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出会いと、お別れの日々 (2)
そして、私の日常が始まる
しおりを挟むキャリッジの中で、エスカリーナから、リーナに変わる……
髪は黒髪、二房の紅い髪…… 眼は漆黒…… 周囲に紅い毛筋程の縁取り…… 結い上げて居た髪から、ピンを引き抜く。 髪は一気に落ちる…… 手早く一つに纏めて後ろに垂らす。
前髪が少し垂れて、目を覆うの。 用意してあった、錬金術師のローブを纏う。 おばば様から貰った大切なローブをね。
もう、コレでエスカリーナの雰囲気は皆無になるのよ。
たったこれだけでね。 改造キャリッジは「奇跡の鍛冶屋」さんに到着。 コンコンとノックをされる。 ちょっと息を吸い込み…… 扉を開けて外に出るんだ。 眼を丸くしたルーケルさんが其処に居たんだ。 前回、此処からお屋敷に帰る時には、この姿じゃ無かったからね。 びっくりされていると思う。
でも、すぐに、何時ものルーケルさんになったんだ。 小声で、私に云うの……
「ブギット様、イグバール様はその御姿を?」
「はい、御存知です。 エカリーナさんは、この姿しか御存知有りません。 私はリーナ。 ルーケルさん、宜しくて?」
「ええ、リーナ様。 大丈夫です。 心得ました」
「お願いしますね」
コソコソとそんな話をしてから、ブギットさんの作業場に入って行くの。
「ブギットさん、「山の水」を受け取りに参りました!」
既に準備は整えられていたの。 裏手に改造キャリッジを廻すと、其処には新しい荷馬車が一台あったの。 荷台には水が入っている樽が八つ。 いつもより二つ多いのよね。 イグバール様がエリカーナさんを連れて、お庭の作業場から出てらしたの。
「リーナさん。 お荷物の準備は整えてあります。 此方の馬車をお使い下さい。 お乗りになってきた馬車は、こちらで預かりますからね」
「はい、宜しくお願いします。 えっと…… エカリーナさん、大丈夫ですか?」
「勿論に御座いますわ、リーナ様。 とても良くして貰っております。 お仕事も、お勉強も…… 大変有難いです!」
相変わらず元気だね。 彼女の装いは、私がローブの下に着ている物と変わりが無いものを、着てらっしゃるのよ。 ルーケルさんとは、初めて会うから、ご紹介しておくね。 どうぞよしなに!
*******************************
ブギットさんの、「奇跡の鍛冶屋」さんから、「百花繚乱」までの道は、何時もの道。 新しい荷馬車も、物凄く快適。 まぁ、あの改造キャリッジほどじゃないけどね。 でも、荷馬車で、重い荷物を積んでいるとは思えない位なのよね。
お昼ご飯にって、思って持って来たバケットの一部は、あちらに置いて来た。 まだ、そんなに慣れてないエカリーナさんの手間を少しでも減らしておきたかったし、なにせ、男爵家の晩餐の残り物って、すっごく美味しいもんね。
いま、バスケットの中にあるのは、おばば様の分と、ルーケルさんの分。 私の分は…… あんまり、食欲無いんだ…… この所、色んな事が有ってね、なんか胸が一杯で…… お腹も空かないんだよね。 不思議なのよね。
ゴトゴト荷馬車は進み、「百花繚乱」に到着。 さぁ、リーナ仕事よ!
せっかく、ちゃんと登録したんだから!
そして、わたしの一日が始まるの。
薬師錬金術師 リーナとしての一日がね。
おばば様のとの約束で、四日間しか連続で働けないの。
そしたら三日間はお休み。
男爵様の御邸に戻って、エスカリーナをするんだ。
そんな、事になっているんだ。
まぁ、今日から四日間は、リーナの時間。
お薬作って、治療院に様子見に行って……
色んな事しなくちゃね!
頑張ろっと!
応援ありがとうございます!
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