春の白妙

二色燕𠀋

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……is the dizziness of freedom.

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 …身体が熱い、くらくらする。

 清潔臭い布団の中で、桐生きりゅうがあの人に「まぁ、ご苦労様」と至って普通な言葉を吐くのを聞き、「普通なら、普通に聞こえるよな」とぼんやり過った。

 ……はぁ、どうしよう、ヤってしまったのに。なんだろう、この、満足しない幸福感は…。

 葵は無精に布団から鞄に手を伸ばしたが、そんなタイミングで桐生が来たようだ。
 間の悪い。

「…あれか、言ってた『こうちゃん』は」

 好奇心を露にしない普通の口調と表情を兼ね備えた桐生は、鞄に伸びた葵の手を取り…ベッドが軋む。

 見透かすようなぽっかりする黒目、これには正直な気持ちになれないから。葵は手を引っ込め、布団の中で犬のように息をした。

「知りたい?」
「なんだ、満足したんじゃないのか」
「満足なんてしないよ、桐生センセ」

 息苦しい。

 布団から顔を出しニヤっとすれば、彼は表情も変えずその手を額に当て、「風邪か?」と、焦らしている、的外れな質問をして来た。
 窓から差すじりじりとした陽に葵が少し顔をしかめると、桐生はカーテンを閉めにいく。それから、ただじっと見下ろすのみで。

「……センセ、鞄から取ってよ」
「何を?」
「ねぇ苦しいの。見ればわかるから」

 桐生ははぁ、と息を吐き「俺を変態かなんかだと思ってんの?」と言うのみで、何もしてくれない。

「別に?センセーより素直なだけだよ」
「今回は何」
「わかんないけどムズムズするの。カプサイシンの保湿クリームらしいよ、」
「…うっわ、変態すぎんなお前の親父。それはそうゆーんじゃねぇんだよ」
「でも昨日からヤりすぎちゃったって反省してやってくれたんだよ?来る前に」
「どんだけなんだよマジで。鼻血出んぞ」

 顔を近付けまた額に手を当てる…少し冷たい先生の手を取り首筋に当て、「気持ちい」と、そのままキスをした。

 唇には塗ってませんよ、ぷっくり丸く見えて可愛いって、女子はよくやるらしいけど。

 当たり前に舌を絡め、顔を離した桐生を見上げ「間接フェラ」と言ってやれば、彼は露骨に嫌な顔をし掌で口…どころか舌までもを拭っている様。

 あぁ、愉快だ。

「…やっぱそーゆーことかよ、」
「どうでもいいけどお願い出来る?お父様のせいで結構キツイの、身体」
「そうだろうな」

 ふいっと立ち…棚から脱脂綿か何かを持ちカーテンを全て閉めきった桐生は、最初にネクタイを外してくれた。
 左手の指輪を外し葵のシャツのボタンに手を掛け、乳首に貼られたシールを剥がしながら「前戯とかしないタイプの男か」と、露になった乳首に消毒液を染み込ませてくる。
 
 冷たくてついつい身が捩れた。

「…意地悪」

 染みるのか気持ちいいのかなんなのか…。
 手際良くズボンも下着も脱がせる彼に従い膝を曲げると、桐生は台の中からタオルを出した。

 腰を浮かせ下にタオルが敷かれたところで彼はコンドームを指に着け、その一本を入れてきた。
 消毒した乳首に唇を当てられ「…っふふ、」と吐息が溶ける。

 食んだり吸ったり。
 ぐちゃぐちゃと撫でるように然り気無く中の…熱い粘りを掻き出す彼にまた声が出そうになるけれど、場所が場所だ。
 彼の髪をなぜ、「きりゅぅ、さんは……」と真っ白の中で言葉を探してゆく。

 何度、何本か抜いた指を消毒液で拭い「こんなん我慢してたんか」と、それも普通な声色でしかなく。

「……がまんじゃ、ないよ」
「…少しピリピリする」
「薄まってるはずでしょ…?」

 ちっ、と舌打ちをしては、乳首も中も弄り葵の股の間に顔を埋め、ぬるっと、優しく咥える感触に「…っあ、」と、殺した声が出てしまう。
 乳首に触れていた手が、下の皮を少し剥く。現れた溝を舌で攻められた。

 普通な顔をしながら「出してどーぞ」と…少しだけ張った柔らかい部分を滑るように吸われ「…ぃや、めて、」と、意に反しその顔を押し退けようとしてしまう。

 自分は簡単だ。外側、中側の刺激、たったこれだけで理性が効かなくなりそうになるのだから。

「…俺はここ、好きだけどね」
「…ん…っ、やだ、よ」
「良さそうじゃん」
「…そこより、もう、綺麗でしょ?…ねぇ、」
「そっちでイク?あんま使いたくないんですけど、んな、朝から稼働中の穴なんて」
「……はぁ?」

 指が抜かれた。
 じっとこっちを見る桐生に、「あぁ、」と、つい嘲笑を浮かべる。

「あんたは、女じゃないもんね、」
「挑発のつもりなら、無駄だけど」

 まぁ、そうだろう……。
 そう思った瞬間、彼はふっと跨がり、自分のベルトを外し顔の近くに寄せてきた。

 綺麗な顔が少し歪み、「昨夜妻を抱いたばかりだけど、」と嫌味ったらしく言う彼の虚勢に、「へへっ、」と笑い同じ事をし返してやった。

 唇から感じる妙な弾力、これは変化すると知っている。
 彼がやってくれたように、葵は少し身体を下にズラし、この人は毛があるけれどと、二つの玉の間をペロペロと舐めた。

「……んで、こうちゃんはどうだったの、」

 はむはむと、皮の中にある感触を転がし、少し吸ってから「初めてだよ?」と報告する。

「…へぇ、念願叶った?」
「…意地悪ばっかり言う、」

 もういいやとばかりに再びもそもそと、体勢を戻した桐生はまた葵の穴を弄りながら…今度は検温じゃない、無言で頭を撫で、口の中を舐めてきた。
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