177 / 376
The 11st episode
7
しおりを挟む
結局のところ。
目につく物はテーブルに置かれた拳銃と、垂れ流された昼間からのニュースで。
なんとなく、なんとなくだけどアキコのことをわかったような口を利いているニュースばかりで。なんで俺がここにいるのかも把握し始めた。
とにかく眠い。もう考えるのが面倒だ。タバコも脳に入っていかない。
あの人が、長官が出て行って早一時間。最早脱け殻のような状態で俺はただそこにいた。
身体のあちこちが痛いしダルいし。ただ、あの人は考えなかったのだろうか。例えば俺が、ドアノブにタオルでも掛けて首括ってたりとか、手首切って浴槽に沈めていたりだとか、そーゆーことを。
それなら逃げていないだろう。もっとも、頭の中で想像しても、それすらやる気なんて起きないけども、マジで。
取り敢えず脱ぎ散らかしたスーツとシャツだけはどうにかしようと着てみてまた座った。
無機質なM3913が嫌に目に入る。いつ出したんだろ。
握りやすい。あぁ、しかしながら軽いなぁ。こんなんでホントに人のこと殺してきたのか俺は。
やってらんねぇ。酒もねぇ。それでこんな素面とかなんたる拷問。どーせなら早く帰って来いよ、クソみてぇにご要望にお答えしてやるからよ。
『銃は自己防衛ですよ』
バカみてぇにあの人の声が頭痛と共に脳内ダイレクト。無責任なことを言いやがる。そーゆーあんたは相方守って死体を俺の前に晒したじゃないかよ。笑えるぜ。笑えないけどな。
一息溜め息が出た。それがいけなかった。全部出ていきそうになって歯を食い縛った。ダメだ。なんて醜態を晒してるんだ俺は。
ムカつくから上を見たら余計にキてしまった。あぁうざってぇ。死にたくねぇが生きたくねぇ。気がつけば蟀谷にスミス&ウェッソン。バカじゃねぇのか、俺。
「はぁぁ~…!」
あぁダメもうダメ。何がダメって。
「ふざけんなよ、クソが…」
何がだよ何がだよ。
結局自分が悪いんじゃねぇのか。
結局そう、どこかでアキコが胡散臭いことも自分がやべぇこともわかっていたんじゃねぇのか、これって自棄だよな。完璧に。
だから腹が立つんだよな。
しかしこんな時ですら、あぁ、まだ自分は気付かれていないだろう、とか、明日というか今日の出勤はどうしようかとかどこかで考えてる自分がどこかバカらしい。なんなの俺。いい歳こいて何してんの。
だがこのままだと本気でトチ狂って発狂して多分スライド引っ張ってトリガーを引いて人生ブラックアウトだ。それも悪くないが本気でそんなクソみてぇな醜態でいいのか、だが…。
想像してみて、そんな無様な死に様すら、果たして誰が一早く気付くかと言えば多分ホテルマンだ。そして最初に連絡が行くのは長官で、多分俺の死はなかったことになって終了。
特本部は多分、監督官がバックれだってよ、ふざけんなよクソ潤とか言って結局宛がないまま3ヶ月で自動退職。高田さんすら、多分流星から昨日のこととかを聞き出して、あいつなんだ、高飛びでもしたか、まぁ探すけどさ、面倒だから。とか言っちゃうんだろうな。
じゃぁ別に今死んでもあんま支障はないよね、なーんてね、考えてもバカらしい。蟀谷に痛いくらい押し当てている銃口。いい加減に決断をくだそうか。取り敢えずスライドを引っ張って目を開けてみた。
テレビってうるせぇな、日常ってうるせぇな。俺の中の日常は、こんなことで消費しているのか。
再び目を閉じてみれば暗闇だった。何故か、一瞬ちらついたのはこんなとき、母親の、あの、狂気じみた鋭い目で。
「あんたなんて汚らわしい、死んじゃえ」
そう言って思いっきり壁に頭を打ち付けられて失神したときの表情だった。あれは死んだと思った、幼いながらに。
これって確かショートリコイルだったよな。とかぼんやり考えていたら荒々しく扉が開いた。ビビって少し左手の人差し指が動いてしまったが、トリガーを引くほどの握力はなかった。
「あれ?」
あぁ、お早いお帰りで。表情が困惑していますね。そりゃそうですよね。
「何してんの?」
「おかえりなさいませ」
焦るように長官は早足で俺の元に駆け寄り、銃を取り上げられた。
おいおいあぶねぇよバカじゃないのお前。
だがなんか、荒い息遣いで抱き締められて、ついでに野郎、なんか発情してやがってそれもどーでもよくなった。ただもう、お前死ねばいいのに、とかそんな稚拙な言葉しか思い浮かばなかった。
「びっくりしたなぁ」
「あい、すんません…」
「離れろ」
聞き覚えがある、低くて聞き取りやすい声。
あれ?
「あっ」
長官が振り返る。と同時にガシャっとなるオートマチックの重い音。
ドアに立つ、殺気しか帯びていない泣き黒子の、狂犬面。
あぁ、マジか。
目につく物はテーブルに置かれた拳銃と、垂れ流された昼間からのニュースで。
なんとなく、なんとなくだけどアキコのことをわかったような口を利いているニュースばかりで。なんで俺がここにいるのかも把握し始めた。
とにかく眠い。もう考えるのが面倒だ。タバコも脳に入っていかない。
あの人が、長官が出て行って早一時間。最早脱け殻のような状態で俺はただそこにいた。
身体のあちこちが痛いしダルいし。ただ、あの人は考えなかったのだろうか。例えば俺が、ドアノブにタオルでも掛けて首括ってたりとか、手首切って浴槽に沈めていたりだとか、そーゆーことを。
それなら逃げていないだろう。もっとも、頭の中で想像しても、それすらやる気なんて起きないけども、マジで。
取り敢えず脱ぎ散らかしたスーツとシャツだけはどうにかしようと着てみてまた座った。
無機質なM3913が嫌に目に入る。いつ出したんだろ。
握りやすい。あぁ、しかしながら軽いなぁ。こんなんでホントに人のこと殺してきたのか俺は。
やってらんねぇ。酒もねぇ。それでこんな素面とかなんたる拷問。どーせなら早く帰って来いよ、クソみてぇにご要望にお答えしてやるからよ。
『銃は自己防衛ですよ』
バカみてぇにあの人の声が頭痛と共に脳内ダイレクト。無責任なことを言いやがる。そーゆーあんたは相方守って死体を俺の前に晒したじゃないかよ。笑えるぜ。笑えないけどな。
一息溜め息が出た。それがいけなかった。全部出ていきそうになって歯を食い縛った。ダメだ。なんて醜態を晒してるんだ俺は。
ムカつくから上を見たら余計にキてしまった。あぁうざってぇ。死にたくねぇが生きたくねぇ。気がつけば蟀谷にスミス&ウェッソン。バカじゃねぇのか、俺。
「はぁぁ~…!」
あぁダメもうダメ。何がダメって。
「ふざけんなよ、クソが…」
何がだよ何がだよ。
結局自分が悪いんじゃねぇのか。
結局そう、どこかでアキコが胡散臭いことも自分がやべぇこともわかっていたんじゃねぇのか、これって自棄だよな。完璧に。
だから腹が立つんだよな。
しかしこんな時ですら、あぁ、まだ自分は気付かれていないだろう、とか、明日というか今日の出勤はどうしようかとかどこかで考えてる自分がどこかバカらしい。なんなの俺。いい歳こいて何してんの。
だがこのままだと本気でトチ狂って発狂して多分スライド引っ張ってトリガーを引いて人生ブラックアウトだ。それも悪くないが本気でそんなクソみてぇな醜態でいいのか、だが…。
想像してみて、そんな無様な死に様すら、果たして誰が一早く気付くかと言えば多分ホテルマンだ。そして最初に連絡が行くのは長官で、多分俺の死はなかったことになって終了。
特本部は多分、監督官がバックれだってよ、ふざけんなよクソ潤とか言って結局宛がないまま3ヶ月で自動退職。高田さんすら、多分流星から昨日のこととかを聞き出して、あいつなんだ、高飛びでもしたか、まぁ探すけどさ、面倒だから。とか言っちゃうんだろうな。
じゃぁ別に今死んでもあんま支障はないよね、なーんてね、考えてもバカらしい。蟀谷に痛いくらい押し当てている銃口。いい加減に決断をくだそうか。取り敢えずスライドを引っ張って目を開けてみた。
テレビってうるせぇな、日常ってうるせぇな。俺の中の日常は、こんなことで消費しているのか。
再び目を閉じてみれば暗闇だった。何故か、一瞬ちらついたのはこんなとき、母親の、あの、狂気じみた鋭い目で。
「あんたなんて汚らわしい、死んじゃえ」
そう言って思いっきり壁に頭を打ち付けられて失神したときの表情だった。あれは死んだと思った、幼いながらに。
これって確かショートリコイルだったよな。とかぼんやり考えていたら荒々しく扉が開いた。ビビって少し左手の人差し指が動いてしまったが、トリガーを引くほどの握力はなかった。
「あれ?」
あぁ、お早いお帰りで。表情が困惑していますね。そりゃそうですよね。
「何してんの?」
「おかえりなさいませ」
焦るように長官は早足で俺の元に駆け寄り、銃を取り上げられた。
おいおいあぶねぇよバカじゃないのお前。
だがなんか、荒い息遣いで抱き締められて、ついでに野郎、なんか発情してやがってそれもどーでもよくなった。ただもう、お前死ねばいいのに、とかそんな稚拙な言葉しか思い浮かばなかった。
「びっくりしたなぁ」
「あい、すんません…」
「離れろ」
聞き覚えがある、低くて聞き取りやすい声。
あれ?
