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The 22nd episode

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「別に」
「それで胃が痛くなったんじゃないんだ」
「うぜぇ」

しかしまぁ。

 前髪はヘラヘラしていながら少し俯いた。まぁ、俺や部署の連中に負い目を感じるのは仕方がない。その可能性が過ったんだろうか、仕方ねぇので

「別にお前のせいじゃないじゃん」

とは言ったが前髪は「はい?」と返してきた。
そのせいじゃなかったのね、あっそ。

「なんでもない」
「え、なにそれ」
「思い違いだった」
「あぁ、その件?
 その件なら互いさま」

うわうぜぇ。事実だけどうぜぇ。

「…お前絶対B型だろ」
「なんすかそれ。O型ですけど」
「…A型と合わないって聞いたことあるし」
「はぁ、昔流行りましたね。あんたとは多分なかなか誰も合わないでしょ」
「うわうぜぇ」

事実ですけどね、それもまた。

「てかあんたA型なんだ。いやわからなくもないけどほら、やっぱ当たんないってあれ」
「んな女子会話どーでもいいんですけど」
「あんたが振ったんじゃん。あんたってホントさ、」

 前髪はふと笑ってから俺の右肩を緩く抱くように掴んだ。

やっぱお前、ゲイだよな多分。普通やらない。流星と樹実さんと、それに毒された政宗以外やらない。あとユミル。あれ?

「可愛いな」
「やっぱりね!」

 言い切って前髪の手を払い落とし先を歩けば「は?」と、唖然としている前髪。振り向いて、

「俺お前タイプじゃない!」

再び言い切ってやった。
 一瞬ぽかんとした後に腹を抱えるように、堰を切って笑い始めた前髪に俺が唖然。

なに、今の若いの。
まぁ俺もその分類だけど、よくわかんねぇ。ツボわかんねぇ。

「は、は、あ、そう、タイプじゃないか!うん、その方が萌える」
「はぁ!?」
「仕事も恋愛も。つーかあんた性格が破綻してるが正直だね」
「よく言われる」

お前の方が俺よりだいぶ頭が大変だわ。前髪しかり。てか名前忘れたよ。

「つか元気じゃん」
「あ?うんそーだよ」

 厚労省の自動ドアを出てあの通路に行く。
 数人しか居なかった。そこには原田さん?マトリの部長がいて、俺たちを見かけては「なにしてんだ」と怪訝そうだった。
 急に前髪は俺の腰あたりを抱き、「細っ!」と言ってから、

「俺の恋人っすー」

部長にヘラヘラした。咄嗟に「死んじゃえてめぇ。違ぇわ前髪」と睨み付けた。

 原田さんは「はぁ…、」と呆然としていた。

「ども、確か星川さん…」
「…どうも」

 目を反らす。
 互いにまだ、気まずい立場だ。

「先程は大変そうで…」
「あぁ、いや別に」
「情報開示の令は聞きました。
 あの、壽美田さんどーしたんですか」
「あ、あぁ。
 さぁ。なんかストーカーに遭ったらしいですよ」

アホだから。

「はぁ…まぁ、優男ですからね」
「はぁ、そうですか」

 ポケットからタバコを出して一本抜いた。
 細い。くっそマジかよこの前髪野郎。
 仕方なくそれを吸えば「あ、俺のっすね」とか横から茶々が入るが無視をした。

てか。
この雰囲気、コミュ障の俺には辛いんすけど、マジで。

「…その、里中と若林の件ですが」

うわきたぁ。
最近触れないようにしてたやつ。

「…はい」
「あれから、まぁ我々がこう、やることになったんですが」
「…はぁ。まぁ今ウチの副部長が司法解剖立ち会いしてますけど」
「はい。
 その…まぁ、厄介事になってしまって申し訳ない」
「いや、別に…」

まぁあんたのせいだけど、それって立場だけじゃん。いままでフリーだった俺には全然わからんがまぁわかる。仕方ないじゃん。

「…別に俺偉くないんで言いますが、仕方ないんじゃね?とか思いますけど」
「はぁ…」
「却って俺らのが重罪だから謹慎で」
「里中の件は、正直あまり語らないで頂きたいんですよ」

は?

「最期死んだ瞬間を見たのはあんたら二人だ。何を語ったか、そんなのは今やわからない。見解としては犯人から撃たれて殉職と、してやりたい」
「あんた、本気で言ってんの?」
「俺だって不服だ。だが、これ以上我々はその観点以外で捜査なんて出来ない」
「何故、」
「潰されるからに決まってるでしょ」
「は、」

なにそれ。
あぁ、だからあんた。

「…政宗に言ったら?多分殴られるけど。
部下云々よか部長か。ふーん、マトリってもっと死を前にするちゃんとした組織だと俺夢見てたわ」
「…あんたはあの日のあの現場を知らないから」
「あんただってそうだろ」

俺が死ぬ気で守ったもんだって知らない。
政宗一人があそこに残ったのも、仕方ないな、こりゃ。

「俺や政宗が何を守ったかなんて」
「過去だろう、あんたらのそれは」

は?

「なんだって?」

 俺が原田さんを睨めば前髪が「ちょ、待った待った」と言うのに拍車が掛かってしまった。
 最短精神、最早タバコを灰皿付近に投げるも穴には当たり前ながら入らず、足元にまで転がってきたので靴で揉み消した。

「くだらねぇな全部。気分悪ぃ」

 帰ろうと背を向ければ呆れたような部長の溜息。

 しかし続く、「ちょっと待って星川さん」と言う前髪と肩を引かれる手。
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