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The 27th episode
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潤はそれ以上は何も言わなかった。
ただ、不機嫌そうにケータイを開いてその場で電話を掛ける。
長く感じる。なんとなく誰に掛けているかなんて明白で、不機嫌そうにタバコを揉み消してもう一本を咥えていた。
お暇した方がいいかと政宗は去ろうとするが、潤が案外気の強くも、純粋そうな目で強く訴えるように見たせいか、溜め息を吐いて政宗はタバコを咥えた。
潤のタバコが着火したタイミングで「あ、もひもし、」と言った。最初の一口を逃したらしい。火は消え、またつけ直していた。
吐き出してから「お前さ」と続ける。やはり、辻井のようだ。
「辞表とかどーゆーつもり。喧嘩売ってんの?…あ?
違ぇよバカ死ね。いや、死んだら困るなお前のせいでウチの部長の首が飛びそうなんだけど、あぁ?
バカじゃないのお前バレるに決まってんだろめんどくさい。
ほれ流星、辻井」
「えっ」
急なる振り。何、俺何を言えば良いんだよマジ。
しかし政宗が「貸せ」と言って潤に手を出したので潤は「は?」と言うが、
最早ゴリラはその、俺に向けられた潤のケータイを奪い去り、「もしもし」と応答していた。
「あぁ。俺だ。
違ぇよ詐欺じゃねえよ、荒川だ。
お前、なんでウチの案件追ってんだ。お前が手を出すことはないだろ。
ん?
原田?
あいつは仕方ねぇよ(笑)んなの今更じゃね?まぁ辞めた俺が言うのもなんだけど、お前わりと真面目にやって…」
急に真面目な顔をした政宗は「え…」と低く言う。
「機捜隊?なんで?」
政宗はちらっと潤を、わりと鋭い目で見る。しかし潤の、諦めたような憔悴したような、取り敢えず怯えた目を見て、どうやら溜め息は噛み殺したらしい。
「まぁ、そうだよな。
お前どこまで情報持ってる?え?
まぁウチの部長は「スパイ罪だ」とか言いそうだけどそれは置いといてだな。
まずその件は俺に連絡をくれ。
何よりそれを聞いたらより危険だな。お前何故そんなことしてんの?
え?」
また政宗は潤を見た。
しかし今度は「ぷはっ、」と吹き出す。
「ふ、…はははは!なんだそれ。ウケるわ~!こいつだがなぁ、相当アホだし性格壊滅してるからな!」
それには潤が「間違いなく俺の悪口だ…」と呟く。
「まぁ冗談は置いといてぶちょーに変わるわ。あ、ウチのぶちょーな。下手すりゃウチから人件をそっちに裂くかもわからんから。どーせお前くらいへっぽこには無理だから。
はい流星」
「え、」
再びケータイは、今度は政宗から俺に来る。
「…もしもし」
若干の警戒心のお陰で声が低くなった。
『あ、部長さん?
どうもー、辻』
「スパイ罪だ」
言ってみた。
シーンとしちゃった。大変。ガチっぽく声低いからかも。
「…冗談だよ。
で、政宗にした説明は?取り敢えず俺君のせいでお宅の部長から出勤早々に「辻井が死んだら辞職する」だの、「あんたも辞職するよな?」みたいな嫌~な圧力掛かってんだけど」
『うわっ、すみません。
いやぁ、まぁ…』
「なんとなくは察したけど。やっぱ疑問。なんでウチの案件勝手に追って辞めてんの」
『まぁ…。
ウチの部長に少し不信感も出てきちゃった、ってことにしてくれませんか』
「うーん。それだとウチの案件を一般市民が追う理由には弱いな」
『一般市民並みの私情ですよ。まぁ、やっぱ大学の件は納得いってないし。多分そこにいたら迷惑が掛かりますし』
「潤は関係あんの?」
『ないです』
妙な間が取られる。
ありそう感満載ですけど。
こちらも無言でいれば、『いや、』としどろもどろ。
『俺も気になってたんで。調べたらお宅らに色々結びついちまいました、みたいな…』
「ふうん」
『マジです。マジマジ』
「まぁいいけど。
勝手にやれとは最早俺もいま言えなくなったからまぁ、うーん、君辞めたわけだし、手柄を貰いに化け物一人派遣するわ」
『は?』
「当たり前だろ。ウチにはお前より優秀なモグリがいるんだよ。まぁ仲良くやってくれれば死なずに帰ってこれんだろ。
一見トリッキーだけどな。根はいいやつだから」
「マジで言ってんの流星」
「あ?当たり前だろ。お前なんて宛にならないし。余ってんだからユミルでえーわ。
あ、前髪。お前頑張れよ。あいつマジで人の話聞かないが単純だから、『突入の為に張り込む』って言っとくわ。実態わかったら突入前にうまく言って一回案件をウチに持ってこい。ついでに辞表取り下げにな。以上」
切った。
ただ、不機嫌そうにケータイを開いてその場で電話を掛ける。
長く感じる。なんとなく誰に掛けているかなんて明白で、不機嫌そうにタバコを揉み消してもう一本を咥えていた。
お暇した方がいいかと政宗は去ろうとするが、潤が案外気の強くも、純粋そうな目で強く訴えるように見たせいか、溜め息を吐いて政宗はタバコを咥えた。
潤のタバコが着火したタイミングで「あ、もひもし、」と言った。最初の一口を逃したらしい。火は消え、またつけ直していた。
吐き出してから「お前さ」と続ける。やはり、辻井のようだ。
「辞表とかどーゆーつもり。喧嘩売ってんの?…あ?
