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1巻
1-1
しおりを挟むプロローグ
私の名前は斉藤ゆき。二十三歳。普通の会社員だ。
私には四人の弟妹がいる。
長男、十七歳の深李。次男、十五歳で中学三年生の春樹。
次女、十二歳。双子の姉である夏喜。三男、十二歳。双子の弟である秋喜。
私たちにはそれぞれ違う父親がいる。
母は男を見る目がなかった。子供ができれば逃げられ、かと思えば暴力を振るう男に捕まる。別の男に逃げてはまた酷い目に遭う、その繰り返し。
自分の子供がそのせいでどれだけ迷惑するかなんて考えず、むしろ母は、自分が誰からも愛してもらえないことを私たちのせいにしていた。当たられたことは数知れず、幼い頃は身を守ることで必死だった。
そんな両親からもらえる生活費なんて微々たるもの、あってないようなものだ。
だから、長女として生まれた私がとにかく必死に働くしかなかった。私は弟妹を守るため、働ける年齢になった途端ひたすらバイトに明け暮れた。
学校だって学費免除のために成績は常に上位にキープ。高卒でもそれなりの所に勤められるように資格だってたくさんとった。
私が行っていた学校は成績優秀者の待遇が良かったから、様々な資格をほぼ無償でとれたことが救いだ。就職してからも、弟や妹が寂しくないように家族との時間をとることもわすれなかった。だから恋愛なんかはまったく縁がない。
十一歳から母親をやるのはものすごく大変だった。
それでも最近は長男の深李が買い物や家事を手伝ってくれるようになったので、少しずつ楽にはなってきている。
今日も学校帰りの深李と待ち合わせて、晩御飯を何にするか相談しながら私たちはスーパーを歩いていた。
「姉さん、僕カゴ取ってくる」
「じゃあお姉ちゃんはカートを持ってきます」
深李と他愛ない会話をしながら、他の弟妹たちの好みそうな晩御飯の材料を買う。
買い物を終わらせて店を出る頃には外は暗くなり始めていた。
「ちょっと買いすぎたかな? 外も暗いし、早く帰ろうか」
「そうだね。三人とも待ってると思うよ」
「ふふ、帰ろうか」
スーパーの駐車場を突っ切って駅の方へ並んで歩く。
その時、突然ドンッと人がぶつかってきた。
同時に腹部に鋭い痛みが走る。周りで悲鳴があがるのが聞こえた。
一瞬、何が起こったのか理解できず、ジクジクと痛む腹部に目をやるとナイフが突き刺さっている。目の前には見覚えのある姿があった。
「わ、たなべ、さん?」
目の前にいるのは同僚の姿だ。可愛らしく、ちょっとしたたかな後輩。けれどいつもにこやかに微笑んでいた彼女の顔は般若のように歪んでいる。
「っ、あんたが、あんたが悪いのよ。山本くんは、絶対自分から女には話しかけないのにっ、いつもいつもいつも‼ あんたには話しかけてた‼ 許せない許せない許せない許せないい‼ あんたなんか死んじゃえっ!」
吐かれる言葉に覚えはない。彼女の言う山本くんは確かに私の後輩で、彼女の同期だけれど――私は気が付かないうちに何かをしてしまったのだろうか。
だんだんと視界がかすんでいく。
「姉さんっ‼」
なおも私を揺さぶろうとする彼女を押し退け、深李が私を支える。
顔が真っ青だ。あはは、いつも笑顔の深季が焦るなんてよっぽど私の顔色は悪いんだろう。なんて、刺されたんだから当たり前か。
「っ、しん、り」
「しゃべらないで! 今救急車がくるからねっ」
「みんな、こと……、よろ、く、ね」
「ね、さん……? 何、言って……」
ああ、ダメだ。目が見えなくなってきた。寒いし、手の感覚ももうない。
「げんきで、ね?」
「だめだよ、いやだ、嫌だ嫌だ嫌だ‼ 姉さん! 目をあけて! 置いてかないでっ姉さん! 姉さんっ!」
「大好き、よ」
――――結局、一度も恋はできないままだったな……
◆
「ん、ここは……?」
私、どうなったんだろう。ぱちりと目を開ける。深李の姿はそこにはない。
それどころか刺されたはずなのに、痛みがすっかり消えている。というか傷すらない。
――ここはどこなんだろうか。
