10 / 16
Show So Panic
しおりを挟む
明日、風邪引こうから二年も経つことに幽体離脱したような気になった鳥籠の中、隅っこで膝を抱えてカーテンを開けることなんてない。
鳥籠から見た世界の陽射しはいつだって滑らかで、時に強く時に暗く時に辛いけれども世界は、思ったよりも優しいかもしれない。
なんでもいい、なんでもいいよと翼は折れ掛けていたのに少し遠退いた外に出ていこうとして落下した。もう登れない、登らなければここで息絶えるんだけど、落下速度に羽根は力がなかったんだ。
「大丈夫ですか、救急車呼びましょうね」
あぁ救急車ってなんだろうね。
世界は、世界は思ったよりも優しいかった。
「そうですね、貴方は飛べないですね。お薬あげましょうね」
延命処置より今日のご飯と水を摂取しなければならないけれどご飯は薬で水は雨だっていい。籠に帰ってきたなら死ななければいいんだよ。
世界は、思ったよりも優しい。
外は明るい、けれど動けない。静脈は流れが過剰で自意識ばかりが先を越してしまうけれど、摂取は早いから元気、凄く嬉しい楽しい。
風邪引かなくても意識は身体でぐるぐるしている。
鳥籠の鍵が見当たらないから、世界は、思ったよりも優しいかもしれない。
「そろそろ空も飛べそうですね」
意識は水に見えないプランクトンのようだから、それは魚に食べられるもので海と空の青は白点病の色。
「空を飛んで波に乗りましょう」
何を言ってるかいまいち耳鳴り。
浮いた他力本願と押し付けられたビニール袋をあぁ、間違えた。これはクラゲじゃなかったよ。
世界は、思ったよりも優しい。
『どうしても怖い。羽根は完全に治ってない、もう治らない、今まで通りになんて出来ない、それは明るくて眩暈もして自分が嫌になる、呼吸もわからない、どうしたらいい、それからは誰がどうしてどうなるの、もうあの空は絵画でしかない、浮くことすらぎこちないじゃないか』
「大丈夫です。そんな他の君にも緩やかな場所がある。怖がらないで、外はとても綺麗だから」
知った気になりやがって、世界は思ったよりも優しいかもしれない。
『外は綺麗だからもう具合が悪いんです』
「お前のようなやつはすぐ風邪を引くよな、都合良く歩けばいいのに」
君は至極全うなことを言っているよ、そう、外の排気ガスや光化学スモッグは見えないから本当はそんなことに炎症なんて起こらないんだ、世界は思ったよりも優しいかもしれない。
「いつか治るよ。若いウチにたくさん、たくさん楽しいことをするといいんだ」
世界は、思ったよりも優しいかもしれない。
「いまはゆっくり、ゆっくりでいいから早く外に出て泳いで見ようよ」
世界は、思ったよりも優しいかもしれない。
明日風邪引こう。日光に火傷して排気ガスに噎せる前に。
自意識過剰に自己防衛が意味を成すほどに自分を打ち殺すものすら当たらない。
明日風邪引こう。明日風邪引こう。明日風邪引こう。明日風邪引こう。明日風邪引こう。明日風邪引こう。明日風邪引こう。×104.2857142857142。
隅っこ、黒いカーテンの隙間から見える世界は、思ったよりも、優しいかもしれない。思ったよりも、優しい。思ったよりも、優しいかもしれない。思ったよりも優しい。思ったよりも優しいかもしれない。思ったよりも優しい。思ったよりも。×104.2857142857142。
「自分のためにもう少しだけ生きてみましょう」
知った口を聴くんじゃねぇよ優しいかもしれない。
いや、何がなんだか、わからないまま。
外は無色透明だから、誰でもない自分だって、空と一緒、水と一緒、幽霊と一緒で目に見えない。
鳥籠が空の青さに虚脱しそうで。
やっと。
世界は、思ったよりも優しい。
同じ温度で、摂氏37.4は皆に優しい。
鳥籠から見た世界の陽射しはいつだって滑らかで、時に強く時に暗く時に辛いけれども世界は、思ったよりも優しいかもしれない。
なんでもいい、なんでもいいよと翼は折れ掛けていたのに少し遠退いた外に出ていこうとして落下した。もう登れない、登らなければここで息絶えるんだけど、落下速度に羽根は力がなかったんだ。
「大丈夫ですか、救急車呼びましょうね」
あぁ救急車ってなんだろうね。
世界は、世界は思ったよりも優しいかった。
「そうですね、貴方は飛べないですね。お薬あげましょうね」
延命処置より今日のご飯と水を摂取しなければならないけれどご飯は薬で水は雨だっていい。籠に帰ってきたなら死ななければいいんだよ。
世界は、思ったよりも優しい。
外は明るい、けれど動けない。静脈は流れが過剰で自意識ばかりが先を越してしまうけれど、摂取は早いから元気、凄く嬉しい楽しい。
風邪引かなくても意識は身体でぐるぐるしている。
鳥籠の鍵が見当たらないから、世界は、思ったよりも優しいかもしれない。
「そろそろ空も飛べそうですね」
意識は水に見えないプランクトンのようだから、それは魚に食べられるもので海と空の青は白点病の色。
「空を飛んで波に乗りましょう」
何を言ってるかいまいち耳鳴り。
浮いた他力本願と押し付けられたビニール袋をあぁ、間違えた。これはクラゲじゃなかったよ。
世界は、思ったよりも優しい。
『どうしても怖い。羽根は完全に治ってない、もう治らない、今まで通りになんて出来ない、それは明るくて眩暈もして自分が嫌になる、呼吸もわからない、どうしたらいい、それからは誰がどうしてどうなるの、もうあの空は絵画でしかない、浮くことすらぎこちないじゃないか』
「大丈夫です。そんな他の君にも緩やかな場所がある。怖がらないで、外はとても綺麗だから」
知った気になりやがって、世界は思ったよりも優しいかもしれない。
『外は綺麗だからもう具合が悪いんです』
「お前のようなやつはすぐ風邪を引くよな、都合良く歩けばいいのに」
君は至極全うなことを言っているよ、そう、外の排気ガスや光化学スモッグは見えないから本当はそんなことに炎症なんて起こらないんだ、世界は思ったよりも優しいかもしれない。
「いつか治るよ。若いウチにたくさん、たくさん楽しいことをするといいんだ」
世界は、思ったよりも優しいかもしれない。
「いまはゆっくり、ゆっくりでいいから早く外に出て泳いで見ようよ」
世界は、思ったよりも優しいかもしれない。
明日風邪引こう。日光に火傷して排気ガスに噎せる前に。
自意識過剰に自己防衛が意味を成すほどに自分を打ち殺すものすら当たらない。
明日風邪引こう。明日風邪引こう。明日風邪引こう。明日風邪引こう。明日風邪引こう。明日風邪引こう。明日風邪引こう。×104.2857142857142。
隅っこ、黒いカーテンの隙間から見える世界は、思ったよりも、優しいかもしれない。思ったよりも、優しい。思ったよりも、優しいかもしれない。思ったよりも優しい。思ったよりも優しいかもしれない。思ったよりも優しい。思ったよりも。×104.2857142857142。
「自分のためにもう少しだけ生きてみましょう」
知った口を聴くんじゃねぇよ優しいかもしれない。
いや、何がなんだか、わからないまま。
外は無色透明だから、誰でもない自分だって、空と一緒、水と一緒、幽霊と一緒で目に見えない。
鳥籠が空の青さに虚脱しそうで。
やっと。
世界は、思ったよりも優しい。
同じ温度で、摂氏37.4は皆に優しい。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
麗しき未亡人
石田空
現代文学
地方都市の市議の秘書の仕事は慌ただしい。市議の秘書を務めている康隆は、市民の冠婚葬祭をチェックしてはいつも市議代行として出かけている。
そんな中、葬式に参加していて光恵と毎回出会うことに気付く……。
他サイトにも掲載しております。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる