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公女リリアンネ様 と 穢れた森 (1)
東部領域 北域街道にて(2)
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王都への旅路は恙なく進行し、私達は二日後に、東部商業都市ヘーバリオンの城門を潜り抜けたの。
『 東部領業都市 ” ヘーバリオン ” 』
そこは東部領域、北域街道に置いてとても重要な商業都市。 マグノリア王国が先代の御世、とても栄えた商業都市だったの。 交易の拠点として、情報の交錯する街として存在していたの。 街行く人たちの顔は輝き、財貨は溢れ、情報は交換され…… ていた。
うん、『 過去形 』なの。 残念な事にね。
マグノリア王国の国主が交代してから、この商業都市は衰退の一途をたどっているわ。 街行く人たちの顔から光は消え、暗闇に属する人達の巣窟となり果てている。 街の主要部にある商業施設の中にも、「奴隷商」の姿がちらほら見受けられるの。
マグノリアの奴隷商人たちの拠点にもなっているわ。
今は…… ね。
街の目抜き通りを一行は進むの。 殿下とか、公女様とかは馬車の中だから、車窓からの眺めで街を見るから、そんなに気に成らないかもしれない。 でも、周囲を徒歩で歩む護衛隊の皆には、奇異の視線が投げかけられているのよ。
そうよね、ファンダリア王国においても、お隣のマグノリア王国においても、獣人族の人が軍の兵に成っている事は無かったものね。 さらに、彼等が着用しているのは、ファンダリア王国軍の正規兵の装束。 体格とか、特性によって、少しは変えてあるけれど…… 見間違う事は無いわ。
だから、とても、奇妙なモノを見たと、そう感じているのかもしれないわ。 獣人族義勇兵なんて……ね。
特に嫌な視線を向けている一団が居るのも事実。
プーイさん達以下、第四四〇〇護衛隊の人達が、城門を潜り、目抜き通りを歩くと、嫌な目付きで彼女達を見る視線を感じ始めたのよ…… ラムソンさんに迄その視線を送って来るのが判るわ。 『獣人族はすべからく奴隷』 と見る、そんな視線。 獅子王陛下の御意向を受けた、まっとうな商人達は、もう残り少ないのかもしれない。
目先の利を貴ぶと、こうなると云う極端な例に成っていると、そう思うのよ。 だからこそ、許し難い。 そんな視線を抜け、街中央の迎賓館に向かう。 流石に国境近くの街ね。 貴人の到来も珍しくは無い為、豪華な迎賓館が有るの。
旅路も三日目に入るから…… 少々お疲れかも知れないと、騎士団の方々が計画した旅程では、この街に一日投宿し、体力の回復と街中の観光を企画していたの。
まぁ、別段、大きな問題は無いと思うわ。
貴人の人達には、第四一一大隊の護衛が付くし、簡単には抜ける事は出来ないもの。 お忍びの視察何て、許可されていないから、あの人達だって抜け出す事は出来ないものね。 隙は伺っているらしいけれどね。 どうも、様子がおかしいの。
指示待ちとか…… 決めきれないとか…… そんな雰囲気を醸しているのよ。 連絡が十分に取れていない? 基本連絡だけで、詳細な命令が届き切っていない…… だから、不安になり始めている…… こちらがかなり警戒していると、肌身で感じている……
そんな感じなの。
戸惑っている…… とも感じられるわ。 でも、彼女達にもやるべき事は事前に決められているのよね。 案の定、殿下に扮したアンソニー様にかなりの粉を掛けているのよ。 訳アリ顔で、さも大事な事を隠していますって、顔でね。 当たり障りなく、やんわりと、二人きりに成りたいとそう申し出る、偽公女さん。
アンソニー様も困惑義気なのよ。
彼が偽物なのを知ってか知らずか…… ちょっと、判断に困っているみたいに見える。 でも、彼も彼の役割として、けっして尻尾を掴ませぬ様に、振舞っているからねぇ……
困惑が、困惑を。 思惑が思惑を。
たった二日で、あちら側の情報が混乱し、対処に困惑しているのが、手に取る様にわかったわ。 さて…… 何が原因なのかしら? 頭の片隅で、シルフィーの微笑んだ顔が浮かび上がったのよ。
やるわよね…… あの子も……
迎賓館の正門を潜ると、ちょっとホッとするわ。 此処は、仮にも高位貴族の方々をお迎えする場所。 街の宿屋みないた場所とは違って、十分な防御も出来るしね。 その分、費用とかも嵩むけれども、それは必要経費だから。
予定されていた、一行全員が、迎賓館に入る。 第四一一大隊の方々は、周囲の警戒に散っていったわ。
迎賓館の支配人の馬鹿丁寧なあいさつに始まり、事務長様とか、執事長様、侍女様の御挨拶もあり…… まぁ、王族がこの街にやって来るのはとっても珍しい事だから、それはそれは、面倒くさい歓迎のご挨拶だったの。
やっと…………
迎賓館の各人に割り当てられたお部屋に入るの。 私のお部屋は、入り口近くの侍女さんの待機する部屋。 入ってさっそく、迎賓館の間取りを確認していたの。 小さなテーブルに、見取り図を置き、設置した魔方陣の様子を同期させて伺う。 いくつかの輝点が、迎賓館の周囲を取り巻いているけれど、輝点の色は黄色。
まだ、そこまで厳重に警戒する必要は無いようね。
水筒を口に当て、中の「清水」を飲むの。 十分に冷やしてあるから、とても美味しいわ。 フゥー と溜息が一つ零れたの。 その様子をジトって目で見ていたラムソンさんが、小さな声で私に問うのよ。
「お前、こんな対応で怒らないのか?」
「えっ? こんな対応? ですか? 護衛指揮官としては、このお部屋は理想的ですよ?」
「…………護衛指揮官としてはな。 この部屋は、小間使いが使う部屋。 仮にも部隊を任される、指揮官が使う様な部屋じゃない」
「庶民の薬師ですよ? 私は。 表向きは、「護衛指揮官」として、発表されていませんし、単に賓客の健康状態を維持する為に付いて来た、「軍属の薬師」と云うのが、私の立場ですもの。 コレでいいのですよ、ラムソンさん」
「……」
何故か私を睨む様に見ているラムソンさん。 でもね、そうなのよ。 貴人と庶民が同じような扱いに成る訳はないわ。 それに、この部屋はよく考えられているもの。 迎賓館の出入りも監視できるし、なにより、どの部屋にも駆けつけやすいように、扉も三ヶ所にある。
もう一方は、大きな窓よ。 外に出る事でさえ、窓を抜ければ簡単だし、窓の外は前庭と厩舎の間。 なにか仕掛けようとすれば、まずこの窓の前を横切る事になるもの。 窓の前に大きな【気配察知】を打ち込んだのは、当然の事よね。
「判らないのか?」
「何がでしょう? ラムソンさん」
「ここは、お前の言う利点もある代わり、襲撃されると、守りが難しい場所でもある。 同時に多方面から…… 下手をすれば、四方から取り囲まれる。 この屋敷に置いて、この部屋以外に、そんな部屋は無い。 わざと無防備な部屋に、お前を押し込んだとしか、思えない」
「考えすぎよ、ラムソンさん。 辺境の庶民の薬師にそこまで気を回す人はいないわ」
「……エスコー=トリント練兵場の「聖女」が、気にいらぬ者も居るだ。 自覚は無いのか?」
「なんですの、それは?」
「ほんとに、お前って奴は、自身の事には気が回らないな…… 第四一一大隊の一部が、激高している。 それに、この場に一番近かった、第四三四一中隊の奴らもな」
「あぁ、準備を ” お願い ” していた工兵中隊は、第四三四一中隊の方でしたのね。 では、厩に?」
「揃っている。 お前の命令を待っている」
「まだですわ。 もう少し…… 王都からの伝令が届き次第と云う事に成っておりますからね」
「…………それまで、ここに待機するのか?」
「ええ、そのつもりです。 周囲に打ち込んだ魔方陣の情報はこの部屋のその机の上の地図に浮き上がる様にしてありますから」
「指揮所という訳か…… 側に居る。 なにか有れば声を挙げろ。 いいな、リーナ」
「はい、頼りにしてますわよ、ラムソンさん」
夕方の日差しは、とても穏やかだったわ。 とてもね。 秋も深まり、風の中に冬の気配が混じり始めている。 特に夕刻はね。 開け放たれている窓から、その風が一陣…… お部屋の中に吹き込んで来たの。
風が冷たい。
もうすぐ、東部領域北域街道にも雪が降る。
その前に……
その前に……
その前に……
殿下達を駆け抜けさせねば……
『 東部領業都市 ” ヘーバリオン ” 』
そこは東部領域、北域街道に置いてとても重要な商業都市。 マグノリア王国が先代の御世、とても栄えた商業都市だったの。 交易の拠点として、情報の交錯する街として存在していたの。 街行く人たちの顔は輝き、財貨は溢れ、情報は交換され…… ていた。
うん、『 過去形 』なの。 残念な事にね。
マグノリア王国の国主が交代してから、この商業都市は衰退の一途をたどっているわ。 街行く人たちの顔から光は消え、暗闇に属する人達の巣窟となり果てている。 街の主要部にある商業施設の中にも、「奴隷商」の姿がちらほら見受けられるの。
マグノリアの奴隷商人たちの拠点にもなっているわ。
今は…… ね。
街の目抜き通りを一行は進むの。 殿下とか、公女様とかは馬車の中だから、車窓からの眺めで街を見るから、そんなに気に成らないかもしれない。 でも、周囲を徒歩で歩む護衛隊の皆には、奇異の視線が投げかけられているのよ。
そうよね、ファンダリア王国においても、お隣のマグノリア王国においても、獣人族の人が軍の兵に成っている事は無かったものね。 さらに、彼等が着用しているのは、ファンダリア王国軍の正規兵の装束。 体格とか、特性によって、少しは変えてあるけれど…… 見間違う事は無いわ。
だから、とても、奇妙なモノを見たと、そう感じているのかもしれないわ。 獣人族義勇兵なんて……ね。
特に嫌な視線を向けている一団が居るのも事実。
プーイさん達以下、第四四〇〇護衛隊の人達が、城門を潜り、目抜き通りを歩くと、嫌な目付きで彼女達を見る視線を感じ始めたのよ…… ラムソンさんに迄その視線を送って来るのが判るわ。 『獣人族はすべからく奴隷』 と見る、そんな視線。 獅子王陛下の御意向を受けた、まっとうな商人達は、もう残り少ないのかもしれない。
目先の利を貴ぶと、こうなると云う極端な例に成っていると、そう思うのよ。 だからこそ、許し難い。 そんな視線を抜け、街中央の迎賓館に向かう。 流石に国境近くの街ね。 貴人の到来も珍しくは無い為、豪華な迎賓館が有るの。
旅路も三日目に入るから…… 少々お疲れかも知れないと、騎士団の方々が計画した旅程では、この街に一日投宿し、体力の回復と街中の観光を企画していたの。
まぁ、別段、大きな問題は無いと思うわ。
貴人の人達には、第四一一大隊の護衛が付くし、簡単には抜ける事は出来ないもの。 お忍びの視察何て、許可されていないから、あの人達だって抜け出す事は出来ないものね。 隙は伺っているらしいけれどね。 どうも、様子がおかしいの。
指示待ちとか…… 決めきれないとか…… そんな雰囲気を醸しているのよ。 連絡が十分に取れていない? 基本連絡だけで、詳細な命令が届き切っていない…… だから、不安になり始めている…… こちらがかなり警戒していると、肌身で感じている……
そんな感じなの。
戸惑っている…… とも感じられるわ。 でも、彼女達にもやるべき事は事前に決められているのよね。 案の定、殿下に扮したアンソニー様にかなりの粉を掛けているのよ。 訳アリ顔で、さも大事な事を隠していますって、顔でね。 当たり障りなく、やんわりと、二人きりに成りたいとそう申し出る、偽公女さん。
アンソニー様も困惑義気なのよ。
彼が偽物なのを知ってか知らずか…… ちょっと、判断に困っているみたいに見える。 でも、彼も彼の役割として、けっして尻尾を掴ませぬ様に、振舞っているからねぇ……
困惑が、困惑を。 思惑が思惑を。
たった二日で、あちら側の情報が混乱し、対処に困惑しているのが、手に取る様にわかったわ。 さて…… 何が原因なのかしら? 頭の片隅で、シルフィーの微笑んだ顔が浮かび上がったのよ。
やるわよね…… あの子も……
迎賓館の正門を潜ると、ちょっとホッとするわ。 此処は、仮にも高位貴族の方々をお迎えする場所。 街の宿屋みないた場所とは違って、十分な防御も出来るしね。 その分、費用とかも嵩むけれども、それは必要経費だから。
予定されていた、一行全員が、迎賓館に入る。 第四一一大隊の方々は、周囲の警戒に散っていったわ。
迎賓館の支配人の馬鹿丁寧なあいさつに始まり、事務長様とか、執事長様、侍女様の御挨拶もあり…… まぁ、王族がこの街にやって来るのはとっても珍しい事だから、それはそれは、面倒くさい歓迎のご挨拶だったの。
やっと…………
迎賓館の各人に割り当てられたお部屋に入るの。 私のお部屋は、入り口近くの侍女さんの待機する部屋。 入ってさっそく、迎賓館の間取りを確認していたの。 小さなテーブルに、見取り図を置き、設置した魔方陣の様子を同期させて伺う。 いくつかの輝点が、迎賓館の周囲を取り巻いているけれど、輝点の色は黄色。
まだ、そこまで厳重に警戒する必要は無いようね。
水筒を口に当て、中の「清水」を飲むの。 十分に冷やしてあるから、とても美味しいわ。 フゥー と溜息が一つ零れたの。 その様子をジトって目で見ていたラムソンさんが、小さな声で私に問うのよ。
「お前、こんな対応で怒らないのか?」
「えっ? こんな対応? ですか? 護衛指揮官としては、このお部屋は理想的ですよ?」
「…………護衛指揮官としてはな。 この部屋は、小間使いが使う部屋。 仮にも部隊を任される、指揮官が使う様な部屋じゃない」
「庶民の薬師ですよ? 私は。 表向きは、「護衛指揮官」として、発表されていませんし、単に賓客の健康状態を維持する為に付いて来た、「軍属の薬師」と云うのが、私の立場ですもの。 コレでいいのですよ、ラムソンさん」
「……」
何故か私を睨む様に見ているラムソンさん。 でもね、そうなのよ。 貴人と庶民が同じような扱いに成る訳はないわ。 それに、この部屋はよく考えられているもの。 迎賓館の出入りも監視できるし、なにより、どの部屋にも駆けつけやすいように、扉も三ヶ所にある。
もう一方は、大きな窓よ。 外に出る事でさえ、窓を抜ければ簡単だし、窓の外は前庭と厩舎の間。 なにか仕掛けようとすれば、まずこの窓の前を横切る事になるもの。 窓の前に大きな【気配察知】を打ち込んだのは、当然の事よね。
「判らないのか?」
「何がでしょう? ラムソンさん」
「ここは、お前の言う利点もある代わり、襲撃されると、守りが難しい場所でもある。 同時に多方面から…… 下手をすれば、四方から取り囲まれる。 この屋敷に置いて、この部屋以外に、そんな部屋は無い。 わざと無防備な部屋に、お前を押し込んだとしか、思えない」
「考えすぎよ、ラムソンさん。 辺境の庶民の薬師にそこまで気を回す人はいないわ」
「……エスコー=トリント練兵場の「聖女」が、気にいらぬ者も居るだ。 自覚は無いのか?」
「なんですの、それは?」
「ほんとに、お前って奴は、自身の事には気が回らないな…… 第四一一大隊の一部が、激高している。 それに、この場に一番近かった、第四三四一中隊の奴らもな」
「あぁ、準備を ” お願い ” していた工兵中隊は、第四三四一中隊の方でしたのね。 では、厩に?」
「揃っている。 お前の命令を待っている」
「まだですわ。 もう少し…… 王都からの伝令が届き次第と云う事に成っておりますからね」
「…………それまで、ここに待機するのか?」
「ええ、そのつもりです。 周囲に打ち込んだ魔方陣の情報はこの部屋のその机の上の地図に浮き上がる様にしてありますから」
「指揮所という訳か…… 側に居る。 なにか有れば声を挙げろ。 いいな、リーナ」
「はい、頼りにしてますわよ、ラムソンさん」
夕方の日差しは、とても穏やかだったわ。 とてもね。 秋も深まり、風の中に冬の気配が混じり始めている。 特に夕刻はね。 開け放たれている窓から、その風が一陣…… お部屋の中に吹き込んで来たの。
風が冷たい。
もうすぐ、東部領域北域街道にも雪が降る。
その前に……
その前に……
その前に……
殿下達を駆け抜けさせねば……
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