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The 33rd episode

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 二人の唖然とした、驚愕、そんなものが目について祥真は倒れた。
 撃たれたのは左の脇腹だったらしい。どうやら内臓は逝っちまった。
 倒れて、逆流するように上った血反吐を吐き出せば、
そうかもうこれが最後の痛みかと、嗚咽が漏れそうに激痛。だが、最早どこが痛いのかわからない。痛いかも曖昧な気がしてきた。

「近付くなぁっ!」

 再びスライドを引いた箕原がまた寝転んだ祥真に銃口を向ける。見上げた先に見えた流星と潤が動けずにいるのがわかった。

「…俺がラットのおもちゃだとぉ、てめぇ、」

 箕原の口調は定かでない。
 下手に動けば誰を殺しにかかるか読めない状態だった。

「…箕原海、」
「お前は喋るなリトル・アサシン。
おいヤマシタなんだぁ?なんでこいつらが来たんだよ、」
「だっ、」

 存分に血反吐は出る。まだ生きているらしいと祥真は食い縛り、「これが表なんだよ…、」と弱々しく告げた。

「…きみ、はっ、俺たちはっ、
エレボスはっ、滅ぼされるためにぁるんだって、言ってんだよ、
君が成功したとしても、ラットはこの国を憎んでいる、から」
「なんだよ、聞こえねぇけど」
「結局殺人兵器なんか作ったって、っぃみないんだよ、ミノハラっ!」
「なにがだ、」
「頭悪ぃな、その技術は、海外にぅり飛ばされるしぃ、俺たちのような、怯えた子供も増える、世界なんて、そうやってぶっ壊れていくんだよ!」
「うるさい、弱いやつなんて死ねば良いんだ、土に還っちまえばいい」
「ぃのはらぁっ、」
「そうやって俺は育ってきたんだよ祥真!」
「それ以上話したらお前ホントに」
「ぃっ、流星!」

 救おうと動きだす流星に「こいつを殺すっつってんだよ、」と吠えるミノハラ。そちらには潤が銃を向けた。

 不謹慎だろうかと祥真は、それでもその最後の仲間を目にして心が安らぐような気がする、それすらも食い縛り、血反吐を吐く、血反吐すら出ない。

 もう体温なんて残っていない。涙すら出ないが、

「一成を忘れるなよ皆ぁ!」

泣きそう、苦しそうに濡れた声でそれだけを叫べば全員の動きを止める。箕原海は祥真の思惑通り、硬直したように、怯えたネズミのような目で「なにが、」と、噛むように言う。

余力はなかった。最後の神を殺しに行こう。

「…ははっ、バカっ、」

 苦しそうに、それでも子供のように祥真はミノハラに笑い、続けた。

「神を、殺しに行こうぜっ、
は、外すなよ、ぁと、3セン、チ、右だよっ」
「だからそんなのダメだって言ったじゃんか祥ちゃん!」

コンバットは置いた。
余力で、利き手じゃないが、手を降ろう、動いたらいい…。

 銃声がした。

 微かに上がった祥真の左腕は反動なのか、なんなのか、身体へ与えられた衝撃で落ちた。

 息を呑む間に「ふはははは!」と箕原海が狂ったように笑い、それから自分の蟀谷へ拳銃を押し付けた。

「神なんて端から信じてなかったよ、祥真、」

 撃った。
 そのまま箕原海は後ろに倒れた。チャペルもない、真っ更に瓦礫になったその教会で。

…漸く意味がわかったよ、樹実。

 まるで崩れるようにその場へ座りこんだ流星は、震える手でケータイを探しあて、反射的に掛ける、海の、向こう側へ。

 相手が応答したぶつっと言う音がして。

「…Hey Kelly.
……Sorry,
……Code Cerberus……、Syoma…、 Yamashita 、died in……Japan.」

 途切れ途切れに流星は電話口に話し、一息してから切ろうとすれば「Alright」と返事がする。間で相手の気持ちは痛いほど読み取れたのに、

「リュウセイ、
お前と、ジュンが看取ったん?」

微妙に鈍った日本語が聞き取れる。

 ただ一言、「はい、」と返し、今度こそ切ろうとしたけど、

「…おおきになぁ、」

悲しみが伝わってきた。

 電話を切って呆ける。
 座りこんだ流星の隣に座った潤は、泣きそうではあったが、何を考えているのかは読み取れない、綺麗な表情で二人を眺めていた。

最期くらいなぁ。

 流星が無言で潤に手を出せば、潤も黙って、洋モクパンドラからポールモールを探しあて、流星に一本渡した。

 二人で途方に暮れながら、黙ってそのまま火を、つけた。

 ただ、生きて欲しかった。その沈黙に煙が登った。
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