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The 2nd episode

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 そんな話をしているうちに部署に着いた。さっそく山瀬のデスクに向かう。隣に座る猪越いのこしさんが自分のパソコンと合わせて睨んでいた。

「猪越さん、部長です」
「あぁ、お待ちしておりました」
「すみません、遅くなりました。結果出たんですね」
「はい。流石です部長」
「…なんか猪越さんにまでそう呼ばれるのちょっと…」
「…私も少々抵抗があります。けしてその…なんていうのか…ナメてるわけじゃないんですが」

 真面目な人だなぁ。

「わかってます。ナメてたらここには来てくれないでしょう。貴方、バカ真面目ですね」
「ははっ…向こうでもよく言われてました。
 なんてお呼びしましょうね」
「うーん。てか思ったんです。
 この子たち見てたら名前で呼びあってるんですよね。これいいなって」
「あー、じゃぁ流星さんでいきましょうか」
「じゃぁさとしさんで。
 長々と雑談すみません。えっと、慧さんにはかなり仕事を振っていますね。すみません…。どの件でしょう」

 取り調べやDNA鑑定や麻薬の特定や銃弾の特定。その他犯罪者の経歴など、様々だ。
 しかも今回の事件は7年前のも遡らねばならない。とても二人で処理するのは並大抵の鑑識官には出来ない。

「はい、どの件からがよろしいですか?今のところ銃弾の特定と官房長がらみは確信があります。DNAと麻薬はちょっと関連性がありそうですが推測の域です」
「あぁ…流石、仕事が早い」

 俺の目に狂いはなかった。慧さんはかなり優秀だ。

「しかし今はそうだなぁ、薄い線からいきましょうか。潤と早坂くんが取り調べに向かったのかな?」
「はい。件の麻薬は、ただいま副部長…政宗さんが色々やってます」

 あいつ、理系だからなぁ。

「まず、DNAの特定ですが。
 ここ半年くらいで捜索願いを出された人物と一致するものが1件ありました。そして、何より…。
 死亡が確認された人物、つまりは死亡届けが出された人物ですね。こちらは該当が1件。その他6件は身元不明ということになります」

 パソコンで開かれたデータを見てみる。

「被害者の共通点が未だはっきり出てきていません」

 確かに見てみると、
 捜索願いを出された一件は24歳女。杉並区在住のフリーター。死亡届けは6歳男児。江東区在住。

「しかしながらDNA反応では、比較的成人男性が多いようなんですよ」
「まぁ、7年前のやつらの手口もそうだったからな」

 そもそもやつらのビジネス相手は海外の医療機関、こう言ったら聞こえはいいが、もう少し後ろ黒い、いわば人体実験施設のようなところや、日本のヤクザなど幅は広い。いずれにせよ人は興味対象、ゴミかなんかとしか思っていないような組織なのだ。

「この薬物なのですが…私の推測を話してもいいですか?…もしかすると流星さんのメンタルがちょっと…」
「…はい、潤の受け売りですか?」
「政宗さんです。
 心の準備を…」
「いや、なんとなく察しはついているんです。今回押収したものを頭の中で組み立てました。3回吐きました。ズバリ、細胞というか内臓ですな?」

 自分の日本語がおかしいことには気付いている。

「…その通りです」
「うぉぉ、的を射ちまった…。マジか…」

 こんな時自分の勘を恨む。

「愛蘭さん、彼にお茶を淹れてあげてください」
「かしこまりました」
「ありがとう…胸焼けがする…」

 すぐにお茶を出してくれたが、それすら喉をなかなか通らなかった。

 気分転換に一度取り調べを見に行こう。ちょっとグロから離れたい。

「はぁ、俺ちょっと取り調べ見てきます」
「では俺も行きます。愛蘭さん、君も行きましょうか」

 なんだか物凄く生き生きしている。

「はい…」

 どうやら、優秀な鑑識は情報収集が好きらしい。
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