15 / 17
15
しおりを挟む
「今日から運転も自分ですし」
車?どこに?と思ったがまずは「なんで?」と素直に声が出た。
「火曜日だから」
「…確かに、ですけど…」
「社長さんホントにいーの?ウチ居酒屋よ」
「すみませんね」
「別に良いけど。はいお通し」
小瓶の筑前煮をハナちゃんママが出したタイミングで「あぁ律、」と、晃彦が席を譲ろうと立ったが、
「…あぁ、どこかで見たことある気がしなくもないと思えば、律の元同居くんかぁ」
うわっ。
「……ども」と、明らかに一瞬眉をピクッとさせた晃彦を見て、律もそそくさと席を入れ替わった。
会ったときは確かに晃彦と別れた直後でしたけど……絶対気付いてただろうに、実際いま若干社長は睨んでるわけですし…と、更に社長は晃彦が座り直すと、露骨に背を向けまるで「見せないぞ」という態度で壁になる。
「悪いねぇお楽しみ中」
「あぁ、まぁ」
話が流れそうになってたんで、良いんですけどね…。苦笑の思い。
ハナちゃんママはカウンターから、表情は読めないが多分引いているだろう。
「…どーしてここが…」
「この辺に“ハナの店”なんて、ここしかなかったぞ?」
あれぇ。話したっけぇ…?
「ハプバー行こうかなとも思ったけど」
「……ん?
社長、待って、なんでここに?」
「いやだから、」
「じゃなくて。……え?」
「案の定いたな、ははっ」
頭を回転させよくよく思い返してみるが…時計を見た。19:14。
「…あれ?そもそも今日、なんかありませんでしたっけ?」
「あー流石だねぇ駒越くん。キャンセルした」
「…はっ!?」
「大したやつじゃなかっ」
「いや待って、なんで!?」
「だーかーら。火曜日だし大した用事もないしそもそもまず君は今日で辞めちゃったじゃん、来ちゃ悪いわけ?」
「は?」
「…社長さん。わかるでしょ。りっちゃん鈍いんだか鋭いんだかハッキリしないんだけど…それはあんたのせいもありそうですよねぇ」
「…ははは、確かに」
「追いかけてきたんでしょー?」
「え?待って?意味わかりませんけど」
ほらー、と言うハナちゃんママに「おかしいなぁ…」と困る社長。
なんで追ってくるのか訳がわからないと申してますけれども。
「仕事では優秀なんだけどなぁ。うーんでもそうだ、君ってそういうとこあるよね。そうだった複雑な子だった」
「え?」
「てか、なんで元彼と会ってんの?意味わかんないんですけど」
は?
あ、やっぱり知ってたんですね?
晃彦を見ようにも見えない。ただ、ハナちゃんママは「強引な男ねぇ」と言う。
「え?」
「まー良いですけどね。あのさぁ、りっちゃんマジであんなんで俺と別れた気になってる?」
「えっ」
「あ~あ~やっぱりねぇ。なんで?なんでそーなるの?え?ここまで来て付き合ってませんよ?とか始まらないよね?」
「えっ」
「えっ、始まるの?」
「いやぁ………」
てか、待った。
「それは常々こっちの台詞だったんですけども、え?」
「は?」
「確かに、いやぁゴディバ行ったよなぁ、買い物とかも行ってるしなぁ、て、思ってましたが」
「だよねぇ?」
「え、でも明白でしたっけ?」
「はぁ?」
「あ修羅場るなコレ」という晃彦の声がする。
一瞬社長は後ろを見るが「ちょっと、」と律も腹が立ってきてつい言ってしまう。
それに社長は何故か、少しだけ驚いたようにも、見えた。
「…最初なんて俺たちフツーに身体からというか最早脅しでしたよね?「意外だねぇ君、こんなところに来てたんだねぇ」とかニヤニヤニヤニヤ」
「いやだって意外だったし」
「こっちはやべぇ!見つかった!気分で、あ、思い出したあの時「彼氏は知ってんの?知らないよねぇ」とまでけしかけてきましたよ、」
「別れたって言ってたじゃん。ヤケクソこいて来たって」
「言いましたねぇ!」
「でしょ?ほら」
「………じゃなくて!
そっからズルズルズルズルと、あ!考えたらコレって職権乱用じゃないです?ハナちゃんママどう思う!?」
「うわぁこっちきた女々し~っ。あたしそれ言ったし何回か」
「だよねっ!!」
「りっちゃん、一回座りなさい」
いつの間にか勢い余って立ち上がっていた。なんせ今日はトバしている。
と思い出し、これはいいやと「メキシコーク!」と叫んで一度座った。
「…トバすねぇ、意外…」
「この子いつもこうですよ」
「そうなんだ…」
「この子はコンプレックスを複雑に拗らせてるんですよ、自ら。わかります?」
「コンプレックス…」
「この界隈は少なからず、そう」
「んーいや全然何がコンプレックスかわからないけど…あーなるほど…原因はわかった…。
りっちゃん、じゃぁお付き合い続けよ」
あっさり言った社長に「はっ…!」と、少し戦意を削がれた、というかまさかの先手を打たれ、どうしたもんかと、頭が真っ白になりそうに……。
じわじわ来たら熱が上がってきた。なんせトバしている。
「えっ、えっと」
「え、マジで嫌だった?」
「いや、えっと…」
「なんかさ。
さっきだよさっき君が去った背中。あっさりしすぎてて、てゆうかなんか男らしくて、平原さん来てからさ。ちょっと泣きそうになったよ俺」
「えっ」
「意外な一面もわりと見たし…なんていうかなぁ、惚れ直した、が正しいのかなぁ。
勿論息子とはまた違う感情なんだよ」
「んー…?」
「いや、もうそこから俺は迅速。ちゃっちゃとキャンセルして頭回してここまで来た」
車?どこに?と思ったがまずは「なんで?」と素直に声が出た。
「火曜日だから」
「…確かに、ですけど…」
「社長さんホントにいーの?ウチ居酒屋よ」
「すみませんね」
「別に良いけど。はいお通し」
小瓶の筑前煮をハナちゃんママが出したタイミングで「あぁ律、」と、晃彦が席を譲ろうと立ったが、
「…あぁ、どこかで見たことある気がしなくもないと思えば、律の元同居くんかぁ」
うわっ。
「……ども」と、明らかに一瞬眉をピクッとさせた晃彦を見て、律もそそくさと席を入れ替わった。
会ったときは確かに晃彦と別れた直後でしたけど……絶対気付いてただろうに、実際いま若干社長は睨んでるわけですし…と、更に社長は晃彦が座り直すと、露骨に背を向けまるで「見せないぞ」という態度で壁になる。
「悪いねぇお楽しみ中」
「あぁ、まぁ」
話が流れそうになってたんで、良いんですけどね…。苦笑の思い。
ハナちゃんママはカウンターから、表情は読めないが多分引いているだろう。
「…どーしてここが…」
「この辺に“ハナの店”なんて、ここしかなかったぞ?」
あれぇ。話したっけぇ…?
「ハプバー行こうかなとも思ったけど」
「……ん?
社長、待って、なんでここに?」
「いやだから、」
「じゃなくて。……え?」
「案の定いたな、ははっ」
頭を回転させよくよく思い返してみるが…時計を見た。19:14。
「…あれ?そもそも今日、なんかありませんでしたっけ?」
「あー流石だねぇ駒越くん。キャンセルした」
「…はっ!?」
「大したやつじゃなかっ」
「いや待って、なんで!?」
「だーかーら。火曜日だし大した用事もないしそもそもまず君は今日で辞めちゃったじゃん、来ちゃ悪いわけ?」
「は?」
「…社長さん。わかるでしょ。りっちゃん鈍いんだか鋭いんだかハッキリしないんだけど…それはあんたのせいもありそうですよねぇ」
「…ははは、確かに」
「追いかけてきたんでしょー?」
「え?待って?意味わかりませんけど」
ほらー、と言うハナちゃんママに「おかしいなぁ…」と困る社長。
なんで追ってくるのか訳がわからないと申してますけれども。
「仕事では優秀なんだけどなぁ。うーんでもそうだ、君ってそういうとこあるよね。そうだった複雑な子だった」
「え?」
「てか、なんで元彼と会ってんの?意味わかんないんですけど」
は?
あ、やっぱり知ってたんですね?
晃彦を見ようにも見えない。ただ、ハナちゃんママは「強引な男ねぇ」と言う。
「え?」
「まー良いですけどね。あのさぁ、りっちゃんマジであんなんで俺と別れた気になってる?」
「えっ」
「あ~あ~やっぱりねぇ。なんで?なんでそーなるの?え?ここまで来て付き合ってませんよ?とか始まらないよね?」
「えっ」
「えっ、始まるの?」
「いやぁ………」
てか、待った。
「それは常々こっちの台詞だったんですけども、え?」
「は?」
「確かに、いやぁゴディバ行ったよなぁ、買い物とかも行ってるしなぁ、て、思ってましたが」
「だよねぇ?」
「え、でも明白でしたっけ?」
「はぁ?」
「あ修羅場るなコレ」という晃彦の声がする。
一瞬社長は後ろを見るが「ちょっと、」と律も腹が立ってきてつい言ってしまう。
それに社長は何故か、少しだけ驚いたようにも、見えた。
「…最初なんて俺たちフツーに身体からというか最早脅しでしたよね?「意外だねぇ君、こんなところに来てたんだねぇ」とかニヤニヤニヤニヤ」
「いやだって意外だったし」
「こっちはやべぇ!見つかった!気分で、あ、思い出したあの時「彼氏は知ってんの?知らないよねぇ」とまでけしかけてきましたよ、」
「別れたって言ってたじゃん。ヤケクソこいて来たって」
「言いましたねぇ!」
「でしょ?ほら」
「………じゃなくて!
そっからズルズルズルズルと、あ!考えたらコレって職権乱用じゃないです?ハナちゃんママどう思う!?」
「うわぁこっちきた女々し~っ。あたしそれ言ったし何回か」
「だよねっ!!」
「りっちゃん、一回座りなさい」
いつの間にか勢い余って立ち上がっていた。なんせ今日はトバしている。
と思い出し、これはいいやと「メキシコーク!」と叫んで一度座った。
「…トバすねぇ、意外…」
「この子いつもこうですよ」
「そうなんだ…」
「この子はコンプレックスを複雑に拗らせてるんですよ、自ら。わかります?」
「コンプレックス…」
「この界隈は少なからず、そう」
「んーいや全然何がコンプレックスかわからないけど…あーなるほど…原因はわかった…。
りっちゃん、じゃぁお付き合い続けよ」
あっさり言った社長に「はっ…!」と、少し戦意を削がれた、というかまさかの先手を打たれ、どうしたもんかと、頭が真っ白になりそうに……。
じわじわ来たら熱が上がってきた。なんせトバしている。
「えっ、えっと」
「え、マジで嫌だった?」
「いや、えっと…」
「なんかさ。
さっきだよさっき君が去った背中。あっさりしすぎてて、てゆうかなんか男らしくて、平原さん来てからさ。ちょっと泣きそうになったよ俺」
「えっ」
「意外な一面もわりと見たし…なんていうかなぁ、惚れ直した、が正しいのかなぁ。
勿論息子とはまた違う感情なんだよ」
「んー…?」
「いや、もうそこから俺は迅速。ちゃっちゃとキャンセルして頭回してここまで来た」
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
いつもは我慢してるのにきもちよすぎて♡喘ぎしちゃう話
Laxia
BL
いつもはセックスの時声を我慢してる受けが、気持ち良すぎて♡喘ぎしちゃう話。こんな声だしたことなくて嫌われないかなって思いながらもめちゃくちゃ喘ぎます。
1話完結です。
よかったら、R-18のBL連載してますのでそちらも見てくださるととっても嬉しいです!
専業種夫
カタナカナタ
BL
精力旺盛な彼氏の性処理を完璧にこなす「専業種夫」。彼の徹底された性行為のおかげで、彼氏は外ではハイクラスに働き、帰宅するとまた彼を激しく犯す。そんなゲイカップルの日々のルーティーンを描く。
保育士だっておしっこするもん!
こじらせた処女
BL
男性保育士さんが漏らしている話。ただただ頭悪い小説です。
保育士の道に進み、とある保育園に勤めている尾北和樹は、新人で戸惑いながらも、やりがいを感じながら仕事をこなしていた。
しかし、男性保育士というものはまだまだ珍しく浸透していない。それでも和樹が通う園にはもう一人、男性保育士がいた。名前は多田木遼、2つ年上。
園児と一緒に用を足すな。ある日の朝礼で受けた注意は、尾北和樹に向けられたものだった。他の女性職員の前で言われて顔を真っ赤にする和樹に、気にしないように、と多田木はいうが、保護者からのクレームだ。信用問題に関わり、同性職員の多田木にも迷惑をかけてしまう、そう思い、その日から3階の隅にある職員トイレを使うようになった。
しかし、尾北は一日中トイレに行かなくても平気な多田木とは違い、3時間に一回行かないと限界を迎えてしまう体質。加えて激務だ。園児と一緒に済ませるから、今までなんとかやってこれたのだ。それからというものの、限界ギリギリで間に合う、なんて危ない状況が何度か見受けられた。
ある日の紅葉が色づく頃、事件は起こる。その日は何かとタイミングが掴めなくて、いつもよりさらに忙しかった。やっとトイレにいける、そう思ったところで、前を押さえた幼児に捕まってしまい…?
『田中のおじさま♡』~今夜も愛しのおじさまと濃厚ラブえっち♡♡♡
そらも
BL
過去にとある出逢いを経て知り合った『本名さえもちゃんとわかってない』自分よりも三十二歳も年上のバツイチ絶倫変態スケベおじさまとの濃厚セックスに毎夜明け暮れている、自称平凡普通大学生くんの夜のお話♡
おじさまは大学生くんにぞっこんラブだし、大学生くんもハジメテを捧げたおじさまが大大大っだ~いすきでとってもラブラブな二人でございますぞ♪
久しぶりの年上×年下の歳の差モノ♡ 全体的に変態ちっくですのでどうぞご注意を!
※ R-18エロもので、♡(ハート)喘ぎ満載です。
※ 素敵な表紙は、pixiv小説用フリー素材にて、『やまなし』様からお借りしました。ありがとうございます!
クソザコ乳首くんの出張アクメ
掌
BL
おさわりOK♡の家事代行サービスで働くようになった、ベロキス大好きむっつりヤンキー系ツン男子のクソザコ乳首くんが、出張先のどすけべおぢさんの家で乳首穴開き体操着でセクハラ責めされ、とことんクソザコアクメさせられる話。他腋嗅ぎ、マイクロビキニなど。フィクションとしてライトにお楽しみください。
ネタの一部はお友達からご提供いただきました。ありがとうございました!
pixiv/ムーンライトノベルズにも同作品を投稿しています。
なにかありましたら(web拍手)
http://bit.ly/38kXFb0
Twitter垢・拍手返信はこちらから
https://twitter.com/show1write
愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。
石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。
ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。
それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。
愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる