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The 7th episode
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「てか流星、水を差すようだがひとつ言っていいか」
新宿のホテルを出てタバコに火をつけた政宗がふと言った。なんだろう、俺は今から説教されるのだろうか。
「なんですか」
「お前今さぁ、まぁここにこうして無理矢理乱入して死刑囚をぶっ殺して姫を強奪したわけじゃん?
しかし現実を見たらさ、今お前はまぁ、独断で、ちょっと行き過ぎて暴れた後にぶっ倒れてさ、こうして昔の先輩連れ回して。
まぁそれはいいんだが」
よくないよくない全然よくない。絶対イライラしてるよこれ。
「…今日の件に関しましてはその…なんですか、誠に申し訳」
「いや、それは最早ここまで来ると呆れを越えてなんか吹っ切れたわけだよ。
もっと現実的な話をするとだな、お前、これからホストクラブ、潜入捜査するのか?」
…確かに、微妙なところに立ってしまったな。
「さらにもっと現実的な話をするとだな。
まぁスゲー頑張って姫は捜査続行出来たとしよう。お前さ、今の状況。
某大型音楽番組をバックれサンキューしたレズビアン外人アーティストみたいなことになってねぇか?Artemisで」
「ぷはっ、」
潤が後ろで吹き出した。そのネタわかるのかお前。
「ずいぶん懐かしいネタ持ってきたね政宗」
「年齢を感じますね…、じゃなくて。
確かに今の状況だと俺はあの店では、突然不機嫌になって楽屋に籠っちゃって出てこない状態ですね、しかしですよこれを見てくださいよ」
先程から鳴りっぱなしのケータイ電話を見せる。
「…うん、完璧にタ」
「いやいや潤さん、着信履歴を見なさいよ。ここが君と違うとこなの」
ケータイ画面を覗き混む二人は声を揃えて「怖っ!」と言った。
「大丈夫大丈夫、業務用だから」
「お前さ、仕事は出来てもなんか人間味無いな」
そう言われてしまうとなぁ…。
「それ、要するにウチの社長だよね」
そう。
バックれ部下に鬼電をする上司、浅井の合間に、来栖万里子の履歴も何件か存在しているのだ。
つまり何を意味しているかって。
「潤ちゃん、俺はお前と違ってな、ちゃんとターゲットの連絡先をおさえていたんだよ」
「それは待って、どういった目的があるのでしょうかぶちょー」
「多分君が考えているような卑猥な意味ではない。
さぁて、今ある情報をまとめようか先輩」
取り敢えず近くに止めた捜査車両へ向かって歩き出す。後ろで潤が、「え、じゃぁなんなの?なに?」とかうるさいのを完全に無視。
「本気になったな、流星」
後ろで政宗が面白そうに言った。
「ガチな恋なの?」とか言っているバカは最早無視しきれないらしい。
「俺はあーゆー金と恋人になるような女は嫌いだよ」
「それは同感だけどじゃぁなに?」
「ミッドナイトクラクションベイベーしてやろうじゃんってことだよ」
「凄く分かりにくい。なんだよそれ」
数秒考えた後、政宗がポツリと、「もしかして曲名?」と聞いてきた。ダメだ、伝わらないネタだった。
「なかなかコアだなお前」
潤だけがポカンとしていた。まぁいい。
「まずは、あてにならないだろうがこの番号の解析もするか。これは多分潤の方が早いな」
「瞬殺だよ、俺を誰だと思ってんの」
「政宗は注射器の中身解析…の前に潤の血液採取。お前、なんか盛られてんだろ?」
「あ、そうだそうだ。
いやけどさ、どうせなら見せつけてやろうよクソ社長に」
「いいなそれ、採用。
俺は取り敢えずみんなを集めるわ…っても…」
来てくれるかな。
「え、なにお前ここに来てそこビビる?」
「…そうだな、確かにな」
「そう言うところがまだまだガキだなお前は」
え、何これ。
こんなに責められたらなんかさ。
「ムカつくんですけど」
「はいはい、その意気だよ王子さん」
「あ、それもすげぇ勘に触る」
「気が短いですねぶちょー」
「うるせぇ社会不適合発情期」
「殺すぞ殺戮鉄面皮」
「はいはいうるせぇぞバカ共。どっちも同じくらいバカだから。てかすげぇどっちも悪口が的を射すぎてて洒落にならんわ」
てゆーかそもそも。
「元を辿ればあんたがさ、今日の朝にさ」
「わかったわかったうるせぇ単細胞!
