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The 19th episode
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料理をしたら落ち着いた。豚汁うどん。
「すごいです!」
環も喜んでくれた。よかった。
夕飯を済ませてからは3人でテレビを観たりしてゆったりと過ごす。
久しぶりにメディアに触れた。ここ最近本当に“テレビ”は、俺の中で存在していなかった。
新鮮だが、やっぱりバラエティーとかドラマとか、メディアは一定だ。普段みんな、これを観るんだよなと思うと、なんだか、宙に浮くような気分。あまりにも俺の現実と掛け離れていて。
しかしたまに環が「ふふ」と笑うのを見て、ああそうかと感じた。
「さぁて、俺風呂入って寝ますね」
時刻は、夜のニュース番組がやるころ。
伊緒がやけに俺と環を凝視して言った。気付けば俺は自然と、環の肩を抱き寄せるようにしていたことに気が付いた。
あぁぁ…。
これ、樹実のクセだ。こんな時に出ちまうなんて。
「なんか…。
流星さんのリラックススタイルが俺、漸くわかりました」
「は、はぁ」
然り気無く環の肩から腕を抜く。
それを見て伊緒はにやにやして、「では」と言い風呂場へ向かう。
「ごゆるりと」
なんかそれ。
このエロガキ。なんだよそれいま俺のメンタルにあかんやつやん。どこで覚えやがった、政宗か?潤は…ねぇな。多分あいつバカだから言葉を知らない。
「流星さん」
「ん、ん?」
環がそんな俺の葛藤を知らずににこっと笑った。
「流星さん、あったかい」
「ほっ、」
だーめー!
なんかそれ今俺だーめー!
「あ、ありがと、あの、汗臭くないですか俺は」
「…?だいじょぶです」
「あよかった、よかった、」
なんなの俺。
マジでなんで今日こんな色々意識をしているの。俺ってこんな幼稚だったの?
しかしやはり葛藤知らず。
環はこてっと寄り掛かってきた。
ヤバイよそれは。
心臓が…。
しかし意外とあれ?
少しの甘い臭いとか、とにかくなんだか、“人”を感じて。
「…」
また肩を抱いてみる。
あぁ、急速に落ち着いていく。
「…不思議だね」
「はい?」
「なんだろ、落ち着く」
「…そうですか」
顔をあげてにやりと笑う。
「私も」
あぁ、そうなの。
なんだかそれ。
「よかった」
ほっとした。
もう、まぁいいや。
俺多分、いまわりと、こう…。
幸せ?な気がしてきた。
しばらくなんか、
ニュースとか垂れ流しながら、だけどあんまり内容とかわからないまま。
なんとなく二人でずっとそのまま過ごした。
伊緒が風呂上がりに一声掛けてきて、「おやすみなさい」。
先に環を促して、俺は一人、やっぱりぼーっとしながら、思いを巡らせながらメディアに目を滑らせていた。大学のニュースも、あったけど。
なんだ。俺、珍しく。
この感覚、多分忘れていた。けど、昔より凄く新しい。新鮮だ。
俺普通に。
普通に?そう、多分。
だけどまだ、ごめん環。
俺はそれに気付かないことにしたい。だって、いまそれに気付いたら、背徳感もあるし。君の過去を考えれば、それは道徳に反する。
ま、それも自意識過剰か。俺だけだよ、この気持ち。
封印してみた。
俺って結局、こんな仕組みで出来てるな。どうして自我を守るとこうなるんだろう。
でも、事実。
俺今無くさないようにとしか考えられない気がしちゃって。いつか壊れる。この恐怖は、昔からどこかで何かに使ってきてるのに、やっぱ感情の対処とか、まだ俺は上手くないな。大人なのに。
『失う瞬間なんてね、ホント、あっという間なのかも』
あいつが
夜中に寝れなくてひたすら起きていたとき、そんなこと言ってた。ぶっ壊すのはいつだって自分だったって。
あぁ、なんだろ。
俺そんなとき、あいつになんて声掛けられなかった。けど、
「流星さん」
はっとした。
振り返れば、髪の濡れた環がいて。
「お先にしつれい、しました」
と言う。
長い髪から落ちる滴が綺麗で。
「ん。
髪は乾かしなよ?風邪を引いちゃうから」
立ち上がり、立ち尽くした環の前まで行き、やり場がなくて髪をタオルで撫でるように拭いた。
無言で見つめ合って、こちらが根負け。取り敢えず俺も風呂に入ることにする。
それからも考えを巡らせ、途中で洗面台の方からドライヤーの音とかしたけど、ずっとシャワーの42°を浴びていたら途中で頭がボケた。
完璧に逆上せた。
ヤバイと思って水を浴びようかとしてやめた。多分心筋梗塞で死ぬ。その死に方、情けない。
それに気付いてから即風呂場から出た。頭くらくらした。ちょっとふらついてるようなふわっふわさでリビングに戻ってコーヒーを飲んだ。
「ぬるっ、」
不味くなっていた。しかしもう飲み干して歯を磨いた。
さあ寝ようかと考えて一瞬はっとしたが、そうだ俺、今日からソファじゃん。
実際寝れるの?多分寝れるけど不眠症に近くなる予想。俺これからずっと生きていける?
