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Prologue

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「潜入?お前銃は?」
「3丁あればいいだろ」
「どこに隠し持ってんだか。スナイパーは怖いねぇ」
「別に戦争しに行く訳じゃねぇんだから」
「…とか言ってフルオートのダブルアクションかよ。殺し屋としか思えねぇよ。
 そうだあんたさ、官房長ファミリーはここにいるの?別の場所?」

 とか言うお前だって同じような性能の特殊部隊の暗殺用拳銃を有無を言わさず警官に向けてんのもどうかと思うんだが。あまり人のこと言えないだろう。

「…知らねぇよ」
「あ?」

 話が進まなそうだ。俺はタバコに火をつけ、しゃがみこんで警官を見据えた。ちょっと怯んだ。

「兄さん、あんまこいつを怒らせない方がいいよ。こいつ俺より若いから気が短いんだよ。
 こんな可愛い見た目をしていても口は悪いしすぐ正当防衛とか言って足あたりに一発撃っちゃうからね」
「人聞き悪いな、お前ほどじゃないでしょ?」
「お兄さんくらいの警官じゃわかんないよね。この兄ちゃんね、こんな細い腕してぶっ放すの特殊部隊の殺傷能力半端ねぇ銃なんだよ?しかもパラベラム弾だから多分足治らないよ。ほら、吐いちまいなよ。今なら俺がこいつを押さえてあげるだけの気を持ってるから」
「…あんた、何言ってんだよ」
「あのね、こいつも気が短いが、俺も相当気が短いんだ。用済みならね、FBI捜査官に反撃してきた、しかもテロに荷担してるかもしれない一般警官一人撃ち殺してもいいやって思ってきてるんだけど?さっさと喋れない?」

 タバコを顔面に近付けると警官は「ひぃ…」と小さく漏らした。

「本当に知らないんだよ」

 前島さんともう一人警官が漸く到着した。一瞬ちらっとそちらに視線だけ送る。

「あっそう。使えないね。お前は職務を全うしないまま犯罪者で終了だ。公務員だからってぬるま湯に浸かってんじゃねーよ、この税金泥棒」

 前島さんに会釈をし、状況を話してもう一人に引き取らせる。

「これはお宅ら警官の重大なミスだ。身内を信用しすぎると殺されますよ。
 ただ、配備したはずのやつら15人以上がグルだとはとても思えない。流石にね、警察15人以上っていうのはね。これは思ったより状況は悪いし掴めないのでやはり潜入します」
「待った、二人じゃ危険だ」
「じゃぁあとでテキトーに投入しといてください。だからといって前を手薄にするとあっさり逃げられますからね。
 一人くらい裏口に信用の置ける、そうだなぁ、逮捕係でも付けといてください」
「…だが」
「お宅ら気が長すぎるんだよ。のほほんとやってるから3日もテロリストに好き勝手やられんだよ。あんた指揮官向いてないね。穴だらけじゃねぇか。アメリカ行ったらこんなの真っ先に殺されて占拠されるわ。
潤、行くぞ」
「はいはい。
 すんませんね、ウチの先輩こんなんで」

 潤は前島さんに軽く頭を下げてから着いてきた。前島さんは唖然としていた。

 取り敢えず局長に電話した。

『なに?』
「もしもし?あのー、指揮官の前島ってやつの致命的ってかツメの甘さってかなんだろ、センスの無さでホテル全体的に占拠されてそうなんで勝手に突入しますからね」
『その感じだと掴んだ?』
「掴めてないっすよ。現場が無能すぎる。これじゃ一週間掛かっても多分終息しねぇよ。
 あ、鑑識の猪越さんは気に入った。
 まぁ予想だともう死刑囚は殺されてるよ。多分、これは別の組織が動いてるんだろう」
『ほぅ』
「あんた、だから俺に行かせたんだろ?
まあいい。何かあったら俺と潤の骨を拾いに来てくださいね。では」

 イライラして電話を切る。

「やっぱり気になってんだ」

 潤がそう言った。

「…別に」
「あっそう。
 俺は気になってるけどね。お前よりひねくれてないから正直に言うけどさ」
「…ホント一言多いなお前」
「お互い様でしょ?さっきの流星マジ怖かったからね。そんな蛇みたいな目で睨まれてあんなん言われたらそれだけで恐いっつーの。ただの警官苛めんなよ、性格悪いな」
「だってイライラするんだもん。
 あんなテキトーさで関係ないヤツが死んだらどうすんだよ。相手は今のところジャンキーになってるが、それだけでも充分やべぇのになんであんなみんな眠そうに仕事してんだよ」
「あー、それ日本人の悪いとこ。根詰めすぎ。
 流星、ここは日本だ。戦場では、一応ない」
「うるせぇわかってる。だが日本でも…」
「あー、はいはい。わかってるよ。
 ワーカホリックだよね、お前わりと。心休まれよたまには」

こんなときに何寝ぼけてんだこの野郎。

「…冗談はさておき。
 さて、決めとこうか。
 お前が死んだら何葬がいい?」
「密葬」
「海外行ってたから日本語忘れたの?
 俺は水葬ね。お互い死んだら局長が問答無用で火葬にするだろうね。
 じゃ、行こうか」
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