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The 12nd episode

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「お話し中失礼しますが」

 伊緒が言う。
 忘れていた、流していたがこいつをどうしようか。

「あ、そうだ、」
「政宗さん」
「おぅ、決断したな?」
「はい。
俺、もう少しこの人のとこに居ようかと思います。見てみようかと、思います」
「へ?」
「はいよ」

待て待て。

「マジ?」
「はい。彼女さんが安定するまでとかでもいいんで。なんならそーゆー日は察して政宗さんの家に泊まりますので」
「はっ」
「え、それマジ?」
「はい。当たり前じゃないですか」

いやちょっと待とうぜ。

「いや待った誤解だよ?」
「何がですか?」
「てかちょこまか帰ってくんのか」
「はい。だってあんたごみの日わからないじゃないですかいい歳こいて」
「え、それマジ?
じゃなくて伊緒ちゃん、俺別にな、」
「あーもー二人とも焦れったいなぁ。政宗さんには色々な報告もかねて。ね?」

こいつなんて…。

 政宗が豪快に笑い始めた。

「お前良いキャラしてんなぁ、てかなんか吹っ切れたな」

確かに。

「大人二人が立ち往生してんのになあ…。
 わかった頼んだ」

なんかそれって。

「流星」
「はい」
「久々に行くか」

まったく。

「知らねーからな」

 伊緒一人が疑問符だった。そもそもこんなガキを連れて行っていい場所なのか微妙だがまぁ、明日全休だし吹っ切れたようだし、いっか。

 さて向かいますかと車に乗り込んだが、言い出しっぺの政宗が、「合法にしようぜ」と言ってくる。
 伊緒の疑問符は一つ増えたようだった。

「まずは肩章けんしょう取って」
「てめぇエグいな」
「何が始まるんですか?」
「大人の遊びだよ」

 それだけ言ってまた疑問。政宗からは「卑猥」という野次。まずは助手席から殴った。

 目的地につくまでにコンビニに寄って俺と政宗はビール3本とタバコを2箱づつ、伊緒にはペットボトルのレモンティを2本を買う。

 伊緒は「そんなにいります?」と言うが、そんなのは甘く見ていると思う。渡しておいた。

「マジっすか」

 ついて一言。伊緒の表情は疑問符から驚愕になる。
 「公安としてアウトだと…」と、真面目腐った言い分を聞いた。

「やはり年長者はこれくらい思い切りがあるんだねぇクソ公安」
「いや、合法で行こう」
「負け方によると思いませんか?」

 赤羽にて。ずばり、駅前の雀荘である。

「懐かしいですね。ここ昔俺らでヤクザ検挙しましたよね」
「あぁしたな。あぁはなりたくないと思ったよな。合法にしようか」

 車から見上げる、“雀荘”と描かれた窓ガラスの濁った灯りは、まだまだ消えそうにない。政宗のタバコを持つ手は、しかしながら、しっかりしている。

「雀荘って基本的にどうなんですか?」
「額によって違法と合法になるなぁ」
「なるほど…」
「健全な若者に薄汚れたこと吹き込むなよ流星」
「行こうって言ったのはあんただよ。ほら手帳置いてって。7年前のツケはチャラでいいから行きましょう」
「てめぇも結構良いキャラしてんな。最初は俺が教えたのにな」
「あんたやっぱわりとクズですよね」

 健全な若者に言われてしまっては終いだ。

 懐かしの、昔因縁がある雀荘へ。古びたビルの5階。それだけで、いかにもな雰囲気の場所である。

 扉を開けた瞬間の煙さとむさ苦しさ。うるささ。正直、俺はあまり好きではない。
 伊緒は露骨に顔をしかめた。俺はタバコを咥えてやり過ごす。
 早速伊緒はレモンティを開けている。言わんこっちゃないわ。

 麻雀のセットを借り、席に着く。
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