辺りを見渡すと、目の前にはどこまで続くのか分からないほど遠くまで草原が広がっている。
私はそこに一本だけある大きな木に、背中を預けて座っていた。
「地獄……にしては綺麗だし、天国?」
「違いますよ」
「へ?」
呟くとどこからか綺麗な声が聞こえた。
今、この場所には私しかいなかったはずだ。
すると突然、とんでもなく綺麗な顔をした男性が、申し訳なさそうな顔で私の前に現れた。
透き通るようなブロンドヘアに青空の瞳。どこか浮世離れした雰囲気をしていて白いローブのような服を纏っている。
「驚かせてしまい申し訳ありません。私は……そうですね、あなたがいた世界で言えば神のようなものです」
彼はそう言ってぺこりと頭を下げた。思わず彼の言葉を復唱する。
「か、神様?」
神様、なんて本当なら疑うところだけど、なんだか知らない場所にいるし、傷も消えているし。なによりこの人、うっすら光っているうえにとんでもなく綺麗な顔をしている。
神様という言葉を信じずにはいられないくらいには、人間離れした美しさだ。
でもなんで神様? 私死んだんだよね? わざわざ神様がお迎えに来てくれたってこと?
混乱していると、彼は柔らかく微笑んだ。
「戸惑っていらっしゃいますね。少し説明してもよろしいですか?」
一人で考えていたってなにも分からないから、説明してもらえるのならありがたい。
男性――神様の言葉に私はこくりと頷く。
そうして神様による状況説明がはじまった。
まず、命あるものすべてに『運命』というものがあるのだという。『運命』は基本的に変わることはない。だが、ごく稀にイレギュラーが起きて『運命』が変わってしまうこともあるのだと。そうしてイレギュラーで死んでしまった魂は、他の魂に影響を与えないように輪廻の輪から外れる。
輪廻の輪から外れた魂は消されて新しく作りなおされるそうだ。
今回私が死んだのもそのイレギュラーの一つだと神様は言う。
じゃあ私は消されて作り直されるのか……と思っていると、神様が慌てて訂正した。
私の死は、神様の娘さんが私の魂を作る際、私に与えられる愛の重さを間違って起きたものらしい。そしてそういう神様側のミスで発生したイレギュラーの場合、勝手に魂を消すわけにはいかないのだという。
え、私神様のミスで死んじゃったの? 内容重いのに、なんか軽く感じるような……
「なら私はどうなるんですか?」
「元の世界に戻すことはできないので、別の世界に転生していただきます」
神様は眉を下げたまま、私の目の前に手をかざした。もやもやとした中に青空とお城のような建物が見える。どうやらこれが私の転生する世界らしい。まるでファンタジー世界のように綺麗だ。
「それに今回は私の娘のミスでこうなってしまったので、お詫びとして魂に特別な能力をつけさせていただきます。必要そうな能力はこちらで勝手にお付けしますが……なにか欲しい能力や譲れないものなどはございますか?」
おずおずと神様に言われて、私は首を傾げた。
母は今、新しい彼氏のとこにいるから問題ないだろう。
弟妹たちのことは気がかりだけど、死んでしまったのだから元の場所に戻れないのは仕方がない。
「私のことじゃないんですけど……弟たちを見守ってもらうことはできますか」
「はい。ですが、あなたはもうあなた自身のことを考えてもいいのでは?」
神様が即答してくれたのでほっとする。ミスはすれどこれだけ優しい神様に見守られるなら、きっと私の家族たちは大丈夫だ。私は転生する世界の映像を見つめる。
「自分のこと、と言われてもなかなか……どういう世界なんですか、ここは」
「ここは魔法が使える世界で――ああ、もちろん危なくないように配慮しますよ! 他に地球と違うのは人間以外の種族もたくさんいるところでしょうか」
なるほど、と私は頷く。それから神様にどんな能力を付与してもらえるのかを見せてもらったらなんか、とにかくすごかった。もらえるものはもらう主義だけど能力はもう十分すぎるかもしれない。
生命の危険はないと神様が言ってくれている。
これ以上何かを望むのはやりすぎかな?
でも、やっぱり憧れはあったし。
私はしばらく考えてから顔を上げ、神様に言った。
「愛されたい、かな」
「『愛』ですか」
「うん、神様なら知ってるでしょう? 母さんが愛したのは自分を大事にしてくれそうな男だけで、父さんはそもそもいない。弟たちからは愛されてたようにも思うけど、母親代わりみたいなものだったから違う気もして。私は、新しい世界でたくさん愛されてみたい。それに、本当は恋もしてみたかった、かな」
わがままかな、と思ったけれど神様はあっさりとうなずいた。
「では、あなたにはたくさんの者たちから愛される器を。それと、次の世界には『運命の番』というものがあります……その相手はあなただけを想ってくれるでしょう。際限なく大きい愛を受け入れる器もあなたにはある。きっとすぐに巡り合えますよ」
そして神様は私の瞼にそっと手を置いた。
『だから、どうか幸せに……おやすみなさい』
だんだんと世界が回っていき、最後にそんな言葉が聞こえた気がする。
神様と言うけれどそれ以外は何も知らない人。でもどこか懐かしくて気を抜いて話せる人。なんとなく、なんとなくだけどあの人は私を愛してくれていた気がする。
違うか、あの人――神様は世界を愛していたのかもしれない。
私、愛してもらえるかな。新しい世界では大事な人を見つけられるかな――
◆
「おぎゃあああ‼」
暗くて、でもすごく安心できる場所から出される感覚に驚いて声をあげる。泣いていたらふわふわの何かに包まれて持ち上げられた。
もしかして、転生……したのかな?
眩しくて目を開けられなくて、周りの様子は分からないけれど私を抱いている誰かの手にすごく安心した。神様のおかげでこの世界の言葉は分かるようになっているはず。耳を澄まして聞いてみる。
「ふふ、かわいい。母様の腕に安心してくれるの?」
優しい声だ。今私を抱いているのがこの世界での私のお母さんらしい。
同時に、急に大きな音がして、なにか暖かいものが近づいて来るのを感じた。気配とも違うそれは私を抱いているお母さんにもあるようだけど――お母さんは少し冷たい感じがする。
これ、もしかして神様が言ってた魔力かな? たしか、使える魔法の属性によってその人の魔力質が変わるんだっけ。
属性は全部で六つ。火・水・風・土・光・闇。だったら多分今来た暖かい感じは火の属性の人かな? じゃあお母さんは風属性? それとも水属性だろうか?
なんて考えてたら暖かい人がお母さんに話しかけた。
「アイシャ!」
「カインったら、大丈夫。私もこの子も無事よ。ほら、可愛いでしょう? 待望の女の子よ」
「っ、なんて、可愛いんでしょう。ありがとう、アイシャ、ありがとうございます」
声と同時に、暖かくて大きな手が私を撫でてくれる。今の会話的にこの人が私のお父さんか。
そう思っていると、再びバタバタバタと大きな足音が聞こえた。
魔力っぽい気配が今度は三つ。ドアが開く音とともに騒がしい声が近づいてくる。
「生まれた⁉ 妹⁉ 弟⁉」
「ちょ、リーべ! ストップ!」
「兄さん……しー」
妹か弟か聞くってことはもしかして三人は私のお兄ちゃんなのかな?
三人のお兄ちゃんか、今世も家族がたくさんみたいだ。前世は一番上だったけど今回は上に三人もいる。可愛がってくれるだろうか。
そんなことを考えていると、三人のうち一人がそっと撫でてくれるのを感じた。
なんだかすごく安心する。
ふにゃりと顔が緩むのと同時に、他の二人も壊れ物を扱うように私の頭を優しく撫でてくれた。それもすごく気持ちいいんだけど、やっぱり最初に撫でてくれたお兄ちゃんの手が安心する。なんでだろう。
気になって、最初に撫でてくれた手をぎゅっと握ってみる。
「えっ」
「あら、エルのこと気に入ったみたいね」
エル? 名前かな。エルお兄ちゃん?
そう思っていると他の声も口々にしゃべりだす。
「いいなぁ、エル。……にしても、ちっちぇえ」
「可愛い……男の子……? 女の子……?」
あ、それは私も気になるかも。
私にも分かんないんだよね。どっちだろう。
わくわくした気配の三人と一緒に私も待っていると、お母さんらしき声が言った。
「女の子よ」
「「「女の子‼」」」
おおう、声がそろった。
女の子かあ、よかった。前世の記憶がある分そっちのほうが助かるからね! ほっとしていると声の一つがさらに気になることを聞いてくれた。
「なあなあ、名前は?」
名前! 名前は子供が最初にもらえるプレゼントだ。誰にも取られることのない私だけの宝物。いい名前をもらえたらいいなあ。
ドキドキしているとお母さんの声が教えてくれた。
「考えてありますよ。フィエルテ……フィエルテ・フリードリヒです」
フィエルテ……素敵な響きだ。フリードリヒは家名かな? この世界ではじめてのプレゼントだ、大事にしよう。初めての世界、初めての両親、初めてのお兄ちゃん。
初めてだらけの世界で不安がないとは言えないけれど産まれたばかりの私ならきっといろんなことを学べるかもしれない、ううん、学ぶ。
そして、いつか神様が言っていた運命の番と出会って、たくさん愛してもらうんだ。
今世では自分の幸せを願ってもいいかな?
第一章 三歳
「フィルー?」
「おかーしゃま!」
お母さん――もといお母様に呼ばれ、走って抱きつく。
生まれてから三年、あっという間だった。
三年間で分かったことは、まず我が家の家族のチート具合だ。神様のお詫びの仕方はとんでもなさすぎた。
お父様はカインというお名前で透明感のある銀髪に深紅の瞳を持つイケメンだ。
この国の公爵で宰相をしている。あとは表立って言えないけれど王国軍の裏部隊であるオルニスの総責任者でもある。
お母様はアイシャといって、なんと現国王様の妹! 髪は淡いピンク色で、毛先だけが紫色をしている。髪色にグラデーションがある、というのはこの国の王族に連なる者の特徴だという。
お母様の瞳はレモン色をしていて、スタイル抜群の美人さんだ。それにお母様は魔法……特に治癒魔法が得意だ。だからお城の専属医療班の責任者で、魔法研究所の所長でもある。
魔法研究所はその名の通り魔法の研究をする場所。魔法の発動方法の簡略化や新魔法の開発もしているって聞いた。
正直かなり忙しそうだけど、お母様はこうして仕事に行っていないときにはいつも私の相手をしてくれる。
今も抱きついた私を、お母様は笑顔で受け止めてくれた。
「またここにいたの?」
「うん!」
私がいた場所は我が家の書庫だ。物語から専門書までなんでもそろっている。なかでも魔法に関するこの棚の前は私のお気に入りスペースだ。
お母様は私を抱っこして書庫の中まで運ぶと、机の上の本を見て微笑んだ。
「さすが私の娘。魔法に興味があるの?」
「はい! はやくつかえるようになりたいです!」
私は今この世界について絶賛勉強中だ。特に、地球にはなかった魔法に興味がある。だからこの世界の魔法について解説した本を読んでいたのだ。魔法が使えない人用の魔道具があったり、魔法にも種類があったりと中々面白い。
そして分かったこと。この世界では、生まれてすぐ魔法を使える訳じゃない。幼い子供は体内の魔力が不安定なので、魔力をご飯とする精霊たちに魔力を食べられて死んでしまう可能性があるそうだ。精霊に愛されていた初代国王様が、精霊王に魔力が安定する年齢になるまで子供の魔力を食べないように頼んだ。その結果、五歳までは魔法を使うのに必要な精霊を見たり、感じたりということができなくなったそうだ。
できれば早く魔法を使ってみたかったんだけど……
お母様は私の元気な声にちょっぴり眉を下げた。
「そうねえ……五歳になるまでは協力してくれる精霊さんを見ることができないから……。だから、精霊さんと出会える五歳までは我慢よ。さ、もうすぐお兄様たちが帰ってくるわ。お出迎えしましょう」
「はーい」
残念。国で一番魔法に詳しいお母様がそう言うのなら、やっぱり今の私が魔法を使うのは難しいようだ。
そしてお母様が私を抱き上げようとした時、侍従が書庫に入って一礼した。
「失礼します。奥様、リーべ様たちがお戻りになられました」
「ちょうどよかったわね。フィル、行きましょうか」
「はい!」
とてつもなく広い屋敷の中を抱っこされて移動する。三歳児の私だとお屋敷の玄関につくまでに確実にダウンするからね……だって遠いんだもん。大人でも屋敷の端っこの部屋から玄関まで十分はかかるなんて、前世がアパート暮らしの私からすれば信じられない。
そもそもこの家の敷地には森まであるのだ。ここ、領地じゃないんだよ? 王都にある自宅なんだよ? 森って何……
思わず窓から見える森に遠い目をしてしまった。魔法は使えるか分からないけれど、家族は十分すぎるほどチート、ということだ。
さて、エントランスにつくと大好きなお兄様たちの姿が見えた。お母様に降ろしてもらってダッシュ。そう、三歳児のおぼつかない体で猛ダッシュだ。そして部屋の床は絨毯のおかげでよく滑る。どうなるかなんて考えるまでもない。
ズザザーッ。
そう、転ぶに決まってる。おでこがヒリヒリして手のひらと膝は熱い。
顔から行ってしまった……
「フィルッ‼」
駆け寄ってくるお母様やお兄様たちの焦った顔。
それを見ていたら徐々に痛みがやって来る。
エル兄様にそっと抱き上げられて……
「ふ、うぇ、わあああああああああ‼ エルにいしゃまあああ‼」
私は号泣してしまった。前世の記憶があるとはいえ、体は三歳児だ。勝手に涙が出てくる。
私を抱き上げてくれている二番目のお兄様――エル兄様にしがみついてひたすら泣き叫んでいると、長男のリーべ兄様が頭をそっと撫でて、三男のジュール兄様は足を撫でてくれる。お母様もあわてて私に治癒魔法をかけてくれた。
「これでよし、フィルもう痛くないかしら?」
「う、ひっく、ん、いたくないです」
治癒魔法のおかげで痛みはないし、傷も消えて元通りだ。転んだといってもふわふわの床だしね。むしろ過保護かも……我に返るとちょっと恥ずかしくなってきた。
心配されるのはうれしいけど、前世では心配する側だったからどこかムズムズする。
ふと見上げるとお兄様たちが何やら喧嘩していた。よく聞くと誰が私を抱っこするかでもめているようだ。兄様たちもお母様と負けず劣らずの過保護、というか妹ばかだ。
でも、そっか、私の妹や弟たちも今の私みたいな気持ちだったのかな?
過保護に心配されて、嬉しいけど少し照れくさい。身体がムズムズするけど不快じゃない。
すごく、愛されているみたい。
頭を撫でてくれたのは長男のリーべ兄様。銀髪に深紅の瞳はお父様そっくり。既に騎士団に所属していて剣の腕のよさから王国軍からスカウトが来ているそうだ。まだ成人していないから今は騎士団で訓練中なのだという。
次に私を抱っこしているのはエル兄様。エルっていうのは愛称で本当はエルピスという。
エル兄様はリーベ兄様の双子の弟だ。
銀髪にお母様と同じ淡いピンクのグラデーションが入っている。瞳もお母様と同じレモン色なこともあって、全体的な顔立ちはお母様に似ている。とっても頭が良くて、将来はお父様の跡を継いで宰相になりたいらしい。
最後に三番目の兄様。ジュール兄様はとっても優しくて繊細な人だ。植物が大好きでよく庭師のリックと話しているのを見かける。淡いピンクの髪で瞳は深紅、お父様とお母様の特徴を半分ずつもらったようだ。
三人ともとてつもないイケメンさん。私のことをすごく大事にしてくれる自慢のお兄様たちだ。
ちなみに私はお母様と同じピンクのグラデーションの髪色にお父様と同じ深紅の瞳だ。
そうやって争う兄様たちを見ていたので、お母様がほっとしたように私を見ていたことに私は気づかなかった。
それは、私が泣いていた時にたくさんの精霊を引き寄せていたことを心配していたのだと、後で私は知ることになる。どうやら精霊たちは今か今かと待っていたらしい。私が五歳になる瞬間を……
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