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The 3rd episode

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 再び部署から出て電話に出る。

「はい、スミダ」
『早速お仕事です。まず誰もいないところに移動しなさい』

 なんだよ。

 仕方なく少し離れた外階段へ出てタバコに火をつけた。

「なんですか」
『龍ヶ崎連合会。お前ここに潜入捜査して来い』
「はぁ、なんで」
『ここにガサ入れすれば少しはヒントが得られると踏んでいるんだよ。ズバリ、エレボスのな』
「…あんたのことだから根拠あるんでしょ?手の平見せてよ」
『お前そんなのも調べついてないの?會澤組だよ。
 俺の予想だが、會澤組以外、他のヤクザ共も吊れると思うんだ。
 龍ヶ崎連合会は政府機関の天下り企業とも深く繋がりがあるところだ。ここがもし黒なら…』
「なるほど」
『麻薬なんだが、恐らく…。相手はヤクザだ、一般市民にも出回っている可能性がある』
「へーい」
『捜対5課は薄々気付いて捜査を先行している。ただこれはお前の管轄捜査ではない』
「つまり…」
『密令、と言ったらいいか?ただ掴めてないのが現状だ。
 ブツの回収と現在の龍ヶ崎連合会の活動報告な。お前にとっても良い話だろ?ただ、捜対5課あちらさんは先行だからな、特本部にも口外すんなよ。
 5課にはお前のこと、それとなく伝えてあるから』
「…了解しました」

 電話を切った。
 やれやれ仕事が増えた。

 しかしどうやって潜入しろっつうんだ。
と、思っていたらメールが来た。

 添付されていた写真を見ると、俺の顔写真とでたらめすぎる経歴の履歴書に、“冨多とみた竜也たつや”という名前が書いてあった。

 はぁ…。
心の溜め息が口からも洩れ出た。

 部署に戻り、政宗から送られてきた書類に目を通す。

 新宿歌舞伎町、ホストクラブ“Artemis”。売上10位以内にランクインする場所で…。

 あかんあかん、意識が飛びかけている。

「政宗、ちょっと」
「あいよ」

 呼んで政宗が来る。
 先程買ったコーヒーが目に入り、開けようとしたが力が入らない。無理矢理開けて一口飲んだ。

「これはなに?」
「あぁ。
 このホストクラブ、最近経営が傾いてるらしくてな」
「へぇ、10位以内なのに?」
「これはよかった頃だ。
 向かい側に最近出来た“Hestia”っつーホストクラブに客を持ってかれてるらしい。今はそのおこぼれというか、客は1件目にHestia、2件目にArtemisって感覚らしいんだが」
「へぇ、珍しいな」

 あぁ、少し寝そうだ。

 左手を無意識に噛んでいたら然り気無く政宗にそれを制された。

「…今日の昼に諒斗あきとに聞き込みを頼んだ。
 したら、どうもArtemisのホストの兄ちゃんたちが言うには、最近客がなんか不審なもんを持ってくるんだと。その客は大体が、この界隈で遊び始めた初心者って言うか…そんな感じの男女が多いらしくてな。
 しかもHestiaは、なんていうかホストの素行が悪いらしくてな。アフターサービスあり!みたいなのを堂々と掲げてるから近隣の店もちょっと困ってると」
「うーん、なんで摘発しねぇかな」
「そこなんだが。
 Hestiaのバックにはどうも、龍ヶ崎連合会が絡んでるっぽい」
「龍ヶ崎連合会…へぇ、丁度いいな」

 丁度俺が明日から潜入捜査に行くところだ。

「は?」
「その不審なもんてのがヤクなの?」
「いや、そこは皆あまり話したがらなかった。多分、よくわかってないんだろうな。なんとなく、Artemisのホストの兄ちゃんが持ってた客に聞いてみたそうだ。
 Hestiaに何回か通っていたらもらったって言われたらしい」
「…曖昧だな。政宗的にはどう思う?」
「正直まだわからんが、黒かな」

 頭のなかで人員を組み立てる。しかしなかなか埋まらない。少し規模がデカい。

「潜入捜査と行こうか」

 政宗がニヤリと笑った。

 眠くなるので俺は立ち上がり、ホワイトボードの前に立つ。皆一斉に注目した。

 いま政宗から聞いた情報をすべて説明しながらホワイトボードに書き出す。ついで、龍ヶ崎連合会についてこの前の狙撃事件の件について補足する。

「と、言うわけで。潜入捜査しようかと思う。まずそうだなぁ、
 Hestiaに従業員として1人、客として1人。Artemisに従業員1人。一週間。後半状況によっては人員配置を変えようかな。
別所でサポーターも一人くらい着けようか。
 潤、お前霞とHestiaに行け」
「あいよー」
「はーい」
「こっちをどうするか…」

 見渡す限り未成年者か、20上がりの男の子か逆に歳がいきすぎた奴しかいない。

「サポーターは政宗に頼みたい。ブツ回収の際、慧さんと愛蘭は残っていて欲しい。…みんなホスト業苦手そうだよな」
「俺やってみたーい!モテる?」
「諒斗は確かに潜入捜査は慣れてるだろうがダメだな。恭太と伊緒は確か未成年者だよな…。
 経験として伊緒。お前はサポーターに回れ。恭太は鑑識課の手伝い。諒斗は一日の情報を纏める。
 瞬は…」
「お酒が…」
「だよな」

 確か20になったばかりだと大使館の時に言っていた。

「じゃぁ瞬と諒斗で資料まとめ。
大詰めになってきたときにお前らはガサ入れのキーパーソンになるからな」
「はい…」
「うぃっす」
「あれ、これってもしかしなくても…」

 人員配置を見ていくと、どう考えても名前がないのは俺と、特本部サポートのユミル以外にいない。

「げっ…」

 マジかよ。

「頑張れ部長」

 政宗が楽しそうに言う。

「うわぁ…」

 最悪だ。一日に二件掛け持ちの潜入なんて。
 今日何度目かわからない溜め息を吐いた。

 こうなりゃヤケクソだ。いくらでもやってやる。
 昼間はヤクザ、夜はホスト、上等じゃねぇか。

 あ、てか根本的なことを忘れていた。

「政宗や潤、大変だ」
「なんだよ」
「切羽詰まってんなぶちょーさん」
「俺スーツそんな持ってねぇ」

 だって考えたら。
 ヤクザもホストもスーツ業だろ。
 俺毎回ここ来るのだって一週間やっとなのに。

「は?」
「ちょっと今日行く前にさ、スーツ屋寄っていい?」
「お前いままでどうやって生きてたんだよ」
「あっちではスーツで戦ったりしねぇの!むしろ邪魔なの!だから持ってないの!」

 そんなやり取りを聞く部署一同クスクスと笑っていた。

「流星さん、どんどん暴かれていきますね」

 伊緒にそう言われた。

 暴かれてくって。
 まぁな、お前は政宗にいろいろ吹き込まれてるからな。

「わかったよ!」
「はい、じゃぁ作戦会議終了!」

 そこからは各自、潜入捜査の事前下調べをした。
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