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幼少期のやり直し
閑話2 ハンナ=ダクレール 後編
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でも、まぁ、流石に大公家という事も有りまして、使用人の皆さんはとてもお行儀が宜しいのですよ。 その上、大公閣下の御友人の娘という事で、完全に行儀見習いという立場でのお仕事。 ミッチリ、ギッチリはしんどかったけど、それまでの私とは、雲泥の差が出来ましたよ。 悪筆はガッツリ直されて、算術苦手だったけど、これまたギッチリ教え込まれて……
学院の方がずっと甘かったよ……
「貴女の失敗は、大公家使用人の失敗。 ひいては旦那様の御顔に泥を塗る事にもなります。 良いですね、大公家の使用人として誇りを持ちなさい。 そして、その誇りに負けぬほどの仕事をしなさい。 文字一文字、一杯のお茶に貴女の全てが現れます。 手を抜けば、貴女だけの失態では済まないと心得なさい」
怖ぇぇ…… 職業婦人って、ほんとに、怖ぇぇぇ。 でもさ、なんだか、私に合ってたみたい。 外見とか、身分とかで人を判断しない人達の間で働いていたらさぁ、それが普通になってさぁ…… きちんと出来た事を褒められるとさぁ…… なんか…… とても嬉しかったよ。
そして、いよいよ、エスカリーナ御嬢様付の侍女に成る事に成ったんだ。
侍女長のカーマル様について、御屋敷の奥まった静かなお部屋に向かったんだよ。 いや、ここ、ホントに人が居るの? ってなくらい、静かっだったんよ。
「ハンナ、いいですね。 屋敷の使用人達は皆、此処におわすのは王女殿下と思っております。 云われなき讒言で王宮から戻された、エリザベート=ファル=ファンダリアーナ ファンダリア王妃殿下の忘れ形見と、わたくしたちは思っています。 くれぐれも、粗相の無いように」
「はい、カーマル様。 肝に銘じます」
「宜しい。 エスカリーナ御嬢様は大変聡明で…… 物静かな御方です。 わたくしも含め、まだ誰も御声を聞いた者がいないのです。 まだ、お小さいというのに、泣き声も上げず…… 明るい貴女なら、お嬢様をお願い出来るでしょう。 頼みました」
「はい…… わたくしの出来る限りをもって、お仕えいたします」
とっても心配そうなカーマル様。 気には掛かっているけれども、どうにも手の出しようが無いってのが本音ね。 わたしは、行儀見習いだし、身分も男爵家令嬢。 政治的には何の力も無い家だから……ね。 どんな方だろう…… 御心を開いて貰えたら…… いいなぁ……
^^^^^^^^
絶句したよ。 お部屋の扉を開けて、カーマル様に中に入れて貰った時ね。 小さな人形かと思ったんだ。
群青色の瞳。
銀灰色の髪。
まだ赤ちゃんと云える歳なのに、美しくも可憐な御顔立ち。
ほんのりとピンクに染まっている頬。
小さく、細い手足……
でも、その瞳の中にある知的な光……
あぁ、コレが、大公家…… いや、王家の姫君なんだと…… その時、思ったんだ。 私をジッと見詰めるエスカリーナ様に、カーマル様が私を紹介してくれたんだ。
「この度、専属侍女として、御側に上がります、ハンナ=ダクレールに御座います、エスカリーナお嬢様」
軽く頷かれたんだ。 いや、この可憐な生き物って、ホントに動くんだ…… ちょっと、感動! それからの毎日は、お嬢様のお世話に明け暮れた。 でも、このお嬢様、ホント反応薄いんだよ。 何に興味を示しているのかすら、判んないんだよ。
だから、色んな話題を出してみたんだ。
まぁ、私の知っている事なんて、そんなに無いし、変な事教えちゃったら、後々マズイしね。 だから、知ってる事、間違いなく真実な事を並べてみたんだ…… あぁ、私の大事なダクレール男爵領についてね。 これなら、間違いないはずだもんね。
でもさ、あんまり、反応無いんだよ。 よく聞いてくれているのは判る。 判るんだけど、ちょっと頷くだけ。 ちゃんと、目を見てお話してるし…… 理解されて無いんだろうなぁ~ まだ、お小さいし…… でね、御領地の事を話すと、やっぱり、御父様の事に話が向くんだよ……
愚痴っちゃったよ……
お嬢様が、カーマル様にチクったら私、首飛ぶかな? しまったと思った時には、もうかなり話しちゃってたし…… でも、お嬢様こんな愚痴にちょっと反応されたんだよ…… 微かに苦笑いって感じかな? そんななんとも言えない微笑みを頬に浮かべて下さったんだ。
なんか、一気に親近感が湧いちゃってね……
それからは、カーマル様にお願いして、幼児教育の御本を貸してもらったり、大公家のアンネテーナお嬢様付の侍女さんにどんな事をしているか、教えて貰ったりしてね…… 出来るだけ、お嬢様と一緒に過ごす事にしたんだよ。
本を読むとか、一緒に落書きするとか、文字を書くとか…… 出来る事は何でもしたんだ。
二歳のお誕生日から少し経ってね、何時ものようにお遊びしましょって、感じでお嬢様の側に行ったのよ。そしたらさ、耳にしたのよ。 鈴が転がる様な、澄んだ声をね。
「ハンナさん、何時もありがと! 今度はコレ読んで!」
「えっ? はっ? お嬢様? いま、なんと?」
「うん、コレ読んでって、お願いしたの」
「お、御嬢様!! お話が出来るのですね!! なんて……、素晴らしい!!」
「うん、ありがと!」
ニンマリと、極上の微笑みを浮かべて私を見たんだよ、お嬢様が。 そりゃ、もう、天使降臨!!! って感じだよ!! もう、なんて愛らしいの! なんて素敵なの!! このお嬢様の為なら、私、何だってするよ! もう、ほんと!
どうしよう!!!!
愛おしさが止まんない!!!
学院の方がずっと甘かったよ……
「貴女の失敗は、大公家使用人の失敗。 ひいては旦那様の御顔に泥を塗る事にもなります。 良いですね、大公家の使用人として誇りを持ちなさい。 そして、その誇りに負けぬほどの仕事をしなさい。 文字一文字、一杯のお茶に貴女の全てが現れます。 手を抜けば、貴女だけの失態では済まないと心得なさい」
怖ぇぇ…… 職業婦人って、ほんとに、怖ぇぇぇ。 でもさ、なんだか、私に合ってたみたい。 外見とか、身分とかで人を判断しない人達の間で働いていたらさぁ、それが普通になってさぁ…… きちんと出来た事を褒められるとさぁ…… なんか…… とても嬉しかったよ。
そして、いよいよ、エスカリーナ御嬢様付の侍女に成る事に成ったんだ。
侍女長のカーマル様について、御屋敷の奥まった静かなお部屋に向かったんだよ。 いや、ここ、ホントに人が居るの? ってなくらい、静かっだったんよ。
「ハンナ、いいですね。 屋敷の使用人達は皆、此処におわすのは王女殿下と思っております。 云われなき讒言で王宮から戻された、エリザベート=ファル=ファンダリアーナ ファンダリア王妃殿下の忘れ形見と、わたくしたちは思っています。 くれぐれも、粗相の無いように」
「はい、カーマル様。 肝に銘じます」
「宜しい。 エスカリーナ御嬢様は大変聡明で…… 物静かな御方です。 わたくしも含め、まだ誰も御声を聞いた者がいないのです。 まだ、お小さいというのに、泣き声も上げず…… 明るい貴女なら、お嬢様をお願い出来るでしょう。 頼みました」
「はい…… わたくしの出来る限りをもって、お仕えいたします」
とっても心配そうなカーマル様。 気には掛かっているけれども、どうにも手の出しようが無いってのが本音ね。 わたしは、行儀見習いだし、身分も男爵家令嬢。 政治的には何の力も無い家だから……ね。 どんな方だろう…… 御心を開いて貰えたら…… いいなぁ……
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絶句したよ。 お部屋の扉を開けて、カーマル様に中に入れて貰った時ね。 小さな人形かと思ったんだ。
群青色の瞳。
銀灰色の髪。
まだ赤ちゃんと云える歳なのに、美しくも可憐な御顔立ち。
ほんのりとピンクに染まっている頬。
小さく、細い手足……
でも、その瞳の中にある知的な光……
あぁ、コレが、大公家…… いや、王家の姫君なんだと…… その時、思ったんだ。 私をジッと見詰めるエスカリーナ様に、カーマル様が私を紹介してくれたんだ。
「この度、専属侍女として、御側に上がります、ハンナ=ダクレールに御座います、エスカリーナお嬢様」
軽く頷かれたんだ。 いや、この可憐な生き物って、ホントに動くんだ…… ちょっと、感動! それからの毎日は、お嬢様のお世話に明け暮れた。 でも、このお嬢様、ホント反応薄いんだよ。 何に興味を示しているのかすら、判んないんだよ。
だから、色んな話題を出してみたんだ。
まぁ、私の知っている事なんて、そんなに無いし、変な事教えちゃったら、後々マズイしね。 だから、知ってる事、間違いなく真実な事を並べてみたんだ…… あぁ、私の大事なダクレール男爵領についてね。 これなら、間違いないはずだもんね。
でもさ、あんまり、反応無いんだよ。 よく聞いてくれているのは判る。 判るんだけど、ちょっと頷くだけ。 ちゃんと、目を見てお話してるし…… 理解されて無いんだろうなぁ~ まだ、お小さいし…… でね、御領地の事を話すと、やっぱり、御父様の事に話が向くんだよ……
愚痴っちゃったよ……
お嬢様が、カーマル様にチクったら私、首飛ぶかな? しまったと思った時には、もうかなり話しちゃってたし…… でも、お嬢様こんな愚痴にちょっと反応されたんだよ…… 微かに苦笑いって感じかな? そんななんとも言えない微笑みを頬に浮かべて下さったんだ。
なんか、一気に親近感が湧いちゃってね……
それからは、カーマル様にお願いして、幼児教育の御本を貸してもらったり、大公家のアンネテーナお嬢様付の侍女さんにどんな事をしているか、教えて貰ったりしてね…… 出来るだけ、お嬢様と一緒に過ごす事にしたんだよ。
本を読むとか、一緒に落書きするとか、文字を書くとか…… 出来る事は何でもしたんだ。
二歳のお誕生日から少し経ってね、何時ものようにお遊びしましょって、感じでお嬢様の側に行ったのよ。そしたらさ、耳にしたのよ。 鈴が転がる様な、澄んだ声をね。
「ハンナさん、何時もありがと! 今度はコレ読んで!」
「えっ? はっ? お嬢様? いま、なんと?」
「うん、コレ読んでって、お願いしたの」
「お、御嬢様!! お話が出来るのですね!! なんて……、素晴らしい!!」
「うん、ありがと!」
ニンマリと、極上の微笑みを浮かべて私を見たんだよ、お嬢様が。 そりゃ、もう、天使降臨!!! って感じだよ!! もう、なんて愛らしいの! なんて素敵なの!! このお嬢様の為なら、私、何だってするよ! もう、ほんと!
どうしよう!!!!
愛おしさが止まんない!!!
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