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1巻
1-3
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もしくは……国王陛下の罪悪感から?
最初に手を放したのは、そちら側。
なのに、何故、前世で、あの時になって取り込もうとしたの?
『不義の子』など、その辺の適当な路地裏に放り投げておけば万事解決するのでは?
不都合な事実は、たったそれだけで闇の中に追いやれるというのに。
でもね、そうはいっても、『命』を粗末にするのはいけないわよね。私は精一杯生きたいのよ。
――お母様の分もね。
よし! 前世の運命を変えて、生き残れるだけの知識を手に入れよう。
そして、現世でもお披露目式に呼ばれたならば、国王陛下に奏上しよう。
もう、手を放して欲しいって。
それで、ハンナさんにお願いして、ハンナさんの生まれ育った、ダクレール男爵領に連れていってもらうの。お話を聞く限り、一介の庶民として生きていくのだったら、彼の地は……
南方辺境領という場所は、素晴らしい御領地なのだもの。
頑張らなきゃ‼
* * *
ハンナさんとの『お勉強』は、順調に進んだわ。
そのお勉強なのだけれど、大公家にある『子供向けの御本』はあらかた読んじゃったのよ。それで暇になった時間は、お茶の淹れ方とか、お裁縫を習ってたの。刺繍じゃ無いわよ、お裁縫よ。
だって、庶民として生きるには職を得る必要があるじゃない。針と糸は使えても、刺繍だけじゃ暮らしてはいけないってことくらい判ってるわよ。だからお裁縫。専門の御針子さん達って本当に凄いからね。その下職を手伝うことが出来るようになったら、食べて行けるくらいは稼げるのではないかなって思ったのよ。
お裁縫の勉強をしたいって初めて相談した時、ハンナさんには変な顔をされたわ。
でも、ハンナさんは勉強することは大切だって知ってるから、快く引き受けてくれたんだ。
無理言って本当にゴメンね。
その他にも、初級の錬金術関連の御本があったから、試してみたりもした。
そのために、庭師のボブ爺様にお願いして、薬草になるような草をちょっと分けて貰ったのよ。
――ここでも、変な顔をされたわ。
早速、お部屋で錬金術式を編んでみたのよ。御本に載っていた基本通りに魔方陣を展開して、魔力を流し、上から薬草や瓶などの材料を放り込むと、瓶に入ったポーションがポロッて落ちてくるのよ。
――面白いわよね。
調子に乗って、様々な術式を試してみたんだ。同じ薬草から数種類のポーションが出来るんだよ。
ちなみに、ポーション瓶を作るには、〝土〟を放り込むのよ。お庭にある土塊をちょっと貰って来てて本当によかったよ。
編み上げた魔方陣を良く調べてみたら、「無」「地」「水」「木」の各属性の魔法が絡み合っていたわ。
そっか、これ【錬成魔法】だけで作るなら、闇か光属性の保持者にしか出来ないのね。基本属性が四属性も必要なんだもの。
だから、錬金術って〝例外的な人〟を除いて『錬金釜』が必須ってことになってるんだ。
錬金釜は属性を補うための魔道具の一種。例えば、「火」の属性を持っていない人が火属性の魔法が含まれた錬金術式を編むには、火属性が付与された錬金釜を媒介にしないといけないの。
そうかぁ、錬金術師が少ないのって、そういう事情もあったのかぁ。
学院の学習室に置いてあった『錬金釜』って、本当に大きかったもんね。
あれじゃ、個人では所持出来ないし、ますます人数が少なくなるわよね。
それにしても、この錬成したポーションって、どのくらいの対価になるんだろう?
ハンナさんにお願いして、一度、大公家御抱えの商家の人に、【鑑定】をして貰ったの。買取価格を聞いて貰ったところ、大体銀貨一枚から、三枚くらいだって……
――そんな程度なのね。
「全部で、銀貨一枚から、三枚ですのね……」
十五本作っても、そのくらいにしかならないのかなって思ってたら……
「お嬢様、違いますよ? 一本あたり銀貨一枚から三枚でお取引出来るそうです」
「えっ? そうすると、十五本で最低銀貨十五枚?」
「全部お売りになられますと、最低でも銀貨三十枚だそうです。冒険者達の二日分の収入に匹敵します」
「そ、そうなの」
「かなりの品質が認められましたので、是非とも売って欲しいとのことですが、如何いたしましょうか?」
「え、そうね。販売して貰っても構いませんわ」
「承知いたしました。では、代金の方はどうなさいますか?」
「えっと……ハンナさんに預けますわ」
「承知いたしました。では、責任をもって、お預かりいたします」
これって結構凄いことよね。だって、初めてお金を稼いだのよ。
銀貨三十枚……使う当てなんてないし、使おうとも思ってないけれど……でも、嬉しいわよね。外れの闇属性と言われているけれど、使えるじゃないの。ボブ爺様にまた、薬草を貰いに行こう。色々と試したいしね!
