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The 2nd episode
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環はキョロキョロと辺りを見回している。環も、何もかもが新鮮なのかもしれない。
カフェラテとBLTが来ると、環はキョロキョロはやめ、手を合わせてから飲み始めた。
「初めてだな」
言うだけで、環は俺を綺麗な目で見つめてくる。
「二人でこうやってどこかに来るのは」
にっこりと微笑んで、頷いた。
「美味い?」
そう聞けば環は頷いて。
「よかった。病院じゃ、カフェラテは飲めないもんな」
俺の顔をじっと見つめながら微笑んでいる。妙に、暖かい表情だった。
「美味いよ。また来れたらいいな」
頷いてくれた。
よかった。
途中で環はガムシロップを入れていた。俺のガムシロップもいるか聞いたら頷いた。
思ったより、環が甘党なことがわかった。
「甘いもの好きだったんだな」
何度も環は頷く。
「じゃぁ今度なんか買ってくるよ。何が好きなの?」
そう聞くと、環はメモを取り出して書き始めた。
「たい焼きとわらび餅とチョコレートケーキみたいなやつとバームクーヘン…」
ラインナップが変わっているな。
「チョコレートケーキみたいなやつ?」
訪ねるとジェスチャーを始めた。手を輪にしたり、フォークで切る仕草をしている。
「んー?」
なんだろう。
環も諦めて、絵で描いてくれた。
「フォンダンショコラか!」
甘党の味方だろうな、これは確かに。
環が訪ねるように首を傾げるので、「俺はまぁ…」と言って考えてみる。
「特別買ってきて食べたりはしないけど…わらび餅好きだよ。水羊羹とか」
そこは同意してくれた。
「そっかぁ、甘いもの好きなのか。フォンダンショコラは甘党の象徴だよな」
ウチの部署に甘党いないかな。誰かに聞いてみよう。
少しゆっくりしたところで、会計をして喫茶店を出た。出る頃にはキョロキョロしなくなっていた。
そこから二人で少し歩いて公園についた。
その辺にあるような、ブランコと滑り台がある公園。しかし、この公園は…。
「滑り台、使用禁止?
ブランコも、なんか、何?事件でもあったの?めっちゃテープ張ってあるけど」
環は首を振ってメモ帳を取り出した。
“最近はみんなどこもこんな感じらしいよ”
「なんで?」
“危ないから。ニュースで見たよ”
「えぇー。つまんねぇな。
あのさ、タバコ吸ってもいい?あっちで吸うからさ」
ブランコを差すと頷くが、不安そうだ。
環はベンチに座り俺は使用禁止のブランコのテープの中に入ってタバコに火をつける。
久しぶりだ。
俺がタバコを吸っていると環は、じっと手元を見ている。
「ごめん、一本でやめるよ」
そう言うと、首を横に振る。そして何かを書いて俺に渡してきて焦り、「いや、ちょっと待って、いま消すから!」と伝えてタバコを消すが、なんだかいじけたような顔をしてしまった。
なんだろう。
紙には、“指が綺麗。タバコを吸ってる姿、好き”と書いてあって。
「あ、そうなんだ…」
こっちは、煙はあんまり喉によくないかなとか色々考えたんだけど、いじけてしまったようで。
てゆうかこれ、ちょっと…。
「照れるなこれ」
微笑みかければ、環ははっとした顔をして俯いてしまうけど。俺にはそれがなんだか面白くて、ついつい笑っちゃって。
少し顔を上げた環のその表情は、なんだかやっぱりいじけてるけど。
「ごめん…だってさぁ…!
