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Hydrangea
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みっちゃんの顔も見れないまま、玄関を出て一つ溜め息を吐いたらまた後悔ばかりが溢れた。後ろで開いたドアからはマリちゃんが出てきたが、私の顔も見ずにさっさと歩いてエレベーターの前まで行くのについていく。
エレベーターの中でも気まずいままで。降りて車に乗ってからようやくマリちゃんは溜め息を吐いて言う。
「反省した?」
「…うん、ごめんなさい」
「…お前、友達いないだろ?
仲良くたって、相手を思いやっていたって言っちゃならんこと、言うべきことってもんがあるんだよ。人には言われたくないことだってある。
だけどまぁ俺が頭に来たのもあの人が傷付いたのもお前がへこんだのも全部お前が言ったことが的を射ていて、それをみんなわかってるからだよ」
「もういい、ごめんなさい」
「そこで逃げるな。自分で言ったことの責任くらいは持て。
ガキだろうが大人だろうが一度言ったことは、やっちまったことはなかったことになんてならないんだよ。問題はその後どうするかだ。
いいんじゃねぇの?お前の言ったことは正しかったんだぜ?お前が言う通りあの人の優しさに甘んじてる俺も、俺の思いやらなんやらに気付いてるあの人も中途半端で曖昧だよ。だけど居心地よくて関係を壊したくない恐怖心からお互い何もしないズルいヤツなんだよ」
「ホントにごめんなさいって言ってるでしょ!」
「だからなんだよ。謝ったからどうすんだよ!そこからの話を俺はしてるんだよ!
お前はチビのときから変わんねーな。嫌なことから逃げやがって。そんなんじゃ俺らと同じになっちまうっつってんだよ!」
やっとマリちゃんは私を横目で見た。私が泣いていたせいか少し気まずそうに、頭に手をガシッと置いてまたハンドルを握った。
「お前の優しさがわからないわけじゃない。伝わってはいる。だから効くんだよお前のでしゃばりが。
たまにはそんなのもこっちは勉強にはなるけどな。そーやってでしゃばって人間関係の尺度を図るのも一つ大人への一歩だ。だからたくさん人と関わるべきなんだよ逃げずに。間違ったらちゃんと自分で後処理しろよ」
ホントにマリちゃんは優しい。みっちゃんも優しいけど。
「ひどい」
「そうだな。だがそんなもんだ。誰も優しくなんてないんだよ。だからふと甘えんだよ」
「どうしたら」
二人はもっと上手くやっていけるんだろうか。
「自分で考えろ。まだ若いんだ」
「…明日謝る」
「謝るのが正解ならそうしろ」
それから駅まではずっと無言で。降りたときに「じゃぁまたな」とマリちゃんが言ってくれたけど、私は小さく頷くことしか出来なかった。
それからその日はずっと二人についてと、明日何て言おうかと考えていた。寮に帰る電車の中でずっと考えていたらみっちゃんからメールが来た。
実はこの機会にメアドを交換していたのだ。
明日、取り敢えず店に来るときは連絡ください、迎えに行きます。
ただそれだけだった。
それから少しメールして、11時からのランチで入ることにした。一応柏原さんの連絡先も教えてもらった。
まだ謝れないままだった。 一度柏原さんにメールをすると、今電話大丈夫?とすぐ返信がきたので、電車の中であることを伝え、こちらから連絡を入れますと送ると、余程暇だったのか明日の日程を軽くメールで送ってきてくれた。
寮に戻ってから取り敢えず、電話をしていいか柏原さんに確認のメールを送ると、即刻で電話が掛かってきた。
「はい…」
『明日さ、光也と来る?真里?』
「あぁ、うーん…一応みっちゃんは迎えに来てくれるって言ってるんですが…何時からとかはまだ…シフト決まったんで取り敢えず連絡しようかな」
『いきなりなんか店ぶちこんじゃってもなんかなぁと思ってさぁ…面接っぽいの?一応しとこうかなって。面接って言ってもねぇ、雑談くらいになりそうだけど。そうすると多分休憩時間とかにしようかなぁ…15時とかどう?』
「わかりましたー」
『じゃぁ光也にはそれ一応言っとくわー。小夜ちゃんからも言っといてー』
「はい…」
『てか喧嘩したでしょ?』
「え?」
いきなり言われてちょっと驚く。どうしたんだろ。
『やっぱり』
「え?聞きました?」
『誰から?今日の俺は引きこもりだから小夜ちゃんしか喋ってないよ』
「はぁ…」
『小夜ちゃんわかりやすいね。まぁ仲直りするんだよ。じゃぁねー』
電話は一方的に切れてしまった。
なんなんだ柏原さん、スゴイ。
それからずっと考えて、最終的に謝るのが本当に正しいのか、謝ったところでみっちゃんは気にしてないような素振りなんじゃないか、それならいいな、それでいいのかとか、もはや解らなくなって迷走に瞑想を重ねて気が付いたら寝ていた。
起きたら夜中の3時で、目覚ましすら掛けていないことに気が付いて取り敢えず目覚ましを掛け、またぼんやり考える。
お腹すいたな。確かパンくらいならあったはずと、棚を漁ってアップルデニッシュを発見したので食べる。
うん、もうわかんない。わかんないからもういいや。
会った瞬間にしたいことをしようと決めた。
エレベーターの中でも気まずいままで。降りて車に乗ってからようやくマリちゃんは溜め息を吐いて言う。
「反省した?」
「…うん、ごめんなさい」
「…お前、友達いないだろ?
仲良くたって、相手を思いやっていたって言っちゃならんこと、言うべきことってもんがあるんだよ。人には言われたくないことだってある。
だけどまぁ俺が頭に来たのもあの人が傷付いたのもお前がへこんだのも全部お前が言ったことが的を射ていて、それをみんなわかってるからだよ」
「もういい、ごめんなさい」
「そこで逃げるな。自分で言ったことの責任くらいは持て。
ガキだろうが大人だろうが一度言ったことは、やっちまったことはなかったことになんてならないんだよ。問題はその後どうするかだ。
いいんじゃねぇの?お前の言ったことは正しかったんだぜ?お前が言う通りあの人の優しさに甘んじてる俺も、俺の思いやらなんやらに気付いてるあの人も中途半端で曖昧だよ。だけど居心地よくて関係を壊したくない恐怖心からお互い何もしないズルいヤツなんだよ」
「ホントにごめんなさいって言ってるでしょ!」
「だからなんだよ。謝ったからどうすんだよ!そこからの話を俺はしてるんだよ!
お前はチビのときから変わんねーな。嫌なことから逃げやがって。そんなんじゃ俺らと同じになっちまうっつってんだよ!」
やっとマリちゃんは私を横目で見た。私が泣いていたせいか少し気まずそうに、頭に手をガシッと置いてまたハンドルを握った。
「お前の優しさがわからないわけじゃない。伝わってはいる。だから効くんだよお前のでしゃばりが。
たまにはそんなのもこっちは勉強にはなるけどな。そーやってでしゃばって人間関係の尺度を図るのも一つ大人への一歩だ。だからたくさん人と関わるべきなんだよ逃げずに。間違ったらちゃんと自分で後処理しろよ」
ホントにマリちゃんは優しい。みっちゃんも優しいけど。
「ひどい」
「そうだな。だがそんなもんだ。誰も優しくなんてないんだよ。だからふと甘えんだよ」
「どうしたら」
二人はもっと上手くやっていけるんだろうか。
「自分で考えろ。まだ若いんだ」
「…明日謝る」
「謝るのが正解ならそうしろ」
それから駅まではずっと無言で。降りたときに「じゃぁまたな」とマリちゃんが言ってくれたけど、私は小さく頷くことしか出来なかった。
それからその日はずっと二人についてと、明日何て言おうかと考えていた。寮に帰る電車の中でずっと考えていたらみっちゃんからメールが来た。
実はこの機会にメアドを交換していたのだ。
明日、取り敢えず店に来るときは連絡ください、迎えに行きます。
ただそれだけだった。
それから少しメールして、11時からのランチで入ることにした。一応柏原さんの連絡先も教えてもらった。
まだ謝れないままだった。 一度柏原さんにメールをすると、今電話大丈夫?とすぐ返信がきたので、電車の中であることを伝え、こちらから連絡を入れますと送ると、余程暇だったのか明日の日程を軽くメールで送ってきてくれた。
寮に戻ってから取り敢えず、電話をしていいか柏原さんに確認のメールを送ると、即刻で電話が掛かってきた。
「はい…」
『明日さ、光也と来る?真里?』
「あぁ、うーん…一応みっちゃんは迎えに来てくれるって言ってるんですが…何時からとかはまだ…シフト決まったんで取り敢えず連絡しようかな」
『いきなりなんか店ぶちこんじゃってもなんかなぁと思ってさぁ…面接っぽいの?一応しとこうかなって。面接って言ってもねぇ、雑談くらいになりそうだけど。そうすると多分休憩時間とかにしようかなぁ…15時とかどう?』
「わかりましたー」
『じゃぁ光也にはそれ一応言っとくわー。小夜ちゃんからも言っといてー』
「はい…」
『てか喧嘩したでしょ?』
「え?」
いきなり言われてちょっと驚く。どうしたんだろ。
『やっぱり』
「え?聞きました?」
『誰から?今日の俺は引きこもりだから小夜ちゃんしか喋ってないよ』
「はぁ…」
『小夜ちゃんわかりやすいね。まぁ仲直りするんだよ。じゃぁねー』
電話は一方的に切れてしまった。
なんなんだ柏原さん、スゴイ。
それからずっと考えて、最終的に謝るのが本当に正しいのか、謝ったところでみっちゃんは気にしてないような素振りなんじゃないか、それならいいな、それでいいのかとか、もはや解らなくなって迷走に瞑想を重ねて気が付いたら寝ていた。
起きたら夜中の3時で、目覚ましすら掛けていないことに気が付いて取り敢えず目覚ましを掛け、またぼんやり考える。
お腹すいたな。確かパンくらいならあったはずと、棚を漁ってアップルデニッシュを発見したので食べる。
うん、もうわかんない。わかんないからもういいや。
会った瞬間にしたいことをしようと決めた。
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