こうやってハンナさんと一緒に、出来るだけ幅広く生きて行く力を身に付けようとしてたんだよ。
――それに、他にも嬉しいことがあったのよ。
五歳の誕生日にね、叔父様である、ドワイアル大公閣下から『ある提案』をされたんだ。
アンネテーナ様の家庭教師さんの授業に一緒に参加してみないかって。そういう機会があれば、こちらからお願いしたいくらいだったから、願ったり叶ったりよ。
大公閣下、そして、同席させてくれるアンネテーナ様に感謝を。
「ありがとう御座います!」
* * *
そうしてやってきた、授業初日。
満面の笑みで、アンネテーナ様にお礼を申し上げたの。
「アンネテーナ様、同席の許可を頂き、ありがとう御座います!」
「えっ、ええ、いいのよ。一緒に勉強いたしましょう」
あまりに感謝を顕わにする私に、困惑した様子のアンネテーナ様。
だって、私は、あくまでもオマケな訳じゃない?
全ては純粋な大公閣下の御厚意。……それだけ、気にかけて下さっているという証なんだもの。
――愛して下さっているって、微かに感じられたのよ。
それが、どれだけ嬉しいことか。
前世では全く感じられなかった温かみを大公閣下に感じたの。
肝心の授業だけど、知らないことを知るのはとても楽しいわね。
それに、アンネテーナ様と同じ教科書も貰ったの。きっちりと系統立てて、理解しやすい表現で書かれていたおかげで、スルスルと理解出来たわ。前世で苦労したのが嘘みたい。
アンネテーナ様はちょっと、いや、かなり苦戦していたわ。『ファンダリア王国史』や『ファンダリア王国法―基礎論―』なんて、五歳の女の子にはちょっと理解し辛いものね。
先生がお帰りになった後で、アンネテーナ様とお茶もご一緒したの。現世では、初めての『お茶会』ってことになるのかしら。二人で、アンネテーナ様のお部屋で寛いでいたのよ。
それにしてもアンネテーナ様って、お人形みたいに綺麗。ふわりと下ろした金髪が揺れ、空の色に近い青色の瞳がキラキラしているわ。
なんかドキドキしちゃうのよ。
それに、大公家御令嬢としての立ち居振る舞いは、五歳にして完成の域に達しているんだもの。
前世でも、あまりに高貴なアンネテーナ様が嫁されるのは、ファンダリア王家か、他国の王家かって言われてたもんね。確か、最有力候補が、マグノリア王家の第一王子様だったはず。
――『あの女』の、お兄様ってことよね。
うん、よし、距離感は大切。
アンネテーナ様とは仲良くしたいけれど、程々にしよう!
だってもう、二度とリリアンネ殿下と絡むのはごめんだから。庶民である私は、現世では関わりは無くなると思うのだけれど、それでも、万が一ということはあるもの。
「ねぇ、エスカリーナ。私、なんだかよく判らなかったのだけど」
お茶を頂いていたら、アンネテーナ様が話しかけて下さったの。
「アンネテーナ様、ファンダリア王国のなり立ちに御座いますから、難しくても、よく教科書をお読みになった方が宜しいかと存じますわ」
「昔のことなのよ? そんなの〝今〟は、必要無いのではなくて?」
「いいえ、アンネテーナ様。国史は大変重要な課題となりますわ。そうですね……アンネテーナ様、ご質問が御座います」
アンネテーナ様は、私の言葉に興味を持って下さったみたいなの。
だから、簡単な例え話を通して、国史の重要さを認識して頂きたくなったのよ。
「何かしら?」
「アンネテーナ様が見知らぬ街にお運びになり、道に迷われたとします。従者ともはぐれ、お一人で街中に取り残されたとお考え下さい」
「ええ、それで?」
「アンネテーナ様は行く先は御存知ですが、行く道を知りません。また、御言葉も通じず、道行く者にも道を尋ねることすら出来ません。持ち物は、御菓子少々とお金少々。それと地図です。どうされますか?」
「面白そうね。それは、何かの御伽噺なの?」
「そのようなものです。アンネテーナ様は、広い街中に、たった一人きり。どうなさいますか?」
「そうね、お話ししても言葉が通じないのでは、道を聞くことも出来ないわよね。でも地図があるのでしょう? 地図を見て、自分の居る場所を身振りで教えて貰って、行先を確かめるわ」
国史のお勉強……歴史に『学ぶ』って、つまりはそう言うこと。
聡明なアンネテーナ様なら、すぐに理解して下さるはずよ。勉強に無駄なモノは何一つないわ。
それにアンネテーナ様だったら、勉強する理由を理解すればきっと、得るものが大きくなると思うのよ。
「国史は〝その地図〟なんです。先人が試したことが全て書かれているはずのモノ。現在とは多少の違いがあれど、大筋では同じ。国史を学ぶのは、自分の居る場所を知るため。そして、より良い治世という目的地に行くためだと、そう思います」
