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TriazoruM
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いつも、この薬を飲んだ後の目覚めは、低血圧でぼんやりと頭が痛くなる。
なんとなく、昨夜の芳明は眠れなかったのだろうと察した。
しかし穏やかに「おはよう、ユキ」と軽くキスをして優しい顔をしてくれる、これだけで春雪の微睡みは一気に甘くなるのだ。
「…おはよう」
はっと時計を見た。
やはりそうだ、芳明はうとうとしかけていたと思う、自分はきっちり6時間で起きた。アラームよりも2時間は早い睡眠。
「…眠れなかった?」
春雪がそう聞きながら芳明の頬を撫でると「まぁね」と、何事もなさそうにその手を重ねて握ってくる。
「ごめんね」
「これくらいは平気だよ。少し考えたりしてたら、そうか、もう…」
窓の方を見た芳明は、外が思ったよりも暗いことに「あれ?」と気が付いた。
「流石だなユキ…もしや」
「うん、まだ5時…」
6時間ぴったり。身体が覚えているのだ。
随分と薬中に成り下がっている。
芳明は春雪を抱き締め、「はい、抱き枕」と囁いた。
「出会った頃から…いままでのこととか、考えてたよ」
とめどない思考の巡り。
いっそ芳明にこそ精神薬を飲ませてやりたいもんだなと、春雪は芳明の項に両手をまわし、「ごめんね」と謝ることしか出来なくて。
「いや、まぁ、明日は休みだし今日も当直だから。今日は帰ったら先に寝てるかも」
「…芳明さ、」
良い加減、もう大丈夫だよ、いいんだよ。
いつもどこか頭の隅にある言葉。この言葉を考える瞬間、いつも怖くて自分勝手に言いたくなくて。
今日もまた「やっぱりなんでもないや」と芳明の胸に額を当てると「よしよし」と、芳明自身も「言われなくてよかった」と流され、安堵してしまっている。
互いに本当の言葉は知らない。
ふわっと曖昧なまま繋がれている“本能”は、人間にしか備わっていないもの。
言葉なんてただただ陳腐で、いつだって心と直結しない一生の不安定要素だ。
ぐっと抱き締め返した芳明は、泣きたいような熱さで誤作動か、脳から血液が流されているのかもしれない、ふわっと優しい匂いがする春雪に、簡単に勃起した。
「ユキ、」から言葉は進まない。
それも察した春雪は「少し、抜いちゃおうか?」と言いつつ芳明の背を撫でているばかり。
「…昨日言ったの、覚えてる?」
春雪も、ぼんやり勃ってくる。この薬、筋弛緩の効果、あるはずなんだけどな。
「…覚えてるよ」
こんなに多かったけな。そりゃぁもう少し若い頃は、そうだったけど。週2とか、それくらいは。
互いに我慢した期間が長いわりには、触れ合ったのは少ないかもしれない。
芳明はふわっと春雪を抱き締め耳朶を少し舐め「…嫌では、ないよね?」と、意味もないまま確認をする。
…狡い人…。
狡いなぁ、俺。
「嫌じゃ、ないよ」
「よかった」
こんな俺にも未だに、欲情はしてくれるんだなと思うのは俺の方だよとも、言わない。
ただ少し怖いんだ。
不思議だ、他人の方がそういうの、全く感じないのに、どうして好きなほど怖くなるんだろうか。
芳明は、そういうキスを長めに仕掛け、「まずは、風呂か…」と優柔不断で。
「時間、あるしね…」
変態監督にも再会したし、あの熱を思い出さないわけもなかったが、春雪が初めて芳明にけし掛けた気持ちが過った。
こんな方法でいいのかと。
あのプロモーションは確かに斬新だった。
練習しとけと言われ、コンドームを口に含み芳明に見せつけた瞬間、猛烈に目頭が熱くなったのを春雪は覚えている。
もういっそ引けばいいじゃんとすら思っていた。
けれど、芳明はどれかといえば苦しそうな表情で勃起していた。