考えてると、開け放たれた寝室から「流星さん」と呼ばれた。
「すごいです!」
環も喜んでくれた。よかった。
夕飯を済ませてからは3人でテレビを観たりしてゆったりと過ごす。
久しぶりにメディアに触れた。ここ最近本当に“テレビ”は、俺の中で存在していなかった。
新鮮だが、やっぱりバラエティーとかドラマとか、メディアは一定だ。普段みんな、これを観るんだよなと思うと、なんだか、宙に浮くような気分。あまりにも俺の現実と掛け離れていて。
しかしたまに環が「ふふ」と笑うのを見て、ああそうかと感じた。
「さぁて、俺風呂入って寝ますね」
時刻は、夜のニュース番組がやるころ。
伊緒がやけに俺と環を凝視して言った。気付けば俺は自然と、環の肩を抱き寄せるようにしていたことに気が付いた。
あぁぁ…。
これ、樹実のクセだ。こんな時に出ちまうなんて。
「なんか…。
流星さんのリラックススタイルが俺、漸くわかりました」
「は、はぁ」
然り気無く環の肩から腕を抜く。
それを見て伊緒はにやにやして、「では」と言い風呂場へ向かう。
「ごゆるりと」
なんかそれ。
このエロガキ。なんだよそれいま俺のメンタルにあかんやつやん。どこで覚えやがった、政宗か?潤は…ねぇな。多分あいつバカだから言葉を知らない。
「流星さん」
「ん、ん?」
環がそんな俺の葛藤を知らずににこっと笑った。
「流星さん、あったかい」
「ほっ、」
だーめー!
なんかそれ今俺だーめー!
「あ、ありがと、あの、汗臭くないですか俺は」
「…?だいじょぶです」
「あよかった、よかった、」
なんなの俺。
マジでなんで今日こんな色々意識をしているの。俺ってこんな幼稚だったの?
しかしやはり葛藤知らず。
環はこてっと寄り掛かってきた。
ヤバイよそれは。
心臓が…。
しかし意外とあれ?
少しの甘い臭いとか、とにかくなんだか、“人”を感じて。
「…」
また肩を抱いてみる。
あぁ、急速に落ち着いていく。
「…不思議だね」
「はい?」
「なんだろ、落ち着く」
「…そうですか」
顔をあげてにやりと笑う。
「私も」
あぁ、そうなの。
なんだかそれ。
「よかった」
ほっとした。
もう、まぁいいや。
俺多分、いまわりと、こう…。
幸せ?な気がしてきた。
しばらくなんか、
ニュースとか垂れ流しながら、だけどあんまり内容とかわからないまま。
なんとなく二人でずっとそのまま過ごした。
伊緒が風呂上がりに一声掛けてきて、「おやすみなさい」。
先に環を促して、俺は一人、やっぱりぼーっとしながら、思いを巡らせながらメディアに目を滑らせていた。大学のニュースも、あったけど。
なんだ。俺、珍しく。
この感覚、多分忘れていた。けど、昔より凄く新しい。新鮮だ。
俺普通に。
普通に?そう、多分。
だけどまだ、ごめん環。
俺はそれに気付かないことにしたい。だって、いまそれに気付いたら、背徳感もあるし。君の過去を考えれば、それは道徳に反する。
ま、それも自意識過剰か。俺だけだよ、この気持ち。
封印してみた。
俺って結局、こんな仕組みで出来てるな。どうして自我を守るとこうなるんだろう。
でも、事実。
俺今無くさないようにとしか考えられない気がしちゃって。いつか壊れる。この恐怖は、昔からどこかで何かに使ってきてるのに、やっぱ感情の対処とか、まだ俺は上手くないな。大人なのに。
『失う瞬間なんてね、ホント、あっという間なのかも』
あいつが
夜中に寝れなくてひたすら起きていたとき、そんなこと言ってた。ぶっ壊すのはいつだって自分だったって。
あぁ、なんだろ。
俺そんなとき、あいつになんて声掛けられなかった。けど、
「流星さん」
はっとした。
振り返れば、髪の濡れた環がいて。
「お先にしつれい、しました」
と言う。
長い髪から落ちる滴が綺麗で。
「ん。
髪は乾かしなよ?風邪を引いちゃうから」
立ち上がり、立ち尽くした環の前まで行き、やり場がなくて髪をタオルで撫でるように拭いた。
無言で見つめ合って、こちらが根負け。取り敢えず俺も風呂に入ることにする。
それからも考えを巡らせ、途中で洗面台の方からドライヤーの音とかしたけど、ずっとシャワーの42°を浴びていたら途中で頭がボケた。
完璧に逆上せた。
ヤバイと思って水を浴びようかとしてやめた。多分心筋梗塞で死ぬ。その死に方、情けない。
それに気付いてから即風呂場から出た。頭くらくらした。ちょっとふらついてるようなふわっふわさでリビングに戻ってコーヒーを飲んだ。
「ぬるっ、」
不味くなっていた。しかしもう飲み干して歯を磨いた。
さあ寝ようかと考えて一瞬はっとしたが、そうだ俺、今日からソファじゃん。
実際寝れるの?多分寝れるけど不眠症に近くなる予想。俺これからずっと生きていける?
考えてると、開け放たれた寝室から「流星さん」と呼ばれた。
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