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Somebody else_?
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女も特に抵抗はない。もう多分、自分の中で完結しているのだ。
けれど、不思議。
野次馬態度を隠しもしない男子や女子が覗いてくると、空気を読むのか「可哀想な私」と言わんばかりにわざわざ声を荒げたり、泣き始めたり。
まぁ確かに、話し合う必要も内容も本当はないのだ、わかりきっている。
奥には連れて行ったけれど、本当のところ反響する内容すら、廊下の奴等には聞き取れないだろうし聞く気もないだろう。
教師もチラッとは見るが、結局去って行く。
こんな時、「面倒なことは知らないフリをする」人種と「面倒なことを面白がる」人種がいる。多分、自分もこの女も実は後者なのだ。
これは、一種のパフォーマンス。ダラダラとした日常の中のエンターテイメント。ただそれに成り下がっている、だけ。
ひとつだけ当てはまらないのは、最初からずっといる友人、三澤だった。
近いけれど干渉もしない距離、今も教室のドアあたりで腕組みをして様子を伺っている。
本人にそのつもりはないだろうし、あったとしても背が小さい。威圧感が、存在感程度で風景と同化していた。
洸太がこういったアホみたいな他評を嫌うことを昔から知っているから、三澤はこうした対応をするのかもしれない。
三澤が本当に良いヤツなのだろうとわかっているが、そのエゴは何に向かっているのか、実のところこういう「分類しにくい人種」が一番厄介だと洸太は思っている。
だから、パフォーマンスをするしかなくなるのだ。
一通り人の流れがなくなったタイミングで、洸太は女を掴み教室へ移動する。三澤にはその際、目配せをしておいた。
見届けたとばかりに何も言わず帰って行く三澤に、ふっと耳元で「久瀬にペン、借りてんだよね」と吹き込んでおく。
「久瀬?」
「今日借りたんだけど、バタバタしてて」
「…美術部じゃね?」
「そっか」
ただそれだけでこの悪い魔は順調に刺し進んでいる。
今朝の話題を知らない生徒などいない。教室に残り駄弁っていたやつらも、ささっと出て行った。
女と二人きりになり、案外冷静な態度で「何が悪かったの?」と言われたのは、洸太にとって予想外だった。
洸太が言葉に詰まる間も関係なしに女はたたっと、まずは教室の前扉の鍵を閉め次に後ろ扉の鍵を閉めようとしたが「特に何も悪くないよ」と、それを制する意味で声を掛けた。
「え?」
確かに、毎度のルーティンとは違うかな。
「…カーテン閉めてきてよ」と、手順を変えただけのように取り繕う。
正直少し呆れてはしまったが、まぁ予想していたことなんだよな…と、ヤる前から賢者タイムになりそうだった。
ルーティンを変えた女にすっと、人差し指で前の席に座るように促せば、女は「ふふ、」と笑って机の下へ潜り込み洸太のベルトを外して股間を出す。
当たり前にそれを口にする間抜けさに、俺は今何やってるんだろうなとぼんやりしかけたが、自分が仕込んだ通り、この女はそれを起立させることには長けていた。
だからキープだったのか、それもそうだが、何より従順なところが楽だったんだけど。
女はポケットからコンドームを出し、また一度潜って装着してくる。
自分で下着を脱ぎ洸太の側にずぶっと腰を据えた。
「どう?先輩と」と、顔に胸を押し当てながら抱き付くように頭を抱えてくる女。
これも「こうすれば下なんて見えないよ」と、洸太が以前に教えたからだろう。
その“見えない下”でスカートの中をまさぐり、はぁ、と声を出しそうな女の口をキスで塞ぐ。
赤みがかった頬で洸太を見下ろしながら、女はちらっと廊下を気にしている。
行為がバレないようにとただ抱き締めてくるだけで、後ろの話し声も足音も去って行くのを待った。
少し焦れったい。もぞもぞと動くと彼女もゆっくりとそれを始める。
「先輩がどうとか言ってるけどさ」
会話は普通に行う。彼女は「ふん…」と、声にならずに頷いた。
「だからなんだって話じゃない?」
止まる。
焦れったくてまたもぞもぞするけれど、彼女は目を細めセミショートを耳に掛けた。
「どっちがいいか決定戦なの?それとも…」
不意に、後ろの扉が開いた。
女ははっとそちらを見るし、洸太も横目で確認した。
当の久瀬は明らかに自分達を見て固まっている。
焦れったかったなと、洸太がやっとの思いで遠慮なしに腰を動かせば、女は洸太の急速な変化に「いやっ、」と驚いている。
けれど女は当たり前に久瀬を気にしている。
どんな表情なのかと女の顔を眺めると、暑そうな頬はそのままに久瀬をきっと睨み付け「何?」と、今まで自分に見せなかったような、気の強い態度を取っていた。
それについ、興奮したらしい。それは女も中で感じたようだ。
「あっ、嘘、」
もう女は用済みだ。
洸太はポケットからあのボールペンを取り出し「悪ぃ、借りっぱだったけど」と久瀬に伝える。
「……」
表情は変わらなかったが、何かを考えるような間を持つ。
「あっ、あん、」とすぐ側のパフォーマンスが煩い。
間の後、久瀬はコロッと表情を変え控えめに笑い「邪魔しちゃったね」と、当たり前な返答をしてきたが。
…当たり前だろうか?