そして最後に芳明は「ごめん」と言った、謝ったのだ。それが腹立たしくて仕方なかった。
我慢も限界でプロモーションを受けた入れたけれど、芳明に初めて「好きだ」と言わせたのも、あの時だった。
久しぶりにタチ、ネコかと互いに緊張してしまい、前戯もあまりなままになってしまうと「…そんな感じだったの?」と芳明は微妙そうで。
春雪はシゴいたり舐めたりと徐々に思い出して立ち向かったが、芳明がふふ、と笑い、「意地悪言ってごめんね」と頬を撫でてくる。
「こうやって頑張ってくれるのも、やっぱり興奮するんだけどね」
芳明が春雪の下へ手を伸ばす。
…やりにくいんだよな正常位でそれは…。
解していた春雪の手首を握り穴から指を抜いた芳明は、そのまま春雪を抱き締め「ごめんね」と言った。
まるで手探りだった頃を思い出す。
焦れったいのだ、互いに。
「んーん、いいよ…」
結局いつも通り、春雪が芳明に解かされ、少し寄り掛かる状態。
自分でゴムをした芳明は待つように両手を伸ばす。
腰をあげた春雪は少し力を抜いてぐっと芳明の足に座る。
がっと一気に下から突かれた。
しがみつくように芳明の肩に両手を置いてみれば、身体は自然と動いていく。ずる、ずる、と行き来する熱と側の体温。
舌を絡め取る芳明に応え、髪を撫でればずるずるが少し早まる。
最早座っているのも精一杯だと察した芳明はそのまま横にこてんと春雪を寝転がした。
ずるっと抜けた芳明のぺニスはまだ元気だが、ゴムを外しそこへ春雪の手を誘導する。
まだイッたばかりで痺れ、つい丸くなってしまう春雪に、擦ったり、弄ったり、互いにあちこちをキスし合って、ゆったりと解け合うよう、確かめ合うようにセックスをした。
ふわっと地肌で抱き締めた芳明の腹筋に、悪戯してやる、と春雪が指を這わせれば「くすぐったいよ、」と丸まった、逃げない摂氏。
目の前の胸板に「落ち着く」と言うそれもこそばゆいらしい、芳明の腹筋が動いた。
息も早く二人で笑い合い、そして眠くなる。
確かに、幸せ。まるで、筋弛緩だ。
どちらともなく、あと少しだけ眠りについた。
なんとなく、昨夜の芳明は眠れなかったのだろうと察した。
しかし穏やかに「おはよう、ユキ」と軽くキスをして優しい顔をしてくれる、これだけで春雪の微睡みは一気に甘くなるのだ。
「…おはよう」
はっと時計を見た。
やはりそうだ、芳明はうとうとしかけていたと思う、自分はきっちり6時間で起きた。アラームよりも2時間は早い睡眠。
「…眠れなかった?」
春雪がそう聞きながら芳明の頬を撫でると「まぁね」と、何事もなさそうにその手を重ねて握ってくる。
「ごめんね」
「これくらいは平気だよ。少し考えたりしてたら、そうか、もう…」
窓の方を見た芳明は、外が思ったよりも暗いことに「あれ?」と気が付いた。
「流石だなユキ…もしや」
「うん、まだ5時…」
6時間ぴったり。身体が覚えているのだ。
随分と薬中に成り下がっている。
芳明は春雪を抱き締め、「はい、抱き枕」と囁いた。
「出会った頃から…いままでのこととか、考えてたよ」
とめどない思考の巡り。
いっそ芳明にこそ精神薬を飲ませてやりたいもんだなと、春雪は芳明の項に両手をまわし、「ごめんね」と謝ることしか出来なくて。
「いや、まぁ、明日は休みだし今日も当直だから。今日は帰ったら先に寝てるかも」
「…芳明さ、」
良い加減、もう大丈夫だよ、いいんだよ。
いつもどこか頭の隅にある言葉。この言葉を考える瞬間、いつも怖くて自分勝手に言いたくなくて。
今日もまた「やっぱりなんでもないや」と芳明の胸に額を当てると「よしよし」と、芳明自身も「言われなくてよかった」と流され、安堵してしまっている。
互いに本当の言葉は知らない。
ふわっと曖昧なまま繋がれている“本能”は、人間にしか備わっていないもの。
言葉なんてただただ陳腐で、いつだって心と直結しない一生の不安定要素だ。
