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The 11st episode

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「何をやっているの?君たちは」

 警察病院にて。
 不味い雰囲気になりました。まだ、葬式には早いはずなのですが。

「はい、すみま」
「済みませんよねぇ特本部部長の壽美田流星くん」

 ただいま潤の病室、202号室にて鬼詰め中。それはそれは表情は相も変わらず何を考えているかわからないサイコパスさで、見上げてくる目付きはなんだか鋭いような、睨んでるような、空虚なような。ただただ、口調だけがもの凄く生々しく不機嫌で。

「で、こいつはなんでこんなことになっているんでしょうか一体」

 なんたる倒置法。腕組みしている指が明らかに先程からずーっと不機嫌そーに腕を叩いています。これは何を言っても聞いて頂けませんな。

「いや、あの…。
 速見さんに刺されました、はい」
「それはわかったんですよ。何故刺されたのかを聞いているんですな、そんなこともわからないのかい君は。そこまでバカなんですか君は」
「いや、あの…」
「高田さん…?」

 起きた。らしい。
 潤が起き上がろうとするのを取り敢えず、「待て、開くから!」と制して、取り敢えずベットを起こしてやった。それでもまだ傷は痛むらしい。悪いが我慢しろ、よくよく考えればお前が悪い。

「あぁおはようございます星川潤くん。無様な寝顔を可愛らしく拝見させていただいていた所存ですよええ」
「あぁ、はい」
「はいじゃないよね?お前何やらかしてんの?おかげでこっちはてんてこまいなんですけど。
 てかお前さ、知ってんだろ?横溝死んだぞ」

あぁ、そう言えば。

「…横溝って、誰っすか」

 まぁなんて不機嫌なんでしょう。やめてくださいよこっちにとばっちりが来るんですけど!

「あ?アキコさんですよ。てめぇと何回か組んでるでしょ?わかるよね?」
「あぁアキコね。なんで?」
「知らねぇよおい。お前さ、んな無様な格好してなんだ、そんなことも調べあげられてねぇのかおい」
「悪かったな」
「…部長さんこの子まず口の利き方から教えてやってくんないか?バカすぎて話にならないんだがこのバカは」
「おっしゃる通りで」
「おっしゃる通りでじゃねぇよ。ナメてないか?え?おいふざけんなよ使えねぇなどいつもこいつも!つかおい入ってきていーよ、お前教育し直せよ」

え?何?

 高田が病室だと言うのを忘れ、歳甲斐もなくドアに向かってそう怒鳴ると、静かに扉がスライドした。

 唖然とした。

「な、」
「は、はぁぁ!?」
「どこ行ってたんですか、政宗さん!」

 そう、伊緒が言うとおり。
 政宗がそこに立っていた。しかも、肩にはFBIの肩章をつけて。

「よ、バカ共」
「何してんのっ、あんた」
「それは俺の台詞だな姫。どうしたよそれ」
「いや、てかあんたマジか」
「残念ながら、そーゆーことだ」
「言ってなかったっけ?
 荒川、突然この前やってきて、厚労省を辞職。そして俺のとこに頭下げに来たって訳さ」
「聞いてねぇ聞いてねぇ。マジかよはぁ!?なんで!?」
「まぁそれはあとでだ。てめぇら俺がいない間になーにやってんだよ」
「いや、はい」

 溜め息を吐いて潤の側まで歩いてきて。顔を見るなり取り敢えず、政宗は潤の髪を鷲掴むように緩く掴み、わしゃわしゃと撫でた。

「元気そうじゃねぇな、バカ」
「はっはー…せんぱーい」
「ただいま、お前ら」
「な、」

 取り敢えず一発軽く殴って。

「いってぇな」
「るせぇな…!おかえりクソゴリラ!」
「…可愛くないなぁ。
 で、この醜態はあれか。長官の汚職か」

長官の汚職?

「あ、お前らわかってねぇな。
 しかしまぁ、良い線いってたな。死にかけるくらいにはな。
 高田さん、今回は引いてくれ。あんたじゃ無理だ。多分な」
「は?お前ね、俺がどんだけ」
「はーい、言いたいことあるやついるかー?多分いま一番ストレス溜まってんのは…」

 政宗が高田の顔面の前に手の平を翳して遮り、伊緒を見た。確かにさっきから、拳を握って震えてる。

「…初めまして、高田さん」
「…初めまして、噂の…」
「箕原伊緒と申します、お見知りおきを」

 いままで聞いたことないような、それはもうドスの効いたような低い声で自己紹介。マジか。すげぇな。

「…で?」
「…今回の件はよくわかりませんがまぁ、俺たちが解決しますよ。ええ。なんで今は、潤さんは腹に響くとよくないし流星さんも昨日の夜から休んでいないので悪いんですが騒がないで頂けますか?
 確かに我々がしたことはまだ中途半端ですが…。俺たちもまだ捜査段階だしそれにしちゃぁあんた別に協力的なわけでもなく、圧力ばっかだし。んなことは俺達が一番よくわかってますので帰ってその横溝さんとやらのことを調べていただいて結構ですので。
 潤さん、俺怒ってましたよ。けどもういいや。あんたのこと少しだけわかった気がする。流星さんも、俺怒ってましたよ。けどいいんです。あんたら二人、どーにもこーにも人臭い。だから好きにしてください。俺たちそれに従うしかないから。ただ中途半端に手放すのは止めてください。やるせないでしょこっちが」
「はい…」
「ごめん、…野良」

 潤が呼んで伊緒が振り向いた。手招きをされて仕方なくといった感じに伊緒は潤に寄る。がばっと抱きついて頭を撫で、「ありがと、伊緒」と、初めて潤は伊緒の名前を呼んだのだった。

「潤さん」
「なんだよ」
「傷、開きますから」
「生きてりゃな」

 なんと言う茶番をこのクソジジイに見せつけてんのか。高田は「ふん、」と不機嫌面で、政宗は「ちょーしこいてんなぁ!」と笑っていて。

「んなわけで高田さん、悪いね」

 取り敢えず俺は上司をフォローした。

「ったく、なんとかしろよな」

 と、高田は不機嫌そうに言い捨て、病室を去った。

「そう言えば長官は?」
「あぁ、頭おかしかったけどなんとか掠り傷だよ。取り敢えず自宅養生じゃね?お前めちゃくちゃ外してたからね」
「マジかー。
 あーてか俺家…」
「ん?」
「いや、なんでもなーい」
「あそう。
 取り敢えず、帰るか、俺たちも」
「そだな、さて伊緒、お前どうする」
「まぁ時間的には今日はこのまま流星さんの家に帰ります。明日また考えましょう」

 確かに。なんだかんだでもう夕方だ。

「潤、」
「はい」

 潤は、少し緊張したような面持ちで俺を見た。
全く。

「明日から伊緒がここに書類を届けに来るからな。退院するまでにやっとけ。3日後また来る」
「3日ぁ!?」
「なんだよ不満か」
「当たり前じゃん腐るわ!今から退院する。じゃなきゃ首括って死んでやる」
「悪い子だなー。
 先輩、明日から経理の仕事、こいつに回してください」
「了解しましたー。腹の傷開くくらいにヘビーなやつなー」
「えぇぇぇ!てかそうだ、お前さ!」
「はいはいはいー。その話は明日からなー。バイバーイ」
「なっ!」

へっ、ざまぁみやがれ。
これでしばらく、心配事はなくなりそうだ。

ひとつを除いては。
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