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従軍薬師リーナの軌跡
追撃の財務寮(2)
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「それは、どういう意味なのでしょうか?」
その名前は…… ロマンスティカ様の「別称」よ? 何故、ミストラーベ宮廷伯爵が、その名を口にされるの? なにか、関係が「お有り」だと云うの? どうして、私にそれを云うの? 困惑と疑惑が、心の中に広がるの。 私の視線は、相変わらず固定されたまま、少し眉が寄るのが判る。
「すまんね。 そう、警戒しなさんな。 あんなにも堂々と、親父殿と対応していたのに、今の嬢ちゃん、生まれたての小鹿みたいに、プルプルしてるぜ? 取って喰ったりしないって! まずは、『お話』をしたくてな」
「『お話』に御座いますか?」
「あぁ、そうさ、お話さ。 木を見て森を見ない親父殿。 その気質を丸ごと受け継いじまった、愚妹の、お話さ。 それと、俺にも大切な「御役目」が有る。 ところで嬢ちゃん、あんた、何色だ?」
いきなりなによ! 何が言いたいのよ! ちょっと、ムカついた。 だから、言いたい事言わせてもらうわ!
「わたくしは、「精霊様」に誓約を捧げた薬師。 色は無色。 何にもとらわれることなく、一心に誓約を果たす者……」
動揺が収まった。 半目に瞼を開き、ミストラーベ宮廷伯を見詰める。 この人…… 何をどこまで知っているのか、知りたくなったの。 身の安全の為? 違う、相手を見定める為よ。
「そう云うと思った。 あの魔女と同じだよなぁ…… 王太子殿下もトンデモナイ者に信を与えたなぁ」
王太子殿下? ウーノル殿下の事なの? どう云う事なの? この方、財務寮の人なんでしょ?
「俺は、「青」に染めた。 自分の意思でな。 まぁ、そっちにしたら、どうでもいい事だろうけど、一応言っておく。 あぁ、理由はコレだ」
ミストラーベ宮廷伯は、持って来ていた鞄から、私の作った経理教本を、取り出して作業机の上に置かれたのよ。 その、教本と、ミストラーベ宮廷伯の顔を交互に見てしまった。 私の混乱に拍車が掛かるの……
「俺はね、庶子なんだ。 親父殿は、ヘリオス=フィスト=ミストラーベ大公。 お袋は、ミストラーベ大公家に行儀見習いで仕えていた、家門末端の男爵家の娘。 親父殿のお手付きさ。 普通は、お袋の実家に帰されるんだが、大公閣下の ” 初児 ” で、 ” 男児 ” だもんで、暫く留め置かれたんだ。 ミストラーベの家名は名乗れるが、男爵家からの養子ってことで、処理されている。 まぁ、認めたくないんだろうな、若い時の『過ち』なんざ。 事情の分からない俺は、親父殿に認めてもらおうと、いい子にしてたんだがね…… まぁ、それで、放り出されもせずに、ミストラーベの末端にまだいるってことさ。 ニトルベインの魔女が生まれた時に、親父殿が正妻殿を孕ませて、生まれたのが、弟のアーノルド=テムロット=ミストラーベ って訳だよ」
「その…… 御出自が…… どう、関係するのですか?」
「お前さん、あの魔女の名前を出した時に、驚いたろ? 説明してやってんの。 俺の立場って奴を。 それと、ミストラーベ大公閣下の思惑って奴をな。 知っていて、損はないぜ?」
「……た、たしかに。 お話から察しますと、宮廷伯は、大公閣下に認知されていないと?」
「あぁ、されちゃいないね。 予備の予備の予備ってのが、まぁ、俺だ。 それに、アーノルドが居るから、それも必要が無いね。 あぁ、アーノルドは、大公家の本筋が受け継ぐ、「伯爵」に叙せられているし、ミストラーベ大公家の本筋である、財務寮 執行局に「在籍」してもいるからな。 次代の大公閣下って奴だよ。 俺はその補佐。 汚れ仕事を専門にするからな」
「汚れ仕事? ですか?」
「あぁ、調査局ってのは、不正を暴くだけじゃなく、貴族のバランスを取る為に、陥れる証拠を見つけ出すような部署でもあるんだぜ? 知ってるだろ?」
「……それで、そのような口調に?」
「あぁ、これは、『 地 』だから気にすんな。 どんなに努力しても、表に出られないって事が理解できた時に、こうなっちまったんだ。 まぁ、アーノルドからは、色々と苦言を戴いちゃいるけどな」
「……左様に」
ますます、判らなくなったわ。 曝け出した本性って事なの? 砕けて、軽い調子では有る物の、彼の口から紡がれる言葉は、ミストラーベ大公家、ひいては王国の ” 秘 ” に関するようなモノ…… 軽々しく膾炙に載せるようなモノでは無いわ。
「アーノルドはね、ニトルベインの魔女が、女狐の腹に出来た時に仕込まれた。 そう言えば、状況は理解できるよね」