洸太はつい、動きを止めてしまった。
けれど、不思議。
野次馬態度を隠しもしない男子や女子が覗いてくると、空気を読むのか「可哀想な私」と言わんばかりにわざわざ声を荒げたり、泣き始めたり。
まぁ確かに、話し合う必要も内容も本当はないのだ、わかりきっている。
奥には連れて行ったけれど、本当のところ反響する内容すら、廊下の奴等には聞き取れないだろうし聞く気もないだろう。
教師もチラッとは見るが、結局去って行く。
こんな時、「面倒なことは知らないフリをする」人種と「面倒なことを面白がる」人種がいる。多分、自分もこの女も実は後者なのだ。
これは、一種のパフォーマンス。ダラダラとした日常の中のエンターテイメント。ただそれに成り下がっている、だけ。
ひとつだけ当てはまらないのは、最初からずっといる友人、三澤だった。
近いけれど干渉もしない距離、今も教室のドアあたりで腕組みをして様子を伺っている。
本人にそのつもりはないだろうし、あったとしても背が小さい。威圧感が、存在感程度で風景と同化していた。
洸太がこういったアホみたいな他評を嫌うことを昔から知っているから、三澤はこうした対応をするのかもしれない。
三澤が本当に良いヤツなのだろうとわかっているが、そのエゴは何に向かっているのか、実のところこういう「分類しにくい人種」が一番厄介だと洸太は思っている。
だから、パフォーマンスをするしかなくなるのだ。
一通り人の流れがなくなったタイミングで、洸太は女を掴み教室へ移動する。三澤にはその際、目配せをしておいた。
見届けたとばかりに何も言わず帰って行く三澤に、ふっと耳元で「久瀬にペン、借りてんだよね」と吹き込んでおく。
「久瀬?」
「今日借りたんだけど、バタバタしてて」
「…美術部じゃね?」
「そっか」
ただそれだけでこの悪い魔は順調に刺し進んでいる。
今朝の話題を知らない生徒などいない。教室に残り駄弁っていたやつらも、ささっと出て行った。
女と二人きりになり、案外冷静な態度で「何が悪かったの?」と言われたのは、洸太にとって予想外だった。
洸太が言葉に詰まる間も関係なしに女はたたっと、まずは教室の前扉の鍵を閉め次に後ろ扉の鍵を閉めようとしたが「特に何も悪くないよ」と、それを制する意味で声を掛けた。
「え?」
確かに、毎度のルーティンとは違うかな。
「…カーテン閉めてきてよ」と、手順を変えただけのように取り繕う。
正直少し呆れてはしまったが、まぁ予想していたことなんだよな…と、ヤる前から賢者タイムになりそうだった。
ルーティンを変えた女にすっと、人差し指で前の席に座るように促せば、女は「ふふ、」と笑って机の下へ潜り込み洸太のベルトを外して股間を出す。
当たり前にそれを口にする間抜けさに、俺は今何やってるんだろうなとぼんやりしかけたが、自分が仕込んだ通り、この女はそれを起立させることには長けていた。
だからキープだったのか、それもそうだが、何より従順なところが楽だったんだけど。
女はポケットからコンドームを出し、また一度潜って装着してくる。
自分で下着を脱ぎ洸太の側にずぶっと腰を据えた。
「どう?先輩と」と、顔に胸を押し当てながら抱き付くように頭を抱えてくる女。
これも「こうすれば下なんて見えないよ」と、洸太が以前に教えたからだろう。
その“見えない下”でスカートの中をまさぐり、はぁ、と声を出しそうな女の口をキスで塞ぐ。
赤みがかった頬で洸太を見下ろしながら、女はちらっと廊下を気にしている。
行為がバレないようにとただ抱き締めてくるだけで、後ろの話し声も足音も去って行くのを待った。
少し焦れったい。もぞもぞと動くと彼女もゆっくりとそれを始める。
「先輩がどうとか言ってるけどさ」
会話は普通に行う。彼女は「ふん…」と、声にならずに頷いた。
「だからなんだって話じゃない?」
止まる。
焦れったくてまたもぞもぞするけれど、彼女は目を細めセミショートを耳に掛けた。
「どっちがいいか決定戦なの?それとも…」
不意に、後ろの扉が開いた。
女ははっとそちらを見るし、洸太も横目で確認した。
当の久瀬は明らかに自分達を見て固まっている。
焦れったかったなと、洸太がやっとの思いで遠慮なしに腰を動かせば、女は洸太の急速な変化に「いやっ、」と驚いている。
けれど女は当たり前に久瀬を気にしている。
どんな表情なのかと女の顔を眺めると、暑そうな頬はそのままに久瀬をきっと睨み付け「何?」と、今まで自分に見せなかったような、気の強い態度を取っていた。
それについ、興奮したらしい。それは女も中で感じたようだ。
「あっ、嘘、」
もう女は用済みだ。
洸太はポケットからあのボールペンを取り出し「悪ぃ、借りっぱだったけど」と久瀬に伝える。
「……」
表情は変わらなかったが、何かを考えるような間を持つ。
「あっ、あん、」とすぐ側のパフォーマンスが煩い。
間の後、久瀬はコロッと表情を変え控えめに笑い「邪魔しちゃったね」と、当たり前な返答をしてきたが。
…当たり前だろうか?
洸太はつい、動きを止めてしまった。
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