違ぇよバカ死ね。いや、死んだら困るなお前のせいでウチの部長の首が飛びそうなんだけど、あぁ?
バカじゃないのお前バレるに決まってんだろめんどくさい。
ほれ流星、辻井」
「えっ」
急なる振り。何、俺何を言えば良いんだよマジ。
しかし政宗が「貸せ」と言って潤に手を出したので潤は「は?」と言うが、
最早ゴリラはその、俺に向けられた潤のケータイを奪い去り、「もしもし」と応答していた。
「あぁ。俺だ。
違ぇよ詐欺じゃねえよ、荒川だ。
お前、なんでウチの案件追ってんだ。お前が手を出すことはないだろ。
ん?
原田?
あいつは仕方ねぇよ(笑)んなの今更じゃね?まぁ辞めた俺が言うのもなんだけど、お前わりと真面目にやって…」
急に真面目な顔をした政宗は「え…」と低く言う。
「機捜隊?なんで?」
政宗はちらっと潤を、わりと鋭い目で見る。しかし潤の、諦めたような憔悴したような、取り敢えず怯えた目を見て、どうやら溜め息は噛み殺したらしい。
「まぁ、そうだよな。
お前どこまで情報持ってる?え?
まぁウチの部長は「スパイ罪だ」とか言いそうだけどそれは置いといてだな。
まずその件は俺に連絡をくれ。
何よりそれを聞いたらより危険だな。お前何故そんなことしてんの?
え?」
また政宗は潤を見た。
しかし今度は「ぷはっ、」と吹き出す。
「ふ、…はははは!なんだそれ。ウケるわ~!こいつだがなぁ、相当アホだし性格壊滅してるからな!」
それには潤が「間違いなく俺の悪口だ…」と呟く。
「まぁ冗談は置いといてぶちょーに変わるわ。あ、ウチのぶちょーな。下手すりゃウチから人件をそっちに裂くかもわからんから。どーせお前くらいへっぽこには無理だから。
はい流星」
「え、」
再びケータイは、今度は政宗から俺に来る。
「…もしもし」
若干の警戒心のお陰で声が低くなった。
『あ、部長さん?
どうもー、辻』
「スパイ罪だ」
言ってみた。
シーンとしちゃった。大変。ガチっぽく声低いからかも。
「…冗談だよ。
で、政宗にした説明は?取り敢えず俺君のせいでお宅の部長から出勤早々に「辻井が死んだら辞職する」だの、「あんたも辞職するよな?」みたいな嫌~な圧力掛かってんだけど」
『うわっ、すみません。
いやぁ、まぁ…』
「なんとなくは察したけど。やっぱ疑問。なんでウチの案件勝手に追って辞めてんの」
『まぁ…。
ウチの部長に少し不信感も出てきちゃった、ってことにしてくれませんか』
「うーん。それだとウチの案件を一般市民が追う理由には弱いな」
『一般市民並みの私情ですよ。まぁ、やっぱ大学の件は納得いってないし。多分そこにいたら迷惑が掛かりますし』
「潤は関係あんの?」
『ないです』
妙な間が取られる。
ありそう感満載ですけど。
こちらも無言でいれば、『いや、』としどろもどろ。
『俺も気になってたんで。調べたらお宅らに色々結びついちまいました、みたいな…』
「ふうん」
『マジです。マジマジ』
「まぁいいけど。
勝手にやれとは最早俺もいま言えなくなったからまぁ、うーん、君辞めたわけだし、手柄を貰いに化け物一人派遣するわ」
『は?』
「当たり前だろ。ウチにはお前より優秀なモグリがいるんだよ。まぁ仲良くやってくれれば死なずに帰ってこれんだろ。
一見トリッキーだけどな。根はいいやつだから」
「マジで言ってんの流星」
「あ?当たり前だろ。お前なんて宛にならないし。余ってんだからユミルでえーわ。
あ、前髪。お前頑張れよ。あいつマジで人の話聞かないが単純だから、『突入の為に張り込む』って言っとくわ。実態わかったら突入前にうまく言って一回案件をウチに持ってこい。ついでに辞表取り下げにな。以上」
切った。
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