318 / 376
The 29th episode
6
しおりを挟む
「その…お前らはつまり…」
「あー、多分違いますよ荒川さん」
先に祥ちゃんは訂正する。
なんて説明したらいいか。取り敢えず、
「俺が祥ちゃんとセックスするわけないよね?わかるよねそれくらい」
「え゛っ」
図星はついたらしい。
だがより迷宮に入ったようだった。まぁそうだよね。俺の素行をわりと知ってるもんね。
「…この人は、たまたま、うーん、二年近く前の警察庁立て籠りの時に拾われたんだよ」
「は?拾われたぁ?」
「潤は破天荒なんで。飛び降りようとした俺の前で俺の共犯者に刺されに来たんです」
「えっ、なに!?」
「破天荒ってあんたが言うの?」
「まぁ、そうだね」
「いや待って色々わかんないんだけど」
ですよね~。
「えっと、取り敢えず二人はなんなの?」
「同居人ですね」
「これから死ぬまでだね」
そうさらっと言えば「潤…」と感極まったように祥ちゃんは言うので、
「一生もんにしちゃったからねぇ」
と告げれば「違う違う」と祥ちゃんは訂正した。
「多分それ一番誤解生むやつ」
あっ。
「俺、マジですげぇわかんないけど。お前なんてマジで嫁さんとか貰った方がいいよなって話してたんだよ、流星とこの前」
「嫁さんになりかけてますね。大丈夫です俺ストレートですから」
「言い方がすでにそちらの方ですけど」
「あと俺はヘタクソと言われた立場なんで」
あっ。
根に持ってるし何気に楽しんでるよこいつ。
「祥ちゃん全体的に根に持ってるね。政宗ー大丈夫俺マジでこいつとは死んでもないからー」
「いや、うん…」
まだまだ疑り深い目に祥ちゃんは告げた。
「俺もこんなバイセクシャルの、皆愛せます!な博愛クソ野郎は願い下げです。俺もう少し人は愛せない方なので」
この野郎。
「…祥ちゃんって案外嫌なやつだったんだね。なんなのマジで。いままでわりと鬱憤溜まってたんだね」
「当たり前じゃんこの温室め~。スラムの俺には妬ましくて、
君の純粋で、綺麗なその世界なんてホントに妬ましくて、どうしようかと思ってたよ」
優男が笑う。
…綺麗な世界か。
これで納得しただろうかと思って政宗を見れば「まぁ、」と、やっぱり納得したようで。
「わかんなくもねぇけどな。まぁよかったのか?山下」
曖昧に祥ちゃんは笑う。
ほっとしたように政宗は一度息をついたが、今度はまた殺伐とした態度で祥ちゃんの左肩を鷲掴んで言った。
「だが俺は一生てめえだけは許さねぇからな。二度と面ぁ見ることはねぇだろう。忘れるなよ、てめえは這いつくばって生きて地獄を見ろ」
怖かった。
だが止めなかった。
マジな雰囲気のまま政宗はその肩を離して出ていこうとしたが、祥ちゃんへの最後の一言は「305だ」と告げる。
「ユミルの病室。しばらく厄介になるそうだ。
じゃぁな潤。明日から二人欠員だからな」
政宗が去った背中に祥ちゃんは笑って「いい人だね」と言った。
「残酷なまでに」
「祥ちゃん、」
「行けるわけ…ないじゃん。ユミルは俺があそこへ、連れてったんだから」
ユミルは。
ホストクラブで見張りをしている最中に消えた。
祥ちゃんがそれから連れ出し、最後に手榴弾を持たせたそうだ。何かあったらこれを投げろ。それだけ告げて。
何故そんなことをしたのか。
「潤」
考えていたのは祥ちゃんも同じらしい。黒い、目が笑ってないような笑顔でいった。
「高田さんがヤバイ話はマジだよ。これは信じてくれる?」
どうしようか。
「まぁ、話によるかな」
「あそう。じゃ、一人言にしておくから」
「でも、多分流星も、あの人はどこか信用してないし、政宗なんかは喧嘩しかしないからね。
俺だって、信用してはいないよ」
雨さんは密葬だったが。
雨さんには、ちゃんと、高田さんの元には名前しか預けていなかったから葬式は出来た。だが樹実さんはどうなったか、そういえば知らない。流星とも、そんな話はしなかった。
「あー、多分違いますよ荒川さん」
先に祥ちゃんは訂正する。
なんて説明したらいいか。取り敢えず、
「俺が祥ちゃんとセックスするわけないよね?わかるよねそれくらい」
「え゛っ」
図星はついたらしい。
だがより迷宮に入ったようだった。まぁそうだよね。俺の素行をわりと知ってるもんね。
「…この人は、たまたま、うーん、二年近く前の警察庁立て籠りの時に拾われたんだよ」
「は?拾われたぁ?」
「潤は破天荒なんで。飛び降りようとした俺の前で俺の共犯者に刺されに来たんです」
「えっ、なに!?」
「破天荒ってあんたが言うの?」
「まぁ、そうだね」
「いや待って色々わかんないんだけど」
ですよね~。
「えっと、取り敢えず二人はなんなの?」
「同居人ですね」
「これから死ぬまでだね」
そうさらっと言えば「潤…」と感極まったように祥ちゃんは言うので、
「一生もんにしちゃったからねぇ」
と告げれば「違う違う」と祥ちゃんは訂正した。
「多分それ一番誤解生むやつ」
あっ。
「俺、マジですげぇわかんないけど。お前なんてマジで嫁さんとか貰った方がいいよなって話してたんだよ、流星とこの前」
「嫁さんになりかけてますね。大丈夫です俺ストレートですから」
「言い方がすでにそちらの方ですけど」
「あと俺はヘタクソと言われた立場なんで」
あっ。
根に持ってるし何気に楽しんでるよこいつ。
「祥ちゃん全体的に根に持ってるね。政宗ー大丈夫俺マジでこいつとは死んでもないからー」
「いや、うん…」
まだまだ疑り深い目に祥ちゃんは告げた。
「俺もこんなバイセクシャルの、皆愛せます!な博愛クソ野郎は願い下げです。俺もう少し人は愛せない方なので」
この野郎。
「…祥ちゃんって案外嫌なやつだったんだね。なんなのマジで。いままでわりと鬱憤溜まってたんだね」
「当たり前じゃんこの温室め~。スラムの俺には妬ましくて、
君の純粋で、綺麗なその世界なんてホントに妬ましくて、どうしようかと思ってたよ」
優男が笑う。
…綺麗な世界か。
これで納得しただろうかと思って政宗を見れば「まぁ、」と、やっぱり納得したようで。
「わかんなくもねぇけどな。まぁよかったのか?山下」
曖昧に祥ちゃんは笑う。
ほっとしたように政宗は一度息をついたが、今度はまた殺伐とした態度で祥ちゃんの左肩を鷲掴んで言った。
「だが俺は一生てめえだけは許さねぇからな。二度と面ぁ見ることはねぇだろう。忘れるなよ、てめえは這いつくばって生きて地獄を見ろ」
怖かった。
だが止めなかった。
マジな雰囲気のまま政宗はその肩を離して出ていこうとしたが、祥ちゃんへの最後の一言は「305だ」と告げる。
「ユミルの病室。しばらく厄介になるそうだ。
じゃぁな潤。明日から二人欠員だからな」
政宗が去った背中に祥ちゃんは笑って「いい人だね」と言った。
「残酷なまでに」
「祥ちゃん、」
「行けるわけ…ないじゃん。ユミルは俺があそこへ、連れてったんだから」
ユミルは。
ホストクラブで見張りをしている最中に消えた。
祥ちゃんがそれから連れ出し、最後に手榴弾を持たせたそうだ。何かあったらこれを投げろ。それだけ告げて。
何故そんなことをしたのか。
「潤」
考えていたのは祥ちゃんも同じらしい。黒い、目が笑ってないような笑顔でいった。
「高田さんがヤバイ話はマジだよ。これは信じてくれる?」
どうしようか。
「まぁ、話によるかな」
「あそう。じゃ、一人言にしておくから」