環は素直だなぁ…」
ブランコに座った。
地面より少し高いけどやっぱり座りにくい。足を伸ばす形になってしまった。どうして、小さい頃は乗れるんだろう。
「ねぇねぇ。ちょっと隣おいでよ」
ちょっと不安そうで。
「大丈夫。どうやら危なくないから、このブランコ」
促せば頷いて、テープを跨いで隣のブランコに座った。ホントは、ちょっと低いから座りにくいけど。
「…ブランコって座りにくいよね。けど、たまにはいいね」
やっぱり環も足のやり場に困ったらしい。少しゆらゆらさせている。
「今日はホントによく晴れてるよ。青空だ」
環はぼんやりと空を眺めて、こんどは少し悲しそうな顔をした。
「ブランコはさ、きっと空に近付けるような気がしたんだよね。小さい頃。
環には空って何色に見えんの?」
やっぱり悲しそうだ。だけど地面に枝で書いた字は、“青”で。
「俺はね、」
“蒼”と書く。
「同じものを見てても違うって、面白いよな」
少し、環の表情は暖まった。
そろそろ寒くなってきた。空も、雲で覆われてしまって真っ白だ。朝までの天気はどこへやら。これは雨が降るかもしれない。
「そろそろ帰ろうか。寒くない?」
着ていた薄手のカーディガンを貸すと、不思議そうな顔をしながらも少し頭を下げて羽織った。
カフェラテとBLTが来ると、環はキョロキョロはやめ、手を合わせてから飲み始めた。
「初めてだな」
言うだけで、環は俺を綺麗な目で見つめてくる。
「二人でこうやってどこかに来るのは」
にっこりと微笑んで、頷いた。
「美味い?」
そう聞けば環は頷いて。
「よかった。病院じゃ、カフェラテは飲めないもんな」
俺の顔をじっと見つめながら微笑んでいる。妙に、暖かい表情だった。
「美味いよ。また来れたらいいな」
頷いてくれた。
よかった。
途中で環はガムシロップを入れていた。俺のガムシロップもいるか聞いたら頷いた。
思ったより、環が甘党なことがわかった。
「甘いもの好きだったんだな」
何度も環は頷く。
「じゃぁ今度なんか買ってくるよ。何が好きなの?」
そう聞くと、環はメモを取り出して書き始めた。
「たい焼きとわらび餅とチョコレートケーキみたいなやつとバームクーヘン…」
ラインナップが変わっているな。
「チョコレートケーキみたいなやつ?」
訪ねるとジェスチャーを始めた。手を輪にしたり、フォークで切る仕草をしている。
「んー?」
なんだろう。
環も諦めて、絵で描いてくれた。
「フォンダンショコラか!」
甘党の味方だろうな、これは確かに。
環が訪ねるように首を傾げるので、「俺はまぁ…」と言って考えてみる。
「特別買ってきて食べたりはしないけど…わらび餅好きだよ。水羊羹とか」
そこは同意してくれた。
「そっかぁ、甘いもの好きなのか。フォンダンショコラは甘党の象徴だよな」
ウチの部署に甘党いないかな。誰かに聞いてみよう。
少しゆっくりしたところで、会計をして喫茶店を出た。出る頃にはキョロキョロしなくなっていた。
そこから二人で少し歩いて公園についた。
その辺にあるような、ブランコと滑り台がある公園。しかし、この公園は…。
「滑り台、使用禁止?
ブランコも、なんか、何?事件でもあったの?めっちゃテープ張ってあるけど」
環は首を振ってメモ帳を取り出した。
“最近はみんなどこもこんな感じらしいよ”
「なんで?」
“危ないから。ニュースで見たよ”
「えぇー。つまんねぇな。
あのさ、タバコ吸ってもいい?あっちで吸うからさ」
ブランコを差すと頷くが、不安そうだ。
環はベンチに座り俺は使用禁止のブランコのテープの中に入ってタバコに火をつける。
久しぶりだ。
俺がタバコを吸っていると環は、じっと手元を見ている。
「ごめん、一本でやめるよ」
そう言うと、首を横に振る。そして何かを書いて俺に渡してきて焦り、「いや、ちょっと待って、いま消すから!」と伝えてタバコを消すが、なんだかいじけたような顔をしてしまった。
なんだろう。
紙には、“指が綺麗。タバコを吸ってる姿、好き”と書いてあって。
「あ、そうなんだ…」
こっちは、煙はあんまり喉によくないかなとか色々考えたんだけど、いじけてしまったようで。
てゆうかこれ、ちょっと…。
「照れるなこれ」
微笑みかければ、環ははっとした顔をして俯いてしまうけど。俺にはそれがなんだか面白くて、ついつい笑っちゃって。
少し顔を上げた環のその表情は、なんだかやっぱりいじけてるけど。
「ごめん…だってさぁ…!
環は素直だなぁ…」
ブランコに座った。
地面より少し高いけどやっぱり座りにくい。足を伸ばす形になってしまった。どうして、小さい頃は乗れるんだろう。
「ねぇねぇ。ちょっと隣おいでよ」
ちょっと不安そうで。
「大丈夫。どうやら危なくないから、このブランコ」
促せば頷いて、テープを跨いで隣のブランコに座った。ホントは、ちょっと低いから座りにくいけど。
「…ブランコって座りにくいよね。けど、たまにはいいね」
やっぱり環も足のやり場に困ったらしい。少しゆらゆらさせている。
「今日はホントによく晴れてるよ。青空だ」
環はぼんやりと空を眺めて、こんどは少し悲しそうな顔をした。
「ブランコはさ、きっと空に近付けるような気がしたんだよね。小さい頃。
環には空って何色に見えんの?」
やっぱり悲しそうだ。だけど地面に枝で書いた字は、“青”で。
「俺はね、」
“蒼”と書く。
「同じものを見てても違うって、面白いよな」
少し、環の表情は暖まった。
そろそろ寒くなってきた。空も、雲で覆われてしまって真っ白だ。朝までの天気はどこへやら。これは雨が降るかもしれない。
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