「貴女、そんなことを考えていたの?」
「ええ、勉強するのは楽しいです。アンネテーナ様と一緒であれば、もっと楽しいです。これからも、宜しくお願いしたいと思いますわ」
「え、ええ、いいわよ。私も頑張るわ。一緒にお勉強いたしましょう‼」
アンネテーナ様の輝く微笑み。なんだか嬉しくなってしまうよね。
しばらくお茶を飲みつつも、先生が教えて下さった国史について、二人でちょこっとおさらいしてたのよ。そうして何杯かのお茶がお腹に消えた頃、お部屋の外が少し騒がしくなった。
ノックと先触れが同時だったわ。
「ミレニアムだ。アンネテーナ、入ってもいいか?」
「はい、お兄様。あぁ、今、エスカリーナも一緒に居ますけれど?」
「邪魔をしたか?」
「「いいえ」」
扉が開き、涼し気な表情をした方が入ってこられた。
そう、アンネテーナ様のお兄様、ミレニアム=ファウ=ドワイアル様が。
お兄様といっても、一年も離れていない、アンネテーナ様と歳の近い方なのよ。
前世の私を蔑んだ目で睨みつけ、そして、ゴミのように無視なさった、大きなミレニアム様の御姿が、今のミレニアム様に重なるんだ。
今のミレニアム様は私にも優しく微笑んで下さっているのに、前世の記憶って厄介ね。軽く眩暈がしたよ。
「いや、まったく、国史の時間だけはどうにも退屈するな!」
私達が座るソファに近寄り、ご自身も腰を下ろしながら紡がれた言葉は、先程アンネテーナ様が口にされたことと同じ。
御兄妹だから、思考もよく似てらっしゃるのよね。
「あら、お兄様。大公家の嫡男が地図も無しに見知らぬ街をお歩きになるつもりですか?」
本当に、アンネテーナ様って頭の回転が速い。さっき私が言ったこと、もう自分のものにされている。歴史を学ぶことは、自分の立ち位置を確認し、より良き治世を目指すためだと、ミレニアム様に諭されているんだよ。
ミレニアム様も神妙にその御言葉を聞いているんだ。
「そうだな。我が妹ながら、とても聡明だ。肝に銘じよう。我が大公家はファンダリア王国の外交の舵取りを任される家でもあるからな。将来、僕が指針を見失えば、王国が乱れるか。いや、ありがとう。そういう観点から見れば、国史の授業は大変有意義な授業となるな」
「そうよ、お兄様。……ねぇ、エスカリーナ」
「御意に御座います。アンネテーナ様」
流石ミレニアム様、本質を理解されるのが早いわ。
ミレニアム様もアンネテーナ様も完璧で、大公家の未来は安泰ね。
これで、私がこの大公家から消えれば、万事上手くいく。庶子たる私は、さっさとどこかに引き籠らないと。ハンナさん、行儀見習いが終わったその時には、男爵領に一緒に連れて行ってくれるかしら。
なんてことを考えながら、御二人の会話を聞きつつお茶を楽しんでいたのよ。
前世では考えられなかった、大公家の皆様とのひと時……
徐々に薄れていく、前世の記憶とその時の感情。今ではもう曖昧なものでしかない。
霧のカーテンの向こう側にあるような感じなの。
でも、決して忘れてはならないと思っているわ。
前世の私は、自分のことを王女だと勘違いし、傲慢な考えを持っていたの。
大公閣下の庇護がなければ生きていけないと理解しつつも、感謝することなく、〝王家の一員〟として王城に迎えられる日を待っていた。
全て、私の勝手な思い込みだったのにね……
だからこそ、もう同じ間違いを犯さないように、現世の今の状況を心に刻み込んでいるのよ。
――今の私は庶子。身分的には、庶民階層の娘。
このお屋敷で暮らしているのは、大公閣下の御恩情。
とても恵まれていると思うの。
だから、一人で食事を取ることも、使用人さん達に遠巻きにされてしまうことも仕方がない。
――ゴメンね、ハンナさん。
貴女、貧乏籤を引かされたんだと思うのよ。
でも、私にとって、貴女の存在はとてもとても大事なの。前世の記憶の中にハンナさんは少ししか出てこない。一歳から三歳くらいまでだったかしら。現世ではその期間を過ぎても、ハンナさんは私の側に居てくれている。
しかもメイド長様に付いて、色々と御勉強してくれているみたいなのよ。
「これからもずっと、お嬢様のお側を離れる訳には参りませんので、私もお嬢様に相応しい侍女になれるよう、メイド長に御教授をお願いしております」
って、なんかとっても凛々しくも美しい顔でそう言われたんだよ。
私にとってはとっても嬉しいことなんだけど、ハンナさんの将来が少し心配になってきたよ。
そんなこんなで、私は庶民生活に向かって驀進中なんだ。
仲良くなった、お屋敷の〝腕利き〟さん達……庭師のボブ爺様、馬丁のヘーズさん、ランドリーメイドのエステファンさんにも色々と学んでいるしね。頑張ろう!
私は、前世の私とは違うんだからね!
* * *
そんな風に思っていたのに、秋風が吹く頃、アンネテーナ様がトンデモナイことを言い出したんだ。
「エスカリーナは何故、私達と一緒にお食事をとらないの? 何か、気に入らないことでもあるの?」
ってね。違う、違うわ‼
色んな言い訳が脳裏を過ったのだけれど、アンネテーナ様には通用しそうにないから本当のことを素直に話したんだ。
「アンネテーナ様。私は庶子であります。庶子は貴族籍に御座いません。ファンダリア王国の国民では御座いますが、高貴な大公家の方々と食卓を囲むというのは、身分的にありえませんので、何卒ご容赦の程を」
「なっ、何を言っているの、エスカリーナ‼ 貴女が庶子? どういうことよ! お父様に聞いてくる! ここで待っていなさい! 乳姉妹であり、私の従姉妹が庶子だなんて‼」
そう叫ぶように言うと、お部屋を飛び出していかれたのよ。
はて? 私、そんなに変なことを言った? 常識でしょ?
アンネテーナ様が出ていかれて、一人寂しくお茶を飲んでいたの。
彼女が何を言いたかったのかは、なんとなくは判るけれど、私を取り巻く環境は変えられないのよ。お母様の不義密通の疑惑は、未だ晴れていないし、私に至っては、生まれてこない方が良かったんじゃないかって言われているものね。私だって、そう思うわよ。
でも、私の存在は、お母様の生きた証でもあるんだもの。
そう易々と、自分自身を諦められないよ。
せめて、髪の色と目の色が普通だったら良かったのに。
私の群青色の瞳は、かなり深い色。色が深ければ深い程、『王家の血』を濃く受け継いでいるって言われているわ。
その上、髪の色は輝くような銀灰色。王家の血を多くその体内に留め置く人は、瞳の色以外、肌の色から髪の色まで薄くなる傾向にあるんだ。お母様の血をたっぷり浴びた影響か、私は王家の血が、尋常じゃないくらい多い。だから、前世よりも更に色白になっててね。髪なんか、薄ぼんやりだけど、発光してるんじゃないか? ってくらいなのよ。
月の明るい夜にお庭に出たら、ボブ爺様が口を大きく開けて驚いていたっけ。なんでも、月明かりを受けて身体全体が銀色にぼんやり光っていたって。
それ以来、夜の散歩は厚手の服装を心掛けている。
そんなことを考えていたら、晩餐の前に、大公閣下の執務室に来るようにとお呼出しが掛かったんだ。あぁ~、きっと、アンネテーナ様が大公閣下に何か言ったんだろうなぁ。
――無茶よ。
庶子が大公家の方々と、晩餐を共にする?
いくら、お母様が大公閣下のお姉様であり、私と大公家の方々との間に確かな血の繋がりがあるとしても、それは本当に無茶よ。
それにさ、ポエット=サーステル=ドワイアル大公夫人だっていらっしゃるのよ?
社交界で並ぶ者無しの貴婦人って評判の奥様……私がこの大公家に居るということで、社交場で色々言われてしまっている方なのよ?
きっと、私のことは厄介者だと思っているに違いないわよ。
まぁ、本当にそうなんだけどね。
渋々、大公閣下の執務室に向かう。
長い廊下……何重にも防御結界が張られているし、隣を歩くセバスティアン執事長様も心なしか緊張しているのが判るよ。ここはそんな場所だもんね。
見苦しくない身形に整えてくれた、ハンナさんには感謝だよ。
大公閣下に会うのも、久しぶりだから、ちょっと緊張するわ。
コンコンコンコン。
「旦那様、エスカリーナお嬢様がお見えで御座います」
「そうか、中に入ってくれ。そうだな、セバスも同席して欲しい」
「はい、旦那様」
セバスティアン執事長様が重厚な扉を開く。
本当にシックで上質なもので溢れた執務室だわ。
素晴らしい調度品を眺めていると、執務机の向こう側から、大公閣下がちょっと不機嫌そうな声を掛けてこられたんだ。
「アンネテーナから聞いた。君が、自身のことをどう思っているのかを」
「はい、大公閣下」
「君は、自身が大公家の籍に無いことを。そして、貴族籍に記載されていないことを理解しているんだね」
「はい」
「そして、詰まるところ、国王陛下から認知されていないことも」
「はい。王国法では、『庶子』として扱われることも承知しております。更に、私のような立場の子供は普通、教会の孤児院に送られることも存じております」
「うむ」
腕を組み、じっくりと私を見ておられる大公閣下。
なんか、いたたまれないね。
大公閣下は、何かこう……深く考えられているみたい。
最初に手を放したのは、そちら側。
なのに、何故、前世で、あの時になって取り込もうとしたの?
