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The 12nd episode

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 病室を出て何気なくケータイ画面を見ると、着信が入っていた。
 環の病院からだった。

「おっ…」
「どした?」
「ちょっと…」

 二人に手で合図をしてその場で電話を掛け直す。
 ここ最近忙しさにかまけて、全然環の病院に顔を出していない。

何かあったのだろうか。

 繋がってから出来るだけ声を潜めて少しの応対。
 2回目の「少々お待ち下さい、お繋ぎします」から、精神科医の増山先生に直接繋がった。

「もしもし、お電話頂きました、壽美田です。遅くなってしまってすみません。あのー、青葉環の…」
『あぁ、お忙しい中わざわざすみません。今、大丈夫ですか?』
「はい、なんとか」
『実は作戦、そろそろ決行しようと思いまして。最近お忙しいですか?』

 病院名と青葉環の単語に、政宗が俺の顔を覗いてくる。

「…作戦決行、となりますと?」
『手術したと言い、退院に向けてカウンセリングをして行こうかなと』
「環ちゃん、ダメそうか?」

 政宗が心配そうに聞いてくる。
 俺は一度、「すみません」と電話の向こう側に断りを入れ手でスピーカーを抑えた。

「いや、むしろ良さそうだが…」
「よかったじゃねぇか」
「うん、ただ…」

それは本当に良かったんだが。

「浮かないなぁ」
「…今…引き取ったとして」

俺、大丈夫なんだろうか。
はっきり言って身を守れるだろうかとか、色々と不安が過る。だって、今回だって真面目に暗殺されるんじゃねぇかとか思いながらの事件だったし。

「…ちょっと貸せ」

 と、言うが早いか政宗は、俺のケータイを奪い取って話を始めた。

「おひさしぶりです、荒川です。たまたま隣に居たんでいきなりすんませんね。
あー、はいはい。うんうん。
 OK。明日はこいつ顔出せるし、俺も夕方から行きますわ。設定的に夕方感動の対面といきましょーか。
 おー3日後ね。はいはい…。あー、3日後は多分ね、こいつも俺も部下が退院するんだよね、ほら、あの可愛い兄ちゃん。あ、なんなら一緒に行きますわ。うん、はい、はーい」

 切ってから電話は返された。

なんか、勝手に話進んだんじゃないかこれ。

「え、政宗…?」
「明日手術、3日後退院っつーことで」
「え、は?」
「明日お前午前中に行ってこい。夕方から俺も合流するから」
「待った待った、明日は…」
「え、みんな半休なんだろ?お前だけ一日。てか俺は潤の面倒見てから仕事出るから。
 潤の家知らねぇけどどこ?」
「いや知らねぇ。てか、は?え?」
「あー伊緒、お前どうする。明後日から流星には同居人が」
「おい待てやゴリラ!」

 流石に一回遮ってしまった。
 政宗は疑問符を顔に張り付けている。おかしいなぁ、俺が知っている先輩は一番常識人でしたが。

「どーゆーことだ、わからんぞ!」
「だから、明日環ちゃんは手術設定、お前立ち会う、3日後退院、お前引き取る、OK?」
「その流れはなんとなく察したんですよなんで勝手に決めたの、ねぇ」
「だってお前決めねぇじゃん」

やべぇこいつ何言ってんだ。

「ちょっと待てあのね、時期とかあるじゃん?」
「男らしくねぇな、いつ決断したってお前は不安定なんだよ」

 そう言われてしまうと反論が出来ない。しかしながら腹が立つ。

「流星」
「なんですか」
「大丈夫だよ、お前は殺さねーから」

 ただ、その先輩の言葉が少し刺さって。

「少なくとも俺が生きているうちは」
「…あんた、どうしてFBIにまた戻ったんですか」
「ん?
 これが俺なりのけじめだよ」
「けじめ?」
「だって俺、お前らと違ってずっと逃げ回ってるから。それが自己防衛だし、この際仕方ねぇんだ。
 だけど踏ん切りはどうやら付かねぇんだなって気付いてな。
 樹実を殺したお前も、お前を止められなかった俺も、何より、樹実を止められなかった俺にもな。だから俺はあれから辞めてねぇんだろうなと思ってな。
 結局凝り固まってるくせに最初に投げ出したのは俺だった。まぁ、特テロ部を一度バックれた時と一緒だ。俺は結局辞められない。中途半端なんだ。だけど、それでも、」
「先輩」

あんたは、いつでもそうなんだ。

「かっけぇよ」

だから先輩って呼べるんだよ。

「あんたにはあんたの、道があるな」
「…そう言われるほど立派なんかじゃねぇさ。ただ、俺は悔しかったんだ」
「政宗、」
「だから一人でお前らがどっかにいっちまうのは、避けたい。お前らにはわからない感性だろうがな。まだ俺は先輩で、仲間でいたい」

何言ってんだよ。
あんたそんなこと思ってたのかよ。

 思わずにやけてしまった。ふと政宗がタバコをジャケットから出して渡してくれた。

そういやぁ吸ってねぇ。潤に渡しちまったしな。

 ついでに政宗は見計らったかのように、俺に潤のタバコを渡してきた。

「あいつにも買ってきたんだがな」
「そうだな。今吸ったらあいつ、腹から出てくるな」

 流石に笑い合ってしまった。
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