二色燕丈短編集 2020~

二色燕𠀋

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2021年ショートショート

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 あの臭い、湿っていたそれ。
 暗い、そこは暗い。15度の温さと35.4分の息。

 ぼんやり、ぼんやり、嵐のような木の音と溜め息、一本の光。いらっしゃるじゃないですか。還してください。トントン、ねぇ、トントン、トントン。35.8の震えと、縮こまる、これは一体誰なの、両腕痛い。

 黒い箱、階段の形。
 出てきちゃいけないのよ。溢れてはいけないのよ。ねぇ、一緒にいるのは私だけなの。トントン、トントン、ねぇ、どこにいるの、何が起こるの。頭の上まで響く音。

 わんちゃん、そんなに怒らないで。守らないで。音が聞こえないの。蟀谷が痛いの、あなたの声は。誰か、誰でも良い、新聞紙の壁。

 108ステップみたい。あの映画、衝撃でしょう?首もまわらない。目が見えないの。魔法がないなら空も飛べない。ここは狭い、すきま風。悪いことした?一筋のすきま風。還してください、いらっしゃいますよね。

 ここには少女が一人だけ。じりじり、じとじと、疎らでトクトクトク。寒いはずなの。渇いた木の音。後ろの正面だあれ。きっと引きずり込まれるから。

 ここは箱、鼻炎がわからない。
 狭い、ここは狭い。10歳未満の幼い60分の耳鳴りがする。

 私、私はここにいる、ここにいる、ここにしかいない。一人は温かい。一筋の悪寒。お布団で、寝たいよ。閉まらない、閉められない闇の中で。静かな夜にまた、キーン、キーン。
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