271 / 376
The 23rd episode
1
しおりを挟む
フリーライターの供述がデタラメ過ぎて、正直悩まされていた。
デタラメばかり言うくせに俺の事は知っている。これが非常に厄介で、正直相手にしようかしまいかここ数日悩んでいる。
「厄介だなぁ、全く」
潤をフリーライターの取り調べに投入したが、潤もどうやらそんな感じらしい。
「あいつ、本気でストーカー法の方がしっくりくんじゃね?うぜぇくらい中途半端に知ってやがるよマジうぜぇ」
「お前もか」
「てかお前がやれよぶちょー」
朝からこんな調子で正直うるさい。
「いや、ストーカーだったら流星じゃダメだろ潤。いやお前もダメか俺が行くべきか?」
政宗がかちゃかちゃ、若干のイラつきを見せながら提案をしてきた。
政宗はいま、年末の捜査中間報告書で手一杯らしい。そして後輩ながら知っている。この人はこーゆー作業が嫌いである。
「もーさぁ、あーゆーマスコミ人種はゴキブリのようだな。バルサン政宗頑張ってよマジで俺やだ」
「てかぁ、宇宙人どーしたよ流星」
そう。
こんな時に適任かと考えられる人種、ユミルが来ないのだ、今日部署に。
俺は今日、朝出勤して早々、奴に電話をする係だった。
「電話出たの?」
「出たぞ」
「なんで来ないの」
「なんなら録音したが聞くか潤」
それはそれは。
突発的だったにしてはよく録れた電話内容だった。
流石に政宗も「は?」と手を止め、潤はそわそわしながら「なんだよなんだよニヤケて、何があったんだよ」と興味深そうだったので。
「えー、部署にいる諸君、ユミルの対応に困っていますが、考えました」
そう俺が言えば、年末書類で殺伐とした皆のイライラや興味深さが一斉に視線となり俺に降り被った。
悪いな、ユミル。日本はお前のように自由に休んで良い訳じゃないのさ。
ケータイの音量をマックスにしてそれを流した。
『もしもし…特本部の壽美田だ』
はぁはぁ聞こえる男の吐息。衣擦れの音。聞かされる部署の皆の顔が騒然としたものとなる。
『あぁ、はぁ、あぅ、りゅ…せい?』
「ナニしてんのアイツ」
潤が呆れている。潤すら呆れている。
『…あの、始業時間5分前なんだが千種くん、君はいま』
ユミルの喘ぎ声が入るが録音された俺はめげずに『新宿区かい?』と聞いてみる。
『あ、違うの、りゅーぅ』
『だいぶ…あの、お前さぁ、』
『あぁっ、あの、さ、日本寒くて、外に出れないの、あん』
「流星お前果敢だなおい」政宗賞賛。全然嬉しくねぇ。
『は?』
『あぁ、だからぁん、休みまーす』
がちゃっ、ガタガタ(恐らくケータイが落ちた)。それから『あぁんブライアン』と聞かされ俺は電話を切ったのだった。
「だそうだ」
「なっ」
「だそうだ、じゃねぇよ部長!朝からなんなんだお前らぁぁ!」
「いや俺が聞きてぇよアイツ」
部署に少し、ふわっとした空気が流れた。しかし皆唖然ともしていて、最早触れていいのだろうか、な雰囲気が漂っていた。
「…というわけで彼は日本の寒さに喘ぎ苦しんでいるようなので、特別冬期休暇を与えたいのだがどうだろう」
皆顔を見合わせ、ついに諒斗が「いや、いいんすかそれぇ!」と言った。
「俺も部長なりに考えました。しかしこれから先彼に電話をし、冬を聞かされる誰かがいると考えると未成年もいるし、ヤツが生まれたお国柄仕方がないかと諦めムードです。俺は朝からこれを聞き大変気分を害している」
「その気持ち非常に飛び火してます流星さん」
まともなツッコミ伊緒。ありがとう、わかっているさ。
「伊緒が言う通りだと思う。反動で俺勃起しそうだわ」
潤の一言に女性陣、愛蘭と霞が俯いた。
女性への配慮を忘れたらしい、俺。そうだぞ、なんだかんだでウチ、女子いるやん。
てか。
「何故だよ潤、俺はこんなにムカついて仕方がないのに」
「いやほら俺バイセクシャルだから。ね」
「全然説得になってねぇよ、おい」
「…しかしそれ聞かされたら確かに冬期休暇を与えた方が…てか冬だけなのかブライアン」
「ブライアンは知らんが寒くて布団から出れねぇんじゃ仕方ないよなぁ、」
「わりかしマジでキレてるな流星。部長に従うわ俺フクブだし」
「またぶん投げたな先輩。
ユミルくんがまとめていた書類は全部監督官にまわしてあげてください皆様。
尚、温かい日に彼が出勤してきてハグを求めても毛嫌いしないでください、お国柄です。外国人と働くとはこう言うことです悪しからず」
言い切った。
最早潤には「お前のがユミルのストーカーやん」と言われるが気にしない。変態と働くとはこう言うことだ。
そんな訳で本日からユミルは冬期休暇という、日本の中学生の特権が与えられた。
さてストーカー。もう俺がストーカーなら気にしなくていいかと思い直したとき思い出した。
