悪役令嬢の逆襲 〜異世界で紡ぐ復讐の物語〜

第5章：逆転の結末

翌日の朝、王立魔法学院は未曾有の騒動に包まれていた。夜明けとともに、リリアナの不正使用していた禁断の魔法の詳細が公表されたのだ。学院の廊下や中庭では、驚きと怒りの声が飛び交っていた。

「リリアナが禁断の魔法を？信じられない！」
「あんなに優しそうだったのに…」
「エリザベス様が証拠を集めてくださったんだって」

噂は瞬く間に広がり、学生たちの間で憶測が飛び交う。その中心にいたのは、リリアナ・ブラウン。彼女は、かつての輝かしい笑顔を失い、今や恐怖と絶望に満ちた表情で立ちすくんでいた。

学院長室での厳しい審問の末、リリアナの学院追放が正式に決定された。彼女が部屋から出てくると、廊下には冷ややかな視線を向ける学生たちが並んでいた。

その時、エリザベス・ヴァンドービルトがゆっくりとリリアナに近づいてきた。彼女の瞳には、悲しみの色が宿っていた―しかし、それが演技であることを知っているのは、エリザベス自身だけだった。

「リリアナ、なぜ…」エリザベスの声は、か細く震えていた。「私たち、友達だったじゃない」

リリアナは、怒りと恐怖が入り混じった目でエリザベスを睨みつけた。その目には、今にも飛びかかりそうな狂気の色が宿っていた。

「あなたが…」リリアナの声は、歯を食いしばるように低く唸るような音だった。「あなたが全てを台無しにした！」

エリザベスは、一瞬だけ驚いたような表情を見せた。しかし、次の瞬間、彼女の唇が冷たい笑みを形作る。それは、勝者が敗者を見下ろす時の、慈悲のない微笑みだった。

「ええ、そうよ」エリザベスの声は、氷のように冷たかった。「これがあなたの行いへの報いよ。私を陥れようとした報いね」

その言葉に、周囲がざわめいた。学生たちは、エリザベスとリリアナの間で起こっていた出来事を、今初めて知ったのだ。

リリアナの顔から血の気が引いていく。彼女の目に、絶望の色が広がった。そして次の瞬間、彼女は崩れ落ちるように泣き始めた。その姿は、かつて学院で最も人気を誇った少女の面影など、微塵も感じさせなかった。

エリザベスは、高みから見下ろすように、リリアナを冷ややかに見つめた。彼女の瞳に、一片の同情も浮かんでいない。

「さようなら、リリアナ」エリザベスの声は、まるで氷の刃のように鋭く、リリアナの心臓を貫いた。「二度と私の前に現れないで。あなたの居場所は、もうここにはないわ」

廊下に集まっていた学生たちは、息を呑んで二人のやり取りを見守っていた。エリザベスの姿は、まるで正義の化身のように輝いて見えた。一方のリリアナは、みすぼらしく、哀れな姿でその場に崩れ落ちていた。

こうして、エリザベスは自分の運命を覆し、悪役令嬢としての烙印を完全に晴らしたのだった。彼女の周りには、尊敬と畏怖の入り混じった視線が注がれている。かつて彼女を蔑んでいた者たちも、今や彼女の前では頭を垂れるしかなかった。

エリザベスは、威厳に満ちた足取りでその場を後にした。彼女の背中には、勝利の輝きが満ちていた。そして誰一人として、彼女の唇に浮かぶ小さな微笑みに気付く者はいなかった。その微笑みには、全てを計算し尽くした策略家の満足感が、確かに刻まれていたのだ。