『不義の子』など、その辺の適当な路地裏に放り投げておけば万事解決するのでは?
不都合な事実は、たったそれだけで闇の中に追いやれるというのに。
でもね、そうはいっても、『命』を粗末にするのはいけないわよね。私は精一杯生きたいのよ。
――お母様の分もね。
よし! 前世の運命を変えて、生き残れるだけの知識を手に入れよう。
そして、現世でもお披露目式に呼ばれたならば、国王陛下に奏上しよう。
もう、手を放して欲しいって。
それで、ハンナさんにお願いして、ハンナさんの生まれ育った、ダクレール男爵領に連れていってもらうの。お話を聞く限り、一介の庶民として生きていくのだったら、彼の地は……
南方辺境領という場所は、素晴らしい御領地なのだもの。
頑張らなきゃ‼
* * *
ハンナさんとの『お勉強』は、順調に進んだわ。
そのお勉強なのだけれど、大公家にある『子供向けの御本』はあらかた読んじゃったのよ。それで暇になった時間は、お茶の淹れ方とか、お裁縫を習ってたの。刺繍じゃ無いわよ、お裁縫よ。
だって、庶民として生きるには職を得る必要があるじゃない。針と糸は使えても、刺繍だけじゃ暮らしてはいけないってことくらい判ってるわよ。だからお裁縫。専門の御針子さん達って本当に凄いからね。その下職を手伝うことが出来るようになったら、食べて行けるくらいは稼げるのではないかなって思ったのよ。
お裁縫の勉強をしたいって初めて相談した時、ハンナさんには変な顔をされたわ。
でも、ハンナさんは勉強することは大切だって知ってるから、快く引き受けてくれたんだ。
無理言って本当にゴメンね。
その他にも、初級の錬金術関連の御本があったから、試してみたりもした。
そのために、庭師のボブ爺様にお願いして、薬草になるような草をちょっと分けて貰ったのよ。
――ここでも、変な顔をされたわ。
早速、お部屋で錬金術式を編んでみたのよ。御本に載っていた基本通りに魔方陣を展開して、魔力を流し、上から薬草や瓶などの材料を放り込むと、瓶に入ったポーションがポロッて落ちてくるのよ。
――面白いわよね。
調子に乗って、様々な術式を試してみたんだ。同じ薬草から数種類のポーションが出来るんだよ。
ちなみに、ポーション瓶を作るには、〝土〟を放り込むのよ。お庭にある土塊をちょっと貰って来てて本当によかったよ。
編み上げた魔方陣を良く調べてみたら、「無」「地」「水」「木」の各属性の魔法が絡み合っていたわ。
そっか、これ【錬成魔法】だけで作るなら、闇か光属性の保持者にしか出来ないのね。基本属性が四属性も必要なんだもの。
だから、錬金術って〝例外的な人〟を除いて『錬金釜』が必須ってことになってるんだ。
錬金釜は属性を補うための魔道具の一種。例えば、「火」の属性を持っていない人が火属性の魔法が含まれた錬金術式を編むには、火属性が付与された錬金釜を媒介にしないといけないの。
そうかぁ、錬金術師が少ないのって、そういう事情もあったのかぁ。
学院の学習室に置いてあった『錬金釜』って、本当に大きかったもんね。
あれじゃ、個人では所持出来ないし、ますます人数が少なくなるわよね。
それにしても、この錬成したポーションって、どのくらいの対価になるんだろう?
ハンナさんにお願いして、一度、大公家御抱えの商家の人に、【鑑定】をして貰ったの。買取価格を聞いて貰ったところ、大体銀貨一枚から、三枚くらいだって……
――そんな程度なのね。
「全部で、銀貨一枚から、三枚ですのね……」
十五本作っても、そのくらいにしかならないのかなって思ってたら……
「お嬢様、違いますよ? 一本あたり銀貨一枚から三枚でお取引出来るそうです」
「えっ? そうすると、十五本で最低銀貨十五枚?」
「全部お売りになられますと、最低でも銀貨三十枚だそうです。冒険者達の二日分の収入に匹敵します」
「そ、そうなの」
「かなりの品質が認められましたので、是非とも売って欲しいとのことですが、如何いたしましょうか?」
「え、そうね。販売して貰っても構いませんわ」
「承知いたしました。では、代金の方はどうなさいますか?」
「えっと……ハンナさんに預けますわ」
「承知いたしました。では、責任をもって、お預かりいたします」
これって結構凄いことよね。だって、初めてお金を稼いだのよ。
銀貨三十枚……使う当てなんてないし、使おうとも思ってないけれど……でも、嬉しいわよね。外れの闇属性と言われているけれど、使えるじゃないの。ボブ爺様にまた、薬草を貰いに行こう。色々と試したいしね!
こうやってハンナさんと一緒に、出来るだけ幅広く生きて行く力を身に付けようとしてたんだよ。
――それに、他にも嬉しいことがあったのよ。
五歳の誕生日にね、叔父様である、ドワイアル大公閣下から『ある提案』をされたんだ。
アンネテーナ様の家庭教師さんの授業に一緒に参加してみないかって。そういう機会があれば、こちらからお願いしたいくらいだったから、願ったり叶ったりよ。
大公閣下、そして、同席させてくれるアンネテーナ様に感謝を。
「ありがとう御座います!」
* * *
そうしてやってきた、授業初日。
満面の笑みで、アンネテーナ様にお礼を申し上げたの。
「アンネテーナ様、同席の許可を頂き、ありがとう御座います!」
「えっ、ええ、いいのよ。一緒に勉強いたしましょう」
あまりに感謝を顕わにする私に、困惑した様子のアンネテーナ様。
だって、私は、あくまでもオマケな訳じゃない?
全ては純粋な大公閣下の御厚意。……それだけ、気にかけて下さっているという証なんだもの。
――愛して下さっているって、微かに感じられたのよ。
それが、どれだけ嬉しいことか。
前世では全く感じられなかった温かみを大公閣下に感じたの。
肝心の授業だけど、知らないことを知るのはとても楽しいわね。
それに、アンネテーナ様と同じ教科書も貰ったの。きっちりと系統立てて、理解しやすい表現で書かれていたおかげで、スルスルと理解出来たわ。前世で苦労したのが嘘みたい。
アンネテーナ様はちょっと、いや、かなり苦戦していたわ。『ファンダリア王国史』や『ファンダリア王国法―基礎論―』なんて、五歳の女の子にはちょっと理解し辛いものね。
先生がお帰りになった後で、アンネテーナ様とお茶もご一緒したの。現世では、初めての『お茶会』ってことになるのかしら。二人で、アンネテーナ様のお部屋で寛いでいたのよ。
それにしてもアンネテーナ様って、お人形みたいに綺麗。ふわりと下ろした金髪が揺れ、空の色に近い青色の瞳がキラキラしているわ。
なんかドキドキしちゃうのよ。
それに、大公家御令嬢としての立ち居振る舞いは、五歳にして完成の域に達しているんだもの。
前世でも、あまりに高貴なアンネテーナ様が嫁されるのは、ファンダリア王家か、他国の王家かって言われてたもんね。確か、最有力候補が、マグノリア王家の第一王子様だったはず。
――『あの女』の、お兄様ってことよね。
うん、よし、距離感は大切。
アンネテーナ様とは仲良くしたいけれど、程々にしよう!
だってもう、二度とリリアンネ殿下と絡むのはごめんだから。庶民である私は、現世では関わりは無くなると思うのだけれど、それでも、万が一ということはあるもの。
「ねぇ、エスカリーナ。私、なんだかよく判らなかったのだけど」
お茶を頂いていたら、アンネテーナ様が話しかけて下さったの。
「アンネテーナ様、ファンダリア王国のなり立ちに御座いますから、難しくても、よく教科書をお読みになった方が宜しいかと存じますわ」
「昔のことなのよ? そんなの〝今〟は、必要無いのではなくて?」
「いいえ、アンネテーナ様。国史は大変重要な課題となりますわ。そうですね……アンネテーナ様、ご質問が御座います」
アンネテーナ様は、私の言葉に興味を持って下さったみたいなの。
だから、簡単な例え話を通して、国史の重要さを認識して頂きたくなったのよ。
「何かしら?」
「アンネテーナ様が見知らぬ街にお運びになり、道に迷われたとします。従者ともはぐれ、お一人で街中に取り残されたとお考え下さい」
「ええ、それで?」
「アンネテーナ様は行く先は御存知ですが、行く道を知りません。また、御言葉も通じず、道行く者にも道を尋ねることすら出来ません。持ち物は、御菓子少々とお金少々。それと地図です。どうされますか?」
「面白そうね。それは、何かの御伽噺なの?」
「そのようなものです。アンネテーナ様は、広い街中に、たった一人きり。どうなさいますか?」
「そうね、お話ししても言葉が通じないのでは、道を聞くことも出来ないわよね。でも地図があるのでしょう? 地図を見て、自分の居る場所を身振りで教えて貰って、行先を確かめるわ」
国史のお勉強……歴史に『学ぶ』って、つまりはそう言うこと。
聡明なアンネテーナ様なら、すぐに理解して下さるはずよ。勉強に無駄なモノは何一つないわ。
それにアンネテーナ様だったら、勉強する理由を理解すればきっと、得るものが大きくなると思うのよ。
「国史は〝その地図〟なんです。先人が試したことが全て書かれているはずのモノ。現在とは多少の違いがあれど、大筋では同じ。国史を学ぶのは、自分の居る場所を知るため。そして、より良い治世という目的地に行くためだと、そう思います」
「貴女、そんなことを考えていたの?」
「ええ、勉強するのは楽しいです。アンネテーナ様と一緒であれば、もっと楽しいです。これからも、宜しくお願いしたいと思いますわ」
「え、ええ、いいわよ。私も頑張るわ。一緒にお勉強いたしましょう‼」
アンネテーナ様の輝く微笑み。なんだか嬉しくなってしまうよね。
しばらくお茶を飲みつつも、先生が教えて下さった国史について、二人でちょこっとおさらいしてたのよ。そうして何杯かのお茶がお腹に消えた頃、お部屋の外が少し騒がしくなった。
ノックと先触れが同時だったわ。
「ミレニアムだ。アンネテーナ、入ってもいいか?」
「はい、お兄様。あぁ、今、エスカリーナも一緒に居ますけれど?」
「邪魔をしたか?」
「「いいえ」」
扉が開き、涼し気な表情をした方が入ってこられた。
そう、アンネテーナ様のお兄様、ミレニアム=ファウ=ドワイアル様が。
お兄様といっても、一年も離れていない、アンネテーナ様と歳の近い方なのよ。
前世の私を蔑んだ目で睨みつけ、そして、ゴミのように無視なさった、大きなミレニアム様の御姿が、今のミレニアム様に重なるんだ。
今のミレニアム様は私にも優しく微笑んで下さっているのに、前世の記憶って厄介ね。軽く眩暈がしたよ。
「いや、まったく、国史の時間だけはどうにも退屈するな!」
私達が座るソファに近寄り、ご自身も腰を下ろしながら紡がれた言葉は、先程アンネテーナ様が口にされたことと同じ。
御兄妹だから、思考もよく似てらっしゃるのよね。
「あら、お兄様。大公家の嫡男が地図も無しに見知らぬ街をお歩きになるつもりですか?」
本当に、アンネテーナ様って頭の回転が速い。さっき私が言ったこと、もう自分のものにされている。歴史を学ぶことは、自分の立ち位置を確認し、より良き治世を目指すためだと、ミレニアム様に諭されているんだよ。
ミレニアム様も神妙にその御言葉を聞いているんだ。
「そうだな。我が妹ながら、とても聡明だ。肝に銘じよう。我が大公家はファンダリア王国の外交の舵取りを任される家でもあるからな。将来、僕が指針を見失えば、王国が乱れるか。いや、ありがとう。そういう観点から見れば、国史の授業は大変有意義な授業となるな」
「そうよ、お兄様。……ねぇ、エスカリーナ」
「御意に御座います。アンネテーナ様」
流石ミレニアム様、本質を理解されるのが早いわ。
ミレニアム様もアンネテーナ様も完璧で、大公家の未来は安泰ね。
これで、私がこの大公家から消えれば、万事上手くいく。庶子たる私は、さっさとどこかに引き籠らないと。ハンナさん、行儀見習いが終わったその時には、男爵領に一緒に連れて行ってくれるかしら。
なんてことを考えながら、御二人の会話を聞きつつお茶を楽しんでいたのよ。
前世では考えられなかった、大公家の皆様とのひと時……
徐々に薄れていく、前世の記憶とその時の感情。今ではもう曖昧なものでしかない。
霧のカーテンの向こう側にあるような感じなの。
でも、決して忘れてはならないと思っているわ。
前世の私は、自分のことを王女だと勘違いし、傲慢な考えを持っていたの。
大公閣下の庇護がなければ生きていけないと理解しつつも、感謝することなく、〝王家の一員〟として王城に迎えられる日を待っていた。
全て、私の勝手な思い込みだったのにね……
だからこそ、もう同じ間違いを犯さないように、現世の今の状況を心に刻み込んでいるのよ。
――今の私は庶子。身分的には、庶民階層の娘。
このお屋敷で暮らしているのは、大公閣下の御恩情。
とても恵まれていると思うの。
だから、一人で食事を取ることも、使用人さん達に遠巻きにされてしまうことも仕方がない。
――ゴメンね、ハンナさん。
貴女、貧乏籤を引かされたんだと思うのよ。
でも、私にとって、貴女の存在はとてもとても大事なの。前世の記憶の中にハンナさんは少ししか出てこない。一歳から三歳くらいまでだったかしら。現世ではその期間を過ぎても、ハンナさんは私の側に居てくれている。
しかもメイド長様に付いて、色々と御勉強してくれているみたいなのよ。
「これからもずっと、お嬢様のお側を離れる訳には参りませんので、私もお嬢様に相応しい侍女になれるよう、メイド長に御教授をお願いしております」
って、なんかとっても凛々しくも美しい顔でそう言われたんだよ。
私にとってはとっても嬉しいことなんだけど、ハンナさんの将来が少し心配になってきたよ。
そんなこんなで、私は庶民生活に向かって驀進中なんだ。
仲良くなった、お屋敷の〝腕利き〟さん達……庭師のボブ爺様、馬丁のヘーズさん、ランドリーメイドのエステファンさんにも色々と学んでいるしね。頑張ろう!