ほれ早くしろ、先方は待っちゃくれねぇんだよ」
くぅぅ。こんな時に無駄に先輩だ。
これ以上は多分俺たちに勝ち目はないので二人揃って従うことにした。
新宿のホテルを出てタバコに火をつけた政宗がふと言った。なんだろう、俺は今から説教されるのだろうか。
「なんですか」
「お前今さぁ、まぁここにこうして無理矢理乱入して死刑囚をぶっ殺して姫を強奪したわけじゃん?
しかし現実を見たらさ、今お前はまぁ、独断で、ちょっと行き過ぎて暴れた後にぶっ倒れてさ、こうして昔の先輩連れ回して。
まぁそれはいいんだが」
よくないよくない全然よくない。絶対イライラしてるよこれ。
「…今日の件に関しましてはその…なんですか、誠に申し訳」
「いや、それは最早ここまで来ると呆れを越えてなんか吹っ切れたわけだよ。
もっと現実的な話をするとだな、お前、これからホストクラブ、潜入捜査するのか?」
…確かに、微妙なところに立ってしまったな。
「さらにもっと現実的な話をするとだな。
まぁスゲー頑張って姫は捜査続行出来たとしよう。お前さ、今の状況。
某大型音楽番組をバックれサンキューしたレズビアン外人アーティストみたいなことになってねぇか?Artemisで」
「ぷはっ、」
潤が後ろで吹き出した。そのネタわかるのかお前。
「ずいぶん懐かしいネタ持ってきたね政宗」
「年齢を感じますね…、じゃなくて。
確かに今の状況だと俺はあの店では、突然不機嫌になって楽屋に籠っちゃって出てこない状態ですね、しかしですよこれを見てくださいよ」
先程から鳴りっぱなしのケータイ電話を見せる。
「…うん、完璧にタ」
「いやいや潤さん、着信履歴を見なさいよ。ここが君と違うとこなの」
ケータイ画面を覗き混む二人は声を揃えて「怖っ!」と言った。
「大丈夫大丈夫、業務用だから」
「お前さ、仕事は出来てもなんか人間味無いな」
そう言われてしまうとなぁ…。
「それ、要するにウチの社長だよね」
そう。
バックれ部下に鬼電をする上司、浅井の合間に、来栖万里子の履歴も何件か存在しているのだ。
つまり何を意味しているかって。
「潤ちゃん、俺はお前と違ってな、ちゃんとターゲットの連絡先をおさえていたんだよ」
「それは待って、どういった目的があるのでしょうかぶちょー」
「多分君が考えているような卑猥な意味ではない。
さぁて、今ある情報をまとめようか先輩」
取り敢えず近くに止めた捜査車両へ向かって歩き出す。後ろで潤が、「え、じゃぁなんなの?なに?」とかうるさいのを完全に無視。
「本気になったな、流星」
後ろで政宗が面白そうに言った。
「ガチな恋なの?」とか言っているバカは最早無視しきれないらしい。
「俺はあーゆー金と恋人になるような女は嫌いだよ」
「それは同感だけどじゃぁなに?」
「ミッドナイトクラクションベイベーしてやろうじゃんってことだよ」
「凄く分かりにくい。なんだよそれ」
数秒考えた後、政宗がポツリと、「もしかして曲名?」と聞いてきた。ダメだ、伝わらないネタだった。
「なかなかコアだなお前」
潤だけがポカンとしていた。まぁいい。
「まずは、あてにならないだろうがこの番号の解析もするか。これは多分潤の方が早いな」
「瞬殺だよ、俺を誰だと思ってんの」
「政宗は注射器の中身解析…の前に潤の血液採取。お前、なんか盛られてんだろ?」
「あ、そうだそうだ。
いやけどさ、どうせなら見せつけてやろうよクソ社長に」
「いいなそれ、採用。
俺は取り敢えずみんなを集めるわ…っても…」
来てくれるかな。
「え、なにお前ここに来てそこビビる?」
「…そうだな、確かにな」
「そう言うところがまだまだガキだなお前は」
え、何これ。
こんなに責められたらなんかさ。
「ムカつくんですけど」
「はいはい、その意気だよ王子さん」
「あ、それもすげぇ勘に触る」
「気が短いですねぶちょー」
「うるせぇ社会不適合発情期」
「殺すぞ殺戮鉄面皮」
「はいはいうるせぇぞバカ共。どっちも同じくらいバカだから。てかすげぇどっちも悪口が的を射すぎてて洒落にならんわ」
てゆーかそもそも。
「元を辿ればあんたがさ、今日の朝にさ」
「わかったわかったうるせぇ単細胞!
ほれ早くしろ、先方は待っちゃくれねぇんだよ」
くぅぅ。こんな時に無駄に先輩だ。
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