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羽虫、不思議な夢をみる
しおりを挟む…あのあと、男と一緒に長い長い旅をした。
当初思っていたように、使役虫という奴隷扱いをされることはなく、むしろ手厚く飼育されている。
あ、安心してください。
某タランチュラ氏のように、口に含まれたことはありません。
この世界はいわゆる剣と魔法の世界だった。
男は狩人なのか、旅の道中に、あの大剣と魔法を駆使して狩った動植物を、街で売って生活していた。
男は人里につくと、私を石の虫籠から出してくれる。
男の周囲しか飛べないけれど、シャバの空気は美味いぜっと言わんばかりに、外に出される度に飛び回った。
なぜか、私が飛び回ってると周りの人達が驚き、たまに拝んでくる。
けど、気にせず飛び回った。
お腹が空いたら、男が、どこに隠し持っていたのか、あの発光する花を食べさせてくれたから、飢えることもなかった。
最初は男に対する嫌悪感が強かったけど、今では、近くにいても許せる。
……いや、まぁなんだ。
むしろ、好意的、かな?
……だって、だって仕方ないじゃん?!
毎日毎日何言ってるかわかんないけど、好き好きオーラ全開のイケメンが熱く見つめてくるんだよ?!衣食住世話してくれるし、守ってくれるし、大事にしてくれるんだよ?!
そんなんされたら、そんなの、好きになるしかないじゃん!!
…でも、まぁ、失恋確定だけどね。
男の溺愛は、あくまでもペット枠…だと思う。
なんたって、私は羽虫、種族が違うし。
言葉だって、わかんないままだし。
好きなんて、伝えられるはず、ない、よ…
恋心を自覚したその日、私の気分はジェットコースターのように上がり下がりした。
ーーーその日の夜、不思議な夢を見た。
宿屋について、発光する花を食べさせてもらって、普通に寝た私。
体がなんだかムズムズするなぁって起きて、気付いたら、人間♀になっていた。
あ、なんだ、夢か。
男のことで悩んでいたから、夢で人化したんだな。
しかし、色付きでリアルな夢だなぁ…明晰夢って言うんだっけ?
あ、どうせだから、顔とか見たいな!
私はルンルンしながら洗面台の所にある鏡を見に行った。
そしたら、前世と同じ顔で、ガッカリ。
しかも背には、虫の羽がついたままで、薄ら発光している。
神様、せめて夢の中でくらい、美人になりたかったとです…
そして、何度も言うけど、私、虫は好かんとです。人化した後にまで羽はいらんばぃ……
と、自分が勝手に見た夢の癖に神様に文句を言っていると、
カタッ…
背後から音がしたので、振り返ったら、そこには顔を真っ赤にした男が、口をパクパクさせながら立っていた。
あら、起こしちゃったみたい。
顔が赤い?……あっ、私が裸だからか!
羽虫の時、服とか着てなかったし、裸に違和感なくて今気付いた。
現実で真夜中に自分の泊まった宿の一室に、全裸で発光する羽付女がいたら、絶叫物だと思うけど、さすが夢!
男は叫びもせず、ぼーっと私に見惚れている。
……私のことわかるかな?
どうせ、夢なんだし、大胆なことしても、いいよね?
応援ありがとうございます!
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