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The 12nd episode

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「おぅ、どうし」

 手で政宗を制する。どう見てもチャイニーズは麻雀なんて大してやっていない。

 俺は政宗に背を向けて座っていた男の隣に立ち、客のふりをして雀卓を眺め、笑顔でそいつらとアイコンタクトを取ってみた。

「(こんにちわ。君達、始めて?)」

 相手は驚いている。そりゃそうだ。チャイニーズは特に、警戒心が強いしこの状況じゃ(怪しいことをしているという状況)更にそうだろう。

「(後ろの奴が弱くてさぁ、飽きたから見に来たんだ)」

 すると、向かい側に座ってた女が、

「(はじめまして。お兄さん素敵ね。
私は日本語は話せないけど、彼ならはなせるわよ)」
「(あ、本当に?ありがとう、お姉さん)
 お兄さん、どうよ、調子は」

 酷く友好的に話しかけてきた。

 後ろからは政宗と伊緒が、「あいつなんなの?」とか、「最早何ヵ国語なんですかね…」とか言ってんのが聞こえる。うるせぇトータル5だ。てかこれは常識の範囲内だ。今純正チャイニーズに曖昧な俺の中国語が伝わってホッとしとるわ。

「あぁ、ハイ…」

 嘘こけよ女、この男全然話せなそうじゃないかよ。てか、マジかよ俺もチャイニーズは苦手なんだよ。あんま行ったことないもん。なんなら俺の中国語より翻訳機の方がマシだよ多分。

「あー、うん、無理しないでねー…」
「えと、私ココよく、ワカラナイです…」

出たよよくわかりませーん外人。俺もよくわかりませーんよ。

「ん?」
「コレ借りたらドウスルの?」
「麻雀打つの、OK?」

 政宗が後ろで吹き出した。
わかってるよ、状況がシュールなことくらい。

「ソレはわかるんデス。あの、」
「お兄さん、てかコレどした?」

 何故かこっちまで片言に。焦れったくなって俺はついに卓の下に隠されたままだった手を掴んでしまった。
 露骨に女が、口をあんぐりと開けて壮絶な表情をした。
 男は抵抗するように物を手の中に隠し、パーカーのポケットに突っ込もうとするのでついでにポケットを漁ると、更に出てくる、硬貨と袋。

硬貨はよく見りゃウォン。なるほど、こいつは、薬を女からがめようとしたのか。

「ちょ、何スルの!」
「あんた何人?」
「は?」
「これ、韓国のお金だよね?」
「(私は日本語がわかりません)」

でたよクソ野郎。

「(おねえさん。これいくら?)」
「…1500日元(1500円)」

 安っ。何入ってんだよ。明らかに怪しいわ、麻薬の中でも怪しいわ。どう考えても300gはありそうだろ。それをこいつ、がめようってのか。

「(安いね。この男、ウォンで誤魔化そうとしてるよ)」
「(は?)」
「(ウォンは、円の10分の1しか価値がないんだよ。おわかり?嬢ちゃん)」
「(そうなの!?)」
「(違うよ!誤解だ!あんた一体何者だよ!)」

訛ってんなー。多分ウォン持ってるし韓国人だなこっちの男は。

「(まず君が何者だよ。言葉も少し訛ってるし、韓国人?君達、これなんだい?もし薬物なら…)」
「シックロプタ!ナムン ノー シアン!
(うるさい!お前はなんなんだ!)」

やはりか。

 コリアン野郎は突然キレ始めて卓を叩いて立ち上がり、俺に掴み掛からん勢い。面倒だ。逆にこいつに殴られて傷害罪でショっぴいっちまおうか。

「王八蛋!(バカ野郎!)」

 雀牌をコリアン野郎に投げつけるチャイニーズ女。それに耐えるようにコリアン野郎は黙り混んだかと思いきや、舌打ちをして「チュゴラ!(死ね!)」と叫び、ポケットから拳銃を取り出してチャイニーズ女に向けた。

 途端に雀荘に走る動揺と後ろで状況をのんびり監視していた政宗と伊緒の殺気を感じた。
 今か今かと立ち上がらん政宗をよそに、俺はコリアン野郎のその手を取って睨みつける。

「ヒョンヘンボムル チェポハダ(現行犯逮捕)」

 そのままその手を捻り上げて銃と薬を没収。政宗に投げて寄越すと「危なっ!」とあたふたしながらも見事両方キャッチ。
 俺はジャケットから、実は所持していた手錠を取り出してコリアン野郎の手に掛け、タバコをくわえた。

「哇靠…(マジかよ)」

あぁ、よく意味わかんないけど多分唖然としてるんだな。ポカンと口を開けているしな。

 最早言語を使い分けるのが面倒だ。
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