I jast wanna fly

二色燕𠀋

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前編

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「知っている人は知っているというか…そんな過去ログもちらほらと見かけました」
「……で?あの爆弾は在庫処分的な?でも中身なくねぇ?」
「まぁ、その辺は組対に頼めばわかるでしょうが…」
「そんなことを俺に言ってもしょーもないよな?遠回しじゃなくていい。アテは成金か?」
「予想でしかないですけどね。あのサイトの“天使ちゃん”が、どうやら夜中には削除されていました」
「……組対で正解だな。あの兄ちゃんの役には立ったか。
 そんで?不機嫌多摩さんの昨日の接待効果は?」
「あのマトリは本当に同僚から頼まれただけ、みたいですが、当たり前に調べてましたよ。
 厄介なのは警察へ提出したデータが紛失した…」
「で、済む話じゃないよな」
「はい。
 その同僚はどうやらプログラムに強いようで。平良がいる一課に、ロストした瞬間そのデータが共有されるようにしていたようです。現在その同僚のパソコンは組対サイバー課にあるそうで」
「…やっぱ、平良より使えるなあの兄ちゃん。
 そのデータは見せてもらえた?」
「んですが…なんとなく調べた本人の意思はわかりますが、まだ初動みたいで、一見こじつけですね。陰謀論者の妄想程度でハネられそうな」
「なるほど。それなら確かにこっちを使いたいわなぁ。用意周到だ。
 気に入った。名前は明かしてくれたか平良は」
「……本人かわかりませんが最早そのデータのファイル名が…」

 多摩がふいっとメモ紙を見せてきた。
 急なアナログ感に一瞬戸惑ったが「けー……K_uakadacisehiaY?」と…。

「アナグラムか…わかんねーよ普通に。KとYが名前か苗字くらいしか…」
「カイエダ・ヤスチカだそうで」
「えぇ!?あいつは同僚の名前を教えちゃうの!?」
「みたいです」
「……どこまでも嫌な奴だな、普通ヤクザに教える?普通」
「まぁそれは今更では?」
「そうなんだけどあっさり出てきてビックリしたわ、うーん、何このアナグラム意味なし?アナグラムメーカーかなんかで作ったの?」
「でしょうね」
「あ、危ね、それるとこだった。
 中身は?」
「………なんとなくざっと概要を筋立てしていれば「あー、なるほど」くらいの……その……。
 会長、注射すら嫌いじゃないですか?」
「……っあー……。慧が「拷問」とか言って…」
「そっちはスナッフフィルムで…」
「えっ」
「あとはまぁ…あ、映像にはなくこれが一番繋がりにくい面ですが…臓器売買の記録とかがありました、ビデオに…左側でしたかね、カテーテル跡があったんで、まぁ我々が見れば「あぁ、腎臓かな」とわかる感じの…」
「……事は深刻だな。え?マフィアかなんかを追う感じ?」
「いやそれも大分昔かな~っていう」
「あー安心した…いや、安心出来ないけどなるほど…筋立てとしてはわかった」

 つまり。
 人身売買で日本に来た、腎臓も売られた少年、と…。

「……で、そのくっせぇ母親は?柏村の愛人ってだけじゃねぇよな?父親も怪しいけど」
「その辺の裁判記事を漁った形跡はありましたが」
「無くなっちゃったのね……なんか惜しいヤツだな…。
 そうまで来るとやはりマトリじゃ無理だな。うん、予定変更無しで組対に送っとけそのパケックス。動かした方がいいな。
 柏村はそんなに賢いと思えないが、うーん、
先人の恩恵っつーか…」
「節税の枝ってところでしょうね」
「…そこにそんだけやらすとはねぇ…ウチはまだ平和だな…穏健派に売っとくかっつーか、あの柏村ってのは俺の事、実は知らない?」
「それはないでしょう…」
「じゃ、ナメてんだな…内ゲバに使いやがるとは…バカでよかった…とも言いきれないなぁ。やっぱ面倒臭ぇな…」

 珍しく多摩がふふ、と笑ったのに、思わず一同が多摩を見た。
 多摩は咳払いをし顔を引き締め「会長、」と…声色も柔らかすぎて少し意外だ。

「…あぁは言いましたが…まぁ、」
「あ、お前がそう言うと引きたくなくなる」
「ですよね」

 うわ。
 声低くなった。何その術。

「……対象本人に会いに行く…」
「現在まだ意識が」
「………」

 また考えてしまうが「加賀谷くんと一緒に行かれてはどうでしょう?」と再びの柔らかい声。

「……慧?」
「はい」
「………ぇええ……」
「どうせ後に気になりますよ?
 浮気を疑われる前に」
「いやアレは大丈夫だよその辺」
「でも会長はあのクソメガネに嫉妬するじゃないですか」
「違っ……、違ぇからあのな、お前だって妻がいるだろ?それの元彼来たらイラッとすんだろ、つーか、お前も平良にムカついてたじゃん」
「そーゆーところですよ?会長」
「……丸め込むなよわかったよ、まぁ確かに?こんなヤクザが行くより無害で弱そうなヤツが行った方がいいって話だろ?」
「あとはあのクソメガネにヤキを」
「あほら!ほらねイラッとしてんじゃん!」

 ぷふっ、と笑った並木に「並木ぃ!」と怒鳴ればいつの間にかパケックスの手伝いをしている。

「……お、オリバー医師にあのクソマトリ、べ、ベッドバディって……!あのギターくんが……っ!」
「ははっ、」

 多摩がやはり珍しく笑ったのに…またつられてしまった、「ふふっ……はははあいつな!」と結局笑い飛ばしてしまう。

「…良かったです会長。
 またのめり込み過ぎてないかと思ってたんで」
「……多摩」

 今度は真面目に。

「俺の仕事のストッパーはどうしてもお前で…外れた時はどうしてもお前が処理をするんだよ」
「……会長?」
「わからん、のめってないつもりだがまず悪いな。
 どうしても俺が命に変えるのは慧で、頼るのがお前らなんだわ。何かあったら」
「…加賀谷くんにそれを言ってはいけませんよ?彼は、貴方より潜っ」
「え……」

 間。

 「会長ノンデリなとこあるっすよね」と誰かが言った。え、そうなの?俺。
 「ま、カッコイイとこでもありますが」と一応誰かが補足してくれたが…。

 「…連絡があり次第、私が取り次ぎます」と諦めたように多摩が言った。
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