私は、前世の私とは違うんだからね!
* * *
そんな風に思っていたのに、秋風が吹く頃、アンネテーナ様がトンデモナイことを言い出したんだ。
「エスカリーナは何故、私達と一緒にお食事をとらないの? 何か、気に入らないことでもあるの?」
ってね。違う、違うわ‼
色んな言い訳が脳裏を過ったのだけれど、アンネテーナ様には通用しそうにないから本当のことを素直に話したんだ。
「アンネテーナ様。私は庶子であります。庶子は貴族籍に御座いません。ファンダリア王国の国民では御座いますが、高貴な大公家の方々と食卓を囲むというのは、身分的にありえませんので、何卒ご容赦の程を」
「なっ、何を言っているの、エスカリーナ‼ 貴女が庶子? どういうことよ! お父様に聞いてくる! ここで待っていなさい! 乳姉妹であり、私の従姉妹が庶子だなんて‼」
そう叫ぶように言うと、お部屋を飛び出していかれたのよ。
はて? 私、そんなに変なことを言った? 常識でしょ?
アンネテーナ様が出ていかれて、一人寂しくお茶を飲んでいたの。
彼女が何を言いたかったのかは、なんとなくは判るけれど、私を取り巻く環境は変えられないのよ。お母様の不義密通の疑惑は、未だ晴れていないし、私に至っては、生まれてこない方が良かったんじゃないかって言われているものね。私だって、そう思うわよ。
でも、私の存在は、お母様の生きた証でもあるんだもの。
そう易々と、自分自身を諦められないよ。
せめて、髪の色と目の色が普通だったら良かったのに。
私の群青色の瞳は、かなり深い色。色が深ければ深い程、『王家の血』を濃く受け継いでいるって言われているわ。
その上、髪の色は輝くような銀灰色。王家の血を多くその体内に留め置く人は、瞳の色以外、肌の色から髪の色まで薄くなる傾向にあるんだ。お母様の血をたっぷり浴びた影響か、私は王家の血が、尋常じゃないくらい多い。だから、前世よりも更に色白になっててね。髪なんか、薄ぼんやりだけど、発光してるんじゃないか? ってくらいなのよ。
月の明るい夜にお庭に出たら、ボブ爺様が口を大きく開けて驚いていたっけ。なんでも、月明かりを受けて身体全体が銀色にぼんやり光っていたって。
それ以来、夜の散歩は厚手の服装を心掛けている。
そんなことを考えていたら、晩餐の前に、大公閣下の執務室に来るようにとお呼出しが掛かったんだ。あぁ~、きっと、アンネテーナ様が大公閣下に何か言ったんだろうなぁ。
――無茶よ。
庶子が大公家の方々と、晩餐を共にする?
いくら、お母様が大公閣下のお姉様であり、私と大公家の方々との間に確かな血の繋がりがあるとしても、それは本当に無茶よ。
それにさ、ポエット=サーステル=ドワイアル大公夫人だっていらっしゃるのよ?
社交界で並ぶ者無しの貴婦人って評判の奥様……私がこの大公家に居るということで、社交場で色々言われてしまっている方なのよ?
きっと、私のことは厄介者だと思っているに違いないわよ。
まぁ、本当にそうなんだけどね。
渋々、大公閣下の執務室に向かう。
長い廊下……何重にも防御結界が張られているし、隣を歩くセバスティアン執事長様も心なしか緊張しているのが判るよ。ここはそんな場所だもんね。
見苦しくない身形に整えてくれた、ハンナさんには感謝だよ。
大公閣下に会うのも、久しぶりだから、ちょっと緊張するわ。
コンコンコンコン。
「旦那様、エスカリーナお嬢様がお見えで御座います」
「そうか、中に入ってくれ。そうだな、セバスも同席して欲しい」
「はい、旦那様」
セバスティアン執事長様が重厚な扉を開く。
本当にシックで上質なもので溢れた執務室だわ。
素晴らしい調度品を眺めていると、執務机の向こう側から、大公閣下がちょっと不機嫌そうな声を掛けてこられたんだ。
「アンネテーナから聞いた。君が、自身のことをどう思っているのかを」
「はい、大公閣下」
「君は、自身が大公家の籍に無いことを。そして、貴族籍に記載されていないことを理解しているんだね」
「はい」
「そして、詰まるところ、国王陛下から認知されていないことも」
「はい。王国法では、『庶子』として扱われることも承知しております。更に、私のような立場の子供は普通、教会の孤児院に送られることも存じております」
「うむ」
腕を組み、じっくりと私を見ておられる大公閣下。
なんか、いたたまれないね。
大公閣下は、何かこう……深く考えられているみたい。
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