142 / 376
Past episode four
4
しおりを挟む
「Damn it.」
「はいはい、いまは我慢してよ。これじゃルークの方が悪者っぽいよ?」
漸く銃をしまった。ひと安心。
取り敢えずは自動ドアをこじ開けて中に侵入出来た。
途端に銃器の、カチャッという音が聞こえる。
震える手で銃を構えて向けているのは金髪で痩せ型、目がラリったジャンキーみたいなヤツが一人。
まわりには人質たちが十何人かが皆一様に受付の椅子にぼんやりと座っている。
ナメられたものだ。というかまさかこんなクソ野郎にここは乗っ取られたのか?そんなわけがない。
「なにあのジャンキー」
「多分威嚇要員だろ。どうする?」
「殺したらダメなんデスか?」
「ダメなんデス。あいつ捕まエル。一番楽。オーケー?」
「Oh,yeah!」と、目を輝かせながらスキップをするようにルークはそいつの元へ嬉々として歩む。
そのキチガイじみた様子に三下犯人はすぐさまビビって後ずさるが、敵わない。あっさりルークにぶん殴られ、捕獲成功。
その隙に潤と流星は先へ進む。
最早あんなクレイジー軍人は巻いてしまった方が後々楽である。
「さてと」
「堂々と正面から入ったがこりゃぁ裏口かなぁ」
一応、裏口の警備体制は整えてある。
犯人に逃げる道は与えてはいないが、三下が残っているのを見ると、目的が掴めない。
「なぁんかさ」
ふと潤が、ひょいっとカウンターに飛び乗った。そして下を指差し、「流星、」と呼ぶので流星も乗って見てみる。
「あぁ、なるほど」
カウンターの下には、事前にデータで見た死刑囚の残り二人が、頭を撃ち抜かれて死んでいた。
「ルーク!」
「はぁい」
「撤収!」
「hun?」
明らかにルークは眉間にシワを寄せ不機嫌になってしまった。
そりゃぁそうだ。
そもそも何故こんなに陳腐な強盗だかなんだかわからない現場に化け物級のスナイパーを寄越したのか。そこには、何か樹実の意図がありそうだ。
人質の疲弊した様子を見れば、長期だったのは分かる。
まずは速やかに人質である従業員やら客やらを入り口から外へ誘導することにしたが、どうも、解放されたというのに人質全員の足取りが重いのが気掛かりだった。
「ヤッパあのガキ使えナイと思うんダヨここダケの話ネ」
「あのガキ?」
「アイツだよ、アノ、smirkなガキ」
「あ、あぁ」
「陸か」
十津川陸。
彼は、今年採用の、謂わば潤と流星の後輩である。
「なんでりっくん?まぁ…あれだけどさ」
「アイツに言われてキたんダヨ!」
彼は今、部署ではどちらかと言えば情報収集を担当している。
言われてみれば確かに近頃、少しばかり詰めが甘いというか、なんとなく隠蔽臭いというか、悪い方の公安へ傾いた感はあったような気はする。
「今そんでハデスのとこに居るンダヨー?」
「…また大胆だねぇ」
樹実のそっちでのコードネームらしい。
何故、奈落の神の名前が使われるか、それは彼のそっちでの仕事が影響するのだろうか。
「あんなデスクワーク上がりに拳銃持たせようとはまぁ、らしくないよな」
「あら、ヤキモチ?」
「いや単純に、なんかありそうだなと」
でなければそんな危ない橋を、あの樹実が渡るだろうか。
「ルーク、ちなみに向こうの状況は?」
「ん?アァ。
大使館に2人、元海軍ダカ陸軍のヘッドを筆頭にシテ15だったカナ。ハデスとクソガキとゴリラと…銀チャン」
「政宗と陸は踏み込みじゃないとしたら、二人か…」
「状況は壊滅的にキツそうだね」
そんな話をしながら、最後の一人を外に出し、先程捕まえた三下を警官に引き渡そうかというときだった。
「きゃぁ!」と、悲鳴が聞こえて話が終わる。人質の最後の一人、金髪で線が細い背中。
警官が一人、脳天をぶち抜かれて倒れた。制帽が足元に転がる。
なるほどそう来たか。
三下ジャンキーが、「ひっひっひ…」と、気が狂ったように引きつった笑い声を上げた。
「はいはい、いまは我慢してよ。これじゃルークの方が悪者っぽいよ?」
漸く銃をしまった。ひと安心。
取り敢えずは自動ドアをこじ開けて中に侵入出来た。
途端に銃器の、カチャッという音が聞こえる。
震える手で銃を構えて向けているのは金髪で痩せ型、目がラリったジャンキーみたいなヤツが一人。
まわりには人質たちが十何人かが皆一様に受付の椅子にぼんやりと座っている。
ナメられたものだ。というかまさかこんなクソ野郎にここは乗っ取られたのか?そんなわけがない。
「なにあのジャンキー」
「多分威嚇要員だろ。どうする?」
「殺したらダメなんデスか?」
「ダメなんデス。あいつ捕まエル。一番楽。オーケー?」
「Oh,yeah!」と、目を輝かせながらスキップをするようにルークはそいつの元へ嬉々として歩む。
そのキチガイじみた様子に三下犯人はすぐさまビビって後ずさるが、敵わない。あっさりルークにぶん殴られ、捕獲成功。
その隙に潤と流星は先へ進む。
最早あんなクレイジー軍人は巻いてしまった方が後々楽である。
「さてと」
「堂々と正面から入ったがこりゃぁ裏口かなぁ」
一応、裏口の警備体制は整えてある。
犯人に逃げる道は与えてはいないが、三下が残っているのを見ると、目的が掴めない。
「なぁんかさ」
ふと潤が、ひょいっとカウンターに飛び乗った。そして下を指差し、「流星、」と呼ぶので流星も乗って見てみる。
「あぁ、なるほど」
カウンターの下には、事前にデータで見た死刑囚の残り二人が、頭を撃ち抜かれて死んでいた。
「ルーク!」
「はぁい」
「撤収!」
「hun?」
明らかにルークは眉間にシワを寄せ不機嫌になってしまった。
そりゃぁそうだ。
そもそも何故こんなに陳腐な強盗だかなんだかわからない現場に化け物級のスナイパーを寄越したのか。そこには、何か樹実の意図がありそうだ。
人質の疲弊した様子を見れば、長期だったのは分かる。
まずは速やかに人質である従業員やら客やらを入り口から外へ誘導することにしたが、どうも、解放されたというのに人質全員の足取りが重いのが気掛かりだった。
「ヤッパあのガキ使えナイと思うんダヨここダケの話ネ」
「あのガキ?」
「アイツだよ、アノ、smirkなガキ」
「あ、あぁ」
「陸か」
十津川陸。
彼は、今年採用の、謂わば潤と流星の後輩である。
「なんでりっくん?まぁ…あれだけどさ」
「アイツに言われてキたんダヨ!」
彼は今、部署ではどちらかと言えば情報収集を担当している。
言われてみれば確かに近頃、少しばかり詰めが甘いというか、なんとなく隠蔽臭いというか、悪い方の公安へ傾いた感はあったような気はする。
「今そんでハデスのとこに居るンダヨー?」
「…また大胆だねぇ」
樹実のそっちでのコードネームらしい。
何故、奈落の神の名前が使われるか、それは彼のそっちでの仕事が影響するのだろうか。
「あんなデスクワーク上がりに拳銃持たせようとはまぁ、らしくないよな」
「あら、ヤキモチ?」
「いや単純に、なんかありそうだなと」
でなければそんな危ない橋を、あの樹実が渡るだろうか。
「ルーク、ちなみに向こうの状況は?」
「ん?アァ。
大使館に2人、元海軍ダカ陸軍のヘッドを筆頭にシテ15だったカナ。ハデスとクソガキとゴリラと…銀チャン」
「政宗と陸は踏み込みじゃないとしたら、二人か…」
「状況は壊滅的にキツそうだね」
そんな話をしながら、最後の一人を外に出し、先程捕まえた三下を警官に引き渡そうかというときだった。
「きゃぁ!」と、悲鳴が聞こえて話が終わる。人質の最後の一人、金髪で線が細い背中。
警官が一人、脳天をぶち抜かれて倒れた。制帽が足元に転がる。
なるほどそう来たか。
三下ジャンキーが、「ひっひっひ…」と、気が狂ったように引きつった笑い声を上げた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
「幸せ不感症」
ヨヲウレウ
現代文学
私は不幸ではないが幸せを感じることができない「幸せ不感症」
緩慢な日常によって緩やかに死へと向かう私。
そんな私の日常で大きな選択をする。
その選択によって私はこれからの人生を含めて最も長い1日を過ごすことになる...
【百合】彗星と花
永倉圭夏
現代文学
一筋の彗星となって消えゆく一羽の隼とその軌跡
全72話、完結済。六年前、我執により左腕を切断したレーサー星埜千隼。再接合手術には成功するものの、レーサーとして再起の道は断たれた。「虚ろの発作」に苛まれ雨にそぼ濡れる千隼に傘を差しだしたのは……
(カクヨムにて同時連載中)
鷹花の二人編:第1話~第22話
疾走編:第23話~第58話
再生編:第59話~最終第71話
となっております。
三条美玲の炎上
中岡 始
キャラ文芸
SNSで100万人以上のフォロワーを持つ美しきインフルエンサー・三条美玲が、「青海の宿」という洗練された温泉リゾートを訪れます。そこで出会ったのは、誠実で冷静なフロントスタッフ・佐々木隼人。完璧なホスピタリティと端正な容姿に魅了された美玲は、隼人との「特別な関係」を妄想し始め、やがてSNSで彼との関係を匂わせた投稿を繰り返すようになります。
一方で、青海の宿では美玲の要望が次第にエスカレートしていく中、プロフェッショナリズムを重んじる総支配人・松永やマーケティングディレクター・田村綾子が慎重に対応を進めます。しかし、ついに美玲が不満をSNSでぶつけたことで、事態は炎上騒動へと発展し、美玲の影響力が予想外の形で試されることに。
彼女のフォロワーたちが彼女を支持するのか、それとも…。ホテル側が守り抜こうとする「真のホスピタリティ」とは何か。そして、果たして美玲はこの騒動から何を学ぶのか?ホテルとインフルエンサーの複雑な駆け引きと成長を描く物語が、いよいよ幕を開けます。
妻と浮気と調査と葛藤
pusuga
現代文学
妻の浮気を疑い探偵事務所に調査を依頼した男。
果たして妻は浮気をしているのか?葛藤を繰り返し何を持って自分を納得させるのか?そんな話です。
隔日連載
全15話予定
ちなみに完全フィクションです。
勘違いしないようにして下さい。
夫の親友〜西本匡臣の日記〜
ゆとり理
現代文学
誰にでももう一度会いたい人と思う人がいるだろう。
俺がもう一度会いたいと思うのは親友の妻だ。
そう気がついてから毎日親友の妻が頭の片隅で微笑んでいる気がする。
仕事も順調で金銭的にも困っていない、信頼できる部下もいる。
妻子にも恵まれているし、近隣住人もいい人たちだ。
傍から見たら絵に描いたような幸せな男なのだろう。
だが、俺は本当に幸せなのだろうか。
日記風のフィクションです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる