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第一話
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しおりを挟む そうだ、算数スキルとかそんなのも買って帰ろう。でもその前にまずは、漢字かな。
本屋に寄って参考書を見てみると、種類がありすぎて全くわからなかった。取り敢えず1006字とか書いてあるやつを買って帰った。
ケータイを見て確認すると、14時近かった。腹減ってるかな。そもそも起きてるかな。
ある程度の材料とかそーゆーの買って行こうかな。でもなぁ、待ってるんだろうな。
いろいろ考えながら家の前まで来ると、なんだかいい匂いがした。
あれ?小夜かな?いや、そもそも家?
玄関を開けると今流行りの、なんか脱げそうな底の浅い女物の花飾りが付いた黄色い靴が一足。嫌な予感がして顔を上げる。
「ちょっと光也…」
「え?」
俺の顔を見るなりそいつは物凄い形相で玄関まで歩いてきた。
「ね、姉ちゃん!?」
意外な形で俺の嫌な予感は外れたが、これはこれで、より面倒臭そうだ。
「あんたって奴は!」
「てかお前、なんでいんだよ!」
「あぁ!?そんなことはどうでもええねん{emj_ip_0792}なにしてんねんあんたは!?」
なんとなくこいつの勘違いの原因は、今ビックリして引き戸から覗いてる小夜だろうな。
うん、これは説得するまでに時間が掛かりそうだ。
「彼女がおらんくなってどーせだらしなーい生活してんのやろと心配してわざわざ来てやったらあんた、なんや、マジか!?この変態!」
「待て待て待て!なんでそうなった!もっと違う勘違いするだろうが!つかここ玄関!近所迷惑だからせめて部屋入れてくれや!」
それにはちょっと納得したのか、ヤツは引き下がった。よし。
部屋に入ると真っ先に小夜が俺の手を掴んできた。明らかビビってる。ちゃぶ台には、昼食が並べられていたが、手をつけた様子はなかった。
「で?」
取り敢えず座って昼食を食うことにした。まだ温かい。小夜にも隣に座るよう促して、二人で食べ始めた。姉貴はベッドに座り、腕組みしている。
「昨日拾ったんよ。
昼食さんきゅ」
「はぁ?意味わからんわ。
どういたしまして」
「あ、小夜、漢字のドリル買ってきたよ。
まぁ意味わからんよな。俺だって意味わかってないもん」
「え?何?正気で言っとんのかお前」
仕方なく昨日あったことをそっくりそのまま説明した。約30分程の時間を要した。途中疲れて、必要最低限のこと以外の説明を省いてしまった。
「つまり、光也の子でもない。
だからと言って彼女いない寂しさに幼女誘拐を企てた訳でもないと」
「そーゆーこと」
「あー、なるほど納得ってなるかぁぁ!」
姉貴は俺に枕を軽く投げてきた。見事キャッチ。
「なんだよあぶねーなぁ」
「ちょい待てや、お前バカなん?えぇ?何それ支離滅裂やろ!それって、この子、どこの誰だかわからんいうことやろ?てかあんた養えんの?無理やろ?」
「つったってどーしろっつーんだよ」
「警察行くとかさー、あるやろ!」
「それも考えたよだけどさ!」
ふと小夜を見ると、少し怯えていた。
「家に帰れないんだよ…」
小夜が怯えないように声を潜めた。小夜がそんな俺を見て肩に手を置く。
情けない。自分が惨めで仕方がない。
「…あぁ、もう!
小夜ちゃんいうたか?小夜ちゃん、お名前な、名字から教えて?」
「…こひなた」
「小日向、か。何歳?」
「8歳…」
「お家さ、住所わかる?」
小夜が首を振る。
「そっか。どうやってここまで来たん?歩いて?」
小夜は黙って深く頷いた。今にも泣きそうだ。それを見かねて姉貴は微笑んで、小夜の頭を撫でた。
「大丈夫、ゆっくりでええよー。よし、じゃぁ、お姉ちゃんとちょっとお散歩行こっか?」
小夜はまた首を振った。
「じゃぁ、お兄ちゃんと行く?」
頷いた。それを見て姉貴と目を合わせる。
「…わかった。
光也、ちょっと」
「何だよ」
手招きされたので姉貴に耳を貸す。『さりげなく家の場所聞いてこい』と言われた。
「だからさ、」
「理由はあとで聞く。でもまずはあんたも、見てきんさいよ。どんな事情かはわからんが帰せないと思ったんやろ?でもその子の話し方だとあんた、全部鵜呑みにしてる。そうやないやろ、筋が通ってないって言うてんの。
あんた昔からそうや。流されてんやない、人一人と関わってんやで。話はそれからや。今のあんたと話す気ぃもないわ。早く行って来ぃや腰抜け!」
言葉とは裏腹に姉貴は、どこか肯定的に見えた。でも言葉通りだ。しっかりしないと。
「うん…。
小夜、行こっか」
小夜の手を取り、玄関を出て二人で傘を差した。
本屋に寄って参考書を見てみると、種類がありすぎて全くわからなかった。取り敢えず1006字とか書いてあるやつを買って帰った。
ケータイを見て確認すると、14時近かった。腹減ってるかな。そもそも起きてるかな。
ある程度の材料とかそーゆーの買って行こうかな。でもなぁ、待ってるんだろうな。
いろいろ考えながら家の前まで来ると、なんだかいい匂いがした。
あれ?小夜かな?いや、そもそも家?
玄関を開けると今流行りの、なんか脱げそうな底の浅い女物の花飾りが付いた黄色い靴が一足。嫌な予感がして顔を上げる。
「ちょっと光也…」
「え?」
俺の顔を見るなりそいつは物凄い形相で玄関まで歩いてきた。
「ね、姉ちゃん!?」
意外な形で俺の嫌な予感は外れたが、これはこれで、より面倒臭そうだ。
「あんたって奴は!」
「てかお前、なんでいんだよ!」
「あぁ!?そんなことはどうでもええねん{emj_ip_0792}なにしてんねんあんたは!?」
なんとなくこいつの勘違いの原因は、今ビックリして引き戸から覗いてる小夜だろうな。
うん、これは説得するまでに時間が掛かりそうだ。
「彼女がおらんくなってどーせだらしなーい生活してんのやろと心配してわざわざ来てやったらあんた、なんや、マジか!?この変態!」
「待て待て待て!なんでそうなった!もっと違う勘違いするだろうが!つかここ玄関!近所迷惑だからせめて部屋入れてくれや!」
それにはちょっと納得したのか、ヤツは引き下がった。よし。
部屋に入ると真っ先に小夜が俺の手を掴んできた。明らかビビってる。ちゃぶ台には、昼食が並べられていたが、手をつけた様子はなかった。
「で?」
取り敢えず座って昼食を食うことにした。まだ温かい。小夜にも隣に座るよう促して、二人で食べ始めた。姉貴はベッドに座り、腕組みしている。
「昨日拾ったんよ。
昼食さんきゅ」
「はぁ?意味わからんわ。
どういたしまして」
「あ、小夜、漢字のドリル買ってきたよ。
まぁ意味わからんよな。俺だって意味わかってないもん」
「え?何?正気で言っとんのかお前」
仕方なく昨日あったことをそっくりそのまま説明した。約30分程の時間を要した。途中疲れて、必要最低限のこと以外の説明を省いてしまった。
「つまり、光也の子でもない。
だからと言って彼女いない寂しさに幼女誘拐を企てた訳でもないと」
「そーゆーこと」
「あー、なるほど納得ってなるかぁぁ!」
姉貴は俺に枕を軽く投げてきた。見事キャッチ。
「なんだよあぶねーなぁ」
「ちょい待てや、お前バカなん?えぇ?何それ支離滅裂やろ!それって、この子、どこの誰だかわからんいうことやろ?てかあんた養えんの?無理やろ?」
「つったってどーしろっつーんだよ」
「警察行くとかさー、あるやろ!」
「それも考えたよだけどさ!」
ふと小夜を見ると、少し怯えていた。
「家に帰れないんだよ…」
小夜が怯えないように声を潜めた。小夜がそんな俺を見て肩に手を置く。
情けない。自分が惨めで仕方がない。
「…あぁ、もう!
小夜ちゃんいうたか?小夜ちゃん、お名前な、名字から教えて?」
「…こひなた」
「小日向、か。何歳?」
「8歳…」
「お家さ、住所わかる?」
小夜が首を振る。
「そっか。どうやってここまで来たん?歩いて?」
小夜は黙って深く頷いた。今にも泣きそうだ。それを見かねて姉貴は微笑んで、小夜の頭を撫でた。
「大丈夫、ゆっくりでええよー。よし、じゃぁ、お姉ちゃんとちょっとお散歩行こっか?」
小夜はまた首を振った。
「じゃぁ、お兄ちゃんと行く?」
頷いた。それを見て姉貴と目を合わせる。
「…わかった。
光也、ちょっと」
「何だよ」
手招きされたので姉貴に耳を貸す。『さりげなく家の場所聞いてこい』と言われた。
「だからさ、」
「理由はあとで聞く。でもまずはあんたも、見てきんさいよ。どんな事情かはわからんが帰せないと思ったんやろ?でもその子の話し方だとあんた、全部鵜呑みにしてる。そうやないやろ、筋が通ってないって言うてんの。
あんた昔からそうや。流されてんやない、人一人と関わってんやで。話はそれからや。今のあんたと話す気ぃもないわ。早く行って来ぃや腰抜け!」
言葉とは裏腹に姉貴は、どこか肯定的に見えた。でも言葉通りだ。しっかりしないと。
「うん…。
小夜、行こっか」
小夜の手を取り、玄関を出て二人で傘を差した。
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