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The 11st episode

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 取り敢えずテキトーにカフェに入り、店の場所と名前を伊緒にメールして慧さんに電話をした。

『もしもし』
「夜分にすみません、いま大丈夫ですか?」
『まぁなんとか。どうしたんですか?』
「いやその…。
 まぁ今日昼間俺ら喧嘩してたと思うんですが、これなんです、原因。なんかあいつがあいつの友人からちょっとネタをもらって。
 ただあまりに微妙なネタだし内容もなんか…解せなかったんでやめとけと言ったらあの場ではあいつ、引いたんですよ。
 だがどうも、結局乗り込んだみたいで」
『長官のとこに…ですか』
「はい」
『…そのご友人は?』
機捜隊きそうたいの横山暁子と言うヤツなんですが、俺も調べたらそんなヤツ存在しないんです」
『なるほどねぇ…。怪しいですね。その人と潤さんはどういった?』
「昔の仲間らしいですよ」
『うーん…。じゃぁFBIなんですかね』

あっ、そっか。
でもだとしたら。

「あぁ…そっか」
『だとしたら潜入捜査をしていたか、俺たちが出会ったときみたいに、要請されていた可能性がありますよね』
「だが…」
『ですね。あの時あなた方は偽名や役職名を特に偽ることはしなかった』

 まぁ俺らの場合少し特殊だけど。でも確かに、あんな単発的な時にはしないだろうな。

「まぁ俺らは単発的な物だったので…。特に偽らなくても足は付きませんからね。それがいまや長期になったから脱退して厚労省の籍ということになってますね」
『つまりその人、何かの潜入捜査だったと仮定しますね。
 それをあなた方に要請してきたと言うことはあなた方のことはもちろん』
「ええ、知ってましたね、あれは多分。多分、潤が知り合いだからと言う安易な発想ではない」
『だとしたら、何故貴方を今向かわせてるんでしょうね…』
「そこが微妙なんです。それだけヤバイ話なのか、それとも単純に、速見を確実に消したいのか。
 ただ、いずれにせよ潤はいまそこに一人だ。その可能性に気付いていない。いや、気付いているのかもしれないけど」
『まぁケータイの電源落としてるくらいですからね。貴方がこうして探しに来ることくらい、わかってるんでしょうね。
 となると流星さん、迂闊にGPSで探したり、とにかく潤さんのケータイにはアクセスしない方がいい。相手はあなた方のような人かもしれません。
 まぁ、なかなかいないとは思いますけど。
 …あれ』
「どうしました」
『あなた方今日飲みに行きましたよね』
「はい」
『どの辺でした?』
「銀座辺り?仕事終わってすぐ、近くですよ」
『…ご友人って女性ですよね?』
「はい」

急にどうしたんだろう。

『流星さん』
「はい」
『多分この話ヤバイ方ですね』
「え?」
『その女の人、名前なんでしたっけ』
「横山暁子です。偽名だろうけど」
『あぁ、ちょっとボーイッシュな印象の方ですね。本名だろう名前と年齢、写真がニュースで今、全国公開中です』
「え?」
『殺害されたそうです。ついさっき。横溝よこみぞ暁子さん』 
「は、はい?」

え、なんだって。

「なっ…」
『貴方も危ないんじゃないですかこれ』
「あぁ…ですねぇ…」

これ、今店出た瞬間に死ぬパターン?
しかしまぁ、なんだ。

「ナメてますなぁ、クソ官僚」
『…おや?』
「仕方がない。まぁよくあることです。こーゆーパターンは先手必勝。足元を固めりゃぁいい。
 まぁしかし官僚の所業とは思えない。多分何かしらが動いてますね。アホ丸出しだ。慧さん。ここは潤の最後を信じましょう。いま我々にはそれしか手だてがない」
『はい…ん?』
「潤のケータイは最後に六本木で電波が途絶えてる。潤が切ったか犯人が切ったかは謎だ。だが潤が六本木にいたことは間違いない。速見の、六本木で行きつけのホテルとか、調べられたら調べていただきたい。
 3件フェイクを使ったんだ。だがフェイクだとわかりやすいフェイクだ。案外こいつはわかりやすいやつかもしれない。行きつけじゃなくてもいい、2回以上足を運んだホテル、調べてください」
『了解しました』

 数多いとはいえ、これでいくらか絞り込めるだろう。

 多分潤は遅刻している。それが許される、官僚格が行きそうなホテルなんて高級ホテルだろう。

暴いてやろうじゃねぇか、おもしれえ。
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