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2020年ショートショート
夏の日
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「また太ったでしょ」と拒食症の友達が言った。
きっと明日も同じことを言うのだろう。
彼女はいつでも仄かに笑い、窓からの朝日に白く照らされている。笑顔も素敵で大人っぽい。ただ、拒食症だった。
そして彼女は私が持つ花束を見て「綺麗だね」と太陽のような笑顔で言う。
昨日の花たちと今日の花たちを花瓶と包み紙へ入れ換える。昨日の花は三つほど齧られてしまったようだ。
彼女が何気なくテレビをつけた、昼頃のどこかお洒落なご飯屋さんが映っていた。
「そのお花はなんて言うの?」
テレビから目を背けた彼女が問う。
「聞いてくればよかったな」
テレビの向こうは楽しそうだった。
彼女の生気の無い顔を両掌で包み「昨晩はどんな夢を見た?」と聞いてみる。
「昨日は何も見なかったよ」
「確かその前は、台風の夢って言ってたね」
「そうだったっけ」
思い出しベッドの横にパイプ椅子を立てケータイを探した。
「吉夢なんだってよ、台風って」
けれど言うことはこのくらい。
何を言おうか、対人運の低下だとか、昨日調べて印象に残ったものを言おうとするのだけど、彼女はただただ「そうなんだ」と、仄かに微笑むくせにどこか虚ろだった。
握った彼女の手は脱け殻のように軽く、中指に傷が付いていた。
「夏が来るね」
まだ台風は来てないけれど。今年は来ないのかもしれない。
からっと晴れた夏の側で、明日は花を追加しよう、ぼんやりとそんなことを思った。危険な暑さに、蒸発してしまわなければ。
「ところで、学校はどうしたの?」
きっと明日も同じことを言うのだろう。
彼女はいつでも仄かに笑い、窓からの朝日に白く照らされている。笑顔も素敵で大人っぽい。ただ、拒食症だった。
そして彼女は私が持つ花束を見て「綺麗だね」と太陽のような笑顔で言う。
昨日の花たちと今日の花たちを花瓶と包み紙へ入れ換える。昨日の花は三つほど齧られてしまったようだ。
彼女が何気なくテレビをつけた、昼頃のどこかお洒落なご飯屋さんが映っていた。
「そのお花はなんて言うの?」
テレビから目を背けた彼女が問う。
「聞いてくればよかったな」
テレビの向こうは楽しそうだった。
彼女の生気の無い顔を両掌で包み「昨晩はどんな夢を見た?」と聞いてみる。
「昨日は何も見なかったよ」
「確かその前は、台風の夢って言ってたね」
「そうだったっけ」
思い出しベッドの横にパイプ椅子を立てケータイを探した。
「吉夢なんだってよ、台風って」
けれど言うことはこのくらい。
何を言おうか、対人運の低下だとか、昨日調べて印象に残ったものを言おうとするのだけど、彼女はただただ「そうなんだ」と、仄かに微笑むくせにどこか虚ろだった。
握った彼女の手は脱け殻のように軽く、中指に傷が付いていた。
「夏が来るね」
まだ台風は来てないけれど。今年は来ないのかもしれない。
からっと晴れた夏の側で、明日は花を追加しよう、ぼんやりとそんなことを思った。危険な暑さに、蒸発してしまわなければ。
「ところで、学校はどうしたの?」
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