ぐっと抱き締め返した芳明は、泣きたいような熱さで誤作動か、脳から血液が流されているのかもしれない、ふわっと優しい匂いがする春雪に、簡単に勃起した。
「ユキ、」から言葉は進まない。
それも察した春雪は「少し、抜いちゃおうか?」と言いつつ芳明の背を撫でているばかり。
「…昨日言ったの、覚えてる?」
春雪も、ぼんやり勃ってくる。この薬、筋弛緩の効果、あるはずなんだけどな。
「…覚えてるよ」
こんなに多かったけな。そりゃぁもう少し若い頃は、そうだったけど。週2とか、それくらいは。
互いに我慢した期間が長いわりには、触れ合ったのは少ないかもしれない。
芳明はふわっと春雪を抱き締め耳朶を少し舐め「…嫌では、ないよね?」と、意味もないまま確認をする。
…狡い人…。
狡いなぁ、俺。
「嫌じゃ、ないよ」
「よかった」
こんな俺にも未だに、欲情はしてくれるんだなと思うのは俺の方だよとも、言わない。
ただ少し怖いんだ。
不思議だ、他人の方がそういうの、全く感じないのに、どうして好きなほど怖くなるんだろうか。
芳明は、そういうキスを長めに仕掛け、「まずは、風呂か…」と優柔不断で。
「時間、あるしね…」
変態監督にも再会したし、あの熱を思い出さないわけもなかったが、春雪が初めて芳明にけし掛けた気持ちが過った。
こんな方法でいいのかと。
あのプロモーションは確かに斬新だった。
練習しとけと言われ、コンドームを口に含み芳明に見せつけた瞬間、猛烈に目頭が熱くなったのを春雪は覚えている。
もういっそ引けばいいじゃんとすら思っていた。
けれど、芳明はどれかといえば苦しそうな表情で勃起していた。
そして最後に芳明は「ごめん」と言った、謝ったのだ。それが腹立たしくて仕方なかった。
我慢も限界でプロモーションを受けた入れたけれど、芳明に初めて「好きだ」と言わせたのも、あの時だった。
久しぶりにタチ、ネコかと互いに緊張してしまい、前戯もあまりなままになってしまうと「…そんな感じだったの?」と芳明は微妙そうで。
春雪はシゴいたり舐めたりと徐々に思い出して立ち向かったが、芳明がふふ、と笑い、「意地悪言ってごめんね」と頬を撫でてくる。
「こうやって頑張ってくれるのも、やっぱり興奮するんだけどね」
芳明が春雪の下へ手を伸ばす。
…やりにくいんだよな正常位でそれは…。
解していた春雪の手首を握り穴から指を抜いた芳明は、そのまま春雪を抱き締め「ごめんね」と言った。
まるで手探りだった頃を思い出す。
焦れったいのだ、互いに。
「んーん、いいよ…」
結局いつも通り、春雪が芳明に解かされ、少し寄り掛かる状態。
自分でゴムをした芳明は待つように両手を伸ばす。
腰をあげた春雪は少し力を抜いてぐっと芳明の足に座る。
がっと一気に下から突かれた。
しがみつくように芳明の肩に両手を置いてみれば、身体は自然と動いていく。ずる、ずる、と行き来する熱と側の体温。
舌を絡め取る芳明に応え、髪を撫でればずるずるが少し早まる。
最早座っているのも精一杯だと察した芳明はそのまま横にこてんと春雪を寝転がした。
ずるっと抜けた芳明のぺニスはまだ元気だが、ゴムを外しそこへ春雪の手を誘導する。
まだイッたばかりで痺れ、つい丸くなってしまう春雪に、擦ったり、弄ったり、互いにあちこちをキスし合って、ゆったりと解け合うよう、確かめ合うようにセックスをした。
ふわっと地肌で抱き締めた芳明の腹筋に、悪戯してやる、と春雪が指を這わせれば「くすぐったいよ、」と丸まった、逃げない摂氏。
目の前の胸板に「落ち着く」と言うそれもこそばゆいらしい、芳明の腹筋が動いた。
息も早く二人で笑い合い、そして眠くなる。
確かに、幸せ。まるで、筋弛緩だ。
どちらともなく、あと少しだけ眠りについた。
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