33 / 376
The 2nd episode
6
しおりを挟む
「…行こっか?」
環は頷いて立ち上がった。手を貸すと、はにかんで、握ってくる。
「これ、政宗が?」
あの野郎、良いセンスじゃねぇか。
ただこっちは、環がシャツとズボンだろうとと思っていたからかなり動揺してるぞ。
不安そうな環の表情がどうも拭えないので、「いや、似合ってる。あいつ、センスいいな」と弁解。
はにかんで少し俯く環を見て、やっぱり照れてるのかと確信。気付いたら、こっちまでなんだか照れ臭くなってきてしまった。
ぎこちないまま受け付けに挨拶をして、笑顔で見送られながら気付けば手を繋いでエレベーターに乗っていた。
なんだか気まずい。
「…具合…悪くなったり、嫌だったりしたら…何か…あ!裾を引っ張るとか、手を掴むとか、してくれよ?」
漸く、環は微笑んで頷いた。さっそく手首を掴まれたから、具合が悪くなったのかと思ったら、両手を合わせてこくっと頭を下げる。ありがとうの合図だ。
だから、思わず頭をわしゃわしゃと撫でて、「どういたしまして」と言うと、キョトンとした顔をしていて。
それくら、楽しい。本当に楽しい。
表情がコロコロ変わっていく。言葉なんてなくても、ただそれだけでわかる。ただそれには、もちろん考えなくちゃならないときもある。
それが楽しい。
環には言葉がない。
だけど人より、表情がある。
一階までついて病院を出て喫茶店に向かった。
始めは凄く緊張していたけど、ずっと手を繋いで歩いていた。
人の気配なんて最早環にはどうでもよかったようだ。周りの風景や空の色、鳥が飛んでいく姿。そんなことに、忙しなく目を向けていた。
裾を何度もちょんちょんと引っ張られた。環が指差す方向を見ると、自然があって。目を輝かせて楽しそうに見ている環を見ていたら、やっぱりよかったなと思えた。
喫茶店までのたった数百メートル、数十メートルの距離すべてが新鮮だ。
喫茶店はなんとなく、ノスタルジックな雰囲気の、古い老舗なような所だった。看板はどちらかと言えば和風。“喫茶 古都莉”と書いてあった。
席に空きはあった。昼のランチピークが過ぎて少し落ち着いたのだろうか。
窓際の席に座る。
環が少しそわそわしている。多分、外より情報が少ない分、他人が気になってしまうのだろう。
メニューを開いて二人で眺めて。
「どれがいい?」
と聞くとメニューを指す。アイスカフェラテ。俺も同じものにしよう。
店員を呼び、アイスカフェラテと、取り敢えずBLTサンドを注文。
環は頷いて立ち上がった。手を貸すと、はにかんで、握ってくる。
「これ、政宗が?」
あの野郎、良いセンスじゃねぇか。
ただこっちは、環がシャツとズボンだろうとと思っていたからかなり動揺してるぞ。
不安そうな環の表情がどうも拭えないので、「いや、似合ってる。あいつ、センスいいな」と弁解。
はにかんで少し俯く環を見て、やっぱり照れてるのかと確信。気付いたら、こっちまでなんだか照れ臭くなってきてしまった。
ぎこちないまま受け付けに挨拶をして、笑顔で見送られながら気付けば手を繋いでエレベーターに乗っていた。
なんだか気まずい。
「…具合…悪くなったり、嫌だったりしたら…何か…あ!裾を引っ張るとか、手を掴むとか、してくれよ?」
漸く、環は微笑んで頷いた。さっそく手首を掴まれたから、具合が悪くなったのかと思ったら、両手を合わせてこくっと頭を下げる。ありがとうの合図だ。
だから、思わず頭をわしゃわしゃと撫でて、「どういたしまして」と言うと、キョトンとした顔をしていて。
それくら、楽しい。本当に楽しい。
表情がコロコロ変わっていく。言葉なんてなくても、ただそれだけでわかる。ただそれには、もちろん考えなくちゃならないときもある。
それが楽しい。
環には言葉がない。
だけど人より、表情がある。
一階までついて病院を出て喫茶店に向かった。
始めは凄く緊張していたけど、ずっと手を繋いで歩いていた。
人の気配なんて最早環にはどうでもよかったようだ。周りの風景や空の色、鳥が飛んでいく姿。そんなことに、忙しなく目を向けていた。
裾を何度もちょんちょんと引っ張られた。環が指差す方向を見ると、自然があって。目を輝かせて楽しそうに見ている環を見ていたら、やっぱりよかったなと思えた。
喫茶店までのたった数百メートル、数十メートルの距離すべてが新鮮だ。
喫茶店はなんとなく、ノスタルジックな雰囲気の、古い老舗なような所だった。看板はどちらかと言えば和風。“喫茶 古都莉”と書いてあった。
席に空きはあった。昼のランチピークが過ぎて少し落ち着いたのだろうか。
窓際の席に座る。
環が少しそわそわしている。多分、外より情報が少ない分、他人が気になってしまうのだろう。
メニューを開いて二人で眺めて。
「どれがいい?」
と聞くとメニューを指す。アイスカフェラテ。俺も同じものにしよう。
店員を呼び、アイスカフェラテと、取り敢えずBLTサンドを注文。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
あなたの隣で初めての恋を知る
ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。
その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。
そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。
一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。
初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。
表紙絵は絵師の松本コウさんに描いていただきました。
太陽と龍の追憶
ダイナマイト・キッド
現代文学
昔、バンドを組んでいた時に作詞したものや、新しく書いたものも含め
こちらにて公開しております。
歌ってくれる人、使ってくれる人募集中です
詳しくはメッセージか、ツイッターのDMでお尋ねくださいませ
電子カルテの創成期
ハリマオ65
現代文学
45年前、医療にコンピューターを活用しようと挑戦した仲間たちの話。それは、地方都市から始まった、無謀な大きな挑戦。しかし現在、当たり前の様に医療用のデータベースが、活用されてる。新しい挑戦に情熱を持った医師と関係者達が、10年をかけ挑戦。当時の最先端技術を駆使してIBM、マッキントッシュを使い次々と実験を重ねた。当時の関係者は、転勤したり先生は、開業、病院の院長になり散らばった。この話は、実話に基づき、筆者も挑戦者の仲間の一人。ご覧ください。
Noveldaysに重複投稿中です。
天穹は青く
梅林 冬実
現代文学
母親の無理解と叔父の存在に翻弄され、ある日とうとう限界を迎えてしまう。
気付けば傍に幼い男の子がいて、その子は尋ねる。「どうしたの?」と。
普通に生きたい。それだけだった。頼れる人なんて、誰もいなくて。
不意に訪れた現実に戸惑いつつも、自分を見つめ返す。その先に見えるものとは。
大学寮の偽夫婦~住居のために偽装結婚はじめました~
石田空
現代文学
かつては最年少大賞受賞、コミカライズ、アニメ化まで決めた人気作家「だった」黒林亮太は、デビュー作が終了してからというもの、次の企画が全く通らず、デビュー作の印税だけでカツカツの生活のままどうにか食いつないでいた。
さらに区画整理に巻き込まれて、このままだと職なし住所なしにまで転がっていってしまう危機のさなかで偶然見つけた、大学寮の管理人の仕事。三食住居付きの夢のような仕事だが、条件は「夫婦住み込み」の文字。
困り果てていたところで、面接に行きたい白羽素子もまた、リストラに住居なしの危機に陥って困り果てていた。
利害が一致したふたりは、結婚して大学寮の管理人としてリスタートをはじめるのだった。
しかし初めての男女同棲に、個性的な寮生たちに、舞い込んでくるトラブル。
この状況で亮太は新作を書くことができるのか。そして素子との偽装結婚の行方は。
我ら同級生たち
相良武有
現代文学
この物語は高校の同級生である男女五人が、卒業後に様々な形で挫折に直面し、挫折を乗り越えたり、挫折に押し潰されたりする姿を描いた青春群像小説である。
人間は生きている時間の長短ではなく、何を思い何をしたか、が重要なのである。如何に納得した充実感を持ち乍ら生きるかが重要なのである。自分の信じるものに向かって闘い続けることが生きるということである・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる