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The 32nd episode
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「あ、そうそう給料は誰になるの流星」
そこで潤が偉く現実的に切り込んできた。
確かに。
「え、わかんねぇわ。ケリーは?」
「あ、口座俺あるわ。まぁ潤ちゃんの分と分配するか」
「まぁいいや退職金、親父のコネであるし。
はい、本題本題」
そう言ってから祥真も「はいはい」と、左腕に掛けてあった鞄を促すよう。潤が自然な動作でその祥真の鞄からCD-RとUSBを取り出し、その鞄はそのまま膝の上に置かれたのだった。
急に場の空気が少し張る。これが謎のUSBか。
ずっと潤がこれを持っていた、それを言わなかったのは恐らくは「ヤバそうだな」と思ったのだろうが、CD-Rは果たしてなんだろう。
潤が不適、気が強そうにふっと笑って「興味あるだろ?」と煽る。
「さぁ、きっと15禁くらいだぞ。
熱海雨が謹慎食らった直後にお前の保護者が拳銃と預けた…確か俺が16の頃の代物だからな」
「俺のは軽く20禁は越えてるかな、多分ね」
…海軍訓練所立て籠り事件の発端と言うことか。
確かあの事件、軍隊データを全て雨さんがすっ飛ばし、半分以上復旧が困難になったんだ。しかし…
「祥真のは、」
「俺が二階級特進する直前の、主に警察組織系のデータだね」
なるほど。
「なかなか刺激のありそうなもんじゃねぇか危ない一般市民」
なかなか政宗がマジな、獲物を狙う猛獣のような目で不適に笑ってそう言った。
「まぁ中身はまだ見てねぇけど、俺が持ってきたもんだよ?刺激強すぎて逝っちまうなよ先輩」
「ガキの見るアダルトなんかでイかねえように自制しなきゃな」
「流星は?多分見たら君、ラットのところにはいれないかもよ?」
「もうほぼいねぇし、まぁカジノで大金ぶちこんだくらいの気概でいるわ。お宅のキャットから黄燐入りのワインを注がれたと思えばいいよ」
祥真が「ははっ、」と笑い、「そう来なくちゃね」と言った。
心臓戦闘体制。何が飛び出すのか、正直見当がつかない。
潤がパソコンを起動させる。
「じゃぁ、なんとなくスパークリングだろう俺のやつから行こうか…」
祥真が言うと潤はCD-Rをパソコンに入れ、一息吐いてから「Bog Data」と名付けられたファイルを開いた。
データを開けるのにまずは凍結を解除しても鍵が掛かっている。それに祥真は左手で、少しは慣れないような、そんな手つきでパスワードを入れて開いた。
それは恐らく祥真が書いたのだろう、英語とフランス語が入り交じって書かれた“報告書”、何枚目か、10枚目くらいだろうか。がっつり警視庁、警察庁、またそれら組織に関わりのある政治家の“汚職名簿”のようなもの、
汚職の本人達が残したのだろう怪しい経理の後や文書があった。
ざっと、
警察庁長官 浅瀬辰夫
警察庁警視監大学校長 水戸典之
警察庁警視監局長 清水大貴
警察庁警視長管区警察局部長 泉佑介
警察庁警視長管区警察学校長 有田洋臣
警察庁警視長教授 水戸部洋治
警視庁長官(警視総監) 速水秀次郎
警視庁部長 宇陀川昌利
警視庁警視長 水嶌稔夫
警視庁参事官 川田碩
「本物かこれ」
纏められた名前に政宗が半信半疑で祥真に聞いた。
確かに相当刺激的だった。
「Bog Data」の中の「drag list」というフォルダ。警察庁のほぼ政治家と変わらないくらいの重役から警視庁の重役まで、いるわけで。警察学校関連の、俺らの教官だった「有田洋臣」もいる。というか警察学校の黒さときたら、ない。
先日暗殺された速水はもちろん、警察庁長官、いわば警察のトップの名前があることに最早真実味が遠退くようだが、
祥真が書いている言語ごちゃ混ぜ調書を解読してみれば、一人一人何があったかは書いてある。資金流用、不透明な返信、受信の履歴、無駄金使いや無駄接待、空白の勤務時間、不透明な調書など。
「これは最初の方の書類に一行でも名前が出た者を書き出したまでです。それには本気で黒い、堂々としたやりとりもあれば、不鮮明な書類のやり取りもある。それらにドラッグを臭わせる記述やらなにやら。書類が消えていた痕跡、よくわからない関連性がありそうな捜査まで、洗いざらいですね。
俺が注目したのは警察学校関連です。これはつまり元軍隊の人物もいる。
校長や教授なんて、確か…空軍や海軍出身者だ。軍隊と言うことは国が絡んでくる。
という考察までしか俺は行き着かなかった」
つまり祥真はある程度見限り、
結果に対して自分のエゴしかり、生き方しかり、何を自分が信じてきたのかと…揺らいだのか。だからあんなことをした。
そう考えたら少し、いたたまれないような同情が沸く気がした。
なら、果たして樹実はどうだったのだろう。
プライド。
そんな小さな言葉ではない。その虚無感を手にしたとき、俺だって、もしかするとそれくらいしてしまうかもしれない。だが、こんな日本警察ごときで揺らぐ祥真ではないと考えると、少しゾッとする気がする。
俺が殺してきた、失ってきた、悔やんできたものはそんなもので、それは祥真も大差ないのだから。
これが全貌に近い場所だったとしたら。宗教団体、日本警察、政府、そして生まれた俺たちへ。
あのスチェッキン・マシンピストルの神父はどうしてあれを見せたのだろう。
勝手ながらそれはケリーが、それでも人の親としてやってきたからなのだろうか、俺の父だと言う彼の秘書、そして父になった高田創太の相棒だった男のお陰なのだろうか。
それは果たして救いなのか、地獄なのか。
そこで潤が偉く現実的に切り込んできた。
確かに。
「え、わかんねぇわ。ケリーは?」
「あ、口座俺あるわ。まぁ潤ちゃんの分と分配するか」
「まぁいいや退職金、親父のコネであるし。
はい、本題本題」
そう言ってから祥真も「はいはい」と、左腕に掛けてあった鞄を促すよう。潤が自然な動作でその祥真の鞄からCD-RとUSBを取り出し、その鞄はそのまま膝の上に置かれたのだった。
急に場の空気が少し張る。これが謎のUSBか。
ずっと潤がこれを持っていた、それを言わなかったのは恐らくは「ヤバそうだな」と思ったのだろうが、CD-Rは果たしてなんだろう。
潤が不適、気が強そうにふっと笑って「興味あるだろ?」と煽る。
「さぁ、きっと15禁くらいだぞ。
熱海雨が謹慎食らった直後にお前の保護者が拳銃と預けた…確か俺が16の頃の代物だからな」
「俺のは軽く20禁は越えてるかな、多分ね」
…海軍訓練所立て籠り事件の発端と言うことか。
確かあの事件、軍隊データを全て雨さんがすっ飛ばし、半分以上復旧が困難になったんだ。しかし…
「祥真のは、」
「俺が二階級特進する直前の、主に警察組織系のデータだね」
なるほど。
「なかなか刺激のありそうなもんじゃねぇか危ない一般市民」
なかなか政宗がマジな、獲物を狙う猛獣のような目で不適に笑ってそう言った。
「まぁ中身はまだ見てねぇけど、俺が持ってきたもんだよ?刺激強すぎて逝っちまうなよ先輩」
「ガキの見るアダルトなんかでイかねえように自制しなきゃな」
「流星は?多分見たら君、ラットのところにはいれないかもよ?」
「もうほぼいねぇし、まぁカジノで大金ぶちこんだくらいの気概でいるわ。お宅のキャットから黄燐入りのワインを注がれたと思えばいいよ」