「でも、多分流星も、あの人はどこか信用してないし、政宗なんかは喧嘩しかしないからね。
俺だって、信用してはいないよ」
雨さんは密葬だったが。
雨さんには、ちゃんと、高田さんの元には名前しか預けていなかったから葬式は出来た。だが樹実さんはどうなったか、そういえば知らない。流星とも、そんな話はしなかった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
造花の開く頃に
有箱
現代文学
不安障で死にたがりで頑張り屋の青年、月裏(つくり)の元に、大好きな祖母から一通の手紙が届く。
それは月裏の従兄弟に当たる青年、譲葉(ゆずるは)を世話して欲しいとの内容だった。
そうして、感情の見えない美少年、譲葉との手探りの生活が始まった。
2016.12完結の作品です。
夫の親友〜西本匡臣の日記〜
ゆとり理
現代文学
誰にでももう一度会いたい人と思う人がいるだろう。
俺がもう一度会いたいと思うのは親友の妻だ。
そう気がついてから毎日親友の妻が頭の片隅で微笑んでいる気がする。
仕事も順調で金銭的にも困っていない、信頼できる部下もいる。
妻子にも恵まれているし、近隣住人もいい人たちだ。
傍から見たら絵に描いたような幸せな男なのだろう。
だが、俺は本当に幸せなのだろうか。
日記風のフィクションです。
オワッテル。
九重智
現代文学
YO、兄弟。俺はこれを読んでくれてるお前を「兄弟」って呼ぶぜ、何たってこんなリアルを語れる相手を兄弟以外に何て呼べばいいんだ? とにかく、俺は俺のリアルをここに描くよ、俺がいるのはきっとお前が行ったことのない日本の隅っこ、クソみたいな環境、でも夢はあるさ、小説家になるんだ、お前の夢は? 兄弟。
色づく景色に君がいた
松丹子
現代文学
あの頃の僕は、ただただ真面目に日々を過ごしていた。
それをつまらないと思っていたつもりも、味気なく思ったこともない。
だけど、君が僕の前に現れたとき、僕の世界は急激に色づいていった。
そして「大人」になった今、僕は彼と再会する。
*タグ確認推奨
関連作品(本作単体でもお楽しみ頂けます)
「明日のために、昨日にサヨナラ(goodbye,hello)」(妹・橘礼奈)
「キミがいてくれるなら(you are my hero)」(兄・橘悠人)
【第2部完結!】『突撃!門工サバゲー部2024 Vol2!~ウクライナを救った6人のミリオタの物語 Part2ウクライナ戦線編~』
あらお☆ひろ
現代文学
赤井翼先生が公開した「突撃!東大阪産業大学ヒーロー部!」の向こうを張って
『突撃!門工サバゲー部2024!~ウクライナを救った6人のミリオタの物語~』の第2部「ウクライナ戦線編」を公開します!
ロシア、ウクライナ戦を止めた6人の高校生の話です。
赤井翼先生のプロット&チャプター作品です。
廃部寸前の門真工科高校サバイバルゲーム部に入部した8代目「イタコ」を運命づけられている「三菱零」ちゃん(15歳)が5人の先輩たちと全国大会に出場し、決勝を前にして「ロシア軍 傭兵」としてウクライナ戦線に送り込まれてしまう話です。
「イタコ体質」の零ちゃんを中心に、レジェンド軍人の霊が次々出てきて門工サバゲー部を応援します!
「ミリオタ」でなくても全然読める「ゆるーい」青春小説ですので「ゆるーく」お付き合いください!
作品(パート2のウクライナ戦場編)のエンディングで描いたように「早くウクライナに平和が訪れること」を祈って公開させていただきます。
(。-人-。) 合掌!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる