仄暗く愛おしい

零瑠~ぜる~

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優しい思い

仄暗く愛おしい

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 互いが余りにも殺伐とした世界で生きてきたから、自分の望みすら分からなくなってしまっていた。
どうして、願ってはいけないのか。どうして、そんなことを願ってしまうのか。思考することを止めていた時点で、本当の意味で生きてはいなかったのだとアイツを失ってから初めて気が付いた。
 何度か、人目を避けてアイツと話し合いを重ねた。両一族が、これ以上無駄な殺し合いを行わないために。
「先月は、子供だけ6人も殺されてしまった。」
ぽつりと、無念を含んだ声音で呟くとアイツは深い溜息を吐いた。
大人や、ある程度の年齢の者達は警戒心が強く反撃の恐れが高くなって簡単には殺せなくなっていた。代わりに、自衛の手段すら覚束無い小さな子供や自分では身の回りの事も出来ない年寄りが多く狙われ始めていた。
年よりは、家で大人しくしていればまだ安心できた。だが、子供はどれほど気を付けていても知らぬ間に家を抜け出し外に遊びに出かけてしまう。目の届く範囲で遊んでくれればいいのに、こういう時に限って人目につかない場所を好んで遊び場にしている。
「秘密基地を、作ったんだと言っていたよ。」
殺された子供の友達が教えてくれたと言いながら、静かに目を閉じた。
「そこで?」
子供が死んでいたのかと言外に問いかけると、アイツは無言で頷いた。
「びっくりしたんだろうなぁ。見つけた時、ポカンとした表情のままだったから。きっと、自分が死んでしまったことにも気が付かなかったかもしれない。一瞬で・・・・首を切断されたんだと。
その後で、四肢を切り落としたのは子供に対するせめてもの慈悲だったのかな?」
泣きそうな声で、殺されていた子供の様子を静かに話し続けた。親しくしていた訳では無いだろうが、両一族とも小さな一族だ。会えば挨拶位は交わしただろう、生前の姿を知っている分余計に辛くなる。
「アイツらのやっていることは、最早ただの殺戮だ。なんの、大義もない。」
抵抗も出来ないような幼子を手にかけてまで、一体何を為したいというのだろうか。恨みの矛先が完全に狂ってしまっている。元々、褒められたものじゃない家業だがそれでもその仕事に誇りを持っていた。ヒトの命を奪う以上、自分達も命を奪われる覚悟をもって生きていく。それゆえに、無意味な殺戮は決して行わない。今の一族には、その矜持すら伺えない。
「もう、こんなことは止めさせなくちゃ。」
ぎゅっと両手を握りこむように組み合わせ、アイツが呟いた瞬間。
「だったら、その命で清算すればいいだろう!!」
何時の間に傍に来ていたのか叫び声と共に、手槍がアイツの胸深く埋め込まれた。

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