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光への細い道
光への細い道
しおりを挟む月日は、矢のように過ぎ去る。
初月、更月、草月、
花月、植月、水月が、過ぎ去り……
今年も半分が経ったの。 忙しく、あちこちに顔を出して、練成し、診察し、治癒し、採取し、そして、勉強していた、この半年。
成すべきを成す為に、必要な知識を増やしていった日々。
達成できた事は少なく、試行錯誤の日々。
―――― 強く、強く感じた事は、
私は周囲の方々に助けられているって事。
与えられる知識、見識。
そして、数々の便宜。
なにより、その方々の、御心。
” 私は一人じゃない ”
その思いが、強く心に刻み込まれていったの。
^^^^^
そして、迎える、穂月。
学院は、夏季休暇に入り、学生の皆さんは各家に帰る、デビュタントに向けて最後の仕上げをされる。
秋季大舞踏会まで、二ヶ月を切り、相応に力も入るというもの。
焔月末までは、王都の貴族様方の社交シーズンでもあるわ。
王都の貴族街では、毎日のように、どこかで茶会や、夜会や、そして、舞踏会が開催される。 貴族間の情報交換の場でもあり、若い貴族の方達の出会いの場でもある。 時に王族も招待されるそんな、社交の場。 今年は特に、マクシミリアン殿下や、アンネテーナ様のデビュタントも控えているため、その活動は活発にもなるわよね。
成年貴族として…… 王太子妃候補筆頭として……
顔を売り、繋ぎをつける大切な時期。
流石に、王宮学習室でのお勉強もお休みに成るわ。
偶にアンネテーナ様のご診察を、王太子府からの命を受けて実施するだけ。
とてもアンネテーナ様を大切に思われている、王太子殿下も、流石にこの時期だけは、彼女をドワイアル大公家の御邸に戻すの。 だから、私の診察も、王城学習室では無く、ドワイアル大公の御邸。 とても…… 懐かしい思いが心の中に湧き上がる。
アンネテーナ様が、” 秘密よ、わたくしの一番大切なお部屋を見せてあげる ” と、手を引かれて連れて行かれたのが…… エスカリーナの御部屋だった場所。
何もかも、あの日のままに……
時間が止まったかのような……
そんな、お部屋。
思い出があり過ぎて…… 口数の少なくなった私を、アンネテーナ様が心配してくださったの。 それ程…… 心の中に、湧き上がる、様々な想いがあったわ。 決して、口外出来ない……
そんな、大切な
――― 想い ―――
^^^^^^
私は……
そんな社交シーズン中は、王都周辺の町や村に向かうの。
私を必要とされている方々が、沢山いらっしゃるもの。
精霊様とのお約束を、遵守するための、道なの。
第十三号棟を拠点として、王城外苑と、ティカ様の鍛錬室、そして、王都周辺の町や村へ……
夜会や、茶会、舞踏会という、貴族の社交は、今の私には必要ない事。
王太子府からの呼び出しが無い限り、私は、私の成すべきを成す。
与えられた、精霊様の加護を、ファンダリアの民へ……
其れが、私の ” 光への細い道 ”
―――― なの。
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