「あっ」
長官が振り返る。と同時にガシャっとなるオートマチックの重い音。
ドアに立つ、殺気しか帯びていない泣き黒子の、狂犬面。
あぁ、マジか。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
そして、魔王は蘇った〜織田信長2030〜 目指すは日本復活と世界布武!?
俊也
ファンタジー
1534年、明智光秀の謀反により、天下一統の志半ばにして自害して果てたはずの織田信長。
しかし、信長は完全に死んではいなかった!
なんと2030年に生きる、ひ弱な高校2年生、黒田泰年の肉体に憑依していたのである。
21世紀においてすら、常識の斜め上をいく信長の言動は。学校社会にとどまらず、やがては日本社会を、そして世界をも揺るがすうねりと化していく…
売国政権により危機に瀕する日本を護るべく奮戦する信長。
押し寄せる敵の群れ、包囲網。
そして…魔王信長の妖しき魅力に惹かれる美しき戦士、現代の軍師たち。
しかしそれでも勝てない反日本、反信長勢力!?
魔王の真の恐怖が、世界を覆う!??
追記
申し訳ありません。
ジャンル的に当てはまるかわかりませんが
運営様も大賞に於いては、「それならそれで、それなりの評価の対象にする。」
と言うスタンスでご対応頂ければ幸いです。
途切れ気味になってしまっている
「新訳 零戦戦記」
お後大賞参戦中「総統戦記」
「拳の価値は」
ともども宜しくお願い致します。
作者Twitter。
https://twitter.com/TKingGhidorah 相互歓迎です!!
歌物語
天地之詞
現代文学
様々のことに際して詠める歌を纏めたるものに侍り。願はくば縦書きにて読み給ひたう侍り。感想を給はるればこれに勝る僥倖は有らずと侍り。御気に入り登録し給はるれば欣(よろこ)び侍らむ。俳句短歌を問はず気紛れに書きて侍り。なほ歴史的假名遣にて執筆し侍り。
宜しくばツヰッターをフォローし給へ
https://twitter.com/intent/follow?screen_name=ametutinokotoba
電子カルテの創成期
ハリマオ65
現代文学
45年前、医療にコンピューターを活用しようと挑戦した仲間たちの話。それは、地方都市から始まった、無謀な大きな挑戦。しかし現在、当たり前の様に医療用のデータベースが、活用されてる。新しい挑戦に情熱を持った医師と関係者達が、10年をかけ挑戦。当時の最先端技術を駆使してIBM、マッキントッシュを使い次々と実験を重ねた。当時の関係者は、転勤したり先生は、開業、病院の院長になり散らばった。この話は、実話に基づき、筆者も挑戦者の仲間の一人。ご覧ください。
Noveldaysに重複投稿中です。
我ら同級生たち
相良武有
現代文学
この物語は高校の同級生である男女五人が、卒業後に様々な形で挫折に直面し、挫折を乗り越えたり、挫折に押し潰されたりする姿を描いた青春群像小説である。
人間は生きている時間の長短ではなく、何を思い何をしたか、が重要なのである。如何に納得した充実感を持ち乍ら生きるかが重要なのである。自分の信じるものに向かって闘い続けることが生きるということである・・・
炎のように
碧月 晶
BL
イケメン王子×無自覚美形
~登場人物~
○アイセ・ウル
・受け(主人公)
・オラージュ王国出身
・16才
・右眼:緑 左眼:碧 、黒髪
(左眼は普段から髪で隠している)
・風と水を操る能力を持つ
(常人より丈夫)
・刃物系武器全般の扱いを得意とする
※途中までほぼ偽名です。
○ヴィント・アーヴェル
・攻め
・ヴィーチェル王国 第一王子
・18才
・紅眼、金髪
・国最強剣士
・火を操る能力を持つ
※グロテスク、暴力表現あり。
※一話一話が短め。
※既にBLove様でも公開中の作品です。
※表紙絵は友人様作です(^^)
※一番最初に書いた作品なので拙い所が多々あります。
※何年かかろうと完結はさせます。
※いいね、コメントありがとうございます!
あなたの隣で初めての恋を知る
ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。
その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。
そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。
一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。
初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。
表紙絵は絵師の松本コウさんに描いていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる