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一
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だが、お構いなしに「では」と言ったアカリはなんの前触れもなくしゃがみ込み、急に股間をはむっと咥えたのだった。
「なっ!」
現実に引き戻った。
マジか観世音菩薩。でもそういえばそうだった。
「ちょ、大丈夫だよ、大丈夫なんだよ!」
何故自分は弁明をしているのかわからないが、「いひゃでふは?」と何を喋っているのかモゴモゴするそれがかなりもどかしく、「待って、待ってぇっ!」と情けない声をあげてしまった。
ただ淡々とそれを弄ぶ口が温く滑っていて、そして…不思議だ。何がどうかはわからない、なんせ妻もあまりしないから。
体験したことのある同じ行為よりも遥かに気持ちよく、よもや泣きそうな勢いだった。
何より、いまは断然「非現実」的だ。社長も社長も宮下も妻も息子もいない世界…。
南無…死にそう。
ヤバイのかも、これで死ぬのかもしれない、足が宙に浮きそうだと辻元が自覚をし始めた頃、アカリがふとそれを離して見上げてくる。
薄らと微笑んだ彼は「ベッド行きましょうか」と誘ってきた。
あれ、あんなに気持ちよかったくせに自分のそれが下を向いている。
何故だ、菩薩。幻だったのか?
俺、実は死んでいたりして。
「あ、うん…」と完全に従うのみとなったのだが、風呂から出てきっちり体を拭いて早々に、彼は然して何を気にした様子もなく、徐にあのスポーツバッグを開けた。
中からは、超ポピュラーで見慣れた(しかし手にしたことがない)マッサージ機が平然と出てきてしまった。
菩薩と電マ。
シュールすぎてぽかんとしてしまう。
更に彼はなんだか色々漁り、ポイポイとベッドに投げては「どうしましょう?」と聞いてくる。
「はい、」
「僕流で、良いんでしょうか…?」
声が少し弱い。
「え」
「いや…どうしたら楽しいんだろうかと…止めますか?」
「いや、止めない…」
「そうですか…。
あの、参考にと仰っていたのですが、例えば僕が辻元さんのにですね、気持ちいい場所とかに当て」
「いや、」
やはり恐れ多い。
だが、ここまでくると背徳感を味わいたくなっても、いる。
「あ、怖いですかねこれ」
「いや、良いんだ、見せてくれたら。アカリくんが気持ちいい感じで…」
「そうですか…では、見やすい位置にどうぞ」
アカリは更にもうひとつ、とてもポピュラーなピンクの棒を取り出しポイっとベッドに投げて乗り、壁に寄り掛かり座る。
あ、そっか、あ、そうなのか?と辻元は取り敢えずどうしようかと思ったが、彼が道具にコンドームを被せているのが新鮮だった。
なんというかジャンク感。菩薩が食べる物を知らないが…どうやらポテチも食うらしい。
まるで手が届く位置にある不思議。
足を広げかなり露になっているのがどうしようもなく、アダルトだった。
「では…」
彼はまず、手にローションを滴して温め、特に臨戦態勢でもないご自身のペニスを、やはり丁寧さを感じる手付きで緩く握り、特別変わりもなく普通にゆっくりとしごき始めた。
右手の人差し指に小さな黒子があるのを発見。
動作はゆっくりで、なんだか焦れったい。
本当にそれで…と思っているうちに少しずつ徐々に反応を示し始めた。
身体の仕組みがわかるから、相手がどんな状況なのか、心境までわかる気がする。例え、何を考えているのかは読めなくても。
これは…不思議な感覚だ。
彼は目を瞑る。かさっと音がしそうなくらい、睫も長いのかと気付く。
次に開眼すると、アカリは自分の股間を眺めて動きを止め、例の電マのスイッチを入れた。
…急な機械音。
うわっ、怖ぇ。
大丈夫なのかと声を掛けようとしたが、少し熱めの息と一緒に「自分流でごめんなさいね」と、アカリは何故か自分に断りを入れてきて。
少し、壁から離れた。
ガッツリ穴まで見せてくれている。
これは非現実なのか現実なのか。
凄い、なんなんだこの現象はと辻元が圧倒されているうちに、彼は一度何か、ほとんど空気の声を漏らす。
そして、あの黒子がある指でその穴をゆっくりと触り始めた。
電マはゆったりと、棒だの袋だのを揺らしている。
…どうなんだ、これは弱めなんだろうか。
はぁ、と、一気にアカリの声の温度が変わった。
時が止まったようなその衝撃映像に、よもや下からぐっと熱が込み上げてくる、それは沸々と弱火から中火になるように。
「…アカリくん」
特に返事はない。
ただ、視線が熱かった。
息を呑みそうになったが「大変じゃない?」と、思ったより優しく声を掛けてあげることが出来た、けど。
「別に…」
返事は、彼が今日ここに来て一番、かなり素っ気ないものだった。
「何か…」と提案しようというときに、はぁはぁと息が上がったまま、「しますか?」と聞いて来るのに生唾を飲む思い。
自分でした方が良いこともありますよね。
こんな時にそんな言葉が浮かんでくる。
辻元が出遅れていると、彼は指を抜き、電マもそのまま放り、次にはディルドのスイッチを入れていた。
「…入れるの…?」
はぁ、はぁとしながら「入れますか?」と聞き返してくる。
いや、それはやっぱり怖いし、何より若干変な扉を開けそう…。
「なっ!」
現実に引き戻った。
マジか観世音菩薩。でもそういえばそうだった。
「ちょ、大丈夫だよ、大丈夫なんだよ!」
何故自分は弁明をしているのかわからないが、「いひゃでふは?」と何を喋っているのかモゴモゴするそれがかなりもどかしく、「待って、待ってぇっ!」と情けない声をあげてしまった。
ただ淡々とそれを弄ぶ口が温く滑っていて、そして…不思議だ。何がどうかはわからない、なんせ妻もあまりしないから。
体験したことのある同じ行為よりも遥かに気持ちよく、よもや泣きそうな勢いだった。
何より、いまは断然「非現実」的だ。社長も社長も宮下も妻も息子もいない世界…。
南無…死にそう。
ヤバイのかも、これで死ぬのかもしれない、足が宙に浮きそうだと辻元が自覚をし始めた頃、アカリがふとそれを離して見上げてくる。
薄らと微笑んだ彼は「ベッド行きましょうか」と誘ってきた。
あれ、あんなに気持ちよかったくせに自分のそれが下を向いている。
何故だ、菩薩。幻だったのか?
俺、実は死んでいたりして。
「あ、うん…」と完全に従うのみとなったのだが、風呂から出てきっちり体を拭いて早々に、彼は然して何を気にした様子もなく、徐にあのスポーツバッグを開けた。
中からは、超ポピュラーで見慣れた(しかし手にしたことがない)マッサージ機が平然と出てきてしまった。
菩薩と電マ。
シュールすぎてぽかんとしてしまう。
更に彼はなんだか色々漁り、ポイポイとベッドに投げては「どうしましょう?」と聞いてくる。
「はい、」
「僕流で、良いんでしょうか…?」
声が少し弱い。
「え」
「いや…どうしたら楽しいんだろうかと…止めますか?」
「いや、止めない…」
「そうですか…。
あの、参考にと仰っていたのですが、例えば僕が辻元さんのにですね、気持ちいい場所とかに当て」
「いや、」
やはり恐れ多い。
だが、ここまでくると背徳感を味わいたくなっても、いる。
「あ、怖いですかねこれ」
「いや、良いんだ、見せてくれたら。アカリくんが気持ちいい感じで…」
「そうですか…では、見やすい位置にどうぞ」
アカリは更にもうひとつ、とてもポピュラーなピンクの棒を取り出しポイっとベッドに投げて乗り、壁に寄り掛かり座る。
あ、そっか、あ、そうなのか?と辻元は取り敢えずどうしようかと思ったが、彼が道具にコンドームを被せているのが新鮮だった。
なんというかジャンク感。菩薩が食べる物を知らないが…どうやらポテチも食うらしい。
まるで手が届く位置にある不思議。
足を広げかなり露になっているのがどうしようもなく、アダルトだった。
「では…」
彼はまず、手にローションを滴して温め、特に臨戦態勢でもないご自身のペニスを、やはり丁寧さを感じる手付きで緩く握り、特別変わりもなく普通にゆっくりとしごき始めた。
右手の人差し指に小さな黒子があるのを発見。
動作はゆっくりで、なんだか焦れったい。
本当にそれで…と思っているうちに少しずつ徐々に反応を示し始めた。
身体の仕組みがわかるから、相手がどんな状況なのか、心境までわかる気がする。例え、何を考えているのかは読めなくても。
これは…不思議な感覚だ。
彼は目を瞑る。かさっと音がしそうなくらい、睫も長いのかと気付く。
次に開眼すると、アカリは自分の股間を眺めて動きを止め、例の電マのスイッチを入れた。
…急な機械音。
うわっ、怖ぇ。
大丈夫なのかと声を掛けようとしたが、少し熱めの息と一緒に「自分流でごめんなさいね」と、アカリは何故か自分に断りを入れてきて。
少し、壁から離れた。
ガッツリ穴まで見せてくれている。
これは非現実なのか現実なのか。
凄い、なんなんだこの現象はと辻元が圧倒されているうちに、彼は一度何か、ほとんど空気の声を漏らす。
そして、あの黒子がある指でその穴をゆっくりと触り始めた。
電マはゆったりと、棒だの袋だのを揺らしている。
…どうなんだ、これは弱めなんだろうか。
はぁ、と、一気にアカリの声の温度が変わった。
時が止まったようなその衝撃映像に、よもや下からぐっと熱が込み上げてくる、それは沸々と弱火から中火になるように。
「…アカリくん」
特に返事はない。
ただ、視線が熱かった。
息を呑みそうになったが「大変じゃない?」と、思ったより優しく声を掛けてあげることが出来た、けど。
「別に…」
返事は、彼が今日ここに来て一番、かなり素っ気ないものだった。
「何か…」と提案しようというときに、はぁはぁと息が上がったまま、「しますか?」と聞いて来るのに生唾を飲む思い。
自分でした方が良いこともありますよね。
こんな時にそんな言葉が浮かんでくる。
辻元が出遅れていると、彼は指を抜き、電マもそのまま放り、次にはディルドのスイッチを入れていた。
「…入れるの…?」
はぁ、はぁとしながら「入れますか?」と聞き返してくる。
いや、それはやっぱり怖いし、何より若干変な扉を開けそう…。
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