「やべ、そうだ。
鮫島んとこ行こうかと思ってたんだ」
「でけぇ一人言だなおい。なんで、」
「いやフリーストーカーが鮫島とちょっと繋がってそうでな。潤、お前引き続き頼んだ」
「労基で訴えんぞてめぇ」
「大丈夫、俺たちはいま厚労省にいる」
「私がいきましょう、流星さん」
向かいの端の席から慧さんが名乗り出た。
「最早私もあとは政宗さんと愛蘭さんと、司法解剖をまとめるだけなので」
「あ、マジすか」
慧さんはいつも通り爽やかスマイルで「マジす」と言った。
デタラメばかり言うくせに俺の事は知っている。これが非常に厄介で、正直相手にしようかしまいかここ数日悩んでいる。
「厄介だなぁ、全く」
潤をフリーライターの取り調べに投入したが、潤もどうやらそんな感じらしい。
「あいつ、本気でストーカー法の方がしっくりくんじゃね?うぜぇくらい中途半端に知ってやがるよマジうぜぇ」
「お前もか」
「てかお前がやれよぶちょー」
朝からこんな調子で正直うるさい。
「いや、ストーカーだったら流星じゃダメだろ潤。いやお前もダメか俺が行くべきか?」
政宗がかちゃかちゃ、若干のイラつきを見せながら提案をしてきた。
政宗はいま、年末の捜査中間報告書で手一杯らしい。そして後輩ながら知っている。この人はこーゆー作業が嫌いである。
「もーさぁ、あーゆーマスコミ人種はゴキブリのようだな。バルサン政宗頑張ってよマジで俺やだ」
「てかぁ、宇宙人どーしたよ流星」
そう。
こんな時に適任かと考えられる人種、ユミルが来ないのだ、今日部署に。
俺は今日、朝出勤して早々、奴に電話をする係だった。
「電話出たの?」
「出たぞ」
「なんで来ないの」
「なんなら録音したが聞くか潤」
それはそれは。
突発的だったにしてはよく録れた電話内容だった。
流石に政宗も「は?」と手を止め、潤はそわそわしながら「なんだよなんだよニヤケて、何があったんだよ」と興味深そうだったので。
「えー、部署にいる諸君、ユミルの対応に困っていますが、考えました」
そう俺が言えば、年末書類で殺伐とした皆のイライラや興味深さが一斉に視線となり俺に降り被った。
悪いな、ユミル。日本はお前のように自由に休んで良い訳じゃないのさ。
ケータイの音量をマックスにしてそれを流した。
『もしもし…特本部の壽美田だ』
はぁはぁ聞こえる男の吐息。衣擦れの音。聞かされる部署の皆の顔が騒然としたものとなる。
『あぁ、はぁ、あぅ、りゅ…せい?』
「ナニしてんのアイツ」
潤が呆れている。潤すら呆れている。
『…あの、始業時間5分前なんだが千種くん、君はいま』
ユミルの喘ぎ声が入るが録音された俺はめげずに『新宿区かい?』と聞いてみる。
『あ、違うの、りゅーぅ』
『だいぶ…あの、お前さぁ、』
『あぁっ、あの、さ、日本寒くて、外に出れないの、あん』
「流星お前果敢だなおい」政宗賞賛。全然嬉しくねぇ。
『は?』
『あぁ、だからぁん、休みまーす』
がちゃっ、ガタガタ(恐らくケータイが落ちた)。それから『あぁんブライアン』と聞かされ俺は電話を切ったのだった。
「だそうだ」
「なっ」
「だそうだ、じゃねぇよ部長!朝からなんなんだお前らぁぁ!」
「いや俺が聞きてぇよアイツ」
部署に少し、ふわっとした空気が流れた。しかし皆唖然ともしていて、最早触れていいのだろうか、な雰囲気が漂っていた。
「…というわけで彼は日本の寒さに喘ぎ苦しんでいるようなので、特別冬期休暇を与えたいのだがどうだろう」
皆顔を見合わせ、ついに諒斗が「いや、いいんすかそれぇ!」と言った。
「俺も部長なりに考えました。しかしこれから先彼に電話をし、冬を聞かされる誰かがいると考えると未成年もいるし、ヤツが生まれたお国柄仕方がないかと諦めムードです。俺は朝からこれを聞き大変気分を害している」
「その気持ち非常に飛び火してます流星さん」
まともなツッコミ伊緒。ありがとう、わかっているさ。
「伊緒が言う通りだと思う。反動で俺勃起しそうだわ」
潤の一言に女性陣、愛蘭と霞が俯いた。
女性への配慮を忘れたらしい、俺。そうだぞ、なんだかんだでウチ、女子いるやん。
てか。
「何故だよ潤、俺はこんなにムカついて仕方がないのに」
「いやほら俺バイセクシャルだから。ね」
「全然説得になってねぇよ、おい」
「…しかしそれ聞かされたら確かに冬期休暇を与えた方が…てか冬だけなのかブライアン」
「ブライアンは知らんが寒くて布団から出れねぇんじゃ仕方ないよなぁ、」
「わりかしマジでキレてるな流星。部長に従うわ俺フクブだし」
「またぶん投げたな先輩。
ユミルくんがまとめていた書類は全部監督官にまわしてあげてください皆様。
尚、温かい日に彼が出勤してきてハグを求めても毛嫌いしないでください、お国柄です。外国人と働くとはこう言うことです悪しからず」
言い切った。
最早潤には「お前のがユミルのストーカーやん」と言われるが気にしない。変態と働くとはこう言うことだ。
そんな訳で本日からユミルは冬期休暇という、日本の中学生の特権が与えられた。
さてストーカー。もう俺がストーカーなら気にしなくていいかと思い直したとき思い出した。
「やべ、そうだ。
鮫島んとこ行こうかと思ってたんだ」
「でけぇ一人言だなおい。なんで、」
「いやフリーストーカーが鮫島とちょっと繋がってそうでな。潤、お前引き続き頼んだ」
「労基で訴えんぞてめぇ」
「大丈夫、俺たちはいま厚労省にいる」
「私がいきましょう、流星さん」
向かいの端の席から慧さんが名乗り出た。
「最早私もあとは政宗さんと愛蘭さんと、司法解剖をまとめるだけなので」
「あ、マジすか」
慧さんはいつも通り爽やかスマイルで「マジす」と言った。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
天穹は青く
梅林 冬実
現代文学
母親の無理解と叔父の存在に翻弄され、ある日とうとう限界を迎えてしまう。
気付けば傍に幼い男の子がいて、その子は尋ねる。「どうしたの?」と。
普通に生きたい。それだけだった。頼れる人なんて、誰もいなくて。
不意に訪れた現実に戸惑いつつも、自分を見つめ返す。その先に見えるものとは。
そして、魔王は蘇った〜織田信長2030〜 目指すは日本復活と世界布武!?
俊也
ファンタジー
1534年、明智光秀の謀反により、天下一統の志半ばにして自害して果てたはずの織田信長。
しかし、信長は完全に死んではいなかった!
なんと2030年に生きる、ひ弱な高校2年生、黒田泰年の肉体に憑依していたのである。
21世紀においてすら、常識の斜め上をいく信長の言動は。学校社会にとどまらず、やがては日本社会を、そして世界をも揺るがすうねりと化していく…
売国政権により危機に瀕する日本を護るべく奮戦する信長。
押し寄せる敵の群れ、包囲網。
そして…魔王信長の妖しき魅力に惹かれる美しき戦士、現代の軍師たち。
しかしそれでも勝てない反日本、反信長勢力!?
魔王の真の恐怖が、世界を覆う!??
追記
申し訳ありません。
ジャンル的に当てはまるかわかりませんが
運営様も大賞に於いては、「それならそれで、それなりの評価の対象にする。」
と言うスタンスでご対応頂ければ幸いです。
途切れ気味になってしまっている
「新訳 零戦戦記」
お後大賞参戦中「総統戦記」
「拳の価値は」
ともども宜しくお願い致します。
作者Twitter。
https://twitter.com/TKingGhidorah 相互歓迎です!!
歌物語
天地之詞
現代文学
様々のことに際して詠める歌を纏めたるものに侍り。願はくば縦書きにて読み給ひたう侍り。感想を給はるればこれに勝る僥倖は有らずと侍り。御気に入り登録し給はるれば欣(よろこ)び侍らむ。俳句短歌を問はず気紛れに書きて侍り。なほ歴史的假名遣にて執筆し侍り。
宜しくばツヰッターをフォローし給へ
https://twitter.com/intent/follow?screen_name=ametutinokotoba
ルビコンを渡る
相良武有
現代文学
人生の重大な「決断」をテーマにした作品集。
人生には後戻りの出来ない覚悟や行動が在る。独立、転身、転生、再生、再出発などなど、それは将に人生の時の瞬なのである。
ルビコン川は古代ローマ時代にガリアとイタリアの境に在った川で、カエサルが法を犯してこの川を渡り、ローマに進軍した故事に由来している。
春秋館 <一話完結型 連続小説>
uta
現代文学
様々な人たちが今日も珈琲専門店『春秋館』を訪れます。
都会の片隅に佇むログハウス造りの珈琲専門店『春秋館』は、その名の通り「春」と「秋」しか営業しない不思議な店。
寡黙で涼しい瞳の青年店長と、憂いな瞳のアルバイトのピアノ弾きの少女が、訪れるお客様をもてなします。
物語が進む内に、閉ざされた青年の過去が明らかに、そして少女の心も夢と恋に揺れ動きます。
お客様との出逢いと別れを通し、生きる事の意味を知る彼らの三年半を優しくも激しく描いています。
100話完結で、完結後に青年と少女の出逢い編(番外編)も掲載予定です。
ほとんどが『春秋館』店内だけで完結する一話完結型ですが、全体の物語は繋がっていますので、ぜひ順番に読み進めて頂けましたら幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる