その日の空は蒼かった

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蒼い空の元で。 ss集

貴種子弟謁見の儀 『高位貴族子弟の御披露目会』

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 王城コンクエストム 王宮魔道院から帰邸した私は、父に執務室に呼ばれた。

 そこで告げられたのは、緋の月、第一安息日に王城コンクエストムにて、『貴種子弟謁見の義』が執り行われると云う事。 私宛に、いわゆる『高位貴族子等の御披露目』と俗に云われる式典の『招待状』が送られてきたのだと、そう仰られた。

 王国の高位貴族家に生まれし者は、いずれ王家の『藩屏』たるを求められる。 八歳を持って、その意識を植え付ける為と、王城関係者にその子供たちが、『高位貴族家の一員』だと知らしめるための『儀式』が、『貴種子弟謁見の儀』という訳。 そして、多くの目が彼等彼女らを見るのよ…… 王城での振舞は、王城関係者が全員、一挙手一投足を見詰めている。 彼等、彼女等が、『藩屏』に足る人物かを判断する為にね。

 王家は、私にも…… ロマンスティカ=エラード=ニトルベインにも、その『式典』への出席を求められたと云う事。 父、ネフリム=エストラーダ=ニトルベイン公爵は、渋い顔をしながらも、そう私に伝てこられたわ。

 父と云っても、養父・・に当たる方なのだけれども、私の事はニトルベイン大公家の血族・・として、認めて下さっている事は確かなの。 でも、私との距離は、普通の親子では有り得ない程遠い。 私たちの間に有るのは、『義務』と『責務』でしかなかったとも言えるわ。

 小さく弱く生まれ、生後すぐ死んでしまうような境遇にあった私。 幸いな事に、強い『光の精霊』様の御加護により、死なずに済んだの。 生まれてから五年後、私の内包魔力が強く『光属性』を帯びている事が判明して、御爺様がお父様・・・に私を養女にするように命じられた。 

 ただ、体が小さい私は、実際の年齢よりずっと幼く見えて、更に本当の出自がとても複雑…… いえ、『忌むべき物』であった為、敢えて年を 【違える様】に、御爺様は王城に申請したわ。 私と王宮関係者の関連を想像させぬ様に…… とね。

 だから、八歳・・の『お披露目』が、今年になったの。

 お披露目の際、国王陛下より、直接お言葉が頂けるわ。 正式に王国の貴族子弟として認められた『お祝い』に、王家より『贈り物・・・』が下賜されるの。 自身の『希望』を奏上して良い事になっているのよ。 私も、お父様・・・も、その事実に、困惑したわ。

 ―――― 生きていられるだけで、十分に『奇跡』だと云える私。

 そして、なにより、私自身が有益な人物である為に、必死で習得した『魔法』の才。 その才を以て、八歳・・になる前に、特別に『王宮魔道院』への登録が許され、魔道院への出仕が叶っている。 ニトルベイン大公家の絶大な影響力を背景にね。

 つまり…… 陛下に『乞うべき願い事』は無いの。

 お父様の ”陛下に対する願い事はどうするのだ? ”と云う、無言の問いかけに、言葉も紡げないまま、頭を垂れ、沈黙を守る。 何を望んでも通ってしまうの。 それがニトルベイン大公家の『権勢』と云うものなのよ。 ……他の貴族家のモノ達の嫉妬心を掻き立てる事も想像に難くないわ。 現在の危うい貴族間の均衡を崩すような、『迂闊な事』は、口には出せないのよ。 その事は、ニトルベイン大公家に属する、『考える力』を持つ者ならば、つまりは大半の者達にとって、当然の『考慮』だと云えるわ。

 苦く笑いながらも、お父様は退出を命じられた。





 ――――― § ―――――





 ニトルベイン大公家の漢達・・は、色々な策謀を練り、噂を流し、時には手も下し…… 何人もの貴族が…… いえ、爵位の高低や、爵位の有る無しすら関係なく、彼等の社会的地位を奪い、そして、領地や、財産、命までも奪われた者が多数存在する。 何故なら、そうする事が王国の安寧に『必要』だったから。


 ――― それが国政と云うモノで、国務大臣職を拝命する御爺様の責務でもあるのよ。


 ただ、その現実が、他の貴族達から現在も『疎まれ』、『恐れられる』原因にもなっているわ。 そんな、あの掴み様が無い『宮廷の腹黒狸』である、御爺様ニトルベイン大公閣下に於かれて、唯一の失策と家門の者達に云われている事があるの。

 御爺様の末娘であり、何よりも大切に思われ、誰よりも庇護を与えておられた…… 最愛の末娘…… フローラル様を、王家に嫁がせる事を目的とした『策謀と謀略の数々』を実行した事。

 本来は望む事すら無理であったはずの『陛下とフローラル様の婚姻』に於いて、御爺様達が何を為し、どのように王国中枢に根回をし、『末娘の望み』を如何にして叶えたかは……、当家の『極秘事項』となっているわ。 垣間見る家中の噂に、胸が悪くなる程のね。

 その ”最大の被害者 ”が、前王妃エリザベート=ファル=ファンダリアーナ様に違いないわ。

 お爺様の『策謀と謀略の数々』は実行され、精緻なはかりごとは完遂され、エリザベート妃は、後宮を放逐される結果となった。 そこまでは、御爺様達の思惑通り。 エリザベート妃に置かれては、ご実家であるドワイアル大公家に於いて、心安らかに余生を送って頂く『手筈』になっていたらしいわ。 でも、想定外の出来事が、御爺様達の思惑を粉砕する。 

 エリザベート妃の『妊娠』が発覚したのよ。

 衝撃を受けたのは、なにも王宮に詰める高位貴族達だけでは無いの。 誰よりも大きな衝撃を受けられたのが、国王陛下その人だったわ。 慌てふためく陛下は、事あろうに朝議の場に於いて、『産まれる子供』には『王位継承権を与えない』と、宣言された。

 この御宣下に於ける顛末は、未だに宮廷で語り草になっているほど。 つまり、陛下ご自身が父親では無いと宣下されたのと同義なの。 一瞬にして周囲に広がる『不穏な噂』。 エリザベート妃の『妊娠』は、瞬く間に王宮内外に広がり、そのお相手が、国王陛下以外の人だと『定着』してしまった。 エリザベート妃は、王宮に於いて『不義密通』を行ったと、王国の貴族達の脳裏に刻み込まれたのよ。

―――― 激しくエリザベート妃の名誉が傷付けられた。

 この事に関して、エリザベート妃は、沈黙を貫かれた。 何を言っても、一旦流布してしまった『噂』を書き換える事は難しい。 それに、その時既に王宮から退出されていたエリザベート妃には、『噂』を払拭する手段も方法も、無かったのだから。

 流石に…… いかな御爺様でも、エリザへーと妃への『讒言』が、これほど早く広がり、貴族達の間に『定着』してしまったのは、想定外の事だったのかもしれないわね。 『噂話』の火消しの為に、我が家の暗部を使い、その『謂われない中傷』を、沈静化させるために、相当苦労しておいでであったのよ。

 なぜ、御爺様が火消しに走らないといけないか……

 それは、ひとえに、エリザベート前王妃が一人娘を授かった後、娘を残し御自害された事に他ならないわ。 四大大公家の令嬢、そして、前王妃が御自害。 名誉も尊厳も何もかも奪われたエリザベート妃。 

 ―――― そんな事実をドワイアル大公家が許す筈も無く……

 ドワイアル大公閣下と、エリザベート前王妃の間にどのような会話が成されたのか…… 他家のモノ達には伺い知れない事柄では無いの。 ただ、エリザベート様の遺児は、ドワイアル大公家から放逐されることも無く、修道院に入れられることも無く、大公家の本邸奥深くで、大切に大切に育てられた。 それが、全てだと云わんばかりに……

 その遺児の名は、 エスカリーナ=デ=ドワイアル嬢。

 不正や不義を忌み嫌い、なさけ深く身内を何よりも大切にされるドワイアル大公閣下は、彼女を王都のドワイアル邸の奥深くに『堅固』に囲い込まれたわ。 これが意図する事は誰の目にも明らかなの。 ドワイアル大公家は、彼女をして 『第一王女』であると、公言したのも同じ。

 勿論、御爺様もドワイアル大公家との争いは望まれていない。 ファンダリア王国の両輪として、彼の家と我が家の暗闘は、王国にとって安寧から遠ざかる事に他ならないから。 よって、『暗部』を通じ、ドワイアル大公家へと手を伸ばし、なんとか関係の修復にご尽力されたのよ。 

 暗闇の中の『話し合い』は、ある程度の成果を上げたわ。 ニトルベイン大公家もドワイアル大公家も、いたずらに国を不安定にしては成らないと、それだけは理解しているのだもの。 それが、王国の藩屏たる大公家の意地ですらあるわ。

 記憶との相違。 違和感。 私の記憶に刻まれている状況とは、其処が違う。 彼女はドワイアル大公家の『腫れ物』では無かったの? 不確実な情報だけでは判断が付かないわ。 私は彼女を取り巻く大人たちの思惑に、混乱していたの。

 ドワイアル大公家では、彼女に向けられる貴族達の『蔑視』と『悪意』の暴風が吹き荒ぶ『社交会』からその『悪意』に彼女が晒されぬ様に、健やかに育って欲しいと熱望するかの如く外部との交流を遮断されたわ。 その為、彼女の『容姿』すら目にする事は、たとえドワイアル邸の使用人であろうと稀であると云われていたの。

 危うい均衡の上に、どうにか手を繋げた両大公家だけど、『彼女』に付いてだけは、別。 どうにも感情的な部分で折り合いがつかないのよ。 彼女の事は、どんなに手を尽くそうとも、王家の色を色濃く受け継いだ女児である事しか…… 掴めなかったらしいの。

 その容姿と、前王妃の一人娘と云う事実から、ガング―タス陛下がどんなに否定されても、『陛下の胤』である可能性は高く、場合によっては、彼女を王家に迎え入れ 『第一王女』 として、遇する必要性もあったの。 ドワイアル大公がどんなに拒否したってね。

 それは、多分、ニトルベイン大公家の連枝たる現宰相閣下ケーニス=アレス=ノリステン公爵閣下が画策していると…… そう、思うの。 あの狐…… そう云う事に付いては、機転が利くのよ。 王国の平穏の為に、何が必要か、何が不必要か…… そういった嗅覚はとても鋭いんだもの。

 御爺様の長い手は…… 放り出してしまった『宝玉あの子』をもう一度手中に収めようと、足掻いている…… そんな風に、私には見えていたのよ。 王国の両輪と云われた、ニトルベイン大公家と、ドワイアル大公家の水面下の対立を、平和的に解消する為に、必要な事だと考えられていたのだと思うわ。

 ……そこに、あの子の意思なんて『一欠けらも存在しない』云う事実は、地平の彼方に投擲してね。




 ―――― § ―――― § ――――




 ―――― 王都ファンダルの中心地。 王城コンクエストム。

 歴代の国王様の居城にして、ファンダリア王国の中枢。 内務、外務、財務、軍務の統括組織が置かれている場所。 ファンダリア王国の頭脳にして、鉄壁を誇る白亜の巨城。

 真白の外壁が朝日を浴びるさまは、周辺国にもよく知られた偉容を誇り、ファンダリア王国の強大さを示威しているの。 巨大な城は、ファンダリア王国の国民たちに、そして、周囲の国々にも『強い王国』の象徴として認識されているわ。

 故に、関係者以外は、王城に入る事すら叶わない。 王国の重要人物達が一か所に集められていると云う事は、万が一その場所を他国や害意を持った者達に侵食されるようなことが有れば、一瞬にしてファンダリア王国は瓦解する。

 王城コンクエストムの護りが強固なのはその為。 そして、私が所属する『王宮魔道院』は、そんな王城を魔法的に防御する為に置かれた部署でもあるの。 今回の『お披露目』の儀に於いて、私、” 王宮魔導士ロマンスティカ ”に、与えられた『任務』が一つあるの。 重要な御役目であり、『王家の守護』を主任務に置く今の私には、疎かに出来ない事なの。

 今年の『お披露目』は、例年より、随分と出席者が多い。

 それは、この年代に二人、王子が居られるから。 最高位の『式典対象者』とも云える。 その方々に何かしらの繋がりを持ちたい高位貴族は多く、また、邪で不埒な考えを持つ者も含まれる。

 一人は、我が王国、ファンダリア王国第一王子にして、一番次代の王に近い王子とみなされている、ウーノル殿下。 

 もう一人が、王姉ミラベル殿下の実子であり、無きマグノリア王国 国王陛下の忘れ形見である、マクシミリアン殿下。



 ―――― そして、準備される今年の『貴種子弟謁見の儀』



 適齢年齢の『参加者』があまりにも多い為、例年の控室では入りきらないの。 よって、今年は『謁見の間』から、ちょっと離れている、大広間付随の控室を用意することに成ったの。 だけど、一つ問題もある。 この控室には、バルコニーが付随している。

