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最悪だった。
結局、いざ妻の久しぶりの裸体は、肌艶もよく、それなりに妻も期待していたというのに。
勃たなかった。
いや、始めは絶対に勃起していた。
ただ、なんとなく妻の態度に違和感を感じてしまったというか、確かに慰めるように貪ってはくれたのだけど。それはそれは野獣のようで…。
こんなの、知らない。
自分の穴にぐちゃぐちゃ、ぐちゃぐちゃと恥ずかしげもなく指を入れたり擦ったりする妻を見て、そんなことは初めてで圧巻…圧倒されてしまったのだ。
それに先行作用してしまったのは息子の一言で、抱くことは到底かなわないものとなってしまい…。
「え…何よ」
しまいには、何故かこちらがドン引きをされふて寝をされてしまい、ただどうしようもなく自分で処理をした。
モヤモヤしてそれも満足しない。
そうか、そうだったのかと目を瞑り一週間。
特に変わることのない日常はあっさりと戻ってきた。
が、三日目に、はっと気付いたことがある。
「………」
会社の昼休み中。
春菊天蕎麦とスマホを交互にしてぼんやりと、自分はゲイ専門のデリヘルホームページを開いていた。
蕎麦を啜る、あぁ、何をしているんだかと、我ながら凝り固まり捏ねくり回し拗らせまくっているなと自覚した瞬間。
まずはスマホを伏せた。
まず、飯中に見る案件じゃない。
…社長はどうやらあの先週の金曜日も、クラッシィの五反田社長と遊びに行ったらしい。
それを聞いたのはいいが「どんな感じなんですか」と込み入って聞く勇気はなく、ただ「そうなんですね」と無難にしか返せなかった。
どういった店で遊んだのかというのすら全く聞けなかったのだが、五反田社長というだけでそう解釈してしまい、気付けば、そう。
自分には一切の未知数で、いやいや仕事始めの月曜日だぞと、何故かそわそわしてその日の検索は終わったのだが。
更に二日後、週の真ん中水曜日にはまたそのサイトを開いていた。
あまりに情報も少なく、なんとなくそのサイトページはどうやらお気に入り保存してしまっていたらしい。
曰く、所謂「ゲイ風俗」というのは大抵が一纏めに「売り専」と呼ばれると知った。
そしてそれらは、女性風俗の「ピンクサロン」「ソープランド」「デリバリーヘルス」等と細かくはわかれていないようだ。
全く何を選べばいいのか…。女性風俗だとよりぐるぐるしているだろう。全くわからない。
「売り専」は、どうやら女性風俗と違い……つまりは身体の構造上と言うべきか、そういった「本番」をする際、そもそもそういう場所を使わないので違法には当たらないらしい(女性でも、所謂肛門を使う際はそうらしい)という知識を得た。
全部インターネットの情報だ。
…妻は結構、頻繁にあの香水をつけているという、無駄なことにも気が付いてしまった。
息子はあれ以来、自分に何も言ってこなくなった。
恐ろしいほど、それがなんでもないこと、普通な日常であることに対し、少しだけ脱力感のようなものを感じなくもなかったが。
少し、本当に少しだけ。
どうでもいいような気がしてきたのも事実だった。
そしてそれは「そうか」と受け入れてしまえばもう、多分前からそうだったんだ、いつの間にか知らないうちに傷心の域はとっくに越えていたのだということすら知ってしまったのだ、これは自覚だ。
一体自分は何に対して何を守り何に期待し何をしようとしていた、いるのだろうか。
しかし、こう、そう、自棄に近い感傷をするのはいいのだが、物理的な問題も目についてくる。
いざとなるとかなり戸惑うのではないか、そしてそう…妻しか知らない自分がまさか、風の噂程度の物で、となってしまうと困るのではないか。
うじうじ検索ばかりして結局の七日目、また金曜日。
それは仕事の休憩中、わざわざ外へ出て昼飯を買ったついで、だった。
『はい、クラブオリオンでございますぅ~』
あぁあ、指が滑ったということにしたい。なんせ位置情報とかお店情報とかに近い位置にあるボタンだし!
「あっ。
す、すみません辻元と申しますが、」
『え?…あぁ、はい』
「あの…」
『ご利用でよろしいですか?』
「はいっ!はい!」
ああ、反射であるということに…。
『畏まりました。当店は初めてのご利用でお間違いはないですか?ホームページからいらしたという感じで?』
電話口の男の口調は砕けていた。
「はい…」
それから正直、何を話したかは真っ更だった。
聞かれたことに反射で答え、専門用語だらけの会話もざっくり説明をされてその瞬間瞬間は理解出来たのだと思う。
思ったより濃厚な話なんだろうが、何故か自然とポンポンと話は進んで行くもので。
『では、本日19時に…新橋からですと…こっちでホテルをお取りしましょうか?いくつか持ってるんで。
新橋で取れそうな場所はホテルトワイライトの308号室になりますが』
「ああぁ、はい、」
『畏まりました。90分コースで、アカリというのが伺いマス』
電話はあちらから切られた。
…完全にお任せしてしまった。
場所がどこだか…とマップ検索をするとどうやら、会社から歩きで行けそうな程の距離にある。
外装を見て、やってしまったと思った。
完全なるラブホテルだ。だがまだ、小さいし…と妻と息子の顔が浮かぶ。
…いやはや、うん、いやはや…流石にそういった行為はちょっとよくわからないしそうじゃなくて…えっと…。
しかし不思議なものだ。喉元過ぎればなんとやらなのかもしれない、少し……スッとしている自分がいるような気もした。
結局、いざ妻の久しぶりの裸体は、肌艶もよく、それなりに妻も期待していたというのに。
勃たなかった。
いや、始めは絶対に勃起していた。
ただ、なんとなく妻の態度に違和感を感じてしまったというか、確かに慰めるように貪ってはくれたのだけど。それはそれは野獣のようで…。
こんなの、知らない。
自分の穴にぐちゃぐちゃ、ぐちゃぐちゃと恥ずかしげもなく指を入れたり擦ったりする妻を見て、そんなことは初めてで圧巻…圧倒されてしまったのだ。
それに先行作用してしまったのは息子の一言で、抱くことは到底かなわないものとなってしまい…。
「え…何よ」
しまいには、何故かこちらがドン引きをされふて寝をされてしまい、ただどうしようもなく自分で処理をした。
モヤモヤしてそれも満足しない。
そうか、そうだったのかと目を瞑り一週間。
特に変わることのない日常はあっさりと戻ってきた。
が、三日目に、はっと気付いたことがある。
「………」
会社の昼休み中。
春菊天蕎麦とスマホを交互にしてぼんやりと、自分はゲイ専門のデリヘルホームページを開いていた。
蕎麦を啜る、あぁ、何をしているんだかと、我ながら凝り固まり捏ねくり回し拗らせまくっているなと自覚した瞬間。
まずはスマホを伏せた。
まず、飯中に見る案件じゃない。
…社長はどうやらあの先週の金曜日も、クラッシィの五反田社長と遊びに行ったらしい。
それを聞いたのはいいが「どんな感じなんですか」と込み入って聞く勇気はなく、ただ「そうなんですね」と無難にしか返せなかった。
どういった店で遊んだのかというのすら全く聞けなかったのだが、五反田社長というだけでそう解釈してしまい、気付けば、そう。
自分には一切の未知数で、いやいや仕事始めの月曜日だぞと、何故かそわそわしてその日の検索は終わったのだが。
更に二日後、週の真ん中水曜日にはまたそのサイトを開いていた。
あまりに情報も少なく、なんとなくそのサイトページはどうやらお気に入り保存してしまっていたらしい。
曰く、所謂「ゲイ風俗」というのは大抵が一纏めに「売り専」と呼ばれると知った。
そしてそれらは、女性風俗の「ピンクサロン」「ソープランド」「デリバリーヘルス」等と細かくはわかれていないようだ。
全く何を選べばいいのか…。女性風俗だとよりぐるぐるしているだろう。全くわからない。
「売り専」は、どうやら女性風俗と違い……つまりは身体の構造上と言うべきか、そういった「本番」をする際、そもそもそういう場所を使わないので違法には当たらないらしい(女性でも、所謂肛門を使う際はそうらしい)という知識を得た。
全部インターネットの情報だ。
…妻は結構、頻繁にあの香水をつけているという、無駄なことにも気が付いてしまった。
息子はあれ以来、自分に何も言ってこなくなった。
恐ろしいほど、それがなんでもないこと、普通な日常であることに対し、少しだけ脱力感のようなものを感じなくもなかったが。
少し、本当に少しだけ。
どうでもいいような気がしてきたのも事実だった。
そしてそれは「そうか」と受け入れてしまえばもう、多分前からそうだったんだ、いつの間にか知らないうちに傷心の域はとっくに越えていたのだということすら知ってしまったのだ、これは自覚だ。
一体自分は何に対して何を守り何に期待し何をしようとしていた、いるのだろうか。
しかし、こう、そう、自棄に近い感傷をするのはいいのだが、物理的な問題も目についてくる。
いざとなるとかなり戸惑うのではないか、そしてそう…妻しか知らない自分がまさか、風の噂程度の物で、となってしまうと困るのではないか。
うじうじ検索ばかりして結局の七日目、また金曜日。
それは仕事の休憩中、わざわざ外へ出て昼飯を買ったついで、だった。
『はい、クラブオリオンでございますぅ~』
あぁあ、指が滑ったということにしたい。なんせ位置情報とかお店情報とかに近い位置にあるボタンだし!
「あっ。
す、すみません辻元と申しますが、」
『え?…あぁ、はい』
「あの…」
『ご利用でよろしいですか?』
「はいっ!はい!」
ああ、反射であるということに…。
『畏まりました。当店は初めてのご利用でお間違いはないですか?ホームページからいらしたという感じで?』
電話口の男の口調は砕けていた。
「はい…」
それから正直、何を話したかは真っ更だった。
聞かれたことに反射で答え、専門用語だらけの会話もざっくり説明をされてその瞬間瞬間は理解出来たのだと思う。
思ったより濃厚な話なんだろうが、何故か自然とポンポンと話は進んで行くもので。
『では、本日19時に…新橋からですと…こっちでホテルをお取りしましょうか?いくつか持ってるんで。
新橋で取れそうな場所はホテルトワイライトの308号室になりますが』
「ああぁ、はい、」
『畏まりました。90分コースで、アカリというのが伺いマス』
電話はあちらから切られた。
…完全にお任せしてしまった。
場所がどこだか…とマップ検索をするとどうやら、会社から歩きで行けそうな程の距離にある。
外装を見て、やってしまったと思った。
完全なるラブホテルだ。だがまだ、小さいし…と妻と息子の顔が浮かぶ。
…いやはや、うん、いやはや…流石にそういった行為はちょっとよくわからないしそうじゃなくて…えっと…。
しかし不思議なものだ。喉元過ぎればなんとやらなのかもしれない、少し……スッとしている自分がいるような気もした。
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