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一過性
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「話したいならどうぞ。気を遣ってくれたなら別に大丈夫です」
そう言うと平中くんは何故かムッとしたような顔をし、「まぁ確かにあんたほど話があるわけじゃないな」と言った。
なんだ、可愛いとこあるじゃん。この前といいなんといい。
「…意外と可愛いとこあるよね、君」
「何?興味くれた?」
「興味くれたって何よ。うんでもまぁ印象は変わった。こういう話も悪くはないね」
「…て言ってもホントに何もないな。俺生まれた頃なんて両親はこっちで結婚してるし。
国際結婚は面倒らしい。とか…母親的には国の感じ、あんまり日本と変わらないって言っていた。父親はよく母親にイライラはしてた、出さないようにしないとって言ってたけどさ」
「そうなんだ」
「日本人はきっちきちしてるから…そうだ、なんか買ってかない?ビールとか」
「え、」
「…とかね。あとはイギリスって単語は出したら面倒臭ぇって父親が言ってた、くらいかな」
「…異国文化聞く方が俺なんかより為になる話じゃん」
「あ、あとは母親…フレンドリーなんだけどあんまあの感じは出すなよって父親に言われたな。日本人が考える外国人、よりかは内面はシャイらしいけどね。俺はあまりピンと来てないけど確かに母親は愛想良いくせに警戒心ありまくり」
先程の写メの件を思い出した。なるほど。
「で、何買ってく?御馳走になるんじゃあれだ、酒入りのチョコ売ってるよね、コンビニとかで」
「確かに喜びそう」
道中のコンビニでチョコレートを買い、野島さん宅に向かう。
手土産にもならないがチョコを渡し、改めて「こちらはスターライトの」と俺が紹介しようとすると、「あー!!ハルちゃんだー!!」と、勇気くんが玄関まで走ってきた。
「あ、ごめん、」と言いながら野島さんは平中くんからコンビニ袋を受け取り眺め、お子さん用にと買っておいた星チョコを出し「こーら走らないの!」とやんわり、しかしハッキリと勇気くんを叱っていた。
勇気くんの手には先日の青が握られ、「おぉ~」と、長身の平中くんがしゃがみ込み勇気くんと対面し、気を引いた。
勇気くんは一瞬ポカンとしたが「……ブルー!」と平中くんに見せていた。
「平中くんが取ってくれたんだってね。ありがとう。
勇気、お兄ちゃんがくれたんだよ?」
「そうなのか!?」
「おぅ。アキバ限…アキバにしかないヤツだ」
ぐっと親指を立てた平中くん、勇気くんと俺を見て「さーご飯食べよ」と野島さんは言った。
二人でお邪魔しながら「勇気くん、今日は…」と聞けば「あぁ、午前なの」と野島さんはさらっと言った。
「心配しないで、今日は行けたから、これを自慢しに」
「そうなんですね」
「ん?」
そっか、平中くんは知らないか。
野島さんは普通に「この子幼稚園面白くないのよ。小さな頃からヤンキー」と笑いながら言う。
「…なんか、意外です」
「え?」
「いや、勝手なイメージでしたが、ケツ蹴っ飛ばしてでも行かせるイメージでした」
「ははっ!
まぁその分ピアノとかやらせてみたりしてるから良いのよ。私は昼過ぎまでは家にいるし?
午後はたまに送迎頼んだあと、ハルちゃんに任せちゃってる」
「あ、なるほど…」
座るよう促され従うと、「有り合わせだけど」と言うわりには、おしゃれなパスタとサラダが出てきた。
「ええっと、いま12時半ね。さっさと食べちゃいましょ。平中くんは何時からなの?」
「あ、はい、18時入りですね」
「帰り、ビミョーに被るわねぇ。
ほら勇気、ご飯ね。
そうだ!平中くん、その間見ててよウチの子」
「え、」
「局は一緒?」
「そうですね」
「じゃあ被るってより入れ違いね。わー効率が良い」
「え…、え!」
「眞田さんに電話しとくよ」
「いや、いやいやそれは流石に俺がやりま」
「私の我が儘だから。ね?」
やり場もなくパスタを食べる。美味しい。
サラダも取り分けてくれた。
「なんとなーくだけどハルちゃん達、今日は長丁場でしょ」
「あ、え、はい、多分」
「宮殿かなんかでしょ。めっちゃ押すもんねあの人」
「まぁ…いやスペシャルの頭なんで予想よりは、かなぁと…」
「何言ってんの逆に伸びるんじゃない?私二回出た…トリの時よ。本当はその日撮るはずだったのに押しちゃって別の日にズレたじゃない」
「あ、まぁ確かに…」
ふっと気付いたように息を吐いた野島さんは「あ、食べましょ仕事の話はあと!」と言う。
タレントさんと違ってマネージャーは食べながら会議は慣れている、多分平中くんへの配慮だ。全く手が進んでいない。
あと、勇気くんが青で遊び始めてしまったせいで「しまいなさい、捨てるわよ」と、この人はいつも忙しいのだ、気遣いに。
マネージャーの俺なんかより気遣いが出来る。
平中くんは漸く食事に手を付け「うま…美味しいです」と、勇気くんを配慮したのか、言葉遣いに気を付けていた。
「今日はお礼だから。お土産ありがとう。あとでこっそり貰うね」
「あ、いえ」
奇妙な顔をした平中くんに、そうか、これが多分、先程言っていたように彼には当たり前なんだなと思った。
「…食事のお礼というか…はい、わかりました、俺でよければお子さん預かります。確かに効率も良いし」
「でしょ!?ありがと!何かあったら怒って良いから!」
「いつもはどうしてるんですか?撮影中」
「まぁ、僕が勇気くんと遊んだりして、飽きたら一緒にスタジオ見学かなぁ」
「あ、そうなんだ」
「ハルちゃんにはいつも苦労を掛けちゃってね。これから平中くん、こうすれば?」
「いや…」
そう言うと平中くんは何故かムッとしたような顔をし、「まぁ確かにあんたほど話があるわけじゃないな」と言った。
なんだ、可愛いとこあるじゃん。この前といいなんといい。
「…意外と可愛いとこあるよね、君」
「何?興味くれた?」
「興味くれたって何よ。うんでもまぁ印象は変わった。こういう話も悪くはないね」
「…て言ってもホントに何もないな。俺生まれた頃なんて両親はこっちで結婚してるし。
国際結婚は面倒らしい。とか…母親的には国の感じ、あんまり日本と変わらないって言っていた。父親はよく母親にイライラはしてた、出さないようにしないとって言ってたけどさ」
「そうなんだ」
「日本人はきっちきちしてるから…そうだ、なんか買ってかない?ビールとか」
「え、」
「…とかね。あとはイギリスって単語は出したら面倒臭ぇって父親が言ってた、くらいかな」
「…異国文化聞く方が俺なんかより為になる話じゃん」
「あ、あとは母親…フレンドリーなんだけどあんまあの感じは出すなよって父親に言われたな。日本人が考える外国人、よりかは内面はシャイらしいけどね。俺はあまりピンと来てないけど確かに母親は愛想良いくせに警戒心ありまくり」
先程の写メの件を思い出した。なるほど。
「で、何買ってく?御馳走になるんじゃあれだ、酒入りのチョコ売ってるよね、コンビニとかで」
「確かに喜びそう」
道中のコンビニでチョコレートを買い、野島さん宅に向かう。
手土産にもならないがチョコを渡し、改めて「こちらはスターライトの」と俺が紹介しようとすると、「あー!!ハルちゃんだー!!」と、勇気くんが玄関まで走ってきた。
「あ、ごめん、」と言いながら野島さんは平中くんからコンビニ袋を受け取り眺め、お子さん用にと買っておいた星チョコを出し「こーら走らないの!」とやんわり、しかしハッキリと勇気くんを叱っていた。
勇気くんの手には先日の青が握られ、「おぉ~」と、長身の平中くんがしゃがみ込み勇気くんと対面し、気を引いた。
勇気くんは一瞬ポカンとしたが「……ブルー!」と平中くんに見せていた。
「平中くんが取ってくれたんだってね。ありがとう。
勇気、お兄ちゃんがくれたんだよ?」
「そうなのか!?」
「おぅ。アキバ限…アキバにしかないヤツだ」
ぐっと親指を立てた平中くん、勇気くんと俺を見て「さーご飯食べよ」と野島さんは言った。
二人でお邪魔しながら「勇気くん、今日は…」と聞けば「あぁ、午前なの」と野島さんはさらっと言った。
「心配しないで、今日は行けたから、これを自慢しに」
「そうなんですね」
「ん?」
そっか、平中くんは知らないか。
野島さんは普通に「この子幼稚園面白くないのよ。小さな頃からヤンキー」と笑いながら言う。
「…なんか、意外です」
「え?」
「いや、勝手なイメージでしたが、ケツ蹴っ飛ばしてでも行かせるイメージでした」
「ははっ!
まぁその分ピアノとかやらせてみたりしてるから良いのよ。私は昼過ぎまでは家にいるし?
午後はたまに送迎頼んだあと、ハルちゃんに任せちゃってる」
「あ、なるほど…」
座るよう促され従うと、「有り合わせだけど」と言うわりには、おしゃれなパスタとサラダが出てきた。
「ええっと、いま12時半ね。さっさと食べちゃいましょ。平中くんは何時からなの?」
「あ、はい、18時入りですね」
「帰り、ビミョーに被るわねぇ。
ほら勇気、ご飯ね。
そうだ!平中くん、その間見ててよウチの子」
「え、」
「局は一緒?」
「そうですね」
「じゃあ被るってより入れ違いね。わー効率が良い」
「え…、え!」
「眞田さんに電話しとくよ」
「いや、いやいやそれは流石に俺がやりま」
「私の我が儘だから。ね?」
やり場もなくパスタを食べる。美味しい。
サラダも取り分けてくれた。
「なんとなーくだけどハルちゃん達、今日は長丁場でしょ」
「あ、え、はい、多分」
「宮殿かなんかでしょ。めっちゃ押すもんねあの人」
「まぁ…いやスペシャルの頭なんで予想よりは、かなぁと…」
「何言ってんの逆に伸びるんじゃない?私二回出た…トリの時よ。本当はその日撮るはずだったのに押しちゃって別の日にズレたじゃない」
「あ、まぁ確かに…」
ふっと気付いたように息を吐いた野島さんは「あ、食べましょ仕事の話はあと!」と言う。
タレントさんと違ってマネージャーは食べながら会議は慣れている、多分平中くんへの配慮だ。全く手が進んでいない。
あと、勇気くんが青で遊び始めてしまったせいで「しまいなさい、捨てるわよ」と、この人はいつも忙しいのだ、気遣いに。
マネージャーの俺なんかより気遣いが出来る。
平中くんは漸く食事に手を付け「うま…美味しいです」と、勇気くんを配慮したのか、言葉遣いに気を付けていた。
「今日はお礼だから。お土産ありがとう。あとでこっそり貰うね」
「あ、いえ」
奇妙な顔をした平中くんに、そうか、これが多分、先程言っていたように彼には当たり前なんだなと思った。
「…食事のお礼というか…はい、わかりました、俺でよければお子さん預かります。確かに効率も良いし」
「でしょ!?ありがと!何かあったら怒って良いから!」
「いつもはどうしてるんですか?撮影中」
「まぁ、僕が勇気くんと遊んだりして、飽きたら一緒にスタジオ見学かなぁ」
「あ、そうなんだ」
「ハルちゃんにはいつも苦労を掛けちゃってね。これから平中くん、こうすれば?」
「いや…」
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