 直接…… 外と繋がる部屋なのよ。 警備と云う面からおいて、この部屋の防御には人一倍気を使ったわ。 だから、私が『バルコニーに出る方』が、居られない様に【重結界】を張り巡らせたの。 それが、王宮魔導院から私に与えられた『任務』でもあったの。
 
 その【重結界】は、『王宮魔道院』の猛者達が、”易々とは抜けぬ”と、保証してくれている術式モノ。 だから、私は安心していたの。

 招待された令嬢として、その控室に立つ私。 周囲の人達から認識されない様に、【認識阻害】を纏い、壁際に佇み控室全体を俯瞰する。

 誰かが不用意な行動をしていないかどうか? 悪意ある行動を起こそうとしている者が居ないどうか? 不測の事態に備えなければならないもの。 だって、本日は年齢よわい八歳の幼きモノ達が沢山居るのよ。 それも任務の一つであったの。

 ―――― 王宮楽士達が奏でる煌びやかな音が、会場を埋め尽くし始めた。 

 『謁見の間』の扉が開き、いよいよ式典が始まる。 その時、ウーノル殿下が私を見つけ、直ぐ近くまでお運びになり、私の耳元で囁やかれた。


「あの結界を破る者が居た」

「……なんですって?! どうやって?!」

「綻びを見つけ、すり抜けたそうだ。 驚いた」

「まさか、綻びが? いえ、たとえ、綻びがあったとして、その隙を付くなんてこと…… 可能だったのですか?  それに、誰なのです、そんな高位魔術師様方でも出来ぬ事を為したのはッ」

「……例の『御令嬢』だ。 今は、私だけが知る事実。 これを知れば、魔道院のモノ達が彼女を取り込もうとするだろうな」

「そ、それは…… 必然に御座いましょうね。 『アレ』を破るなど、魔導院は強く興味を持ちましょう」

「ティカ。 ……すまないが『この事実』は、私達だけの秘密とする。 魔道院には言うな。 彼女は何かを為そうとしている様に思える。 それだけの『意思の光』を、彼女の瞳に見た。 今は…… そうだな、今はただ、黙っている事が、『世界の意思』に沿えると考える」

「殿下…… 貴方は『何を』ご存じなのですか?」

「今は言えない。 ティカが云えぬ事が有るように、私にも言えぬ事が有るのだ」

「……御意に」

「時間だ。 行こうか」

「はい」


 ウーノル殿下の言葉に激しく動揺したまま、私は『謁見の間』にお父様とお母様に連れられて向かう。 大公家の娘としての『役割』をこなす為に、今は動揺している場合ではない。 そう、自分に言い聞かせ、ざわめく心内こころうちを押し止め、表情を作った笑みで覆い隠す。

 式典は恙なく進行し、私もまたガング―タス国王陛下の足下に立つ。 陛下の『言祝ぎ』の口上を受け、祝いの『贈り物』の希望を質され、簡単に応える。


「陛下の御心のままに」


 だって『望むモノ』は、『与えられるモノ』ではなく、『獲得するモノ・・・・・・』なのだから。

 式次第は順調に進み、高位貴族の子息令嬢へんの『言祝ぎ』が終わり、周囲が静寂に包まれる。 今年に限って、特別に招聘された『招待客』だけが残る。 貴族籍を持たぬ者でありながら、決して無視できるような存在。 『御目見え』の資格を十分に持つべき方。

 その方が、ガング―タス陛下の足下に進み出る。

 群青色ロイヤルブルーの瞳と、銀灰色シルバーグレイの髪を持ち、結い上げた髪から覗く、特徴的な…… 本当に特徴的な耳が見えた。 耳の上が尖り、やや長いその耳は、かつてこの世界に存在したと云う種族と同じ特徴。 古き血が混ざり、研ぎ澄まされた結果、先祖返りしたかの様な、そんな奇跡が顕現したかのような『耳』の形。


 間違いない…… 私の記憶と魂に刻み込まれた彼女の姿と…… 玉座の足下に蒼いドレスで凛とした表情で対面する彼女。

 私の記憶の中の人・・・・・・と合致する。



 ファンダリア王国 第一王女 エスカリーナ=デ=ファンダリアーナ殿下。



 こみ上げてくるモノを抑え込みながら、私は彼女を見つめ続けた。





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