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Christmas Special (クリスマス特別編)
The Pray to Santa Claus (祈り)
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The Pray to Santa Claus (祈り)
ぐっすりと、寝こんでいる、少女。枕もとに茶色のテディベアが坐っていた。もし、彼女が起きていたら、驚くに違いなかった。遠くに、夢の中のように鈴の音が響いていた。やがて、その鈴の音は部屋の真上に止まり、白い靄が天井から降りてきた。人の気配ではなかった。夢の中で聞く声の様にあやふやで、懐かしい囁く様な声が、部屋の中にひろがった。
「ふぉふぉふぉ、良い子でいたの。 おまえさんの手紙は届いたぞ。 おまえさんの祈りはの………… おや、日記かの、どれ、見せてもらおうかの」
ベットの横の机に置かれた、日記帳が風も無いのに、ゆっくり開かれた。
*********************************
6がつ15にち。
きのうのよる、パパがかえっていた。ママと話しをしていた。わたしは、パパのこえに、めがさめて、パパたちがいるところにいった。ママとパパがこわい顔をしていた。パパにおかえりを、いった。パパがやさしくわらってくれた。きょうのあさ、パパはもういなかった。ママは「しゅっちょうにいったの」といった。「パパがはやくかえるといいね」っていったら、ママはさみしそうな顔をして、「そうね、あなたが良い子でいたらすぐにかえってくるわよ」と、いった。だから、良い子にしてようと思った。
7がつ20にち。
きょうからなつやすみ。先生がいっぱいしゅくだいをだした。たいへんだ~~。みんなはパパにてつだってもらうっていっている。パパはまだかえってこない。わたしはパパにてつだってもらったりしません。だってパパいないんだもん。ママはてつだってくれるかな~~。
8がつ15にち。
おばあちゃんのいえにいった。ママはおしごとで、いっしょにいけなかった。おばあちゃんのおうちで、クッキーをつくった。あまい、あまい、クッキーになった。クッキーにチョコレートで字をかいた。ハートのかたちのクッキーに「ママへ」、おほしさまのかたちのクッキーに「パパへ」ってかいた。 あばあちゃんは、それをみてなにもいわなかったけど、ぎゅ~~っとだきしめてくれた。なんでだろう? おうちにかえってママにクッキーを見せながら、そのことを言うと、ママもぎゅ~っとだきしめてくれた。 どうしてだろう。パパ、はやくかえってくればいいのにな。
9がつ10にち。
おやこえんそくだった。ママはおしごとでこれないから、ひとりでいった。 なんにんかともだちも、ひとりだったからべつに、さみしくなかった。 先生もいたし。 どんぐりを拾ったり、おちばを拾ってあそんだ。ほかの子で、パパが来てる子もいた。 ちょっと、うらやましかった。 パパどうしかったのかな?良い子にしてるのに、まだ、かえってこない。ママに聞いてみても、わらってこたえてくれない。なんでだろう?
10がつ9にち。
うんどう会。かけっこでいちばんになった。金色のメダルをもらった。ママはとってもよろこんでくれた。わたしもうれしかった。おひるごはんの時、ママと2人でおべんとうをたべた。まわりはみんなパパがいた。ママがさみしそうな顔をしたから、なんにも言わなかった。 パパは、おしごと、いそがしいからこれないから。 きっとそうだとおもうから。
ママにはいわなかったけど、わたし、パパにあいたいな。
11がつ30にち。
がくげい会があった。げきをした。「しらゆきひめ」だった。いっしょうけんめいれんしゅうした。もしかしたらパパが見に来てくれるかもしれないから。わたしは、ななにんのこびとのひとりだった。おのをかついで、おうたをうたいながら、あるいた。いっしょうけんめいうたった。先生もママもほめてくれた。でも、パパは来なかった。パパ、パパ、パパ。 こんなに良い子にしてるのに、なんでかえってきてくれないの?
12がつ17にち。
きょうママが、でんわをかけていた。きっとパパだったにちがいない。なんとなくそうおもった。ママがわたしをぎゅ~~っとだいて、いった「いつも、ママの言う事を聞いて、良い子でいるから、きっとパパかえってくるよ」って。
ほんとかな?
ずっとまっているんだけどな~~。わたしは、がっこうできいた。サンタさんにおねがいすると、ほしいおもちゃがもらえるよって。わたし、おもちゃなんかいらない。だから、パパかえってきて。わたしは、サンタさんにとどくように、クリスマスツリーにおねがいをかいたかみをぶらさげた。
” サンタさんへ
プレゼントはいりません。ママとパパといっしょにいたいです。おねがいします ”
って。
12がつ24にち。
パパとあった!!!!サンタさん、わたしが良い子でいたから、おねがいきいてくれた!!!。でもパパおしごとで、すぐにいなくなった。ちょっぴりさみしかった。サンタさん良い子でいますから、ずっとパパがおうちにいるようにしてください。おねがいします。
*********************************
眠りにつく、少女。ベットの横の机に、その日記帳が置かれていた。窓も開いていない、部屋の中、日記帳が1ページづつめくれていった。今日の日付でとまる。
部屋の中に優しい、年老いた声が広がった。
「ふぉふぉふぉふぉふぉ、君の御願いを聞いて上げよう。 ちょっと、難しいが、出来ない事は無い。 君のお願いは、他の許されざる罪を犯した者達も許さねばならないが、神様も、きっとお許しくださるだろう。 そう、今日は、全ての人の子の罪を背負い、天に召されし者の誕生日だからね。 明日の朝、君の願いは叶っているよ。 ゆっくりお休み。」
主の見えない声が少女にかけられた。少女は深い眠りの中にいる。
「さて、行くかの、まだまだ、廻らねばならないところはたくさんある。 お前さんは、ホントに良い子だったの。」
白い靄は天井に消えていった。鈴の音が遠くに消えていった。
見つめていたのは、茶色いテディベアだけだった。
fin
ぐっすりと、寝こんでいる、少女。枕もとに茶色のテディベアが坐っていた。もし、彼女が起きていたら、驚くに違いなかった。遠くに、夢の中のように鈴の音が響いていた。やがて、その鈴の音は部屋の真上に止まり、白い靄が天井から降りてきた。人の気配ではなかった。夢の中で聞く声の様にあやふやで、懐かしい囁く様な声が、部屋の中にひろがった。
「ふぉふぉふぉ、良い子でいたの。 おまえさんの手紙は届いたぞ。 おまえさんの祈りはの………… おや、日記かの、どれ、見せてもらおうかの」
ベットの横の机に置かれた、日記帳が風も無いのに、ゆっくり開かれた。
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6がつ15にち。
きのうのよる、パパがかえっていた。ママと話しをしていた。わたしは、パパのこえに、めがさめて、パパたちがいるところにいった。ママとパパがこわい顔をしていた。パパにおかえりを、いった。パパがやさしくわらってくれた。きょうのあさ、パパはもういなかった。ママは「しゅっちょうにいったの」といった。「パパがはやくかえるといいね」っていったら、ママはさみしそうな顔をして、「そうね、あなたが良い子でいたらすぐにかえってくるわよ」と、いった。だから、良い子にしてようと思った。
7がつ20にち。
きょうからなつやすみ。先生がいっぱいしゅくだいをだした。たいへんだ~~。みんなはパパにてつだってもらうっていっている。パパはまだかえってこない。わたしはパパにてつだってもらったりしません。だってパパいないんだもん。ママはてつだってくれるかな~~。
8がつ15にち。
おばあちゃんのいえにいった。ママはおしごとで、いっしょにいけなかった。おばあちゃんのおうちで、クッキーをつくった。あまい、あまい、クッキーになった。クッキーにチョコレートで字をかいた。ハートのかたちのクッキーに「ママへ」、おほしさまのかたちのクッキーに「パパへ」ってかいた。 あばあちゃんは、それをみてなにもいわなかったけど、ぎゅ~~っとだきしめてくれた。なんでだろう? おうちにかえってママにクッキーを見せながら、そのことを言うと、ママもぎゅ~っとだきしめてくれた。 どうしてだろう。パパ、はやくかえってくればいいのにな。
9がつ10にち。
おやこえんそくだった。ママはおしごとでこれないから、ひとりでいった。 なんにんかともだちも、ひとりだったからべつに、さみしくなかった。 先生もいたし。 どんぐりを拾ったり、おちばを拾ってあそんだ。ほかの子で、パパが来てる子もいた。 ちょっと、うらやましかった。 パパどうしかったのかな?良い子にしてるのに、まだ、かえってこない。ママに聞いてみても、わらってこたえてくれない。なんでだろう?
10がつ9にち。
うんどう会。かけっこでいちばんになった。金色のメダルをもらった。ママはとってもよろこんでくれた。わたしもうれしかった。おひるごはんの時、ママと2人でおべんとうをたべた。まわりはみんなパパがいた。ママがさみしそうな顔をしたから、なんにも言わなかった。 パパは、おしごと、いそがしいからこれないから。 きっとそうだとおもうから。
ママにはいわなかったけど、わたし、パパにあいたいな。
11がつ30にち。
がくげい会があった。げきをした。「しらゆきひめ」だった。いっしょうけんめいれんしゅうした。もしかしたらパパが見に来てくれるかもしれないから。わたしは、ななにんのこびとのひとりだった。おのをかついで、おうたをうたいながら、あるいた。いっしょうけんめいうたった。先生もママもほめてくれた。でも、パパは来なかった。パパ、パパ、パパ。 こんなに良い子にしてるのに、なんでかえってきてくれないの?
12がつ17にち。
きょうママが、でんわをかけていた。きっとパパだったにちがいない。なんとなくそうおもった。ママがわたしをぎゅ~~っとだいて、いった「いつも、ママの言う事を聞いて、良い子でいるから、きっとパパかえってくるよ」って。
ほんとかな?
ずっとまっているんだけどな~~。わたしは、がっこうできいた。サンタさんにおねがいすると、ほしいおもちゃがもらえるよって。わたし、おもちゃなんかいらない。だから、パパかえってきて。わたしは、サンタさんにとどくように、クリスマスツリーにおねがいをかいたかみをぶらさげた。
” サンタさんへ
プレゼントはいりません。ママとパパといっしょにいたいです。おねがいします ”
って。
12がつ24にち。
パパとあった!!!!サンタさん、わたしが良い子でいたから、おねがいきいてくれた!!!。でもパパおしごとで、すぐにいなくなった。ちょっぴりさみしかった。サンタさん良い子でいますから、ずっとパパがおうちにいるようにしてください。おねがいします。
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眠りにつく、少女。ベットの横の机に、その日記帳が置かれていた。窓も開いていない、部屋の中、日記帳が1ページづつめくれていった。今日の日付でとまる。
部屋の中に優しい、年老いた声が広がった。
「ふぉふぉふぉふぉふぉ、君の御願いを聞いて上げよう。 ちょっと、難しいが、出来ない事は無い。 君のお願いは、他の許されざる罪を犯した者達も許さねばならないが、神様も、きっとお許しくださるだろう。 そう、今日は、全ての人の子の罪を背負い、天に召されし者の誕生日だからね。 明日の朝、君の願いは叶っているよ。 ゆっくりお休み。」
主の見えない声が少女にかけられた。少女は深い眠りの中にいる。
「さて、行くかの、まだまだ、廻らねばならないところはたくさんある。 お前さんは、ホントに良い子だったの。」
白い靄は天井に消えていった。鈴の音が遠くに消えていった。
見つめていたのは、茶色いテディベアだけだった。
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