「……次代の王の側近として?」
「だから、正妻肚なのさ。 良く理解しているねぇ。 まぁ、それも流れたけれどもね。 今は、執行局の若きやり手として、異彩を放っているよ。 ……コレを使ってだけどね」
そう云うと、テーブルに置かれた、数冊の教本を流し目で見るの。
「実を言うとね、この国の税政とか経理関連の法律って、現状と整合してない事が多くてね…… それを、見事にすり合わせているのが、コレなんだよ。 ウーノル殿下が、愚妹に託されたコレがね、財務寮の眼のある奴らの間では、飛び切りの「爆弾」になったんだよ。 アーノルドが中心になって、コレの原理原則を使って、王国の財務部門の見直しを行っている…… 出るわ、出るわ、不正の証拠。 アイツら、半狂乱になっているんだ」
「……左様に御座いましたか」
「あぁ、” 左様 ” に御座いますよ。 愚妹は、単に教本として、コレを見ている。 ウーノル王太子殿下が見せられたのは、その意味では無い。 俺は、真意を確かめたくてね、殿下に謁見のお許しを戴いて、問い正したんだ。 王国の礎にコレを置けと云う事ですかってね。 頷かれたよ。 そしてね、言われたんだ…… ” ベラルーシアに、気が付いて欲しかった ” ってね」
「…………」
ウーノル殿下のお側仕えの者は、常に殿下に重き課題を与えられているのね。 王国の未来を光へ導くために、一緒に歩めるかどうか…… 私ならゴメンよ。 そんな大役、果たせそうにないもの。
「愚妹は、殿下のお側に侍る事を誇りとし、そして、殿下を慕い続ている。 まぁ、いい事でもあるんだがね。 でもさぁ…… それを親父殿がね…… ニトルベインが出来て、ミストラーベが出来ぬ訳は無いと。 馬鹿な事を、言っているんだ。 アーノルドと一緒になって、その行動を潰しちゃいるんだがね。 愚妹を王妃に? 無理無理、あいつは表面は取り繕えても、本当の意味で、殿下のお側に立つと云う意味を理解し、それを体現できるような 「 器 」 じゃねぇからな。 ドワイアル大公家のアンネテーナ嬢の方が、殿下の側に立つと云う意味を、理解している。 親父殿と、愚妹以外のミストラーベの者は、そう感じているんだぜ? おかしいだろ?」
「…………」
「変な話に成ったな…… すまん。 そんな訳で、俺の色は「青」になった」
「ウーノル殿下の、側仕えとして、王国の未来を紡ぐためにですか?」
ちょっと、気になったの…… 私利私欲で、殿下の側に居られるのならば、それは、ある意味とても危険な事。 殿下の「試し」を過たず理解する「能力」をお持ちの方が、家門の隆盛を望み、近くにあると云うのは…… 危機的状況にある、ファンダリア王国の栄光への道に、暗い影を落とすかもしれない……
私の感情は、顔に良く出ると、ティカ様にご指摘いただいていたわ…… 今もそうなのかもしれない…… ミストラーベ宮廷伯の御顔が、ニヤリと歪む。 でも…… 黒くは無い笑顔。
「さっきも言った通り、俺は庶子だ。 別にミストラーベ大公家がどうなろうと、知った事じゃねぇな。 それにさ、俺が貰っている爵位…… 宮廷伯爵だぜ? 法衣貴族の爵位であって、門地とかもねぇ。 親父殿が最初に呉れやがったのは、” 法衣男爵 ”。 有り合わせの奴さ。 それなりの成績で、学院を卒業して、財務寮に入る前に体裁を整える為に下さりやがりましたよ。 親父殿は、アーノルドには、当主としての王道である、” 伯爵位 ” を、王立ナイトプレックス学院 入学と同時に、授けた。 これで、判るだろ? 俺が食って行くには、まともな王国が、必要なんだよ。 それが俺の私利なんだ」
晴れやかに、ニヤリとする、素敵な御顔のミストラーべ宮廷伯……
どこまでも、どこまでも……
真っ直ぐに。
私は……
その表情に飲み込まれた様に、頷いてしまったの。
その名前は…… ロマンスティカ様の「別称」よ? 何故、ミストラーベ宮廷伯爵が、その名を口にされるの? なにか、関係が「お有り」だと云うの? どうして、私にそれを云うの? 困惑と疑惑が、心の中に広がるの。 私の視線は、相変わらず固定されたまま、少し眉が寄るのが判る。
「すまんね。 そう、警戒しなさんな。 あんなにも堂々と、親父殿と対応していたのに、今の嬢ちゃん、生まれたての小鹿みたいに、プルプルしてるぜ? 取って喰ったりしないって! まずは、『お話』をしたくてな」
「『お話』に御座いますか?」
「あぁ、そうさ、お話さ。 木を見て森を見ない親父殿。 その気質を丸ごと受け継いじまった、愚妹の、お話さ。 それと、俺にも大切な「御役目」が有る。 ところで嬢ちゃん、あんた、何色だ?」
いきなりなによ! 何が言いたいのよ! ちょっと、ムカついた。 だから、言いたい事言わせてもらうわ!
「わたくしは、「精霊様」に誓約を捧げた薬師。 色は無色。 何にもとらわれることなく、一心に誓約を果たす者……」
動揺が収まった。 半目に瞼を開き、ミストラーベ宮廷伯を見詰める。 この人…… 何をどこまで知っているのか、知りたくなったの。 身の安全の為? 違う、相手を見定める為よ。
「そう云うと思った。 あの魔女と同じだよなぁ…… 王太子殿下もトンデモナイ者に信を与えたなぁ」
王太子殿下? ウーノル殿下の事なの? どう云う事なの? この方、財務寮の人なんでしょ?
「俺は、「青」に染めた。 自分の意思でな。 まぁ、そっちにしたら、どうでもいい事だろうけど、一応言っておく。 あぁ、理由はコレだ」
ミストラーベ宮廷伯は、持って来ていた鞄から、私の作った経理教本を、取り出して作業机の上に置かれたのよ。 その、教本と、ミストラーベ宮廷伯の顔を交互に見てしまった。 私の混乱に拍車が掛かるの……
「俺はね、庶子なんだ。 親父殿は、ヘリオス=フィスト=ミストラーベ大公。 お袋は、ミストラーベ大公家に行儀見習いで仕えていた、家門末端の男爵家の娘。 親父殿のお手付きさ。 普通は、お袋の実家に帰されるんだが、大公閣下の ” 初児 ” で、 ” 男児 ” だもんで、暫く留め置かれたんだ。 ミストラーベの家名は名乗れるが、男爵家からの養子ってことで、処理されている。 まぁ、認めたくないんだろうな、若い時の『過ち』なんざ。 事情の分からない俺は、親父殿に認めてもらおうと、いい子にしてたんだがね…… まぁ、それで、放り出されもせずに、ミストラーベの末端にまだいるってことさ。 ニトルベインの魔女が生まれた時に、親父殿が正妻殿を孕ませて、生まれたのが、弟のアーノルド=テムロット=ミストラーベ って訳だよ」
「その…… 御出自が…… どう、関係するのですか?」
「お前さん、あの魔女の名前を出した時に、驚いたろ? 説明してやってんの。 俺の立場って奴を。 それと、ミストラーベ大公閣下の思惑って奴をな。 知っていて、損はないぜ?」
「……た、たしかに。 お話から察しますと、宮廷伯は、大公閣下に認知されていないと?」
「あぁ、されちゃいないね。 予備の予備の予備ってのが、まぁ、俺だ。 それに、アーノルドが居るから、それも必要が無いね。 あぁ、アーノルドは、大公家の本筋が受け継ぐ、「伯爵」に叙せられているし、ミストラーベ大公家の本筋である、財務寮 執行局に「在籍」してもいるからな。 次代の大公閣下って奴だよ。 俺はその補佐。 汚れ仕事を専門にするからな」
「汚れ仕事? ですか?」
「あぁ、調査局ってのは、不正を暴くだけじゃなく、貴族のバランスを取る為に、陥れる証拠を見つけ出すような部署でもあるんだぜ? 知ってるだろ?」
「……それで、そのような口調に?」
「あぁ、これは、『 地 』だから気にすんな。 どんなに努力しても、表に出られないって事が理解できた時に、こうなっちまったんだ。 まぁ、アーノルドからは、色々と苦言を戴いちゃいるけどな」
「……左様に」
ますます、判らなくなったわ。 曝け出した本性って事なの? 砕けて、軽い調子では有る物の、彼の口から紡がれる言葉は、ミストラーベ大公家、ひいては王国の ” 秘 ” に関するようなモノ…… 軽々しく膾炙に載せるようなモノでは無いわ。
「アーノルドはね、ニトルベインの魔女が、女狐の腹に出来た時に仕込まれた。 そう言えば、状況は理解できるよね」
「……次代の王の側近として?」
「だから、正妻肚なのさ。 良く理解しているねぇ。 まぁ、それも流れたけれどもね。 今は、執行局の若きやり手として、異彩を放っているよ。 ……コレを使ってだけどね」
そう云うと、テーブルに置かれた、数冊の教本を流し目で見るの。
「実を言うとね、この国の税政とか経理関連の法律って、現状と整合してない事が多くてね…… それを、見事にすり合わせているのが、コレなんだよ。 ウーノル殿下が、愚妹に託されたコレがね、財務寮の眼のある奴らの間では、飛び切りの「爆弾」になったんだよ。 アーノルドが中心になって、コレの原理原則を使って、王国の財務部門の見直しを行っている…… 出るわ、出るわ、不正の証拠。 アイツら、半狂乱になっているんだ」
「……左様に御座いましたか」
「あぁ、” 左様 ” に御座いますよ。 愚妹は、単に教本として、コレを見ている。 ウーノル王太子殿下が見せられたのは、その意味では無い。 俺は、真意を確かめたくてね、殿下に謁見のお許しを戴いて、問い正したんだ。 王国の礎にコレを置けと云う事ですかってね。 頷かれたよ。 そしてね、言われたんだ…… ” ベラルーシアに、気が付いて欲しかった ” ってね」
「…………」
ウーノル殿下のお側仕えの者は、常に殿下に重き課題を与えられているのね。 王国の未来を光へ導くために、一緒に歩めるかどうか…… 私ならゴメンよ。 そんな大役、果たせそうにないもの。
「愚妹は、殿下のお側に侍る事を誇りとし、そして、殿下を慕い続ている。 まぁ、いい事でもあるんだがね。 でもさぁ…… それを親父殿がね…… ニトルベインが出来て、ミストラーベが出来ぬ訳は無いと。 馬鹿な事を、言っているんだ。 アーノルドと一緒になって、その行動を潰しちゃいるんだがね。 愚妹を王妃に? 無理無理、あいつは表面は取り繕えても、本当の意味で、殿下のお側に立つと云う意味を理解し、それを体現できるような 「 器 」 じゃねぇからな。 ドワイアル大公家のアンネテーナ嬢の方が、殿下の側に立つと云う意味を、理解している。 親父殿と、愚妹以外のミストラーベの者は、そう感じているんだぜ? おかしいだろ?」
「…………」
「変な話に成ったな…… すまん。 そんな訳で、俺の色は「青」になった」
「ウーノル殿下の、側仕えとして、王国の未来を紡ぐためにですか?」
ちょっと、気になったの…… 私利私欲で、殿下の側に居られるのならば、それは、ある意味とても危険な事。 殿下の「試し」を過たず理解する「能力」をお持ちの方が、家門の隆盛を望み、近くにあると云うのは…… 危機的状況にある、ファンダリア王国の栄光への道に、暗い影を落とすかもしれない……
私の感情は、顔に良く出ると、ティカ様にご指摘いただいていたわ…… 今もそうなのかもしれない…… ミストラーベ宮廷伯の御顔が、ニヤリと歪む。 でも…… 黒くは無い笑顔。
「さっきも言った通り、俺は庶子だ。 別にミストラーベ大公家がどうなろうと、知った事じゃねぇな。 それにさ、俺が貰っている爵位…… 宮廷伯爵だぜ? 法衣貴族の爵位であって、門地とかもねぇ。 親父殿が最初に呉れやがったのは、” 法衣男爵 ”。 有り合わせの奴さ。 それなりの成績で、学院を卒業して、財務寮に入る前に体裁を整える為に下さりやがりましたよ。 親父殿は、アーノルドには、当主としての王道である、” 伯爵位 ” を、王立ナイトプレックス学院 入学と同時に、授けた。 これで、判るだろ? 俺が食って行くには、まともな王国が、必要なんだよ。 それが俺の私利なんだ」
晴れやかに、ニヤリとする、素敵な御顔のミストラーべ宮廷伯……
どこまでも、どこまでも……
真っ直ぐに。
私は……
その表情に飲み込まれた様に、頷いてしまったの。
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