祥真が「ははっ、」と笑い、「そう来なくちゃね」と言った。
心臓戦闘体制。何が飛び出すのか、正直見当がつかない。
潤がパソコンを起動させる。
「じゃぁ、なんとなくスパークリングだろう俺のやつから行こうか…」
祥真が言うと潤はCD-Rをパソコンに入れ、一息吐いてから「Bog Data」と名付けられたファイルを開いた。
データを開けるのにまずは凍結を解除しても鍵が掛かっている。それに祥真は左手で、少しは慣れないような、そんな手つきでパスワードを入れて開いた。
それは恐らく祥真が書いたのだろう、英語とフランス語が入り交じって書かれた“報告書”、何枚目か、10枚目くらいだろうか。がっつり警視庁、警察庁、またそれら組織に関わりのある政治家の“汚職名簿”のようなもの、
汚職の本人達が残したのだろう怪しい経理の後や文書があった。
ざっと、
警察庁長官 浅瀬辰夫
警察庁警視監大学校長 水戸典之
警察庁警視監局長 清水大貴
警察庁警視長管区警察局部長 泉佑介
警察庁警視長管区警察学校長 有田洋臣
警察庁警視長教授 水戸部洋治
警視庁長官(警視総監) 速水秀次郎
警視庁部長 宇陀川昌利
警視庁警視長 水嶌稔夫
警視庁参事官 川田碩
「本物かこれ」
纏められた名前に政宗が半信半疑で祥真に聞いた。
確かに相当刺激的だった。
「Bog Data」の中の「drag list」というフォルダ。警察庁のほぼ政治家と変わらないくらいの重役から警視庁の重役まで、いるわけで。警察学校関連の、俺らの教官だった「有田洋臣」もいる。というか警察学校の黒さときたら、ない。
先日暗殺された速水はもちろん、警察庁長官、いわば警察のトップの名前があることに最早真実味が遠退くようだが、
祥真が書いている言語ごちゃ混ぜ調書を解読してみれば、一人一人何があったかは書いてある。資金流用、不透明な返信、受信の履歴、無駄金使いや無駄接待、空白の勤務時間、不透明な調書など。
「これは最初の方の書類に一行でも名前が出た者を書き出したまでです。それには本気で黒い、堂々としたやりとりもあれば、不鮮明な書類のやり取りもある。それらにドラッグを臭わせる記述やらなにやら。書類が消えていた痕跡、よくわからない関連性がありそうな捜査まで、洗いざらいですね。
俺が注目したのは警察学校関連です。これはつまり元軍隊の人物もいる。
校長や教授なんて、確か…空軍や海軍出身者だ。軍隊と言うことは国が絡んでくる。
という考察までしか俺は行き着かなかった」
つまり祥真はある程度見限り、
結果に対して自分のエゴしかり、生き方しかり、何を自分が信じてきたのかと…揺らいだのか。だからあんなことをした。
そう考えたら少し、いたたまれないような同情が沸く気がした。
なら、果たして樹実はどうだったのだろう。
プライド。
そんな小さな言葉ではない。その虚無感を手にしたとき、俺だって、もしかするとそれくらいしてしまうかもしれない。だが、こんな日本警察ごときで揺らぐ祥真ではないと考えると、少しゾッとする気がする。
俺が殺してきた、失ってきた、悔やんできたものはそんなもので、それは祥真も大差ないのだから。
これが全貌に近い場所だったとしたら。宗教団体、日本警察、政府、そして生まれた俺たちへ。
あのスチェッキン・マシンピストルの神父はどうしてあれを見せたのだろう。
勝手ながらそれはケリーが、それでも人の親としてやってきたからなのだろうか、俺の父だと言う彼の秘書、そして父になった高田創太の相棒だった男のお陰なのだろうか。
それは果たして救いなのか、地獄なのか。
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