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TriazoruM
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「…お?何それ」
「平中くん、あれから調べたよ。あれ、めちゃくちゃ良さそうだよね。めっちゃ用意しとこ」
「…あうん。わかった」
「何それどんな?」
「奇跡のお茶だって。ノンカフェイン」
「あ、そうなんだ。俺知らなかった」
「そうなの?」
「うん。母親が花粉のちょい前くらいに飲み始めるお茶って感じだった」
「そうなんだ」
「あー、俺花粉あるからそれいいわ~。わかった寄る」
暫く黙った平中くんはふと静かに、「全然覚えはないんですが俺誰かに殺され掛けてますか?」と言った。
あ、ケージだから?
まさかの一言に芳明のしゃっきり男前さが崩れ、「ふはは…」と笑ったらツボに入ったらしい、震えるハンドルに「芳明!危ない!」と春雪が注意をした。
平中としては「え、何を見せられてんの?夫婦漫才?」状態だが、春雪はヒヤヒヤして仕方がない。
仕事柄、芳明もペーパーではないが、運転する率は多分、春雪の方が高い。
「いやー、どれかってーと俺的には君はストーカーとか気にする職かなと思ったんだけど」
「いや、別に売れてないんで…あ、でも配信荒らす女が」
「そういえば聴いたよ平中くんのやつ!」
「………マジかよやめろっつったじゃん!」
「え、いや、めっちゃよかったよ?あれSNSで宣伝してよって眞田さんに」
「やめてー、マジそういう公開処」
「いいですか、あれは事務所が作ったらしいやつなので広告も取りましょうね!」
芳明としても「何を見せられてんの?コンビ漫才?」状態だが二人がアットホームなので、まぁ大丈夫かと安心はした。
「へぇ、やってんだ。じゃあ俺も休憩時間に」
「いやいやいやいやホンットに」
「サイバー化入ってるよ生活安全部。困ってんならマジで聞くよ?」
「……いぇ、大丈夫ですなんとなく昔振った女だってわかって」
「モテるだろうしねぇ。いやぁ案外調べたらわからないよ?カッター入り手紙とか来たら怖いし頭入れとくわ~。せめて本当にそうか知りたくない?」
「いや、別に。誹謗中傷は仕方ないんで…」
「流石今の子だな、さっぱりしてる。
まぁいいや、まずは番宣頑張ってね。俺は見れないけど」
…夫婦って似るって言うよなぁと少し思ったが…。
恋敵なわりに(というかパートナーと2回は寝てしまい勝手にヒヤヒヤしたわりに)旦那からは牽制感もない…知らないのか…いつの間にか緊張感がないのも却って不思議。
これ、逆にバレてんだろ。平中レイアはそう察した。
局の前のコンビニでぼんやりと、大量にルイボスティーを籠に入れる春雪に「あるには損はないけどちょっと控えようか」とやんわり制する旦那、西賀芳明を眺め、この二人大変だなと客観視も出来た。
多分、浮気程度では入り込めない。なんとなくそうも感じた。
局まで来ると番宣、監督も来ている異空間的違和感と威圧感で気持ちが切り替わった。
別で眞田さんが来ている事に春雪は、平中くんも自分と同様に不思議に思っているのだと感じ取る。
いや、眞田さんとは朝番宣、話し合ったんだけどな…と春雪が思う側、芳明が「あ、おはようございます」と眞田さんに挨拶をした。
それから芳明は二、三言眞田さんと話し、ふらっと立ち去った。
多分ここから霞が関まで電車で通勤するのだろう。
眞田さんが春雪も平中くんもまとめて肩を抱き「おはよう」と、焦っているのか、楽屋へ進んで行く。
そのお陰で春雪は、こちらの動向を伺っている監督から不自然なく逃げることが出来たけれど。
楽屋に三人で引っ込んですぐ、眞田さんは気まずそう、まるで魂が抜けたの如く平中くんに「はいこれ…」と台本を渡した。
…つまり、変更点があったのだろうかと思っている最中、眞田さんは手をパチンと叩き「ほんっとーにごめん!」と謝ってきた。
「…特に西賀くん!」
「…え、」
…予想外と言うか…。
「あー」
平中くんは「監督っすね」と言う。
昨日の予定ではこの番宣の場にいる、というものではなかったが、春雪は知っている。
しかしこの謝罪はどうも、変更があったから、というわけではなさそうだ。
「…平中くんから聞いて…」
少し考え「え?」と声が出たが、いや、何もそこまでは知るはずがないと「そうだったんですか」と仕事モードを貫く。
「リサーチ不足だった、ごめん西賀くん。何か、問題はない?」
…なるほど、そっちか。
こういうことは案外、他人に言われた方が自覚というものが芽生えてしまったりするようだ。
どうやら、やはり気持ちに痞があったらしい。
「…まぁ…大丈夫です、が…」
ペラペラと台本をつまらなそうに弄る平中くんは「それって大丈夫じゃないときの返事だよね」としれっと言う。
「まぁ、旦那からも“よろしくね”とか言われたし。あんた思ったより状況わかってないよね」
…薬のせいか、せいにしたい、頭がぽわっとしてくるが、「いや、まぁ流石に…」あまり言うことは考えておらず。
「……酷い状態で辞めたってのは聞いてる。
まさかその時の人だったなんてホント、リサーチ不足で…」
この業界へは、変態監督もいるくらいだ、テレビ経験者として引っ張られた経緯がある。丁度、新任の会社を辞めたばかりの頃。この求人には助かったものだ。
リサーチ不足も何も、会社名くらいしか社長も知らないだろうと思う。社長は女性だ。採用するか否かで会社を検索した程度だろう。
「平中くん、あれから調べたよ。あれ、めちゃくちゃ良さそうだよね。めっちゃ用意しとこ」
「…あうん。わかった」
「何それどんな?」
「奇跡のお茶だって。ノンカフェイン」
「あ、そうなんだ。俺知らなかった」
「そうなの?」
「うん。母親が花粉のちょい前くらいに飲み始めるお茶って感じだった」
「そうなんだ」
「あー、俺花粉あるからそれいいわ~。わかった寄る」
暫く黙った平中くんはふと静かに、「全然覚えはないんですが俺誰かに殺され掛けてますか?」と言った。
あ、ケージだから?
まさかの一言に芳明のしゃっきり男前さが崩れ、「ふはは…」と笑ったらツボに入ったらしい、震えるハンドルに「芳明!危ない!」と春雪が注意をした。
平中としては「え、何を見せられてんの?夫婦漫才?」状態だが、春雪はヒヤヒヤして仕方がない。
仕事柄、芳明もペーパーではないが、運転する率は多分、春雪の方が高い。
「いやー、どれかってーと俺的には君はストーカーとか気にする職かなと思ったんだけど」
「いや、別に売れてないんで…あ、でも配信荒らす女が」
「そういえば聴いたよ平中くんのやつ!」
「………マジかよやめろっつったじゃん!」
「え、いや、めっちゃよかったよ?あれSNSで宣伝してよって眞田さんに」
「やめてー、マジそういう公開処」
「いいですか、あれは事務所が作ったらしいやつなので広告も取りましょうね!」
芳明としても「何を見せられてんの?コンビ漫才?」状態だが二人がアットホームなので、まぁ大丈夫かと安心はした。
「へぇ、やってんだ。じゃあ俺も休憩時間に」
「いやいやいやいやホンットに」
「サイバー化入ってるよ生活安全部。困ってんならマジで聞くよ?」
「……いぇ、大丈夫ですなんとなく昔振った女だってわかって」
「モテるだろうしねぇ。いやぁ案外調べたらわからないよ?カッター入り手紙とか来たら怖いし頭入れとくわ~。せめて本当にそうか知りたくない?」
「いや、別に。誹謗中傷は仕方ないんで…」
「流石今の子だな、さっぱりしてる。
まぁいいや、まずは番宣頑張ってね。俺は見れないけど」
…夫婦って似るって言うよなぁと少し思ったが…。
恋敵なわりに(というかパートナーと2回は寝てしまい勝手にヒヤヒヤしたわりに)旦那からは牽制感もない…知らないのか…いつの間にか緊張感がないのも却って不思議。
これ、逆にバレてんだろ。平中レイアはそう察した。
局の前のコンビニでぼんやりと、大量にルイボスティーを籠に入れる春雪に「あるには損はないけどちょっと控えようか」とやんわり制する旦那、西賀芳明を眺め、この二人大変だなと客観視も出来た。
多分、浮気程度では入り込めない。なんとなくそうも感じた。
局まで来ると番宣、監督も来ている異空間的違和感と威圧感で気持ちが切り替わった。
別で眞田さんが来ている事に春雪は、平中くんも自分と同様に不思議に思っているのだと感じ取る。
いや、眞田さんとは朝番宣、話し合ったんだけどな…と春雪が思う側、芳明が「あ、おはようございます」と眞田さんに挨拶をした。
それから芳明は二、三言眞田さんと話し、ふらっと立ち去った。
多分ここから霞が関まで電車で通勤するのだろう。
眞田さんが春雪も平中くんもまとめて肩を抱き「おはよう」と、焦っているのか、楽屋へ進んで行く。
そのお陰で春雪は、こちらの動向を伺っている監督から不自然なく逃げることが出来たけれど。
楽屋に三人で引っ込んですぐ、眞田さんは気まずそう、まるで魂が抜けたの如く平中くんに「はいこれ…」と台本を渡した。
…つまり、変更点があったのだろうかと思っている最中、眞田さんは手をパチンと叩き「ほんっとーにごめん!」と謝ってきた。
「…特に西賀くん!」
「…え、」
…予想外と言うか…。
「あー」
平中くんは「監督っすね」と言う。
昨日の予定ではこの番宣の場にいる、というものではなかったが、春雪は知っている。
しかしこの謝罪はどうも、変更があったから、というわけではなさそうだ。
「…平中くんから聞いて…」
少し考え「え?」と声が出たが、いや、何もそこまでは知るはずがないと「そうだったんですか」と仕事モードを貫く。
「リサーチ不足だった、ごめん西賀くん。何か、問題はない?」
…なるほど、そっちか。
こういうことは案外、他人に言われた方が自覚というものが芽生えてしまったりするようだ。
どうやら、やはり気持ちに痞があったらしい。
「…まぁ…大丈夫です、が…」
ペラペラと台本をつまらなそうに弄る平中くんは「それって大丈夫じゃないときの返事だよね」としれっと言う。
「まぁ、旦那からも“よろしくね”とか言われたし。あんた思ったより状況わかってないよね」
…薬のせいか、せいにしたい、頭がぽわっとしてくるが、「いや、まぁ流石に…」あまり言うことは考えておらず。
「……酷い状態で辞めたってのは聞いてる。
まさかその時の人だったなんてホント、リサーチ不足で…」
この業界へは、変態監督もいるくらいだ、テレビ経験者として引っ張られた経緯がある。丁度、新任の会社を辞めたばかりの頃。この求人には助かったものだ。
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