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3話
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電車がゆっくり止まるなか、車内にひとりの女性が乗っているのが見えた。別に他にも乗客は居たのだが、俺はなぜかその女性に目がいった。
電車のドアが開き、俺はその人から少し距離を置いて座った。横目で視線をやると、その女性は青色のワンピースを着ていた。あまりジロジロとも見ていられないので、窓の外へ視線を変えた。
暫くして、次の駅への到着アナウンスがされた。俺は席を立ち、そばの出入り口まで向かった。すると例の彼女も席を立ち、別の出入り口へと向かった。
「まさかな...」
俺は電車を降りた。スマホの地図アプリを頼りに、説明会場を目指して歩き始めた。ちなみに駅から説明会場となる施設まではバスもあったのだが、久しい田舎の雰囲気と長時間の電車の為に、俺は果敢にも徒歩という選択肢を取ってしまった。
セミの合唱が鳴り響く中、汗を垂らしながら歩き続ける。履いてきたサンダルのせいで、足の親指の付け根部分が痛み始めている。俺は早々に自分の取った選択肢に後悔をしていた。
やっと見えて来た会場にほっとするが、時計を見ると開始時間まで10分も無い事に気づいた。
「あれ、かなり余裕あったはずなのに...」
そう思ったが、電車で寝過ごしたことを思い出し、すぐに納得した。俺は残りの体力を振り絞り、全速力で会場に向かった。入り口あたりでバスから降りる青色のワンピースの彼女が見えた。少しの嬉しさと焦りで走り続けるが、35歳の俺の体に最後まで走り切らせることはできなかった。
俺は少し遅刻しながらも会場に入った。ぐちゃぐちゃの手紙を見せて受付を済ませ、指定の席に案内された。俺の他に十数名程だろうか、説明会参加者が既に席に座っていた。その中には、例の彼女もいる。
汗が少し引いて来たころ、白衣の女性が説明会を始める。薬の詳しい説明もあったが、俺にはさっぱりわからない。だが分かった事として、薬を飲むと飲んだ歳で老化が止まる。そして病気にはならなくなるそうだ。罹っている病気も治るらしい。まさに万能薬だ。しかしこれはあくまで治験。治験中になにがあっても自己責任となることは念押しされた。
質疑応答の時、数名の後に俺はずっと気になっていた質問をした。
「あの、死にたくなったらどうするんですか?」
少し会場が静まった気がした。回答はこうだった。
「別の薬の投与で安楽死も可能です。」
俺はほっとした。死ぬことはもちろん怖い。だが、永遠の命も怖いのだ。要は永遠に何かが続くことに恐怖を感じるのだろう。俺はほっとするのと同時にこの治験に参加することを決めた。この治験が多くの人の助けになると思ったからだ。
説明会後、俺は治験の申し込みを行った。
電車のドアが開き、俺はその人から少し距離を置いて座った。横目で視線をやると、その女性は青色のワンピースを着ていた。あまりジロジロとも見ていられないので、窓の外へ視線を変えた。
暫くして、次の駅への到着アナウンスがされた。俺は席を立ち、そばの出入り口まで向かった。すると例の彼女も席を立ち、別の出入り口へと向かった。
「まさかな...」
俺は電車を降りた。スマホの地図アプリを頼りに、説明会場を目指して歩き始めた。ちなみに駅から説明会場となる施設まではバスもあったのだが、久しい田舎の雰囲気と長時間の電車の為に、俺は果敢にも徒歩という選択肢を取ってしまった。
セミの合唱が鳴り響く中、汗を垂らしながら歩き続ける。履いてきたサンダルのせいで、足の親指の付け根部分が痛み始めている。俺は早々に自分の取った選択肢に後悔をしていた。
やっと見えて来た会場にほっとするが、時計を見ると開始時間まで10分も無い事に気づいた。
「あれ、かなり余裕あったはずなのに...」
そう思ったが、電車で寝過ごしたことを思い出し、すぐに納得した。俺は残りの体力を振り絞り、全速力で会場に向かった。入り口あたりでバスから降りる青色のワンピースの彼女が見えた。少しの嬉しさと焦りで走り続けるが、35歳の俺の体に最後まで走り切らせることはできなかった。
俺は少し遅刻しながらも会場に入った。ぐちゃぐちゃの手紙を見せて受付を済ませ、指定の席に案内された。俺の他に十数名程だろうか、説明会参加者が既に席に座っていた。その中には、例の彼女もいる。
汗が少し引いて来たころ、白衣の女性が説明会を始める。薬の詳しい説明もあったが、俺にはさっぱりわからない。だが分かった事として、薬を飲むと飲んだ歳で老化が止まる。そして病気にはならなくなるそうだ。罹っている病気も治るらしい。まさに万能薬だ。しかしこれはあくまで治験。治験中になにがあっても自己責任となることは念押しされた。
質疑応答の時、数名の後に俺はずっと気になっていた質問をした。
「あの、死にたくなったらどうするんですか?」
少し会場が静まった気がした。回答はこうだった。
「別の薬の投与で安楽死も可能です。」
俺はほっとした。死ぬことはもちろん怖い。だが、永遠の命も怖いのだ。要は永遠に何かが続くことに恐怖を感じるのだろう。俺はほっとするのと同時にこの治験に参加することを決めた。この治験が多くの人の助けになると思ったからだ。
説明会後、俺は治験の申し込みを行った。
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