めていた。

 凄い…。
 何気に他人が勃起していくのなんて、間近で、生で見るのなんて人生初だ。

 しかしどうも、熱く歪めた薄目でそれを見たアカリが「辻元さん、」と切な気な声をあげ、

「…してあげる、」

 と言ったかと思いきや、体勢を変え、自分の手に収まっていた股間を咥えてきたのだった。

 熱かった。
 そして、結合部が見えた。

 彼はまるで腹を押えている。
 なんだ、なんだろうと思っているうちに股間は容赦なく吸われ、「あっ、」と言う間に鮮やかな快感、射精に至ってしまった。

 はぁ、と頭が真っ白で呆けているうちに、アカリは素早くティッシュを用意し股間を拭ってくれた。

 ディルドはいつの間にか抜いたらしかった。

「……はぁ、」
「…お疲れ様です」

 少しだけ手に付着してしまった精子を舐め取りながら「気付きました?」と言う彼は至って普通に戻っていて。

 射精した様子もない。
 のに、通常にもたげている。

 ……神は射精すらしないのか……。

「…んぇ?」
「裏スジ。の、上あたりとか。
 下から上にいく方が気持ちいいんですよ?」
「…あぁ…そうなの…」

 綺麗にしてくれながら「お風呂入りましょうか」とまた言ってきた。

「それで丁度良いかな、時間。
 よかったです。本当にイカせてあげられなかったらどうしようかなって思いましたから」
「…うん…」
「全然枯れてませんでしたよ。まだまだ大丈夫です、辻元さん」

 本当に嬉しそうにアカリが笑うので「ははは…」と、脱力しながらも満たされた気がした。

 再び風呂に入りながら、「実はね、」と、いつの間にか最近の事情を話すことまで出来た。
 それだけで結構、満足。

 人生初、売り専90分コースオプション付き。

「これ…」

 辻元は最後にアカリへ、あの2000円札を返した。

「え?」
「まぁ、楽しかった。ありがとうアカリくん」

 アカリは戸惑いつつも少し、眉を寄せ切なそうに「辻元さんって、真面目ですよね」と受け取ってくれた。

「奥さんと仲良くしてくださいね」
「あの…」
「じゃ、さようなら」

 彼はそう言って扉を閉めてしまった。
 まるで、最後の物言い。

 …同じシャンプーの残り香。

 もしかすると。
 あの2000円札を返してしまったからかもしれない。チップ、いや、お布施のつもりだったんだけども。

「………」

 …多分、お導きだったのだ。

 辻元は暫く、チカチカするホテルの部屋で、放心していた。
 あと一本のビールは飲んだ。
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